ヨウムの家へと歩いていくカラスたち三人の背後から、彼らへと怪しげな視線を向けていた者がいた。
桃色の髪を団子に結った年は二十代くらいの女、ペリカンの部下の一人フラミンゴだった。
フラミンゴは木の影から品定めをしていた。カラスが手を引く二人の少女を。
正直気は乗らなかったが、仕方がない、上司からの命令なのだ。上司であるペリカンから子供を連れてくるようにと命じられて、各地で条件に当てはまりそうな子供を捜していたのだが、いまどき子供なんてそうそういやしない。しかもペリカンの条件にはまる子供と言うのは、十歳前後かそれ未満と言う、それこそ難題であった。なんとか二三人集めただけでもよしとしてもらいたい。もう少し集めて来いと無理を言われて探していたフラミンゴ。税金の取立てに、暴動の鎮圧やら、雑用にたまに伝令の任も回されたりして、忙しく飛び回る日々だった。それに拉致してきた子供の世話を女だからと任された時はストレスでますます肌が荒れたものだ。
チョモランマから遠い辺境の地であるここら一体の管轄を任されたペリカンの配下には、サイチョウへの忠誠心も口先だけの荒くれ者が多かった。そんな中わりと任務をこなすフラミンゴはあてにされてか、自然と仕事が増えていく。あてにされるのも困りものだ。まあフラミンゴ自身も、サイチョウへの忠誠心が本当にあるのか怪しいレベルではあった。サイチョウについたのは、いくあてのない翼の者だったからというのが本当のところだ。
ペリカンへの忠誠心と言うのも、同じように怪しかったが、立場上逆らえないので、仕事をこなすしかない。
直にサイチョウに会ったこともない下っ端も下っ端だ。そんな人生も先が見えているようで悲しくなる。
成り上がれるものなら成り上がりたいが……。今はペリカンのご機嫌取りに精神を費やす。
ペリカンの命で子供を捜して、なんという幸運か、ペリカンのお眼鏡にかないそうなそれを見つけられた。
フラミンゴはフクロウへと視線をやる。カラスに手を引かれて「きゃっきゃっ」とはしゃぐフクロウはかなり幼い娘だ。もう一人は、十歳かどうかギリギリ怪しいラインだが、まあなんとか誤魔化せそうだ。ついでだから二人連れて行けばいいかと判断した。そして行動に移る。
足音を消して、背後から忍び寄る。手の届く範囲まできたら、カラスの背中を蹴りつけ、フクロウとカナリアを両手で捕らえ、翼を広げて一気に逃げ去る。
「ぐわっっ! あっ」
突然背中に強い衝撃を受け、地面へとうつぶせるカラス。顔を起こすと、自分の手を離れたフクロウとカナリアが何者かに連れ去られるところだった。背中には桃色の翼。後姿でもすぐにフラミンゴだとカラスはわかった。
「ま、待てーー」
慌てて立ち上がり、追いかけるが、相手は翼の者、空に舞われてしまっては追いかけられない。どんどん遠ざかる二人の姿。カナリアは必死に手を伸ばしながら助けを求めていたようだった。それなのに、なにもできないまま、それを見てるだけしかできなかった歯がゆさに胸が締め付けられた。
声に異変に気づいたスズメとハヤブサがカラスのもとに駆けつけた。二人の姿がないことにカラスに訊ねる。
「二人が攫われた。あいつ、フラミンゴに」
「ええっ、ちょっどういうことなの? なんでフクロウちゃんとカナリアちゃんがあのオバハンに攫われるわけ?」
「わかんないよ、いきなり後ろから襲われて、あっという間に連れ去られたんだ。ごめん、俺のせいだ」
「早く助けに向おう。しかし、どこに向ったんだ? 心当たりはないか?」
混乱している彼らの前にヨウムがやってきた。
「いったいなにがあったんだい?」
「二人が翼の者に攫われたんです」
「ええっ、なんてこったい。会えたばかりというのに」
「フラミンゴってたしかペリカンの部下なんだよね。てことはペリカンのとこかもしれない」
「ペリカンか、いったいどこにいるんだ?」
今までペリカンの名を聞くことはあったが、どこにいるのかはハッキリしていない。
「ペリカンか。私も詳しい居場所はわからないが、ここより北なのはたしかだね。スズメ、早くあのこに、カナリアに会いに行ってあげな」
ヨウムの言葉にこくりとスズメは頷く。そして約束する。
「絶対にカナリアちゃん連れ戻してきますから!」
その言葉にヨウムはなぜか不思議な笑みを見せながら、こう答えた。
「いいや、ここに戻る必要はないよ。あの子にあったその時は、ライチョウ様の元に向うんだよ」
「えっ?」
不思議な顔でヨウムを見上げるスズメをカラスたちが急かした。慌てて彼らの後を追いかけ、ヨウムの前から立ち去った。
