恋愛テロリスト

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  第三幕 Dエリア最強〜Dエリア 2  

テンからショウかテンかの二択を迫られ、ショウの愛人よりテンについていくほうが幾分かマシ!と思ったあたしはDエリアに行く道を選択してしまったのだが・・・・

果たしてこの選択は正しかったのだろうか?
Dエリア、一度も行った事がないが、聞いた話このBエリアより酷いとこらしい、特にAエリアで生きてきた人間には到底理解しがたい環境や制度なのだという。

弱い奴は強い奴に従う、力こそが自分を認めてもらうすべてらしい
そこには男も女も大人も子供も身分さえ関係ないのだという・・・。
そしてテンも、そのDエリアの人間であったのだという、幼い頃から戦いの中で生きてきたテンはリーダーというテロ組織のリーダーの男に拾われ鍛えられたのだという。(リーダーって名前なのか通称なのかしんないけど)
テンのあのハチャメチャな強さはそこからきているのだろうか?

たぶん本人はこう答えるのだろう
「タカネへの愛」・・・なのだと。


はい、でそのおばあちゃんのこととなると超せっかち男のテンに急かされ、あたしも忙しく身支度を整える。
といっても旅行に行くような身支度なんてしないけどね、お金は持たない(元より持ってませんが)
服も新しく着替えて、(えっ、服はその・・・・パクっ・・・げふり)、テンに渡された武器を両手に抱えてBエリアからDエリアへ通じる唯一の橋へと向かった。

DエリアもAエリアと同様に一本の橋によってBエリアと通じている。
ただA〜B間以上に人の行き来はかなり少ないらしい。
Bエリアの人間はここよりさらに環境の悪いDエリアに好き好んで行く者はいないし
Dエリア側も雷門の勢力の強いBエリアにはあまり来たがらないらしいのだ。
あたしにとってはどっちもどっちだけど・・・

テンと一緒にBエリアの最西端の境界付近までやってきた時
Bエリア側の関所付近の橋の手すりの上で踊っている物体は・・・・

「ちんたらしやがって、遅いぞ!なんつて」

ショウ!!

「ガキィィィィーー!!」
ショウを目にするとテンは迷わず刀を振るいショウに飛び掛る。

「うわっ!」
テンの攻撃を足場の悪い場所でかわし、おかげでバランス崩したショウは橋の下へと・・・・

落ちた?

「クソがっ、ちょこまかと」


「オッサンマジでヤバくない?

・・・・リンネの太ももも、ヤバくない?」

ぐにっと、両足の太ももをなにかに掴まれた感触が!

うわっ、いつの間にあたしの背後に?!橋の下に落ちたと思っていたら

って、あたしの太ももって、ムカ!
何がヤバイっていうの? 魅力的な太ももってこと? と逆の意味だよね、コイツの場合は(いらっ)

「ちょっと!乙女の可憐な足を掴まないでよ!」
後ろ蹴りでショウを蹴り飛ばそうと思ったけど、軽くかわされ、あたしがすっ転びそうになった。

「ガキ、俺の行く先を邪魔するなら殺すぞ。」
テンがショウを睨みつけながら脅す、テンの殺すってのは冗談ではないだろう、そういう奴ですから。
ああー、Aエリアでショウ自身がカイミって子に言ってた真っ二つを、今度はショウがされそうになるっていうのね。

「邪魔なんてしないって、ただついていくだけ♪」

は?こいつまたついてくる気?

「あんたBエリアの領主でしょ?!」仕事は?

「だってさー、ヒマなんだよね。レイトの奴が始末しすぎて、Bエリアにはかわいい女の子もほとんどいなくなっちゃったし、おもちゃもないんだよね。だから
オッサンたちについていったらおもろそうだから♪

それから、リンネが・・・」

「は?あたしがなによ?!」
ショウはあたしのほうを見てムカツく笑みを浮かべる、こいつ・・・・
きっとあたしの災難を見たいとかヤなこと考えてるんだなー、ムカツク!

