きゅっきゅっ、靴の底を滑らせながら通路を歩くのはペンギン。
彼は「あー、散歩にでもでかけたいなー」と独り呟きながら相棒の姿を探していた。
「ベニヒワー」
呼びかけると、彼の進む前方の曲がり角から伸びてくる影があり、それを見てペンギンは一瞬相棒かと思ったが、すぐにそうでないと判断し息を飲んだ。
「おーい、だれ? そこにいるのは…」
陽気で気の抜けてそうな印象を持たれるペンギンだが、相方のベニヒワを察知する能力は低くない。
それに、妙な胸騒ぎを感じる。そのため、今伸びている影に気を漲らせる。
「あたしはーフクロウってゆーんだよ」
ペンギンの緊張をぶち壊しそうな空気で現れたのは、ペンギンが予想していなかった相手だった。見たこともない小さな女の子。ここケツァール城ではペンギンは一番小柄なのだが、その自分よりも小柄な相手。まったく邪気を放たないのほほんとした不思議な子供。
「ガン! だれだお前はっ」
びくんと大げさに驚いて後方に体をのけぞらせて、ペンギンは再び問いかけた。
「だーかーらー、フクロウっていってるでしょ。ちゃんとおぼえてくれなきゃだめだよー」
フクロウだと名乗られても知らない相手は知らないのだから、困ってしまう。ペンギンとフクロウ、ここで二人ののほほんなコントが繰り広げられるのかといえばそんなことはなく、すぐに別のキャストが現れる。
「おい、なに勝手に動いてるんだ」
荒い口調のその声にペンギンは聞き覚えがあった。その声の主はのん気なフクロウへとそう怒りながら、彼女の前に立ち、対峙するペンギンを睨む。ぐっと拳を握り締めて、身を低くしてペンギンを威嚇するのは
「あっ、あんたはタカさん!」
「下がってろ、ちっ」
あんまりわかっていない様子のフクロウをそのままに、タカは素早く通路を駆け、翼を広げペンギンを殴りつける。
「うわぁっ」
ここにいるはずのない相手の登場にひるみ、不意打ちでペンギンは石造りの通路をすべるようにしりもちをつかされる。
「おばけだ! 心霊現象だよ、変な女の子も見えるし」
とペンギンが慌てふためきながら、タカとフクロウを指差しそう言う。
一撃与えたはずなのにぴんぴんしているペンギンに、「ちっ」と舌打って、タカがもう一度攻撃の構えに入ると、彼に待ったをかけたのは、彼の後方より現れたワシ。ワシに続いてスズメたちも現れる。
まったく戦いにきたわけじゃないのに、フクロウとタカの自分勝手な行動のせいで悶着はさけられなくなりそうだった。
「ワシさん!? あー、やっぱりタカさんも裏切ったんだぁ。よってたかってかよわいボクをいじめるつもり?」
手足をじたばたさせて、ペンギンが大げさにギャーギャーわめいた。その行動に顔をゆがめて力ずくで沈めてやろうかとタカが動こうとすると、ワシが片手でそれを止め、ペンギンのほうへと近寄る。
「そうじゃないペンギン。私は君を傷つけにきたのではない。落ち着いて私の話を聞いてくれ。いつか君とちゃんと話そうと思っていたのだ」
腰を起こしたペンギンは、近寄ってくるワシから目をそらすことなく、むっと口をへの字にし警戒の顔を見せる。
「なんだよ? ボクはあんたらとは話すことなんてないね!」
生意気な口調で言い放ち、腕組みをしてぷいっと露骨にそっぽを向く。
「ペンギン、お前も私たちと同じにサイチョウ様に拾われ育てられた。実の子のようにな」
「それがなんだっていうのさ!?」
弾かれたように顔を上げ、口調を荒げるペンギンには動揺に近い苛立ちがあった。ワシはさらにペンギンに近寄り肩を抱く。身を縮め、視線を同じ高さにしてなおも告げる。
「つまり私たちは兄弟のようなもの。家族同然に育ったお前たちとは戦いたくない」
強い目で見つめられ、押されるようにペンギンは「うっ」と呻いてよろけそうになる。がすぐに表情をギンと強めて、翼を広げてワシの腕から逃れる。
「うるさい!遅いんだよ! あんたら裏切ったくせにぃ!」
能天気な少年の普段は見られない怒りに溢れる態度。翼を広げているということは、強い敵意があるということ。ペンギンは一対複数という不利な状況だが、実際はそんなことはないだろう。ここはケツァールの城の中。裏切りの身であるワシたちのほうが不利なはずだ。すぐにでも味方は現れるだろうことは予測していた。だからペンギンの態度にも余裕があった。
「ペンギン!?どうした」
「ベニヒワ!」
ペンギンのもとにすぐに駆けつけたのは彼の相棒のベニヒワ。登場時から敵意を露わにした表情のベニヒワもまた翼を広げ戦闘態勢にある。ベニヒワは瞬時に彼らが敵だと認識する。
「あんたらにはここで消えてもらう!もう時間がないからね」
「ちょっちょっと待ってくれよ」
なんとか話し合いで回避できないかとカラスは思うが、ベニヒワたちの敵意は簡単に払えそうにない空気だ。
「あんたらはライチョウが正義だと信じているんだろ?かわいそうな連中だ。ライチョウがなにをしてくれる?