「私の役目も終わったね。じゃあそろそろそちらへと向いますよ、ライチョウ様」
独り言をつぶやいて、ヨウムはスズメたちから背を向けて、姿を消した。


カナリアとフクロウを救い出す為、スズメたちは探しに走った。ペリカンはどこにいるのか。フラミンゴがペリカンの部下なら、ペリカンの命令で二人を攫った可能性が高い。なんの目的かはしれないが。翼のあるハヤブサが先に移動し、情報を集める。先日世話になったばかりのチャボ族の村へと立ち寄ったが、有力な情報は得られなかった。また最初にフラミンゴに遭遇した村にも行き、訊ねたが、フラミンゴの姿もなく、フクロウたちの情報も得られなかった。この周辺の集落を探して回ったが、ろくに進展もないままやきもきしていた。


テエンシャンの北東部。周囲には木も立たない殺風景な平原にペリカンの住処があった。フラミンゴに攫われたカナリアとフクロウはそこに連れられてきていた。フクロウたちのほかにも三人の子供がいた。みな攫われてきた子だった。フラミンゴはペリカンの前へと二人を連れて行く。
落ち込んだ顔のカナリアとは対照的にフクロウは、なにもわかっていないのかぽかーんとした表情だった。よくわからないままペリカンの前にと連れて行かれる。
フクロウたちの前にいたのは、面長で丸い目の中年の男。頭は禿げ上がり、てっぺん中央にクリームのようにちょこんと髪がある。また細く整えられた鼻下の長い二本髭が特徴的だった。丸い目をさらに丸くして白目を目立たせているこの男がペリカン。
「ふむ、このこはまた幼いようだな。これならば、…ふむふむ」
なにを思うのか、フクロウたちを見て嬉しそうにペリカンは笑う。
「私の野望へとまた一歩近づいたのだな」
にまりと口端を吊り上げて、満足な顔を見せるペリカンに、フラミンゴははーと肩の力が下がっていく。
そもそもなぜペリカンはフラミンゴに子供達の拉致を命じたのかと言えば、ペリカンの個人的な野望の為だった。
「フラミンゴ、私のしもべとなるあの子たちを連れてくるのだ」
ペリカンに命じられ、それに素直に従うフラミンゴ。奥から、捕らえていた子供三人をペリカンのもとへと連れてくる。
子供達は震えながら泣いていた。突然攫われて、ここに閉じ込められていたのだ。恐怖に泣き喚いてもしかたなかった。そんな子供たちをめんどくさそうな顔で連れて行くフラミンゴ。
「ほら、とっとと行くんだよ。たく、ガキは嫌いなんだよまったく」
苦手な子供の守で、ますますフラミンゴはうんざりしていた。
「えーんえーん、お母さーん」「えっえっえっ、おうち帰りたいよ」
子供達はフクロウよりも大きかったが、まだ親が恋しい年だった。翼の者に攫われてなにをされるかわからない恐怖に脅える。
「ふむ」
子供達の前に立ち、頷くペリカン。泣き続ける子供達をあやすわけでもなく、彼のとった行動は、翼を広げて子供達を見た。
翼に驚き、身震いする子供達、だが次の瞬間、ペリカンが「ふん」と強く力んで、彼の翼がぶぁさっと強く揺れた。その直後、子供達は一瞬にしてぴたりと泣きやみ、脅えていた表情は一変表情の読めない鉄仮面になっていた。その瞳はうつろで、様子はおかしい。にやりと笑うペリカン、子供達は突然ペリカンへとひざまづいて、恭しくペリカンに頭を下げた。
これがペリカンの翼の力だった。催眠能力。術にかかった者を己の意のままに操れる。まさに敵なしともいえるとんでもない翼だった。だが、弱点があったのだ、ペリカンもそれをよくわかっている。この力が効くのは子供だけに限られていた。さらに力を使っている間だけであり、翼の力をやめてしまえばその瞬間に催眠もきれてしまう。ペリカンの野望はこの子供達を使うことにあった。
十五年の歳月をかけ、翼の力によってこの世を治めようとしたサイチョウは、世界中の行く当てのない子供達を拾い、育て上げた。今は立派に翼の戦士として成長して、サイチョウ軍を支える大事な存在になっている。またサイチョウに育ててもらった恩義もあり、強い忠誠心も持ち合わせている。
ペリカンはサイチョウと同じように、子供を集め、忠実なしもべとなるべく育てるつもりなのだ。最初のうちは己の力である催眠力を使って、時機に洗脳していく。そのこはやがて強力な翼へと成長し、ペリカンのしもべとなる。いずれ、サイチョウをおびやかす勢力へと成長しよう。
「私は第二のサイチョウ様になるのだ」
その計画を聞いたときは、フラミンゴは開いた口が顎が外れるかと思ったほど衝撃を受けた。ありえないと。どんだけかけるつもりだと。正直その計画に付き合える自信も気持ちもフラミンゴにはない。あきれるだけだったが、上司の命に逆らえない悲しすぎる己の立場だった。子を攫うのはまだいい、が子守までまかされるのは勘弁してほしかった。