「ほんとに落ちろ!!」
あたしは持っていたライフルでショウをドンッと押して橋の下に落としてやろうとした。
今度はあたしがショウとチャンバラってると、後ろからテンが

「そうかならばガキ、お前も来い。」

「へ?どうしたのテン?」
こんなにショウのこと毛嫌いしているのに、またころりと

「俺もDエリアの連中全員相手にするのは正直面倒だ、早くタカネにたどり着きたいからな。
腹すかせた連中の中にガキを放り込んでガキがむしゃぶられている隙に各ゾーンのキングのみ倒していく、
すぐに領主までたどり着くためにな、我ながらナイスなアイデアだな、くくく。」
邪悪に笑うテン

「それってつまりは囮?」囮というかエサ?

「とんだ鬼畜野郎だな!このオッサン」
と言いながら不敵な笑みを浮かべるショウもテンと同じ属性だと感じた。
二人ともその笑みはどこか楽しそうなものに見える。
こいつらはDエリアが怖くないのか?むしろ楽しんでいけるのか?!ガタブル

そして結局ショウもついてくることに、あたしたちはBエリアを離れDエリアへと架かる橋を渡る。
Dエリアを囲むのは黒く酷く汚れた壁だ。近づくにつれなんとも言いがたい嫌な空気臭いが漂ってくる。うっ、これは…マスク装備したほうがよかったかもしんない。涙目になりそう。何の臭いかはあたしにもハッキリわからないけど、生ゴミが腐ったような、長年体を洗わない加齢臭のキツイおっさんの汗のような、肉が腐敗したような、タマゴの腐ったような、汚物の臭い。嗅いだことないけど、たぶんニシンの缶詰をぶちまかしたらこんな臭いなんじゃない? 知らないけど。
きっとそこには人間の本性むき出しにした汚い物ばかりが溢れているのだろう
Aエリアとは対極にある世界、息をするのもためらわれる。あたしは死なないだろうか、息をするだけで足が止まりそうになるが何度もテンに急かされる。

橋をついに渡ってしまった
そこにあったのはボロボロのDエリア側の関所
そこから出てきたのは身長二メートルは越えてそうなイカツイ男
鎧を纏ったかのようなギチギチの筋肉に体中に刻まれた傷跡
顔は変形しているみたいに傷があって、耳もおかしな形をしていた
失礼承知で・・・・

人間じゃない風貌です!!
男はこちらに気づくと、低く響く声で

「なんのようだ?ガキども。」
あまり白くない濁った目でぎょろりとこちらを見下す。

「Dエリアで天下とりにきましたーーv」
うぉっ、ショウがあたしの背後からあたしがしゃべっているかのようにあたしの手を挙げさせながらアホなこと言いやがった。

「そうか、リンネ大した心がけだな。」
あたしの隣に立つテンはそう言いながら感心している。おいっ、お前わかってて言ってんのか?!
どう見たってショウの悪ふざけなのに、
実はこいつら仲悪いと見せて、コンビ違うか? 特にあたしいじりに関しては、バツグンのコンビネーション発揮してません?

「なんだと?お前みたいなB級小娘がっっ」
あるかないかわからないほどの眉をぴくぴくと吊り上げながら男は怒りを露わにする。

テン以上に気が短い様子、Dエリア人間の特徴かしら
などとのん気に思っている場合じゃない!
男のデカイ拳があたしに向かって降ってきた!?

このサイズこの勢いは、あたし完璧にプレスられてしまいます?!背骨って縦にプレスられたらどーなるんですか? 教えて賢い人!

「い、いいっ」
あたしが悲鳴を上げるより先に声を上げたのは男のほうだった。
ずううん、と周りに土煙が上がるほど激しく巨体の男は崩れ落ちた。
まばたきする間にテンの一撃で男は絶命していた。
倒れたのと同時に刀を収めるテンは

「こんな雑魚にびくびくするな、行くぞ!」
一瞬にして大男を倒したテン、
テンってやっぱそうとう強いのかも!
Aエリアでのハチャメチャぶりは勘弁と思ったけど、Dエリアでは頼りになる味方かもしれない!
そしてあたしたちは禁断のDエリアへと足を踏み入れることになった。日が落ちかけていた。


ショウが携帯通信機を弄っているのを目にし思い出した。

「ちょっとショウそれ!」

「レイトのやつ、十分おきにメッセージ送ってきやがる。ウゼーー」

「そういえば前にAエリアの領主と連絡とれるって言ってたよね?
てことはDエリアの領主とも連絡とれるんでしょ?」

それなら直接聞いておばあちゃんのこと確かめられるんじゃ・・・と期待を抱いたのだが

「それはムリだね。
あ、リンネDエリアのことほとんど知らないんだ?