もう時間は残されていないというのに。だからこそサイチョウ様についていくのが正しい道なんだ。より強力な翼を集めて鳥神を倒さないと、我々は確実に滅んでしまう!」
「その気持ちはあたしたちも同じだよ!でもサイチョウのやり方は賛成できないよ!」
ベニヒワたちの前に立ちそう主張する少女に、ベニヒワは覚えがあった。あの時、ハヤブサとともにいた翼の少女だ。名をスズメという。
ぴくりと眉を動かした後、ベニヒワは攻撃の構えをいったん解いた。が、敵意は解けてはいない。張り詰めた空気はいまだそこにあるものだ。
「翼の者たちに苦しめられている人はたくさんいるんだよ。あたしの大切な人たちだってそうだった。いくら時間が無いからって、力ずくで世界を支配していって本当に世界を救えるっていうの? 時間がない大変な事態だからこそ、この世界の皆が力をあわせれば乗り越えられるはずだよ!」
スズメの中にあるのは、クジャクやヒバリたち日鳥国の人々、彼女の導きでもある聖人ライチョウ、旅先で出会った親切な人たちの優しさや、志をともにするハヤブサたち、また敵だったフラミンゴたちとも分かり合えた。スズメは信じる、人の善なる心を力を。そう思うからこそベニヒワたちにも熱く語りかける。分かり合える気がする。が熱っぽいスズメの瞳に反して、ベニヒワの目は冷たくむく。
「何も知らないのな。世間知らずなお嬢ちゃん。力などだれが貸してくれる?……あの時、だれも救ってなどくれなかった。戦で一人ぼっちになった私に手を差し伸べてくれたのはサイチョウ様だけだった」
ベニヒワの冷たい目は、昔を思い起こし語る。彼女の言葉からは、冷たい世間という現実が語られる。
「戦は多くの者が傷つき悲しむのに、人は戦をやめない。…わからぬ奴らはみんな消してしまえばいい。奴らは鳥神に立ち向かう勇気すら持たぬ愚か者なのだから。
翼を持つ選ばれた我々だけが、鳥神を倒し、真の平和を手に入れる」
ギンとまた鋭い敵意漲る眼差しに変わり、ベニヒワが戦闘の態勢へと構えを取る。ペンギンもベニヒワの考えに同意なのだろう、同じく敵意を向けた眼差しで両手を広げる。
ぎちぃっと歯噛みしてスズメは悔しい顔を見せながらも、こちらも強い眼差しで叫ぶ。
「そんな考え間違ってるよ! もーわからずや! 力ずくでもサイチョウのとこに行くからね!」
「私たちの夢を邪魔する者は死んでもらう!」
ベニヒワの翼が弾く激がスズメを襲う。体をくの字にさせて、両の手を盾にするようにしてスズメはそれを受ける。スズメの皮膚にいくつもの線が描かれ、赤いものを浮かばせる。
「スズメ」
ツバメがスズメを心配してかけよる。「大丈夫だよ」とスズメは元気に答えた。私も一緒よ。とツバメが横に立ちスズメを勇気づける。その横でフクロウが「こらっ、だめだよぉっ。スズメちゃんいじめちゃ」と両手をブンブン振りながらベニヒワたちに向け怒っていた。
「そうだな。邪魔をするなら私たちだって戦うしかない」
ハヤブサもスズメの横にたち、構える。
「はい、こちらだってハンパな想いじゃありませんから」
とミサゴも。ふいとワシのほうを見やる。ワシは静かに目を伏せて、「仕方ないのか」とつぶやいてそれを眺める。
「ワシさん、あんたケツァール様に背いといてよくのこのこ戻ってこれたぺん」
「ワシ、あんたはケツァール様の元に連れて行くよ。ケツァール様の手で裁かれるといい」