ペリカンへ急に従うようにひざまづいた子供たちを見て、カナリアは異常を察知した。この男ペリカンの怪しげな力によってこの子らは自我をなくしてしまったのだと。身の危険を感じ震えるカナリア、だがフクロウはやっぱり事態を把握していないのか、ぽかーんとのん気な表情でペリカンを見上げていた。
「おじさんのかおおもしろーい♪」
「ええっ」
ペリカンの顔を見てそんな失礼なことを言って笑い出すフクロウに、フラミンゴは焦った。ぴくりとペリカンの片眉がつりあがったが、特に動じはしない。ペリカンはカナリアとフクロウのほうへと向き直る。
「さあ、お前たちも私の忠実なしもべとなるのだよ、ふん!」
ペリカンの翼がぶぁさっと揺れ動いて、不思議な力がフクロウたちを包んだ。

「くっ、どういうことだ? なぜ私の力が?」
フクロウたちに力を使ったペリカン。だが、フクロウもカナリアにも催眠は効いてなかった。ポカーンとした顔のフクロウ。自信満々に力を使ったペリカンはショックに身を震わせていた。瞬間に翼の力が解け、操られていた子供たちも正気に戻り、また泣き出した。
「ええっと、調子が悪かったのでは」
あせあせしながらも、フラミンゴ義務とばかりに上司にフォローをいれる。
「私の翼に調子のイイも悪いもないのだ。なぜ、効かぬのだ? このこらには」
むむむと眉間にしわを寄せて難しい顔になるペリカンを、またフクロウは「おじちゃんおもろーい」といってはしゃぎだす。慌ててフラミンゴが無邪気すぎるフクロウを押さえつける。
「たく、うるさいガキんちょだね。大人しくしてな」
上司の機嫌を伺うが、わなわなと震えていたがペリカンは別にぶちきれているわけではなかった。努めて冷静になろうとしている。
「しかたない、このこらも将来の大事なしもべだからね。フラミンゴ、みんなまとめて連れて行くんだ。あとの世話はまかせたぞ」
「は、はい」
大人しく従うが、口元はプルプル、フラミンゴの表情はひきつっていた。任務とはいえ、こんなふざけた野望につき合わされるのはうんざりだった。
「ほら、ここで寝な。いいか静かにするんだよ」
めんどくさそうな顔でフラミンゴは五人の子供たちを一部屋にまとめて連れて行った。そう一言はいて、扉を閉めて自分は隣の部屋へと向った。
「ううう」
「ええーん」
「ひっくひっく」
ずっと泣いている子供たち、カナリアも悲しげな顔のままだったが、フクロウだけはいつものぽけーな顔をして緊迫感など皆無だった。泣いている子たちを不思議に思い、近づいて話しかける。
「ねぇねぇ、どうして泣いてるの?かなしーの?」
自分よりも幼い子にそう心配されて、少し恥ずかしくもあったが、この感情は我慢できず泣き顔は戻らない子達。ぐすぐすとぐずりながら、なんとか答えた。
「ぼくおうちに帰りたいんだ」
「あたしも、お母さんに会いたいよ」
三人の子はみな同じ気持ちだった。同じ村から連れてこられたのか、みんな別々のところなのかは定かではないが、いきなり見知らぬ、恐ろしいと言い聞かされていた翼の者に攫われて、不安で不安でいっぱいだった。弱くて怖くて、ただ感情のままに泣くしかできない。うちに帰りたい、その気持ちはフクロウもちゃんと理解した。今度はカナリアのほうへと、正面を向いて対話する。
「ねぇねぇ、おうち帰りたいの?」
丸い目で見上げるフクロウ。不安な感情などこの子にはないみたい、自分とは正反対だ。カナリアは不安で不安でしかたないのに。それはペリカンに攫われて監禁されていることだけではなくて、また別の理由もあった。いやその別の理由のほうが強かった。カラスに打ち明けた不安。今でもそれに震えている。逃げたいと思っている。でも、逃げてはいけないという使命感もあるのはたしかだ。

『カナリアよ』
自分の肩を抱いて、ライチョウが語りかけてくれた。
『すまぬな、お前にばかり辛い想いをさせた』
ライチョウの悲しみ、それはカナリアにもよくわかっていた。それだけ強く愛しているのだと。あの人も、ライチョウも、それだけ強い想いを隠して生きているのだ。すべてを知るカナリア。そしてカナリアも、ライチョウと同じ思いだった。できることなら、自分の中に閉じ込めておきたいと思った。
『いいえ、だってそれが私の役目だもの。…その時まで、私一人でこの記憶は守り通すから』
悲しげな笑顔、だけども、強い決意の瞳。カナリアを優しく抱きしめるライチョウ。カナリアはそれを強く感じていたかった。
