体も乙女ちっく心も乙女ちっくだとブリギッドから乙女認定されているレヴィンは、マーニャに変態行為続行中のブリギッドから逃れるように小屋の外へと飛び出した。
臆したかレヴィン?!
否!
外に出て数メートル、じゃっと砂を蹴りながらターンして、レヴィンは小屋のほうへと向きを変える。
ここでマーニャを置いて逃げ出したとあっては、乙女認定ぷらすドタヘレ認定もされてしまう。
男として、いや人として、逃げるわけには行かないだろう。主人公だから好感度を意識してとかではない断じて。
ただでさえ母親の陰謀のせいで好きな人と一緒になれないかわいそうな運命のマーニャを、これ以上不幸にさせるわけにはいかない。聞いた話だとブリギッドは男も女もバッチコイな人種らしい。誰から聞いた話かって?本人からだ。まったく、バケモノじみた力の持ち主でその性癖はたまったもんじゃないだろう。四天馬のマーニャであれ、あれが本気になればきっと犯られる!
それはちょっと見てみたいような。いいやだめだ、それは妄想の中に留めるだけにしないと。ほんとうになったら困る。
「戯れはそこまでにしてもらうブリギッド!」
挑発的なセリフを放ちながら、レヴィンは再び精霊を纏い始める。彼がまとう風の精霊によって、レヴィンの衣服や髪が激しく踊る。
すぐにレヴィンの動きに気づいたブリギッドは、すくっと立ち上がり、にやりと笑いながら聖弓を構える。
「ははは、待っていたぜレヴィン。やっとその気になったみたいだね。よし、今こそ決めようじゃないかどちらが最強かを!!」
「はあ? だれもそんな格闘マンガ的な展開望んでないしーー、てイチイバルってあんたどんだけえげつないんだよー」
「いくぜっv」
戸惑うことなくまっすぐな獣じみた眼差しで、ブリギッドは聖弓をレヴィン目掛けて引き放つ。キィンと眩い光となにかがはじけるような音がして、聖なる弓から光り輝く矢が放たれる。聖弓から放たれる矢は、鉄であれ銀であれ、放たれる瞬間眩く輝く光の矢になる。それが聖なる弓イチイバルの力なのか。形だけでなく、スピードも通常とは比べ物にならない。光のごときスピードになる。常人の目では捉えることは不可能だろう。動体視力に自信のあるレヴィンでさえ、それは見ることが出来ない。だが風の加護なら……。
反射的というか無意識に、光の矢をギリギリかわす。ギュンと矢の威力を語るすごい音がレヴィンの耳を震わせて過ぎていった。
当たりはしなかったが、レヴィンの頬に赤い線をつけたそれは、彼の後方の木にあたり、小さく細いはずのその矢が、はるかに大きな木にでかでかと穴を空けていった。ばっと背後を見たレヴィンは心臓飛び出そうになった。木の中央にでかでかと空いた穴は、その向こうの景色をうつしていた。木の腹にぽっかりと風穴ができていたのだ。風の力でかわせたが、もしあれをまともにくらっていたなら……。さーーと血が引く音がほんとに聞こえた今のレヴィンには。肝が凍るかってくらいだ。
「本気かよ!」
「よくかわしたな。次ぎはどうだい?」
にやにやと笑いながら、しゅるっと矢をとりだし、素早く弓を引く獣のような鋭さを放つ女。仲間に対して迷いなく矢を放つこの女をレヴィンは恐ろしく思うと同時に、強く憧れもした。本気での死合がこんな身近にあったなんて。
びゃっと激しく光撃を放つブリギッド。目の前に迫る危険は、死に直結するもの。レヴィンの心臓は激しく鳴っている。怖いと思う、が、別のドキドキでもあった。ブリギッドに負けじとその口はしはつり上がっていた。
ブリギッドの放った矢はこの目には見えない追えない。だが風たちが教えてくれる。レヴィンの本来の身体能力を超えて、風精たちがレヴィンの体を支援する。浮かせ、揺らせ、またレヴィンの体だけでなく、それに触れるものを避けるように、彼らの常人には見えない力は作用している。

死にたくない。負けたくない!