ビシッとワシを指差してペンギンたちが挑発するが、ワシは表情を崩すことなくそれを聞いている。そんなワシの前に彼の盾として勇ましく立つのはタカ。翼を広げたままの戦闘態勢で鋭く敵を睨みつける。
「ワシ兄はオレが守る!」
「タカ兄…」
「…皆熱くなって、やっぱり一波乱さけられないのか」
当初の予定と狂ってしまったが、なるようにしかないのかとカラスが溜息をつく。フラミンゴは皆と違う表情でいそいそとハヤブサの側まで歩き、ハヤブサの腕を掴むと
「さて、あいつらはあのガキ共にまかせて、あたしとハヤブサ様はバードストーンを探しにいきましょうv」
と嬉々としてひっぱっていく。
「え、ちょっとフラミンゴ?」
戸惑うハヤブサに、フラミンゴの奇行に気づいたスズメが「こらーー」と怒りの声を上げる。
「そうはさせないわよ」
石造りの床の上に伸びてくる三つの影がフラミンゴの行く手を早速遮った。
「ああっ、あんたらはっ!」
あん?とそちらを見やったフラミンゴはすぐに顔を変え驚きの声と表情をする。フラミンゴにとってはスズメに負けず劣らず気にいらない生意気な小娘たち。
「あん時のテエンシャンにいたムカツククソガキ共!」
感情的になりやすいフラミンゴは口の悪さもそれに比例する。彼女の行く手を遮る小娘たちは、フラミンゴも戦った記憶に新しい、ウミウ、カワウ、ヒメウのよく似た顔立ちの三人姉妹。三人とも鋭い表情で現れた。フラミンゴに負けぬテンションで「クソガキとはなによ?!オバハン!」とむきーとキレながらウミウが強気に言い返す。それに当然のようにかっちーんと頭にくるフラミンゴ。
「オ、オバ…!? まだぴちぴちの24歳だよ!」
「サイチョウ様に逆らうものは許さない!」
ウミウの号令によってさらに援軍が現れる。彼女たちの背後にぴたりと寄り添うように現れたのは、姉妹とよく似た出で立ちの三人の少年たち。もちろんウ姉妹の弟であるアイサたちだ。
「アイサたち!いくわよ!!」
「「「はい!」」」
同じ顔した三人の少年の同じ声色が重なる。一瞬たじっとなるフラミンゴだが、すぐにふふんと偉ぶった態度になり、ハヤブサの腕をきゅっと掴んで宣言する。
「調子に乗るんじゃないよ、クソガキども。ふん、あんたらなんてね、このハヤブサ様の敵じゃないわよ!」
ね、ハヤブサ様!というフラミンゴのテンションに相変わらず戸惑うハヤブサは苦笑う。
「あのこらかなり強かったけど…」
ウ姉妹の強さはハヤブサもフラミンゴも体験済みのはずなのだが。翼の力を共有する合体した翼に苦戦したわけだが、彼女たちの合体の力が完璧であったなら、負けていただろう。合体技が敗れて退散してくれたのも救いだった。
「で、でもほらハヤブサ様なら、あの時よりもさらに強くなっているはずだわ」
とフラミンゴが妄想半分な言葉を言うと
「あら、それはこっちもそうよ。私たちがあの時と同じ強さのままだと思っているのならお笑いね」
腰に手を当てながら、いししと見下す態度で笑うウミウ。ウミウだけではなく、姉妹や弟たちからも、自信を感じる態度。つまりそういうことだ。ウミウたちもあの時のままの強さではない。
「それはあたしたちもだよ。テエンシャンを目指していたあのころと状況が違うもの。味方の翼もこんなに増えたんだし、それに…」
スズメがハヤブサへとにこりと強気に笑んでみせる。ハヤブサも「ああそうだ」と気づいて頷き勇気づく。あの時との大きな違い。味方の数もあるが、スズメの光の翼の力だ。
ライチョウにも会った、新たな使命を受けた。それも大きな違いだ。
「なによ、生意気なんだからー」