『それでこそ私の孫だ。カナリアよ、お前もあのこも、私の大事な孫なのだからな』
『はい、それから私たちは……』

「ねぇねぇ」
のぞきこむフクロウに、ハッと我に返る。己の使命を再認識する。
「うん、私も戻らなきゃ。スズメのもとに、戻りたい」
きゅっと悲しみを感じさせる顔の中に、決意を込めた眼差しで、フクロウを見つめてそう答える。
「わかったーー。じゃあフクロウにまかせてーー」
「え?」
なにか考えがあるのか、フクロウはそう自信満々に胸を張った。


フクロウたちを探し続けるスズメたち。各所をまわったが、二人の行方は知れなかった。また立ち寄った村で、翼の者に攫われたらしい子供の存在も知った。被害を受けたのは二人だけではなかったようだ。ペリカンの目的はわからない。フクロウたちを探す中、行方不明となった子の救出も頼まれたスズメたちだが、どこに捕らわれているのか検討もつかないまま時間が過ぎていく。
「どうしてペリカンは子供達を…」
カラスは責任を感じていた。どうか無事でいてほしいと願うばかりだ。途方にくれそうな三人のもとに、ある者が近づいてくる。
「スズメちゃーん」
それは予想してなかった声の主、スズメたちは声のほうへと振り向いた。こちらへと走ってくる小さな姿、それは今まさに自分たちが探しているフクロウだ。
「フクロウちゃん? どうして、いったいどこから」
驚くスズメに、マイペースな表情がいつもと変わらないフクロウ。
「あのねー、フクロウね、おもしろいおじちゃんのとこにいたんだよー」
「ペリカンか?!」
フクロウの言うおじちゃんがペリカンだとみな思った。やはりフクロウはペリカンに連れ去られていたんだ。しかしそばにカナリアの姿は見えない。フクロウだけがちょこーんといる。
「でねー、フクロウのほかに、お家帰りたいって人がいたよー。だからフクロウがスズメちゃんたちよんでくるってー、スズメちゃんたちさがしてたのー」
「探してたって、一人で? でも、よかった無事会えて。そうか、他にも攫われた子がそこにいるってことだよね」
「うん、まだカナリアちゃんも捕まっているんだ。早く向おう」
スズメたちはフクロウの小さな肩をぽんと叩く。
「お願い、フクロウちゃん。そこまで案内して」
「うん、まっかせてーー」
元気よく跳ねながらフクロウが走った。そのあとをスズメたちが追う。
今頼れるのはフクロウだ。この幼い少女にかけている。
フクロウについていくこと、村から離れた場所、周囲になにもない殺風景な平野へとでた。そこにある怪しげな館。フクロウが「あそこー」と指差す。
スズメたちが近づくと、館からフラミンゴが現れた。フクロウを見つけて「あっ」と声を上げる。
「このガキ、いつ逃げ出したんだ? ちゃんと鍵は閉めたはずだったのに」
「えっへへー」
フラミンゴの声になぜか照れたように笑うフクロウ。
「褒めてないんだよ、たくガキはこれだから」
「フラミンゴ、よくもやってくれたな」
ギンとカラスがフラミンゴに向って叫ぶ。背後からいきなり襲われた上、二人を連れ攫ったのだ。
「げ、お前はあの時の生意気なボウズ。ちっ、そんなことはいいんだよ。そのガキはいただくよ」
「ふざけないでよ、この悪党まみれのオバサン! フクロウちゃんは渡さない、それからカナリアちゃんと、攫った子供達返してもらうから覚悟なさいよね」
びっと力強くフラミンゴを指差してスズメが吼える。きぃっとフラミンゴが怒りに震える。
「ふん、バカな奴らだね。わざわざ乗り込んでくるなんて、翼の者相手に、勝てる気でいるのか?」
フラミンゴの背に翼が現れる。スズメたちを威嚇するが、こちらは怯む様子はない。つかつかとハヤブサがスズメの前に歩いてくる。
「翼の者の相手は私がしよう」
ぶぁさっと翼を広げるハヤブサに、フラミンゴも一瞬びくっと驚く。額に汗をにじませ、じりと後退するフラミンゴだったが、館から現れる主の影に気づくと、にやりと不敵な笑みに変わった。
「翼の者か、私が誰か知らずにここに来たのであるか?」
館から現れた特徴的な容姿の中年男、白目の多い丸い目を、くっと開きながらこちらを見る。
「あんたがペリカンね、この諸悪の根源」
「はっはっは、意気のいい嬢ちゃんだ。私がペリカンと知って挑みに来るとは、大した度胸のようだ。それともただの無謀者か? しかし、その子供どうやって逃げ出したのか?」
ぎろりと側のフラミンゴを睨みつけるペリカンに、慌てて首を横に振り己の過失はなかったと訴えるフラミンゴ。
「まあいい、すぐに取り戻せばいいのだから。さあこい我がしもべたち」