感情がそのまま魔法として形になるように。風たちが形を変えていく。レヴィンを守っていたそれから、攻撃の形になる。木々を揺らし、地面を風たちがこするように走り、鋭く刃のように一点に集中する。それが目指すのは、ブリギッド……?
「!?」
魔力のないブリギッドにも、感じられた。精霊など見えはしないが感じるのだ、強い激を。くらえばただではすまないと野生の勘が知らせてくれる。が、ブリギッドはよける素振りはない。弓をかまえたまま、ついた両足は一歩も動かなかった。
ゴオォォン!
轟音はブリギッドの背後からだ。彼女の背にある山小屋の壁が破壊された音。そこから見えるマーニャの目がぱちくりしていた。
レヴィンの纏っていた大勢の風精は、ふぃっと森の中に溶け込むようにして消えていった。闘気が一緒にとけていくように、レヴィンもまたいつもの空気に戻る。ブリギッドも弓を下ろし、バトルの空気はすぅっと失せていった。お互い笑みを浮かべたまま、互いを見合っている。
「なーーんでわざと外すんだよ? マゾか? やっぱり案の定マゾってことかい?」
にやりと白い歯を見せたままレヴィンをおちょくるようにブリギッドが吐く。
「違うっつーの! 俺は仲間を殺したくないだけだよ。ブリさんと違ってね」
「はっはっは、そーかいそーかい。殺したくないほどあたしに惚れてんだな」
けらけらと陽気に笑って勝手な解釈をする女海賊に、わてわてと慌てるヘタレ吟遊詩人。先ほどまで殺し合いであったはずなのに、いつもの陽気なやりとりが繰り広げられていた。あのほんのわずかともいえる短い時間であったが、マーニャは立ち入れる気がしなかった。神器を扱うブリギッドと、神器の後継者であるレヴィンはやはり特殊な存在なのだと、改めて思い知らされる。ただそれだけではなくて、二人のふれあいを見ていて感じるのは、乙女だからこその複雑な心中もあった。


「ブリさん、本気で殺す気でいたろ? あんな真正面から狙われたことなかったよ」
ムスっとしながら、尻を床について対面する先ほど己を殺そうと弓を引いた相手をぎろりと睨むレヴィン。その相手はわびることなど一切なくけらけらと笑っている。
山小屋は熊のと、先ほどのレヴィンの魔法のとでかなり壁が破壊されてしまっている。壁の一面がまるまるなくなったといっていいくらいの損害だ。レヴィンの放った風魔法はそれだけの威力を持っていたが、中にいたマーニャを傷つけることはなく、また標的であったブリギッドにも傷を負わせはしなかった。それもまたレヴィンが風精と心を通わせているからだろう。風精は優しく、主の望まぬ殺生は基本しない。でも家はけっこう酷いことになってしまった。
「まあいいじゃねーか、結果的に死んでねーし」
そういう問題ではない……。
「それにもし死んじまっても、ほらあれだ。クロードの奴が持ってるバルキリーの杖っつーの。あれ使えばいいんじゃね? ちらっと聞いた話だと死んだ人間生き返らせれるっつーらしいじゃん」
「あのねー、生き返らなかったらどーすんだよ」
「そんときはそんときだろー。所詮その程度の生命力ってこった」
あけらけらと他人事のように笑うマイペースなブリギッドに、はーーと溜息をつかされたレヴィン。まあこんなかんじだが、キライになれない不思議な相手だ。
ブリギッドとのバトルは予定外のハプニングではあったが。
「さきほどのレヴィン様の魔法。今までで一番のものではございませんでした?」
「そうだな。そういえば思っていたより冷静でいられた気がする。やっぱり実践の中でこそ魔法の能力って伸びると思うんだけどな」
