「エーディン大丈夫? 落ち着いた?」
はい、と言ってエスリンがエーディンに茶を差し出した。「ええ、ありがとう」と言ってエーディンはそれを受け取る。
マーファを制圧したシアルフィ軍は、ヴェルダン城へと向う準備をこのマーファで整えていた。
村人たちの話では、ヴェルダンが野蛮な国に変わった元凶はサンディマという怪しげな魔術師にあるという。
そのサンディマが今回の件の黒幕と見て違いないだろう。サンディマを討ち、バトゥ王と会うまでは、ヴェルダンでの戦いは終らないだろう。なんとか終らせなければ、その強い気持ちがエーディンの中にあった。
思い出すだけで目眩を感じる。
真っ赤に広がる血だまり、その中央に横たわるアゼルの姿。
胸を押さえ、落ち着くようにと深呼吸をする。つかれきった様子のエーディンにエスリンも気遣う。
「災難だったわね。でもこうして無事にあなたを救い出せてほっとしたわ」
エーディンの横に腰掛けてにこりと微笑むエスリンに、エーディンの表情も和らいだ。
「ありがとうエスリン。ごめんなさいね、レンスターに嫁いだ身のあなたまで巻き込んでしまって」
「なにを言うの、エーディン私たち親友でしょ。親友のピンチに駆けつけないわけがないわ。
不謹慎だけどちょっと嬉しかったりね。こうしてエーディンと会うことが出来たのだもの」
最後に顔を合わせたのはエスリンの結婚式だったろうか。彼女がレンスターに嫁いでからは疎遠になっていたから、こんな形ではあるが再会できたことはお互いに嬉しいことだった。
昔はシグルドたち周囲からじゃじゃ馬だと言われていたエスリンも、結婚してからはしっとりとした女性らしさを身につけていた。エーディンよりも年下だが兄や父の世話を焼いてきたしっかり者でもあるエスリンをエーディンは慕い頼っていた。
「エスリン、ほんとうにキレイになったわ」
「あら、あなたが言うと嫌味に聞こえてよ?」
くすりと意地悪な笑みでエスリンが返す。
「そ、そんなことないわ」
「もう自覚が足りないところが問題なのよね。うちのボケボケな兄上は問題外としても、あなたの美しさに魅了されない殿方なんていないと思うわ。あ、うちの旦那様は別としてね。
ガンドルフ王子といい、それからあなたの恩人だっていうジャムカ王子もかしら?」
「違うわ、エスリン、ジャムカ王子はそんな人じゃないの。彼は正義感の強い優しい人よ!ガンドルフ王子たちとは違うわ」
まあたしかにガンドルフと一緒にするのはジャムカに失礼かもしれないが。頑なに否定するエーディンも鈍すぎる。
「まあそれはともかくとして。エーディンあなたもそろそろ身を固めたほうがいいかもしれないわ。ガンドルフみたいな連中がまた現れないとも限らないでしょうし」
「ええ、でも、私は出家した身だから、結婚なんてこれからもするつもりはないの。それに姉様のことを思うと…」
「エーディン、ブリギッドのことで自分を責め続けるのはもうやめましょう。あなたが悩み苦しみ続けることでだれも救われないの。幸せになって、そのほうが救いになるわ。ブリギッドにとっても、あなたを想う周りにとっても。
あなたのためにムチャしちゃうだれかさんのためにもね…」
ぽんとエーディンの肩を叩き優しく微笑むエスリン。はっとしたようにエーディンは顔をあげた。
「ええそうね。…泣いてばかりじゃダメね。私もしっかりと立ち向かうわ。ジャムカ王子に会って、戦いを終らせるの」


マーファ城の地下にある宝物庫からほくほく顔でデューがでてきた。大量のお宝をどさくさに紛れて拝借してきた。一時はガンドルフにつかまってしまったが、エーディンのおかげで無事逃げ出すことが出来、ガンドルフも倒れ、こうしてお宝を手に入れられた。結果オーライだ。
「ほぉ、いいねこのリングもらっていい?」
「あっ、ちょっドロボー!」
出てきたところをお宝の一つをひょいと奪われた。それも値打ちのありそうなリングを。盗賊小僧にドロボー呼ばわりされたらお終いだ。
「え、なに? くれるんだよね? よく聞こえなかったけど」
ん?とにっこり笑顔でなぜかファイアーの書を開くアゼルに、ひぃっとデューは身を震わせる。
少しはなれたところでレックスはその様子を見守っていた。またアゼルめ、機嫌が悪いようだ。ネガティブオーラで周辺の空気を歪ませ、変なものが宙に舞っている。
「なかなかいいものを持っているようだな。私にも見せてくれないか?」
「やあアイラさん!(天の助け!)どうぞ見ていってよ。キレイなお姉さんには特別に安くしてあげるよ♪」