ペリカンの合図で館から子供達が現れた。三人の子供と、カナリアがいた。ペリカンはフラミンゴにカナリアを捕らえよと命じる。フラミンゴの手に捕らわれ自由を奪われるカナリア。結局カナリアにはペリカンの力は通じなかった。が、他の子供達は、またペリカンの翼によって己の意思を支配されてしまう。
「あっ、カナリアちゃん! それにあの子達は」
ペリカンは翼を広げ、子供達に力を使う。ぶぁさっと揺れた翼が子供達を襲い、子供達はうつろな目になり足もとにあった木の棒をそれぞれ手に取り握り締める。
「ゆけ、我がしもべたちよ」
ペリカンが命じ、ペリカンの催眠力によって己を支配された子供達の顔が鬼のように変わり、スズメたちへと棒を振り上げ襲い掛かってきた。
「えっえっ、どういうこと?」
「うわーー」
敵意を持ってスズメたちに襲い掛かる三人の子供達。突然のことにスズメたちは戸惑う。
「うわっちょっ、危ないってば」
「この子達、普通じゃない。まさか、ペリカンのしわざなのか」
「ねぇちょっとしっかりして、あたしたちは君たちを助けにきたのよ」
スズメたちの声には耳を貸さず、子供達は奇声を上げながら棒を振り回し襲い掛かる。スズメたちは子供たちの攻撃からひたすら身をかわす。
「なにを言ってもむだだよ。そのこらは私の忠実なしもべなのだから。さあ、その子供を捕らえるのだ」
びっとペリカンはフクロウを指差して、子供達に命じる。
「あのおっさん、なんて卑怯なことを」
「おそらく、あの男の翼で操られているんだ。正気に戻すには、ペリカンを倒すしかない」
子供達の攻撃に耐えながら、ハヤブサが分析する。力を使っている間、ペリカンはずっと広げた翼をわずかに揺らしていた。力はおそらく永続的なものではないだろう。
攻撃をやめない子供の一人をハヤブサが両手で押さえるが、催眠のせいか、思いのほか子供の力が強かった。それでも翼のハヤブサなら押さえられたが、翼のない普通の少女スズメはなすすべなし、しかもフクロウをかばいながら子供の攻撃から逃げまくる。フクロフはフクロウで相変わらず危機感ゼロのぽかーんとした顔のまま、スズメにかばわれている。
カラスはなんとか攻撃目標からそれ、フラミンゴに捕らわれたカナリアへと近づこうとしていた。が、やはり翼のフラミンゴの蹴りに撃沈し、地面に倒れる。
「!お兄ちゃん!!」
カナリアの声にもぴくりとしないカラス、完全に意識を失っているように見えた。「ふふん、ただのボウズが生意気にもフラミンゴ様にかかってくるからだよ、さて」カラスを見下ろして、フラミンゴはカナリアを館の柱に縄でくくりつけた。
「そこで終わるまでおとなしくしとくんだよ」
くるりと広場の中央で子供達から逃げ惑うスズメたちのほうへと向う。
「はぁっ」
子供を捕らえ動きを封じていたハヤブサへとフラミンゴが飛び掛る。ハヤブサはその激に耐えるが、暴れる子供が邪魔して上手く動けなかった。
追いかけてくる鬼のように凶暴な子供二人から必死に逃げるスズメ、ハヤブサ、それにいつのまにか倒れていたカラスに気づくが、助けに行けない。それに相手は子供とはいえメジロくらいある子だ。体格も自分とそんなに変わらないし、正気ではなくリミッターの外れた子供の攻撃はまともに食らえば気を失ってもおかしくない。
何度か棒が肌をかすめて、痛みに顔をしかめる。触れた部分がじんわりと赤く充血する。危機感のないフクロウに逃げるようにと指示するスズメだったが。
「フクロウちゃん、早くあっちまで逃げて」
館の反対方向を指差しながらスズメは指示したが、フクロウは逃げてくれない。しかもくるくるな目を向けて、スズメの予想外の行動を取るのだ。
スズメへと襲い掛かる子供たちの前に突然立つ。今にも棒を振り下ろしてくる子供たちの前にだ。
「ぎゃーーフクロウちゃん」
スズメの悲鳴にも、フクロウは動じない。どころかきょとんとした顔でスズメのまえにたったまま。
「ねぇねぇどうしてそんな顔なの?」
子供達にそう訊ねるフクロウ、当然催眠状態の子供達は答えない、ひたすら奇声を発し続ける。
「むむむ、もうだめだよーー」
唸り叫んだフクロウ、その小さな背中から、ふたつのなにかが現れた。それにスズメは現実世界からぶっとびそうだった。だってそれは、想像してなかった光景だから。
「え、ええっ、フクロウちゃん、翼…」
ぽかーんと目の前の小さな翼の者に驚きのあまり固まってしまったスズメ。異変にその場にいたペリカンも、フラミンゴもハヤブサも気がついた。フクロウの背中に翼が現れたことに。
フクロウは子供達の前で、顔を手でにょいーんと両端にひっぱりながら
