恋愛テロリスト

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  第一幕 はじまりの街~Bエリア 4  

テンが去ってすぐショウが部屋に戻ってきた、あたしは慌てて部屋の中へと戻る。

「なにしてんの?」
ちょうど窓を閉めているあたしを不思議そうに見ているショウに

「ちょっと外の景色見てみようかなーって、あっ煙!どうしたの?!」
もくもくと昇ってくる(テンの仕業の)爆発の煙にわざとらしく驚いてみせる。

「あー、なんかさ、爆発さわぎがあったみたい。
中庭のー…犬小屋から…あっ見なかった?たぶんそこから見えるとおもうけど

DOGって赤い文字で書いている犬小屋なんだけど」

DOGって書いているのか、なんかイカース♪?

「そこに爆弾が仕掛けられてたらしいってさー」

「えっ、犬小屋ってまさか、わ、わんこが爆発の犠牲に?!」

酷いいくらなんでもそれは酷すぎる…わんこに罪はないだろっ!!

「え、いやあれにわんこはいないけど、あれは単なるオブジェだからさ。」

そうなの? ならいいけど

「でも、ずいぶん落ち着いているのね。よくわからない爆発があったっていうのに。」

ふつーなら大事でしょ?なのにこいつののー天気っぷりは…?

「ああ。別にこのBエリアじゃよくあることじゃん」

えっ、ええっ

やっぱり危険な街なんだわ!Bエリア!!

あのテンといい、このショウといい、このBエリアにいる男共、私には理解不能な生物なのかも…

とショックをうけつつ、あっと、そうだ大事なことをショウに聞こうと思っていたのよ!

「ね、ねぇ
今って何年だっけ?」

「は?」

「だから、鬼歴何年かなーって聞いてるの」

本当に今が1499年なのか、確かめておかないと…
どうかどうかあいつの言っていたことがデタラメでありますようにっ!
そんなあたしの願いをぶち壊すかのように、ショウの答えは

「何年って…今年は1499年でしょ?」

「1499年…やっぱり…」

「なに?いきなり」

「…あたし…二年間の記憶がないみたいなの。

このBエリアで記憶を売ったらしいとか…そんなことってあるの?」

あたしのその言葉にショウは驚く様子も無く淡々と答える

「うん、よくあるよ、というかああいう人形屋で自分を売っている女の子のほとんどは
自分の記憶を売っていることが多いみたいだけど

きっと死ぬより辛い経験して自暴自棄になっちゃったのがほとんどじゃないの?
まあ、なかには自分の意思とは関係無しに、悪い奴に騙されてムリヤリ…ってこもいるみたいだけどv」

なんかすごく怖い情報を聞いてしまったような…

でも、今が1499年なら…もう時を遡ることなんてできないから…
悲しいけど、前向きに、なんとかAエリアに帰る道を探さないと

「えっと、ねぇ、Aエリアの領主と連絡って取れたりするの?」

一応Bエリアの領主だし、たぶん連絡取れるよね?どきどき

「うん、まあ取れるけど…なんで?」

「なんでって…あたしAエリアの人間なの!だからあたしのこと調べてもらいたいんだけど」

「…あのさぁ、君自分の立場わかってる?」

「へ?」

「ボクに買われた身でしょ。だいたい記憶なんてなくていいじゃん。

それにどうやら許可証持ってないみたいだし、どの道もうAエリアには帰れないよ?」

「え。えええ?!」

そんな、というかやっぱりこいつに期待するほうがバカだった!

「そんなことより、いーかげん楽しいことしよっか♪」

へ?楽しいことって?と思った瞬間ショウはあたしに覆いかぶさってきた
そうか、あたしこんな格好させられてるし、こいつの目的はつまりそういうことでって
感心してる場合か!
ふがっっへ、変なとこまさぐられっっ!!

あたしに

「触るな!ボケェ!!!」
身の危険を感じたときの防衛本能?なのか、たまたまなのか
あたしの平手がめちゃめちゃいい音立ててショウの左頬にクリーンヒット

カンカンカン!やりましたイエーイ
じゃなくてやっちゃいました!!ほぐうっ

反対方向にショウがぶっ倒れたのと同時に部屋にレイトがすごい勢いで飛び込んできた。
もちろん手には銃を持ったまま

はがーーーっやっ、やっちゃいました!!!

「ショウ様!!今の音は!?」
ショウの赤くなった頬を見て、レイトは瞬時に察知した
はい、犯人あたししかいません(泣)
事件は迷宮入りにはなりません、無罪を主張してもムリです。だってあたしがやったんだもん

案の定レイトはあたしを凄まじい形相で睨みつけながら
「こ、この女がショウ様のお顔にっっ、おのれ!!」

ひっ
目を閉じる瞬間あたしに銃口を向けるのが見えた。
もうダメだ、と覚悟した時

「待て!レイト!!」

ショウの声

「お前なに勘違いしてんの?一人ボクシングしてただけだよ。」

「え?ショウ様??」

は?なにを言っているのだ?こいつは

「いえ、ショウ様、それはこの女にやられたのでしょう?
こんなこんな野蛮な女
今すぐにでも処分するべき」

や、野蛮って?!ちょっとアンタみたいな連中には言われたくない!

「お前いちいちうるさいよ!

これ以上ボクの遊びの時間邪魔すんなら、すぐにでもカイミの元に返すからな!?」

そのショウの言葉で強気だったレイトの態度は一変した。

「そ、そんなあんまりです、ショウ様、それだけはどうかご勘弁を…

どうか、ショウ様のお傍に…」

なんかすごく弱気に、しかもうっすら涙浮かべてますけど……。
そんな悲痛なレイトにショウは同情の欠片さえ見せない。
早く出て行けとの指示に渋々従うレイトは去り際にあたしにまたあの凄まじい殺気のこもった目で睨みつけていった。
……もうもうなんなのよ、あいつは
はあ、怖かった…殺されるかと思った…。

レイトがドアを閉じ出て行ったのと同時に、ショウは「ハッ」と渇いたため息を吐いた。

「はー、たく、やっと手に入れた人形だっていうのに、また遊びつくす前にあいつに処分されるとこだったよ。
レイトのやつカッとなりやすいとこがあるからなー。
三つ前の娘だったかなー?
ボクがいない間に階段から足を滑らせて頭を打って死んだ、とか言ってたことがあったけど
あれ明らかに頭撃ち抜いてた跡あったしね。」

なんですか、また恐ろしい情報があたしの中に……はがが

「わかったでしょ?今後は気をつけてよね。変に抵抗したり乱暴すれば命の保障はないからね。」

う……、とりあえずショウに助けられたのかな?あたし…
「ボクもすぐに処分されちゃうと困るんだよねー。

だってまだ全然遊んでないし」

きらん、と妖しく光る目であたしを見るショウ、あのレイトとはまた違うその輝きは
だけどもしかしたらレイトのよりもずっとヤバイ目であるような…

あたしはまだまだピンチである身?
こんな時、主人公のピンチにはヒーローが颯爽と現れるものよね
だけどドラマみたいにそんな都合よい展開なんてありえないわけだけど

だけどなぜかあたしの頭にはあの、
自称愛のテロリストとかいう怪しさ全開の男テンの顔が浮かんだ。
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