見よ!キチガイどもの夢の跡

第二話 弾けろボンバーガール

鋼鉄の悪魔敗れ去る!
無敵の魔動ロボ、人知れず彼奴を倒したは
白カラスとともにある、謎の少年魔法使いホツカ!
ホツカ、ホツカ、ああホツカ…聞いたことない名前だぜ?
君はなぜに協会に牙を剥く? それには深い訳有かい?
そしてここにも、協会に仇名す命知らずがいたんだぜぃ
見よ!キチガイどもの夢の跡!二番も心して聴いてくれぇ〜♪




「ラブ・爆発! さあ、こいつを食らいやがれやぁッッ」


せいやぁといせいよい掛け声とともに、ちょんまげ頭の派手な少女は鋼鉄のロボ兵士になにかを投げつける。

ちゅどーん。
気持ちいいほどの爆音が響く。少女が投げたのは、小型の爆弾。それも一つではない。懐から次から次にと、隠し玉のごとく取り出して、投げる、投げる、投げる!

ちゅどーんちゅどーん、何発もまるで花火のように、愉快な音を立てて、爆発する。

ガショガショ、ダメージを受けながらも、彼奴らは非生命体。鋼鉄の体は頑丈で、この魔動兵士は内部に魔高炉が内蔵されており、動力源のMストーンあるかぎり死にはしない。ただ外傷が激しければ、故障し、まともに動けなくなる。そうなると技師によって修理されるか、部品の替えがきかなければ、処分されるだろう。しかし、Mストーンと魔高炉があれば、いくらでも生産できる。なんせ今の世では、工場で大量生産しているくらいだ。使い捨てだよ世の中は。

爆発の音を聞きつけ、兵士たちは次々に少女の前に集結する。ロボだけでなく、異常は兵士を通じ、協会に通達される。少女は協会に仇名すテロリストとして、連行されてしまうだろう。
万事休すだ。
だが、少女はにやりとなにかを企むように笑う。まるで、こうなる事態を望んでいたかのように……。




『次はここか、ホツカよ…』

バサリと羽を閉じて、白カラスがホツカの肩に止まる。

「はい、このアシャヒカの町が予知夢に見た場所です。ここでちょんまげ頭の派手な格好の女の子が、魔動兵士にケンカをふっかけて、協会に連行されてしまう内容でした」

『…ケンカをふっかけて、か。…自業自得のようじゃが……』

「でも、ほおっておくことはできないでしょう。内容は連行されたところで終わったけど、協会に連れ去られて、その後どうなるかなんて、わかりきっている…」

目を細めるホツカに、『それもそうじゃな』と師匠は頷く。

どうなるかなど、誰でもわかることだ。協会に逆らえばどうなるか。処刑されて、死ぬだけだ。

「彼女が魔動兵士にケンカをふっかけたことも、なにか特別な事情があってのことだと思うんです。問題を起こす前に、なんとか見つけて、阻止しないと」

町の通りを歩きながら、ホツカの肩の上で師匠はキョロキョロと周囲を見渡す。

『ちょんまげ頭で派手な格好か。もっとわかりやすい特徴でもあればな』

師匠のぼやきに、そういえばとホツカが

「たしか爆弾を手にしてました。小型の手のひらサイズの。それをボールみたいにポンポン投げまくってました」

『!? 弁護しようもない。テロリストじゃな…』

かなりめんどうな娘かもしれんぞ、と師匠が忠告してくる。


【アシャヒカの町】
周囲を荒野に囲まれた辺境の町。人口もさほどではなく、特別栄えてもいないが。昔、長年続いてきた一年に一度開催される祭だけは派手で、それがアシャヒカの町民たちの生きがいにもなっていた。このような辺境にも協会の魔の手は及んでいた。
あまり重要視されていないためか、協会の幹部が訪れることはめったにないが、中央政府より警備名目で派遣された魔動兵士たちによって監視されている。協会に仇名す者や、悪い噂をする者は、魔動兵士を通じて管理部に情報が入る。管理部より指令が下される魔動兵士は協会に逆らう者を捕らえ、収容所に連れて行き、やがて処刑されることになる。