「だろ? 修行っつっても本気でやるなら気持ちからそーじゃねーとな!」
にかりと笑うブリギッドの笑顔の意味は、単に……。
バトルバカなだけだから、かもしれなかった。


一日の最後になる食事を終えて、はーとレヴィンは息を吐いた。青く茂る草の上、シレジアの短い夏にせいいっぱいの緑を揺らす。この短くも儚い季節が好きだった。命が漲り、長い長い冬の為がんばっている。
二年ぶりにだが、やはりレヴィンにはシレジアの環境は細胞になじんでいる気がする。
この時期にしか見られない鳥たちの姿も愛しい。
「んーー、やっぱりなんか体の調子が狂いそうだね、ここは」
ぐるぐると肩を回しながらレヴィンへと近づくのはブリギッド。鳥たちが鳴き、揺れる緑は透けて黄色が縁取っている。まだまだ明るく、本来なら眠たくなるはずの時間帯なのに。
「そのバンダナで目元隠したら寝やすいんじゃないか?」
とレヴィンが提案するのは、ブリギッドが頭に巻いているバンダナをアイマスク代わりにしたらということらしい。おお、なるほどお前頭いいな!と手を叩いて感心するブリギッドだが。
時間は深夜をまわっていたが、ここシレジアの夏季は日が高く日が沈むことのない期間がある。夜がこないのだが。城にいたときは、日を遮るものがあり特別気になることはなかったが、ここ山の中ではそうもいかない。熊やら魔法やらで小屋は破壊され、日の光は屋内にも入ってきた。日光が覚醒させ、体を寝かしつけてはくれないのだ。そんな特殊な期間もわずかだから、少しガマンすればいい。
ガマンというよりも、この長い一日を有効に使ったほうがいいだろう。夏こそ修行にもってこいの季節なのだ。
ラーナがそんな理由で修行にとっとと行ってこいと言ったわけではないとは思うが。マイオスへの意地と、マーニャとの仲をより親密にとの企みからであろうが。
ちょいとうんざりしたが、ブリギッドが来たおかけで、そんな変な空気も消えかかり、レヴィンは少しほっとしたのだが。
「で、いいのかい? かわいい婚約者ちゃんほったらかしでさー」
「だから、マーニャとはそんなんじゃないって言ってるでしょ。茶化さないでよ! マーニャもかわいそうだろ」
「かわいそうね〜…。あっちはお前のこと好いてるんじゃないの?」
「そりゃ幼馴染としてってことでそれ以上でも以下でもないってこと。婚約者とか言ってるのは母上の陰謀なだけでこっちは迷惑してるだけ」
ムキになって否定するレヴィンに、「ふむふむ」なるほどーと顎に手を当て、次の瞬間不気味ににまりと笑みを浮かべつかつかとレヴィンへと近づくブリギッド。レヴィンはなにかぞくりとする感覚があった。
「てことは、あたしでもいいわけだな」
な、なにが?とたらりと嫌な汗が伝うレヴィン。身の危険を察知し後ろずさる。が。どんと背中に痛い衝撃。木に背中をぶつけ、間合いをつめられブリギッドにつかまってしまった。
「あたしが男にしてやろうか? レヴィンちゃんよぉ〜。しかし、ほんとキレイな肌してんね。なんだよこの乙女肌」
「ひぃぃっ」
ぺろりと舌を覗かせブリギッドは変態的に笑いながら、逃げ場をなくしたレヴィンを木に押し付けて、レヴィンの腰布をひっぱりゆるませ、そこから露わになる(ブリギッドが言うには)乙女肌に手を這わせるブ。レヴィンはびしびしと肌を逆立て身を硬くする。
「ちょっなにすんの、セクハラよ!」
「なーに硬くなってんだよ、おとめvだね本当に。いっひっひ」
お腹をさわさわしながら、ぎうーと体を押し付ける形で身の自由を奪われるピンチのレヴィンは、セクハラに耐える乙女の心情が痛いほどわかった、気がする。
「やめっ…」
やめてください!