ぐううーとウミウが唸る。
「うぉぉぉーーーい、こるぁぁぁぁああーーーー」
振動で上下しながら響いてくる男の声。どたどたと足音が数種類。慌しく現れたのは新たな敵。ぜいぜいと息を荒げながら、にいっと口端を吊り上げるつり目の男。複数の若い翼の者を引き連れて現れたその男はスズメたちは初めて目にする相手だったが、ワシたちここケツァール城にいたものにとっては馴染みの顔だ。特にタカにとっては特別でもある相手だがそれはまたここでは語られない話なのだが。
「ち、ほんとにうるさいやつだ。敵よりうるさいなんて…」
「…ほんと少しは落ち着くぺん。カッコウ」
あきれた顔で味方にあきれるベニヒワとペンギン。
「おいお前ら! ワシだけは俺の獲物だからな! 手ぇー出すんじゃねーぞ、いいなっ!」
ビッと標的を憎々しげに指差してカッコウが主張する。カッコウがワシに向ける超個人的な感情については、ベニヒワとペンギンは多いにあきれるほど知っている。カッコウは死ぬほどこの男ワシが嫌いなのである。ギリギリと気持ち悪いほどの敵意を向けるカッコウに反して、ワシは興味ない様子で態度を崩さない。それがますますカッコウをむかつかせるのだ。大好きなオオルリが想いを寄せる相手、それがワシ。カッコウがワシを嫌いな理由は単純明快その一つなのだ。八つ当たりといっても間違いないかもしれない。
「いくぞ、ワシィ! ぎったんぎったんにしてやんぜ!」
「ワシ兄には指一本触れさせねぇ!」
しゅばっとカッコウの標的を遮るように、カッコウの視界を占拠したのはタカ。鋭く睨みを放ち立ちはだかるタカを鼻で笑い、カッコウは本音をつきつける。
「タカ、おめーじゃ相手になんねーんだよ。どけっ!」
カッコウにとってタカなど眼中にないほどの立場だ。カッコウにとっての興味の対象は大好きなオオルリと、最大の敵ワシだけで、それ以外の相手などどうでもいい。憎い相手の弟だろうと興味の対象外だ。めんどくさいから相手にしたくない。それにタカ自身も自覚があるだろう、自分がカッコウよりも格下であるという自覚が。お前は雑魚だ相手にならないと伝えたところで、タカは引き下がりはしなかった。
「いやだ!」
「ちっ、めんどくせーがこうなったらお前ごとやってやんぜ」
「タカ…」
背後から自分を呼ぶ兄の声に、振り返らずにタカは答える。
「オレはワシ兄を守る。こいつは、オレが倒すんだ」
「わかった。タカ、私はお前を信じている」
ワシはそこから動かずに、弟にそう告げた。タカは振り向かなかったが、それに小さく頷いた。
「いくぜっ」
カッコウが翼を広げ攻撃に移ろうとしたそれを遮ったのは、カッコウにとってもっとも重要な存在である相手の声。
「待ちなさい!!」
カッコウの連れの翼の少年達を一気に引かせるオーラを放つその声の主は、その翼の少年達をギンと睨み、さらに萎縮させる。つかつかと靴音を響かせてカッコウたちのほうへと歩いてきて、怒りを露わにした表情で戦闘の空気を停止させる。長い青色の髪をかきあげながら、カッコウへと怒りの抗議をする。
「カッコウ、あんたなにやってんの?」
「オッ、オオルリ。だってほらこいつらさ」
「あたしの許可なしに勝手なこと決めてんじゃないわよ!」
「だってだってこいつら裏切り者じゃんー」
オオルリの前ではあんなに強気に牙を向けていたカッコウが一変し、びぇーとわざとらしく泣き散らかしてわめいた。端から見ると恥ずかしい男だ。敵であるカッコウの情けない姿にタカも戦気をそがれそうになる。