「今日こそは貴様らを地獄に叩き落してやるッ! 改良版らぶりー殺戮ボムをくらえッッ!」


切り立った岩山の方角から威勢のいい声が聞こえた。セリフは物騒だが、声の感じから歳若い娘のようだ。

「師匠!」

『うむ、違いなかろう。あの娘で』

声のしたほうにホツカと師匠が向かう。
そこには数隊の魔動兵士と、向かい合う一人の少女。ホツカが夢に見たとおり、ちょんまげ頭ではで目のいでたち、そして手にはバチバチと火花が散るちょいと危険な物体が見えた。

一触即発の空気。
感情のない鋼鉄の人型相手に、ちょんまげ娘はおらおらかかってこんかいと、挑発をしている。
そしてこの騒動で、誰も彼女を助けようとする者はいない。厄介ごとにはまきこまれたくないということなのだろうか。
わざわざ協会にけんかを売るなどバカのすることだ。キチガイにもほどがある。


「コイツをくらいなっっ」

バチバチと火花散る物体を振りかぶって、ちょんまげ娘は兵士に投げつけた。
ちゅどーんと音が響いてピンク色の煙が上がる。ボディが衝撃でよろけたが、損傷はほとんどない。さすが近年の魔法科学は進化している。技術者たちのがんばりによる結果だ。大量生産できるとはいえ、動力源のMストーンは有限資材だ。ボディはまだしも、心臓部ともいえる魔高炉は高度な技術を要するため、こちらは大量生産できない。それらは使いまわしている。

