島魂粉砕

モドル | ススム | モクジ

  第十五話 豹変エロモード  

「おい、どうかしてんだろ? お前」

焦るキョウジとは対照的に、キョウジに馬乗りになるショーツ一枚でほぼ全裸なシズクは、「ふふっ」と不気味に余裕の笑みのままだ。
はたから見たら、ムチムチボディのシズクに襲われるキョウジという、たぶんメバルあたりが見たら「兄ちゃんそこ代われ!」と言われそうな、羨ましい構図だろう。
通常ならそう思うが、今はそうじゃない、異常だ。

裸になることさえ抵抗のあった処女のシズクが、ここまでためらいなく裸になれるわけないし、それ以上にこんな風にキョウジを挑発などできるはずがない。

混乱しそうな頭ながら、なんとかキョウジは目の前のシズクが何者なのか探ろうとする。

「そんな顔したって、ココはわたしの体のことしか考えてないよね」

ふふっと怪しげに笑いながら、シズクの手がキョウジの男の象徴であるソレを浴衣越しにきゅっと掴んできた。

「ちょっっ、バカやめろって」
「くすっ、焦ってる。キョウジってばどうていっぽーい」

笑いながら、シズクは浴衣越しに掴んだキョウジのモノを擦ったり抓んだりして玩ぶ。キョウジの反応を楽しむように、生き物をおもちゃのようにして玩ぶ仔猫のように、無邪気な顔して翻弄する。
やめさせなければと思う反面、このままエロイ行為に没頭しても、と欲望に飲み込まれそうにもなる。無抵抗でいれば、エロイシズクに体をいじられ続けられ、イヤでも反応してしまう。
そんな弱い内面をエロイシズクは敏感に嗅ぎ取るみたいで、余裕たっぷりの怪しげな笑みをたたえたまま、キョウジの股間にぷるんとした乳房を押し付けてきた。

あのムチムチの胸でしごいて思い切り吐き出してやろうか、とかつい変態心がムクムクしそうだ。
あんなに聞こえていた虫の声がすっかり遠ざかっていた。呼吸音や体内を巡る体液の音が酷く聞こえてくるようで、リラックスとは程遠い世界へといる。

これって妄想の世界なんじゃね?
婚姻したとはいえ、シズクは自分に体を許しはしない。
想ってくれても、それは男女の情愛にはならない。それは別に生まれや環境のせいだけじゃない。あきらめて、そうならないようにしてきただけ。
人並に性欲はあると思っているし、学生時代に女の子と付き合ったことがあるし、誘われるままにエロイことをしたこともある。
だけど、シズク相手にはそういう行動にはでなかった。シズクの親が過保護という面をのぞいても、昔から婚姻の話はあがったが、その気になれなかった。
物心ついたときからシズクは特別な存在だと意識するようになったが、対してシズクはそうじゃなかったから、決して悟られてはいけないものだと思い込み、ただの幼馴染でいるように心がけた。
それでも、欲望を押し込めるにも限界があり、妄想の中で発散させた。妄想の中のシズクは従順で、恥じらいながらも欲望に応じてくれる。ただひたすらに、自分だけを想い求めてくれる。
ありもしないファンタジーなだけに、妄想だと割り切らなければ、情けなくなってくるが。

そうありえない、これはありえないことなんだ。
と己に言い聞かせるが。

「我慢は体によくないよ、キョウジ」
と言って、エロイシズクはキョウジに跨り、エロイ行為を促すように、自身の股をキョウジの浴衣の上でもわかるくらい膨らんだそこに押し付けてくる。「ねぇねぇ」とゆっくりと動かす腰が、ふっくらとしたお腹周りの肉の動きが艶めかしくて、これ以上耐えるのは拷問に等しい。

頭の奥でバチンとなにかが弾ける。快楽の波を押しとどめようとする何か。それは最初から感じていたものだ、ただならぬ違和感、それに不快感。

「やめろって」

目の前でいやらしく揺れる乳房を掴んでシズクのエロ行為をとめようとした。胸をつかまれて、シズクは「きゃっ」と痛みにしかめるような顔をして、ビクンと動きを止めた。だらんと力なく、頭を垂れる。
自分の上からどかせようと、キョウジがシズクの腕を掴んだ。とろんとした表情のまま、シズクがぽつりと声を出す。
「キョウジ…? ……え、…ひゃあああーーいやぁああーー!」

バチコーンと熱くて痛い衝撃がキョウジを襲った。鼓膜が破けそうなシズクの悲鳴とともに。

「いでぇっ」
ばふん、と布団の上にぶっ倒れる。シズクから張り手の不意打ちをくらってのせい。一体なんなんだ、というのはシズクも同様だった。上半身というかパンツ一枚でほとんど裸の状態で、密着状態でキョウジに跨っていた現状に驚き、ショックを受けていた。しばし呆然としていたが。

「どうしたの、今の悲鳴シズク姉ちゃん?! うひゃほー、シズク姉ちゃんの生チチーー!!むっふぅ」
悲鳴でなにごとかとメバルが駆けつけた。したら裸のシズクがいるしでひゃっほーと深夜にテンションマックスだ。
慌ててシズクは脱ぎ捨ててあった浴衣を体の前面に押し当てて、体を隠して蹲る。