「へんがおーー」
にらめっこを始めたのだ。フクロウを前に子供達はその動きが止まった。そしてしばらくして、ぱちぱちとまばたきして、その表情が鬼のような形相から、いつもの顔に戻る。
「へんがおーー」
もう一人の前でも、フクロウがにらめっこをすると、同じようにもとの顔に戻る。さらにハヤブサの前にまで翼で飛んでいって、最後の一人にも「へんがおーー」にらめっこで子供の催眠をといたのだ。
「えっ、ぼくなにを?」
「あっ、きゃああーー」
正気に戻り、翼の者がたくさんいたのに気がつくと子供達は脅えて泣き出した。
「正気に戻ったのか?」
ハヤブサも急に力が抜けていくのを感じた。子供の戦意が完全に消えたのだ。
「く、私の力をとくとは、あの子供、なんという翼だ」
と怒りでわなわな震える。
「ますます私のしもべにふさわしい」
いや、喜びで震えていたのか? がそんなことはどうでもいい。
脅え戸惑う子供達、なんとか落ち着かせねばと思うスズメたちだったが、なにを言っても言うことを聞いてくれない。こうなったらこうなったで、ややこしかった。パニック状態の子供達、どうすればいいのか。
「ねぇねぇみんな、おうち帰りたいんだよね。おいでーー」
ふわふわと空に舞うフクロウ。フクロウの声になぜか子供達は安心を覚えた。泣き声はやみ、「うん」と素直にフクロウのそばへと近寄った。
「フクロウちゃん、すごい。これがフクロウちゃんの翼の力なの…」
不思議な光景を眺めたまま、スズメは立ち尽くす。ハヤブサとフラミンゴも止まったまま、見守っている。
フクロウに大人しくついていく子供達、フクロウ先導の行進だ。ゆっくりと歩きながらも、ペリカンの側から離れていく事実に気づき、ペリカンがフラミンゴに命じる。
「なにをしているのだ。捕まえよ!」
「はっ、あっ、こらっ待ちな」
「そうはさせない」
やっと問題なく自由になったハヤブサがフラミンゴへとかかる。
「お兄ちゃん…」
フラミンゴにやられ、ずっとうつぶせていたはずのカラスは、ゆっくりとゆっくりとはいながらカナリアへと近づいていたのだ。やられたふりして油断させていた。と、今連中はフクロウに釘付けで、こちらのことを忘れているようだが。少し顔を上げて、しぃーとカナリアに合図しながら側まで来ると、すぐに彼女の縄を解く。
「もう、大丈夫だよ、今のうちに逃げよう」
カナリアの手を引こうとするカラス、カナリアはぶんぶんと首を横に振った。
「私逃げない。お願い、連れていって、私をスズメの側に」
いつもの悲しげな顔だが、カラスを見上げた瞳は強く見開かれていた。それ以上言うことも、聞くこともしないでただカラスはカナリアの願いを聞きとげた。手を引いて、スズメのほうへと走る。ハヤブサたちのいる外側を、遠回りだが、館前の広場をぐるりと時計回りに走り、スズメの側へと向う。ちょうどそのころ、ハヤブサがフラミンゴを倒し、ペリカンへと向おうとしていた。
「く、私の翼は催眠だけではないぞ」
ぐわっと丸い目をさらに見開いて、かかってくるハヤブサを威嚇するペリカン。
「私はお前のような卑劣者は嫌いだ。覚悟してもらおう」
翼を広げてハヤブサがペリカンへととびかかる。ハヤブサの攻撃を受け止めるペリカン。さすがにフラミンゴの上司であり、オオハシの部下でもあるペリカンは翼の力も相当レベルだ。ハヤブサの攻撃もあまりこたえてない様子に見えた。
「ハヤブサさん、あたしにも翼があれば…」
戦うことが出来ず、見守るしか出来ないことが歯がゆい。そのスズメのそばに、カラスに引かれてやってきたカナリアがスズメを呼ぶ。
「スズメ」
「カナリアちゃん! よかった無事で」
「うう…」
倒れていたフラミンゴが意識を取り戻す。ハッと気がついたら、ペリカンとハヤブサ二人の翼が戦っていることに気づいた。でもなんか関わらないほうがいい気がしたので、うつぶせたまま、気を失ったふりを通していた。
「にしても、よく見たら、…あたし好みの美少年かも」
戦いを見守りながら、そんなのん気なことを思っていた。艶のない日々を過ごしていた分、余計に燃えてしまうのかもしれない。すでにフラミンゴの目には、ハヤブサにキラキラ効果がもれなくうつって見えていた。
「はぁ、なにかしら、このかんじ。これって、恋?」
ぽっ、とこんなところでフラミンゴが頬染めていることなどだれも気づいていなかった。

「カラス、今のうちにカナリアちゃんを安全なところに」
カナリアをカラスのほうへと軽く押しながらそう言うスズメ。それに反抗するようにカナリアはスズメの目の前につめよる。カナリアの意外に積極的な行動に面食らう。