あきれるのは、カッコウが率いてきた少年達もだが、スズメたちも「うわーー」となんともいえないあきれ声をもらしていた。
「あんたは下がってて、邪魔なのよ!バカッ」
オオルリの言葉はカッコウにとって最強の兵器だ。バカと言われて目には見えない鋭いものにぐさーと心を串刺しにされた。真っ青な顔になってがっくりとうなだれるカッコウ、をあっさりとスルーしてオオルリは態度を豹変し、きゃぴっとした女の子の表情を作って彼女が気になる相手へと近づく。
「ワシ様!お久しぶりですv」
きゃんとわざとらしい声色でスキップしながらワシへと話しかける。
「オオルリ」
「ワシ様がいなくなったと聞いてあたし本当に寂しかったんですよ。心が千切れそうで、毎晩毎晩瞼が腫れない日はなかったほど…」
しゅんと頭を傾けて、悲しげに鼻を啜る音をさせるオオルリ。「わざとらしい」とベニヒワは心の中でつぶやいた。ベニヒワが思うようにこれもまたオオルリの演技なのだろうが…。がそれにワシが心を揺さぶられることはなかった。また他のものも、先ほどのカッコウへの態度の違いといい、オオルリに同情できるものはいないようだ。
オオルリは大げさなほど感情を込めてまたセリフを吐く。はっと息を吸い込む音をさせて、胸に手を当て、びゃっと勢いよく顔を起こす。訴えるような眼差しと眉をつくって、ワシに訴える。
「ワシ様がサイチョウ様を裏切ったなんてウソですよね? ワシ様は私よりサイチョウ様を尊敬されてたもの、そうよ、裏切るなんてゼッタイにありえないことなんだわ」
ぶんぶんと一人激しく首を横に振るオオルリ。ワシの返事を待ちもせず、彼女は一人問い、一人結論を出す。
「そうよ!」
ギンと見開いたキツイ目線は、ワシではなく、ハヤブサへと向けられる。強い敵意を感じ、負けじと強い眼差しでハヤブサはそれを受ける。
「ライチョウなんか信じたバカな妹のせいなのよ!!」
ギリギリと睨んでくるオオルリの前にハヤブサが立つ。
「ワシ兄、私が相手をします。だから…」
弟に続き妹もまた背を向けたままワシを庇うように立っている。タカに対して信じるといった同じ気持ちをハヤブサにも感じていたワシはそれを伝える。その時、ふいに視界に映ったなにかにワシは意識を奪われた。一瞬のことだったが、それがワシの目的でもあったこともあり、ワシはそちらへ向おうする。
「ハヤブサ、すまないここはまかせた」
そう告げてオオルリから背を向けて走り去るワシに、オオルリが「ワシ様ぁ!?」と叫んでも彼は振り返りもせずとまりもせず彼女たちの前から姿を消した。ワシの態度に加え、生意気にも自分の相手をすると言い放った気に食わない相手ハヤブサに、オオルリの怒りは暴れる寸前だ。
「待ってワシ様どこいくつもり?」
追いかけようとするオオルリの行く手を阻んで、ハヤブサが「私が相手といっただろう」
強気に、脅えることなく自分の前に立つなんて、なんて愚かなのかしら、と。オオルリは感情をリセットするように立ち止まり軽く目を伏せた。「ふ、わかったわよ」落ち着いたのかと見せかけて、次には高飛車に笑いながら、くわっと見開く瞳。長い髪をなぞるように手の甲で浮かせて、オオルリは瑠璃色の翼を広げた。
「あんたを倒してワシ様を手に入れる!覚悟はよくって?」
「私は…負けない!」
オオルリに負けない気迫でハヤブサは目の前の敵にかかっていく。


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