攻撃を受けた魔動兵士は、組み込まれた命令どおり、娘を敵とみなし攻撃にうつる。鋼鉄の腕を突き出し、腕の中に仕込まれた鉄の矢を放ってくる。

『むう、マズイ、殺されてしまうぞ』

白カラスの羽ばたきではとても娘の下に追いつけない。

「まかせてください、師匠」

風を纏いて、目に見えぬスピードでホツカは駆ける。矢よりも早く少女の前に到達し、すばやく次の魔法を発動させる。

「風よ、はじき返せ!」

杖をかざし、ホツカの前に無数の風の精霊が集まる。目に見えない彼らは膨れ上がり、空気の盾となる。

カキンカキンいい音させて、鉄の矢はすべてはじき返された。次の攻撃が来る前に、後ろにいる少女に「逃げるよ」と言って高速移動の魔法をかける。

「は? ちょっアンタ」

なにか少女が言いかけるが、話をしている暇はない。少女も話を遮られ、己の意思とは無関係に瞬間移動させられる。


「!?ここは、アタシんちじゃねーか」

瞬く間に景色が変わり、ホツカと少女は土間のある家屋に移動していた。そこは少女の実家のようだった。

「どんな裏ワザ使ったか知らないけど、アタシの邪魔すんなよ、坊主!」

キッと釣り目がちな目でホツカを睨みつけて、少女はズカズカと家を出て行く。

「あっちょっと、アイツらに逆らってどんな目にあうか、わかってる?」

くるりと振り返りながら少女は答える。

「上等だよ、かかってこいってのよ!」

「ちょっ」

ホツカの忠告も「うっさいハエ」とばかりに無視して、少女は爆弾片手に奴らの元に向かった。

「なんだよ、あの子…」

「おっシャニィ帰ってきたと思ったらまた行きやがったのか。おっ、坊主は見ない顔だが、シャニィの友達かい?」

鉢巻を頭に巻いた威勢のよさそうな中年男が奥から現れた。ここが娘の実家であるから、娘の父親に違いない。

「あ、いえ僕は通りすがりの旅人です。あの止めなくていいんですか? 彼女、魔動兵士に爆弾投げつけていたんですよ」

ホツカの焦りとは裏腹に、男はのほほんとした態度で「ああ気にしなくていいぞ。いつものことだからな」と返事した。

「いつものことって、じゃあいつも魔動兵士たちに爆弾を?」

どうしてそんなことを、と訊ねるホツカに親父は話す。

「坊主はこの町には来たばかりか? なんもない寂れた町だろう」

自虐的に親父は自分たちの町のことを語る。

「アシャヒカの町。以前毎年行われていた町あげての祭は、ずいぶんと盛り上がっていたようですが」

「ああそうなんだよ、よく知ってるな坊主」

ホツカには魔法使いの知識が受け継がれている。この世界の一般的なことはすべて頭に入っている。このアシャヒカの町の歴史も、わざわざ調べることなく情報は脳内メモリーに保存済だ。

「祭こそがアシャヒカの真髄だったと言ってもいい。とにかくみんなその日のために日々働いて、祭の日はおもいっきり楽しむんだ。祭の日は外から観光客もやってきて、一年に一度、アシャヒカが輝く日になっていた。まさに字のごとく空に眩い大輪の花が咲く。
俺たち花火師は祭の花形だった。花火と言えばアシャヒカと言われるほどに、祭は有名な行事だったのさ」

それも昔の話。祭は協会によって禁止させられた。花火が危険だと言って、あとはいろいろ難癖をつけられた。町民も皆大人しく従ったわけではなかった。祭りを実行するといってデモを起こしたこともある。最初は町民に同調し、協会に不満を抱いていた町長も、ある日を境に祭り反対派になり、協会と内通し、境界に従わない者には嫌がらせをした。悪い菌のように協会派は伝染していき、表向き協会に反対するものはいなくなった。だが、内心くすぶっている者が多かった。表立って反対はしないが、影でいろいろと不満を漏らしているものはいる。それも協会からは目を瞑ってもらっている状態だ。正直、アシャヒカはそれほど重要視されていない地域なのだろう。周囲は荒野で、資源もほとんどない。
協会はMストーンを独占している。

【Mストーン】
元々どこにでもある鉱石の一種だった。その石に昔ある魔法使いが魔法をかけ、夢の資源として生み出した。魔法使いの魔力は歴史上一二を争うほどで、百年以上経過した今でさえ、Mストーンには強力な魔力があせることなく宿っている。
ある科学者はそのMストーンを得たことで、人類に有益な科学の進化を可能にした。
魔法科学の歴史はそこから始まり、現代に至る。
今の便利な世の中は、その魔法使いと科学者が出会ったからこそ実現したと言えるのだ。


「協会が来てから、みんな内心ピリピリしている。うっとおしい魔動兵士たちをぶっ壊してやりたいってな。みんなあのときのデモで結構こりちまってるのよ。
シャニィのやつが暴れてんのも、みんなの代行みたいな感じで、すっとしてる部分があんだろ。
まあ協会もガキのいたずら程度にしか思ってないからな。相手にされてないってのが現状よ。
だから坊主、気にせずほっておいてやってくれるか」

「なに言ってるんですか? 先ほど魔動兵士は攻撃をしてきたんですよ」

のんきに言う親父にホツカは反論する。
ホツカが助けなければ、シャニィは殺されていたかもしれないというのに。

「脅しだ、脅し。現にアイツはピンピンしてただろ」

それは、僕が助けたからとは言えない。ただの子供と思われているのに、魔法使いですなんて名乗るわけにはいかない。ホツカはできるだけ目立たず、人知れず予知夢から人々を救いたいと思っている。
善意なんてものじゃない。利己のためだ。だから表立って「僕はヒーローなんです」なんて言える訳がない。
親父から見たらただの坊主だ。まともに話を聞いてくれないこともある。不老不死の体が恨めしい。