「私、行かない! だって私が戻る場所は、あなただから」
「え、どういうこと?」
カナリアの言葉が理解できない。とまどうスズメの手を、ぎゅっとカナリアは握り締め、顔を見つめる。
カナリアの目には自分の姿がうつっている当然だが。だが、それが不思議な感じで、そのまま吸い込まれていきそうな、いやその逆のような、不思議な感覚。
パァッと一瞬カナリアの体が光った。カラスはそれを間じかで目撃した。カナリアは光ったと思うと次の瞬間、スズメの中に吸い込まれていくようにしてその姿を消した。なにが起こったのか、とまどった顔のスズメ、でも次の瞬間には、なにがあったのかスズメは理解した。
「なっ、スズメ!」
カラスが最初に目撃した。そして謎の発光に驚いたペリカンに、ハヤブサ。フラミンゴは気づいていたのかは定かではないが。
カナリアが消え、代わりにスズメの背には翼が現れた。
「な、あの小娘にも翼が!?」
ペリカンも動揺する。
「スズメに翼が?」
ハヤブサも驚いた顔を見せる。カラスも驚いたが、なぜか納得している自分に気づく。今なら、あの時カナリアが心配していたのはこのことだったのかと思う。
スズメは強く実感していた。自分の身に起こったこと。
「あたしの中にカナリアはいる。…カナリアちゃんがあたしの翼になったんだ」
胸の奥から、体中が熱くなっていく。強さ、心の中から沸き起こる強さ。スズメの瞳に力が宿る。なににも負けぬという強い気持ちが湧き上がってくる。
まっすぐに顔を上げて、スズメは羽ばたいてペリカンへと突進した。
「ハヤブサさん!!」
「ぐぅっ」
スズメの突進によってペリカンははじけとぶ。ペリカンに最初の攻撃を与えて、スズメはぶわりと地面に着地し、となりのハヤブサへと微笑む。一瞬驚いた顔でスズメを見たハヤブサだが、すぐに笑顔になり、こくりと頷いて答えた。
「ぐぬぅ、小娘が、よくもこの私を。ふん、だが翼を得たばかりの者にこの私は倒せぬ」
ぶわっと翼を揺らして、ペリカンがスズメにかかってくる。スズメはついさっき翼を得たばかりの翼初心者だ、だが翼の力に振り回されることなく動いている。スズメ自身もその事実に少し驚いていた。その力は新たに得たというよりも、本来持っていたもののような気がした。自然となじむ、そこにあって当たり前のようなもの。
感覚も研ぎ澄まされて、ペリカンの動きも目に見えて、かわしている。
「おのれぇっ、ちょこまかと」
ふわふわとスズメに攻撃をかわされまくり、怒りでブチキレるペリカン。視野の狭まっていた彼にハヤブサの連撃が決まる。特別合図するでもなく、スズメとも連携をとる。二人の翼に翻弄されるペリカン。
『ライチョウ様が、待ってる』
スズメはカナリアの声が聞こえた。心の中で響いたそれに、うんと力強く頷く。
ライチョウが待っている。翼を手に入れた今、ライチョウに会う資格があるのだ。早く、会いにいきたい。
「いくよ、ハヤブサさん。早くライチョウ様に会いにいかなくちゃ」
スズメの声にもちろんだとハヤブサが頷く。
「ああ、そのとおりだ。早くペリカンを倒すぞ」
「おおおおのれぇ、私の野望を邪魔した上に、この私をここまでバカにして、ぜっったいに許せぬぞーー」
喉の奥まで見えそうなほど口を広げて、興奮のままにかかってくるペリカンに、ハヤブサとスズメは最後の一撃を与える。
スズメとハヤブサ二人の激が同時にペリカンへと一直線に放たれ、ペリカンは「ぐわーーー」と叫びながら館に激突、壁が破壊されその中に埋まるようにして意識を失った。完全に白目をむいて、泡をふいていた。
「やったな、スズメ」
くるりとスズメへと向き嬉しげな表情を浮かべるハヤブサに、スズメも笑顔で返した。
「うん、ハヤブサさんとのコンビプレーのおかげだね。それから、カナリアちゃんの…」
スズメたちのもとにカラスがかけてくる。
「二人とも大丈夫か? にしてもやったんだな、あのペリカンを。それにスズメは翼を手に入れた。一度に二つもかなったんだな」
「子供達も救い出せたし、これでようやくテエンシャンに向かえるね。あ、ところでフクロウちゃんは?」
戦いの最中、どこにいったのだろうと心配に思ったが。すると「ここだよー」とフクロウの声が聞こえてきた。
道のほうからとことことやってくる。今はいつものフクロウに戻っていたが、たしかにあの時翼があった。
「フクロウちゃん。どこに行ってたの?」
「んっとね、みんなお家に帰ったから、だいじょーぶだよー。フクロウとちゅうまであんないしてたのー」
どうやら子供達を途中まで送っていたらしい。