一瞬にして強い風の圧がレヴィンとブリギッドの間に発生し、ブリギッドの逞しい体を吹き飛ばす。
「うわぉぅっ、なんだいなんだい、照れやがって」
ぺろりと唇を舐めながら挑戦的な眼差しで、くるりと回転しながら地面に着地して体勢を整えるブリギッド。
風の力が守ってくれたが、木にもたれたままレヴィンは乱れた衣服を押さえ、軽く涙目になっていた。
目の前の野獣は、魔法で飛ばされたにも懲りる様子なく、にまりと意地悪げな顔で、じゃっと地面を蹴りこちらへと突進してくる。
「うひぃっ」
レヴィンは身の危険を強く感じ、素早く体を横にぶらして、野獣の突進からかわす。「ちっ」と舌打ちがすぐ腰元で聞こえ、手が腰元の布をがっと掴んでくる。
「やめてってばマジで」
走ることでムリヤリその縛をといて、レヴィンは小屋の中へと走って逃げる。「きひひ」と嬉しそうに変質者の笑みを浮かべる彼女から逃げることに全力で、レヴィンは意図せず小屋の中のマーニャに抱きつく形で倒れこんだ。
「きゃあっ! あっ、あのレヴィン様、わ、私まだ心の準備がっっ」
あわあわと顔を赤らめ、身を硬くするマーニャに、彼女の声も表情も届いていない当の相手は恐怖で震えていただけだった。
「いーやーー、こないでーー!」
レヴィンの悲鳴が山に木霊していた。


「この山の中にお姉さまが……」
ごくりとツバを飲み込み不安な顔で山を見上げるのはエーディン。そのエーディンの不安を抑えるように恋人のアゼルが彼女の肩をきゅっと抱き寄せる。
「目撃証言もあったし、間違いないはずだよ。ブリギッドと思われる弓を担いだ女性が山に向うのを見たって。
シルヴィアのネットワークには感心するよね」
アゼルの口ぶりから、重要な情報ゲットの功績はシルヴィアにあるようだが。シレジアに来てまだ日も浅いというのに、シルヴィアはダンサーとしてシレジア国内で着々とファンを増やしているらしい。今そのシルヴィアはここにはいないが。そもそもブリギッドを探す気など彼女にはないだろう。…実際エーディン以外ブリギッドを心配しているものはいないといっていい。だってあの頑丈なブリギッドがなにかあるとも思えないから、逆にだれかが犠牲になっていないかそちらのほうが心配である。
「実際走り回って情報集めまくったのはオイラなんだけどさ…」
ぼつりと不満気にはくデュー。すっかり下僕体質になっているかもと、自分で選んだ道だし諦めの極地だ。
情報を頼りにエーディン、アゼル、デューとティルテュとレックスはセイレーン市から北東に位置する山道の手前まできていた。
「じゃあ、すぐに連れて戻るから、エーディンはここで待ってるんだ」
アゼルのそれにエーディンは首をぶんぶこ横に振って拒んだ。潤んだ瞳のオプションつきで。
「いいえ私も行くわ。だって私の責任ですもの。お姉さまを見失ってしまうなんて…」
ブリギッドの管理なんてだれもできないだろうに、エーディンを責めるものなどだれもいないのに、彼女は自分自身を許せないのだろう。
ああ、ボクは君のその優しさも愛しくて仕方ないんだ、この世でもっとも愛しいエーディン。
「うわわ、なんかサブイボがっっ」
目には見えないが甘ったるいオーラを感じとったデューはひぃっと悲鳴を上げて自らを抱くようにしてサブイボの浮いた肌をさする。レックスは目眩と吐き気を覚えた。
「わかったよ、エーディン。けどなにがあるかわからないからね、絶対にボクの側を離れないでよ」
「ええありがとうアゼル」