Dエリアは他のエリアと違って領主館ってのがないんだよ。」

「え、そうなの?じゃー、領主ってどこにいるの?」

「知らなーい。Dエリアの領主の居場所はだれもわからない、特定の場所に留まっているのか、常に移動しているのかそれさえも。
向こうから連絡がくることはあってもこちらからは連絡つかないんだよ。」

なにそれ?すごく不便じゃない?

「理由はよくわかんないけど、たぶんDエリア領主のキン兄があまり通信機器使いこなせてないからってのもあるかもしんない。前にBエリアにいた時使い方教えていたキョウ兄が頭抱えてたくらいだから。」

そんなやつが領主やってて大丈夫なのか・・・

「ごちゃごちゃとバカか、直接会って戦えばいい話だろーが。」
話に割ってはいるテン・・・・えっ?戦うって・・・?

「Dエリア領主に会う手っ取り早い方法は
各ゾーンの最強である奴【キング】の名を持つ奴を倒していけばいい、
Dエリア最強を目指す道こそ奴にたどり着く最短方法だ。」

「なんで倒すの?話せばだれか知っている人が教えてくれたりとか・・・・Dエリアつっても一応は人間なわけだし。」

そんなあたしに呆れたようにショウが
「だから、Dエリアは特殊って言ったでしょ。力ない奴にはDエリアの領主は絶対会ってくれないし。
各ゾーンの連中も絶対に通してくれないんだよ。」

なによ、それつまり、領主に会うまでずっと戦いが続くってこと?!
ぶっ倒さないと進めないなんてそんな・・・バイオレンスロード一択ってこと?

Dエリアの街に入ったあたしたちをギラギラとした痛い視線が襲う。
Bエリア以上に汚れたろくに舗装されてない道に台風が来たわけでもないのにボロボロに崩れかけている家屋に、汚い格好の住民。
とても人の住めるまともな環境じゃない、もう人間じゃない
意識ぶっとびそうな劣悪な環境で、殺気を漲らせる人の形した怪物たち

テンの背に隠れるように歩くあたしに殺気の篭った視線を感じる、怖くて振り向けない。
ありえないと思うほどあたしの想像を超えていた世界にあたしの選択は間違っていたかも、と後悔が押し寄せる。
横目で見ると物騒な物を手にした目のいっちゃった連中がじりじりと近づいてくる。

目が乾きそうなほどまばたきを忘れていたあたしに背後のショウがこそりと

「気をつけなよ。リンネみたいにしょぼい女は捕まれば輪姦されて骨までしゃぶられて奴らのうんこになっちゃうよv」

はい?!なんだそりゃ?!
それにあたしの前にいるテンが

「フン、それより先に食いつかれるぞ。」

えっ?!なんか段々ヤバイ空気が迫ってくるのが肌で感じられた。

「Bエリアからの客人か?」
「わざわざ食われに来た気狂いどもだ。」
「おれあの女食いてぇウヒョヒョヒョがうまそうだ。じゅるり」

かなーりヤバイ視線が、てうまそうとか言われてもちっとも嬉しくありません!!

「フン、消えろ雑魚ども!ここのキングはどいつだ?!とっとと倒してやる!」
ギン!と連中を鋭く睨みつける、そんなテンの眼力に一瞬たじろいだそいつらだったが

「うるせぇ!!倒されるのはそっちだ!うぉぉぉぉぉ!!!」

「いっっっ!!」
狂った野獣どもがあたしたちに襲い掛かる!
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