「それにしても不思議な子だな。君はいったい何者なんだ?」
ハヤブサが訊ねる。がフクロウはまたいつものように「あたしはー、フクロウだよー」と答えになっていない答えで返すのみだ。
「フクロウちゃんも翼があるし、一緒にライチョウ様に会いに行く?」
スズメの誘いにフクロウは首を振る。
「あのね、フクロウはねお花畑に行くんだよー」
「え?おはな…って」
「だからー、ここでお別れだねー。でもスズメちゃんまたあおーねー、ばいばーい」
「あっフクロウちゃん」
不思議な言葉を残して、たったったっとフクロウはテエンシャンとは反対の方向の道へ走って消えてしまった。
出会いも突然なら、別れも突然であっさりだった。でもまたどこかで会えるような気がしていた。なにか縁のようなものを感じていたからだ、それはスズメだけではなく。
「いっちゃったね、フクロウちゃん」
「ああ、あっという間だね。…でもまたどこかで会えるような気がする」
「カラスも? あたしもだよ、なんとなくそんな気がする」
「きっとあの子なら大丈夫そうだな。じゃあそろそろ行こうか」
「テエンシャンへ」
見上げると天高くそびえ立つ高山テエンシャンがそこにある。雲を突き破り、その頂上はここからよく見えない。見上げていたら首の骨が折れそうなほどだ。山はほぼ垂直に立ち、途中に岩が出っ張った箇所では少しだけ休憩はできそうであるが、ほとんど飛んでいかねば登っていけぬだろう。
テエンシャンにいる聖人ライチョウ、彼に会うには翼を持たねばいけない。やっとスズメはその翼を得た。カナリアの力によって。
テエンシャンへと足を向けるスズメたちを背後から呼び止めるものがいた。それはずっとやられたフリをしていたあの者。
「ちょーっと待ちな!」
「フラミンゴ!」
「まだやるつもりなのか? たった一人で」
立ち上がりこちらを睨むのはフラミンゴ、怯むことなくスズメとハヤブサはすぐに戦闘体勢になる。それを見て慌てて手を振るフラミンゴ、それは焦った様子で。
「ちょ違うってば、あたしは味方になってあげようかと思って」
「はぁ〜?」
その態度に不信感を浮かべた顔で眉寄せるスズメ。
「どういうつもりだ」
「そうよ、散々悪事働いていたくせに、信じられないね」
「あ、あたしだってね好きでやってたわけじゃないんだよ。しょーがないだろ、上司の命には逆らえなかったんだよ」
「嫌々やってたようには見えなかったけどね、ね、カラス」
スズメは相当不信感を抱いているようだが、カラスはお人よしなのか、そこまでフラミンゴを責める気配はなかった。
「う、うん。でも、本当に反省しているっていうんならさ…」
「おっ、クロボウズはわかる奴みたいだねー、それに比べてこのガキはほんと心が狭いね」
「なんですってーー」
ムキーーと怒りの湯気を浮かすスズメに、馬鹿にした笑みを浮かべるフラミンゴ。まるで子供のケンカだ。
「まあまあ落ち着けって」
とカラスが仲裁にはいる。がお互いの印象は最悪のままだ。
「上司がこんなことになってさ、行く当てもないし、それに翼の者が一人でも多いほうがいいんじゃないかい?テエンシャンには大勢の翼の者が待ち構えているって聞くしね」
「そうだな、一緒に来てもらおうか」
そう答えたのはハヤブサ。「ええー」とスズメが声を上げる、驚きと非難の声だ。「やったー」とフラミンゴはガッツポーズ。
「今は早くライチョウ様にたどり着くのが目的だ。フラミンゴが改心して力になってくれるというのなら心強い」
「でも、裏切るかもしれないよ。このオバサン、それになにか企んでいる気がするもの」
じとーと睨みつけるスズメ、「ふふん」と妙な鼻息と共にフラミンゴ。
「そんなことないわ。だってわたくしも、ライチョウ様を信じている者ですもの。さあともに向いましょうテエンシャンへ」
キラキラと瞳を輝かせながら、怪しさ全開のフラミンゴ。
「おもいっきり棒読みだし。やっぱり信用できない」
「ふん、別にあんたに信用されなくてもいいんだよ。あたしはハヤブサさまについて行くんだから、ね、ハヤブサ様!!」
キラキラな乙女オーラを向けられて、困惑するハヤブサだった。
わなわなと震え、フラミンゴへと飛び掛るスズメ。むきーともみくちゃになって恥ずかしい争いを始めるスズメとフラミンゴに、カラスとハヤブサは大いに溜息をつかされた。

フクロウとの別れがあったが、フラミンゴという新たな仲間を加えて、スズメたちは聖山テエンシャンへとついに向うことになった。


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