「それでも、協会は警戒すべき存在です。脅しでも死なないとは限りません。
おじさんがいかないのなら、僕が止めにいきます」

「まあ待て坊主。アイツの目的邪魔するとまた怒られるぞ。アイツはキレたらめんどくさいぞ。爆弾投げつけてくるぞ。アイツのことより、坊主自分の身を心配しな」

アイツはワザと暴れて、魔動兵士たちを刺激してるんだよ、と親父はホツカに話す。シャニィの暴れる理由を。

「アイツはな、自分のヒーローを呼び出そうとしているんだよ。
戦鬼カツミ、名前くらい聞いたことがあるだろ?」


【戦鬼カツミ】
有名人だ。ホツカも名前は知っている。最強の人類とも呼ばれている。鋼の肉体を持ち、すべてを打ち砕くと言われる拳は、魔動兵士100体を一人で殲滅させたとの噂もある。魔法科学が発達した現代でもなお。己の肉体のみを重視し、武器や兵器にはけして頼らない。
この地上で最強の男、それがカツミだ。
噂では、カツミにはほかの人間のような感情がない。あるのは、戦いに対する欲求。
そのため、協会側につくこともなければ、誰かを守るために戦うような男ではない。彼が戦うのは、戦闘への欲求のみだ。

来るかどうかもわからないヒーローを呼び出すために、危険なことをやるなんて。
とにかく、このまま見過ごすことはできない。
シャニィの家を飛び出すホツカは師匠と合流し、先ほどシャニィが暴れていた場所へと向かう。


現場に着くと、すでに数十体の魔動兵士がシャニィの前に立ちふさがっていた。攻撃はされていなかったが、警告を発している。シャニィの動き次第で向こうも反撃を仕掛けてくるだろう。
ホツカの力なら、シャニィを守りながら敵を倒すこともできるだろうが、シャニィの目的がカツミを呼び出すことなら、それを達成しないことには、彼女はこの愚行を止めはしないだろう。
力ずくで止めることは無意味だ。彼女を説得するしかないが……。
通りすがりの少年の忠告に、この聞き分けの悪そうな少女が従うわけがないだろう。



「(いっそカツミさんが来てくれればいいけど、そう都合のいい話もないだろう。とにかく、シャニィを協会から守らなくては)」



「へへっ、わらわらと集まってきたけど、その人数であたしを鎮められると思うのか?
じゃんじゃんかかってこいよっっ!!」

兵士たちを挑発して、あっかんべーだのお尻ペンペンだの幼稚な挑発だが。そんなものに感情のない兵士が反応するわけがない。「ふん」と鼻息吐きながら、シャニィはまた爆弾を投げつける。

爆弾を受けて兵士たちはよろけるが、致命傷はない。次々と仲間を呼ぶ。シャニィの爆弾テロで、すでに50体近い兵士が集まった。よくもまあここまで集めたものだ。と感心している場合じゃない。

いつでもシャニィを守れるように、ホツカは杖を構える。


「坊主、なにしにきたんだよ? そんなおもちゃでこいつらが倒せるわけないだろ。下がってろよ」

ホツカが魔法使いと知らないシャニィには、おもちゃを構える馬鹿な小僧にしか映らない。

「君になんと言われようが、僕はひくわけにはいかないから」

『むっ、この気は。まさか?』

師匠に続いてホツカもその異様な気を感じ取る。最後にそれを感じ取ったのは凡人のシャニィだったが。まっさきに声を上げたのが彼女だった。


「!? カツミ!!!」

驚きと歓喜の混じったシャニィの声。彼女と兵士たちの間に割って入るように現れたのは、噂の戦鬼カツミだった。





待望の真打登場ー! 噂の戦鬼カツミがまさかの登場ー
ホツカの心配よそに、物語はさらに動き出すってことで
最強の人類、体ひとつで魔動兵士をぶっ倒す?
その強さ、とくと見よ!
一気に登場人物が増えて賑やかしいぞ!
見よ!キチガイどもの夢の跡、三番も気になるって?ぜひ聴きにおいで〜シーユー…バイチャッ!
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