幕間 協会の面々3
協会からその身を狙われるラキラ
恐ろしい罠に加担してるの、なんとラキラの弟カピカだって?
キラキラ輝くキレイな宝石
気になる言い伝えも気になるホツカだよ
だけどだけどその前に、ピンチピンチやってきたー
カピカの罠にシャニィとフィアがはめられた
ラキラの立場危ういが、どうするどうなるホツカたち
だけどちょいと待ってね、その前にまたまた協会の話に戻るからねー
少し時を遡ろう。
なぜカピカが人型のロボに乗り込んでいたのか、そこに至った経緯の話になる。
ワマヨのスカウトを受け、技師ボルトは彼女とともに西地方の開発技術部へと移動してきた。そこはハイテク機器が揃い、多くの技師たちが最新のロボの制作を行っていた。ロボだけではない。まだ実装されていない開発したばかりのロボに装着するパーツがあった。どれもカラフルな色使いで、なんというか、ボルトの美的感覚からすれば「悪趣味」のカテゴリに入るのだが。いわゆる、乙女チックなデザインのものだった。少女が好みそうな艶やかな赤やピンクの、フリルやリボンといったとてもロボには似つかわしくないモチーフのものが描かれていた。
「うふふ、とーっても愛らしいですの!」
にこにこと自慢げにボルトに説明するのはワマヨだ。つまりこの乙女ちっくなデザインのものはワマヨの趣味なのだろう。同じロボ好き仲間ではあるが、このセンスだけは理解できないと感じるボルトだった。
「ただデザインにこだわっていてるだけではありません。これらのパーツを既存のロボに取り付けることにより、新たな性能が加わり、さらにロボの能力が飛躍するのです」
ワマヨに従者のごとく付き従う派手ないでたちの青年男性は、ここで働くコーディネーターと呼ばれる職種であり彼唯一の役職である。彼の名は【ビセン】と言い、ロボの能力を引き出すためのパーツの組合せを提案している。パーツの組合せにより、よりロボは強化されたり、環境によって操作性を高めることができるのだという。
ロボをパーツにより強化するという話は、ボルトはここに来て初めて聞いた。やはり西地方のここが技術の最先端なのだ。さらに兵士の強化やら、またさらにすごいプロジェクトも進めているらしい。
ついて早々ボルトも開発に携わることになった。ワマヨの強いプッシュもあってのことだ。ボルトが作業に加わり、効率が段違いに上がった。修理工場での腕の速さがここの現場でも活かされ、本人のやる気もあり、予定より早く制作が進んだ。技師十人分ぐらいの活躍はしている。ワマヨの評価はそれ以上だったが。
ワマヨの贔屓もあるが、ビセンはじめ、ここの作業員たちはボルトの才能を認め、彼を称賛した。こういう環境は悪くない。八つ当たりのヤデトにイライラしていた前の職場と比べたらはるかに居心地がよかった。とはいえ、ヤデトとの縁が切れたわけではないのだが。
予定より早くそれは完成した。新型魔動ロボ。従来のものよりサイズは一回り小さい。従来のものが丸いフォルムで二本足で直立してはいるがそれは人型と呼ぶには遠く異形に近い。だが新型は、より人型に近くスリムなフォルムで、ロボというよりもかなり重厚な鎧と例えたほうがいいのだろう。操縦席の作りもまったく異なる。従来は座席に腰掛、レバーやスイッチを触ることによって動作するが、新型は装甲の厚い鎧のようで、乗り込むというより装着すると言っていいくらいだ。両手と両足に操縦レバーを固定し、自らの動きに合わせてロボが動作する仕組みだ。従来ロボよりより滑らかな動きが可能となったが、逆により操縦者を選ぶロボとなってしまった。体型的にもワマヨは小柄すぎて操縦レバーを踏み込むための足の長さが足りないため、操縦できない。テスト操縦にはボルトが行ったが、それでも数歩移動する、両腕の上げ下げの数回程度しかできず、操縦したボルト自身もこれ以上はムリと疲労していた。
「やっぱりレオンじゃなければコレを乗りこなすのはムリですわねー。元々レオン向けに開発していたロボなのですけど」
「レオン?」と訪ね返すボルトにワマヨがキラキラと輝いた瞳で答える。
「レオンはあたくしのお友達ですの。とーっても筋肉がステキな殿方ですのよ。今は東地方で遺跡の調査に行ってまして、不在なのですけど」
とのことだ。どうやらそのレオンとやらは筋肉系の男で、東地方に行っているらしい。おそらく協会の幹部の一人なのだろう。ボルトは面識がないのでどのような人物かはわかりようがないが、これを自在に動かせるらしい筋力は…とんでもないムキムキ野郎なのだろう、と勝手に想像する。
つまり、これのテスト操縦が可能な人物が今ここにはいない。完成したはいいが、そのレオンとやらが戻るまで、これは倉庫に保管されることになるのだろうか、と思われたが、ビセンが「適任な人物に心当たりがあります」と言い、その人物に当たってみると言う。