「どうした? なにごとだ今の音は」
と、さすがに下まで響いたのだろう、メバルに続いてアラシもキョウジの部屋へと駆けつける。

「あ、あの…」
涙目でまだ混乱状態のシズクは、現状をどう説明していいのかわからず、キョウジがとっさに「虫がいて驚いただけだよ」と適当な言い訳をしたが、アラシはそうかとは納得しなかった。儀式の間にいるはずの二人が、なぜキョウジの自室で事に及んでいたのかと。さすがに誤魔化すわけにはいかず、説明しなければならないだろう。

「あそこの部屋広いからさ、なんか落ち着かないっていうか。それで…」
と言い訳をしたが、キョウジの嘘はアラシには見破られていた。が、特別咎められはしなかったが「儀式は儀式の間で行うしきたりだ。例外なんてないぞ。ちゃんと守れ」と注意された。
怪しまれたが、それ以上追求されなかったので、とりあえずキョウジはほっとする。
「ほら、お前も部屋に戻れ」
とアラシはメバルを連れてキョウジの部屋を出た。

再び二人きりになって、しばし沈黙が流れる。シズクは思い出したようにいそいそと、体を隠しながら浴衣を羽織った。さきほどの恥じらいゼロの状態とはうって変わって、通常の…いつものキョウジの知るシズクになっていた。

最初に口を開いたのはシズクだった。気まずく、言い訳がましい物言いで
「あの…わたし、なんでこんなことになったか、よくわかんなくて…」
謝ればいいのか、どうすればいいのか、まだ混乱気味で、恥ずかしくて、キョウジから目線をそらしたままシズクはそう言う。

よくわかんないのは、むしろこっちのほうなんだが、と心でぼやきつつ、シズクの背中が酷く落ち込んでいるのはよくわかる。シズクがおかしくなった一端は、自分のせいであるのかもしれない。

「わかったから、あんま気にすんなよ。僕も言い過ぎた。ムリしろなんて言わないから。
とりあえず間に戻って寝ろよ」

「…うん、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

終始背中を向けたまま返事して、シズクはキョウジの部屋を出て行った。
シズクのことだから、気にするなと言っても気にしてないわけないだろうな、と少し不安に思いつつ、先ほどのことは夢だったんだと思ったほうが互いの為だと思った。
にしても、シズクの変わりっぷりは気が触れたレベルではないように思う。あれは明らかにシズクの姿を借りた別人にしか思えなかった。
まあいいや、と思って眠りについた。しかし、あのエロイシズクが再び現れることになるとは、この時は思いもしなかった。


翌日、キョウジは改めて父アラシから昨夜のことの注意を受けた。
呪術師の儀式に関して、夫婦の儀も重要な儀式になる。術を施した間の中で行わなくてはならない。言い伝えの域を出ないが、術を施していない場所で事に及んだ場合、母体に邪気が入ると言われている。もちろんこれは対禍の能力を重視する呪術師に限られたことで、一般的な考えではないが。そうした古い言い伝えを伝え信じてきて、今日の四家がある。キョウジはそれを丸々信じているわけではないが、先祖代々守り続けてきた掟の一つだ、自分だけが例外とはいかないだろう。そこはきちっとしないといけないと思う。迷信めいたことでも、将来生まれるかもしれない我が子のことを考えると、少しでもいい環境でと思うものだ。
ただ、あの神秘的な空間は、セックスに適した環境と言えるかどうかは微妙である。シズクの体のエロさがそれすら帳消しにはしてくれるのだが。

「(でも当分無理だな…)」
いつでも夫婦の儀はできる。だが、当分はムリだろうとキョウジは思う。昨日のことがあって、シズクは自分を避けるだろうなという気配がある。シズクの性格からして、何事もなかったように平気で顔見せられるほど無神経じゃない。いくら気心が知れた幼馴染でも、ムリだろう。まあこちらが気を使って避けてあげたほうがいいだろうな、くらいに思う。

「おはようございます」
朝食の席にシズクが現れたが、案の定気にしている風で、遅めに姿を見せた。すでにメバルが登校したあとだ。ミルクを注ぐミヨシにはいつもどおりに挨拶をしていたが、キョウジのほうは意図的に見ないようにしているようだった。こちらも気を使って目線をそらす。ちょうど今日はバイトがあるし、シズクと過ごす時間も少なめだ。互いに気を使わなくていいだろう。ただ、またシズクが気にして思いつめなければいいのだが…。

玄関で靴を履いていると、慌てたようにシズクが駆けて来た。
「あの、キョウジ、昨日のことは忘れて、わたし…どうかしてた。ごめんなさい…」
と言う事は、シズクは昨日の行動に自覚があったということなのだろうか。怪訝に思う部分もあるが、泣き出しそうなシズクに「いいよ、こっちこそごめんな。だからもう気にすんなよ」と言って俯くシズクの頭をくしゃっと撫でた。

なんで逆レイプしようとしたほうが泣きそうになってんだよ。とどうでもいいツッコミを心でしつつ、キョウジはバイトに向った。
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