またきらきらとザ・二人だけの世界に入るバカップルにうげーーとさせられるデューだった。本音はこんなことにつき合わされるのはまっぴらごめんで、時間あるなら稼ぎに行きたいところなのに、それから相棒(シルヴィア)の暴走も気にかかるところだからと。しかしうるうるとエーディンに懇願されたり、アゼルの圧力に屈したりと、デューに選択の自由などなかったのだから。
それはともかくとして、心の中で少しつっこんだのは、『山に行く格好じゃないだろうに…』と。エーディンなんてひらひらのイブニングドレスで、上にケープを羽織っているだけだし。なんだかなー大丈夫か?と。
「待ってて姉様。必ず見つけてみせるわ。愛の力で」
「エーディン君はボクが守ってみせる。愛の力で」
うっはーーとバカップル二人の気合にあきれるのはデューだったが、ティルテュは違うテンションで「やっぱりすごいなぁ、あの二人の信頼関係…」と感心するのだから。
ざかざかと山道を登っていくブリギッド捜索隊。例の別世界にいっちゃってーなバカップルはずかずかと先に進んでしまいすでに豆粒のごとく小さくなってしまった。
「ねぇ、ティルテュさん大丈夫?」
登り始めて数分、結構見た目以上に斜面はきつい。足の速いデューは時々速度を緩めながら一緒に登る少女を気遣う。エーディンの姿もあれだったが、ティルテュもとても山登りに適しているとは言いがたい格好だった。歩くたびにちらちらと露わになる太ももに、木の枝でもひっかかれば傷もつこうに。当の彼女は対して気にしてなさげだった。
「うん、ありがとう。あたしなら平気だよ。それにしても二人とも見えなくなっちゃったね。ほんとすごいなー」
「うんほんとーにすごいよね、あの自己中っぷりは…尊敬に値するよ」
とデューは嫌味で言ったのだが。
「そうだよね、羨ましいな…」
羨望の眼差しで。
「えっっ、…うーん、なんていうかさ。ティルテュさんって幼馴染ってわりにはアゼルさんのことわかってないかんじだよね、ね!」
デューは同意を求めるように後ろを歩くレックスへと振り向くが、無愛想にそっぽを向かれ微妙なテンションにさせられる。
「(アゼルさんもだけど、この人も苦手なんだよな…)」
はーー。受難体質もいいとこだと溜息ながらも前を向く少年。
「そうかなぁ…。エーディンみたいにすごくキレイな恋人がいるからひがまれているんじゃないかな。
アゼル優しいし、すごく前向きなとこあるし、そういうとこ羨ましいなって思うもん。
…あたしはいろいろ諦めちゃっているとこあるからかな」
うーわーという顔をしながらも、なるほどそういう解釈もあるのねーとデューは不本意ながらも相槌をうっといた。
知らないほうが幸せなことも世の中にはあるものね。
「あのさぁー。ムリして付き合うことないと思うよ。エーディンさんは大げさに心配していたけど、あのブリギッドさんがさ、森の中で迷ってどうにかなっちゃうなんてかんがえられないし、だってあの人海の中でサメと格闘していたくらいのグラップラーだよ…。むしろ喜んで山の中で熊とか巨大サルと格闘していると思うよ。適当に時間潰してお城に帰ったほうがいいと思うけど」
デューは親切心からか、単にめんどくせーからなのか、ティルテュにそうすすめた。
「ううーん、でも…」
「ふん、馬鹿馬鹿しい。あんな熊女がどうなろうが知ったことか。付き合いきれねぇ」
不満気な言葉を吐き捨てて、後ろを歩いていたレックスはくるりと向きを変え山を下って行った。
「あっ」
「へへ、賢明かも。オイラもてきとーに動いてから戻るよ」
じゃっとデューもまた別の方向へと消えてしまった。ぽつんと山道に独り取り残されたティルテュは「もう」と口を尖らせて、独り道を登っていった。


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