ビセンが連れてきた人物は、金色の派手な軍服姿の見目麗しい青年だった。が彼の容姿よりも、肩になれたしぐさで腰掛ける艶やかな毛並みの黒猫のほうが気になった。
「まあかわいらしい黒猫ちゃんですの! このこには真っ赤なレースのリボンがお似合いですの!」
「さすがはリトルレディ、見事なオシャレセンスです。ですが、今回のメインはこちらのお方になります」
案の定、ワマヨがキラキラと目を輝かせて歓喜したのは黒猫に対してで、彼女を賛美するビセンのやりとりに、ややあきれながらボルトは例の青年に注目する。「どうも」と軽く会釈をするボルトたちには目もくれず、男はカツカツと靴のかかとを鳴らしながら、新型ロボに近づいた。
「フフン、なかなかおもしろいものを作るのだな、協会も」
褒めてくれているのだろうが、ボルトは男の態度に少しひっかかった。どうもコイツは高飛車なタイプなのだと悟り、「おれっちの苦手なタイプだな」と感じていた。
「大丈夫ですの? 見た感じムッキムキではありませんの」
とやや不安な調子で、青年カピカを見上げたが、見ていろとばかりに自信たっぷりにカピカはロボへと乗り込む。そのまま肩に黒猫を乗せたままだ。「猫ちゃんは危ないから預かりますの」と両手を伸ばすワマヨの申し出もきっぱりと断る。なぜなら「エンジェルと私は常に一緒なのだ、このままいかせてもらう」と猫と一緒に乗り込んだ。その態度にワマヨは頬をふくらませて不機嫌になるが、ボルトに頭をぽんぽんとされて気が落ち着いたのか、怒ってた肩を下ろす。
「あんだけ自信満々なんだからよ、お手並み拝見させてもらおうじゃないっすか」
ビセンから一通り操作の説明を受けて、すぐにカピカはテスト操縦を開始した。生身の体とは違う、ロボを動かす動作に最初はぎこちなさがあったが、何度か動作を繰り返すうちに、一時間も経つころには一通りの操作を覚え、バトル関係の動き方から兵器の操縦まで覚えていた。普段から武術の稽古をつんでいる肉体と、覚えの良い頭のためかカピカの新型ロボへのなじみはいい意味で予想を超えてくれた。
「どうでしょう? リトルレディ。しばらくは彼にこのマシンを使っていただいてみては?」
ワマヨとしてはレオンのために制作したロボだ、できれば彼に乗って欲しいと願っていたのだが、その当の本人はしばらく不在。実戦にて使ってもらい、データ収集もできる。ビセンはカピカにこのまま使用してもらうよう勧めた。カピカもマシンを気に入り、乗り気のようだ。唯一人、ワマヨだけは納得いかない様子で渋っていたが、「そうですわね…」と結局承諾の返事をしたのだ。ボルトも、個人的感情でカピカは苦手に感じたが、新型ロボの動く姿を拝みたい感情のほうが上回った。
「しばらくはあの人に使ってもらってデータをとりますの。それから、強化したい点や修正箇所の補填…、ステキにデコってあのこをもっともっとステキにしてみせますの」
うふふふ、となにやら妄想に浸っているのかうっとりした顔でワマヨがひとり頷いていた。
「(ひとのこと言えねーけど、ワマヨ嬢ちゃんもなかなかのヘンタイだよな。けどたしかに、コイツはまだまだ強化できる。コイツだけじゃねぇ、あのパーツ強化システムは旧式にも応用可能だ。それにアレをこうして、アレが可能になりゃー…すげーことになっちまうんじゃねぇか? ここの環境でならいろいろとやれることも増えたし、おれっちも協会を利用させてもらうぜ)」
にやにやとボルトもひとり怪しくほくそ笑む。
テスト操縦を終えて、カピカは協会西支部を出る。肩のエンジェルを撫でながら怪しい笑みを浮かべ、
「協会もおもしろいものを作ってくれる。くくく、あれはなかなかよいものだったな。気持ちいいくらい目に浮かんでくる。あの男の無様な最期が、何度も何度もリアルに浮かんでくるのだ。
楽しみだよ、本当に…、ラキラをこの手で葬り去る瞬間が待ち遠しくてたまらないのだ」
くくくと肩を震わせながら片手で顔を覆うカピカ、次第にこらえきれなくなり、顔を上げて狂ったように笑い声を上げた。人目もはばからずに、狂人のように笑い続ける主人を黒猫はじっと見つめ続けていた。
ボルトとワマヨが新型ロボを作ってた!
ロボの乗り手、レオンとやらも気になるが
カピカ乗りこなしておっかないよ
さらにさらにロボの強化もあるらしい?
ボルトとワマヨの企みも、不気味おっかないけれど
ラキラに迫る殺意をまずは
なんとかして止めてほしいよ、頼むよホツカ!
さてさて緊迫シーンから再開するよ、しばし待ってくれぃ
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