さささっとアイラの背中に隠れるようにデューが移動する。デューの態度に脳内でファイアーをぶつけといて、アゼルがデューからぱちったリングをアイラへと手渡した。
「いいでしょそれ。アイラさんにこそぴったりだと思うなー」
「そうかなぁ。そっけないし地味だし。アイラ王女には似合わないと思うけど。もっとキレイな宝石でもすすめるべきだよ」
「私は宝石の類には興味がない。身につけるなら実用的なものがいいな。これはなかなか役に立ちそうだ」
アイラとデューが交渉をはじめ、二人のやりとりをアゼルは眺めていた。用を終えたデューはぱたぱたとせわしなく街のほうへと走って行った。
「またすぐに戦いになるぞ。あなたの準備はもうすんだのか?」
「うん。炎の魔道書は直したし。やることはもうないかな」
「…エーディン公女…と言ったか。彼女、ずっと泣いていたぞ」
アイラの口からエーディンの名前が出たことに、アゼルがばっと顔を上げる。
アイラに言われなくても、エーディンが泣いていたことは知っている。改めて言うことないのにとアゼルはぎりっと歯噛みした。
「彼女が泣いていたのはあなたのせいだろう。あなたの戦い方は、むちゃくちゃだ。いつ命を落としてもおかしくない。あなたを見ているとシャナンと重なってな。気が気でないエーディン公女の気持ち、私にもよくわかる」
「(何言ってるこの女、わざわざアゼルの逆鱗に触れる気か?)」
「それどういうことかな?アイラ王女。ボクが子供と一緒だって?そういいたいの?」
笑顔だが絶対アゼルの奴はらわた煮えくり返っているぞ…、と思いながら離れたところでレックスは見守る。
「ああそのとおりだ。あなたは子供だ。もう少し自覚してほしい」
アゼルにそう告げると、アイラは無表情のまま彼の前を立ち去った。
エーディンにふられ、アイラに説教され、アゼルの心情を想像すると、…世界を滅ぼすレベルのネガティブオーラを放ってもおかしくない。巻き添えをくらわないうちにレックスはそそくさと立ち去った。


マーファで準備が終ると、すぐにシアルフィ軍はヴェルダン向けて進軍を開始した。
ヴェルダンを発ったジャムカ王子率いる軍隊がマーファ奪還へ向けて動いていた。
マーファを戦場にしないためにも、シグルドたちも進軍を早めた。ヴェルダンの前には精霊の森と呼ばれる深い森が立ちはだかる。馬達は動きを制限され、森の中を熟知したジャムカたちヴェルダン軍勢のほうが先に陣形を整え終えた。一流の弓の使い手であるジャムカは視力を始め、五感に優れ、敵軍の動きを瞬時に読み取った。将であるジャムカの合図で攻撃が始まる。
森の中での戦いになれないシアルフィの騎士たちが右往左往していた。あっというまにシグルドたちは囲まれてしまった。
「ジャムカ王子! どこにいらっしゃるの? ああ全然位置が把握できないわ」
弓使いで大将であるジャムカが前方にいるとは考えにくい。もっと奥へと踏み込まなければ、エーディンは焦り護衛のミデェールをせかした。
早く彼に会い、この戦いをとめなければ、あの時の恐怖を思い出し、エーディンはブルブルと身震いする。
「うわぁ」
前方にいた味方の騎士が敵の攻撃を受けて落馬する。
「ミデェール!」
「くっ、姫様、森の中では馬を上手く進められません」
「どうしましょう」
きょろきょろと周囲を見渡す。みんな敵をしのぐことにせいいっぱいで、エーディンを守ってくれそうな者はいない。仕方ない、森の中なら木を盾に相手の攻撃を防ぐことも出来るのだ。エーディン一人でも、敵の攻撃から逃れることはできるだろう。
「私はジャムカ王子を目指せばいい。それに集中するの。戦いを終らせる為に」
息を整え、冷静になろうと努める。
飛び交う矢を見極める。あのどれかがジャムカが放ったものだろう。
かわすことに集中すればエーディンでも問題なかった。もともと騎士を目指せるほどの素質を持った人間なのだエーディンは。木々の間をジグザグに縫いながらエーディンは深い森の中を駆けていく。その間にジャムカの矢がどれかの目星もついた。
深い森の入り口付近でわたわたするミデェールをアゼルは見つけた。彼の側にエーディンがいないことにカァッとなる。
アゼルはすぐにエーディンの姿を探して森に入るが、森の中は暗く、いたるところに根が張り、気をつけて進まねば足を引っ掛け転びそうなほど木々か密集していた。あっちこっちで金属がぶつかり合う音が響き、どれが味方で敵か瞬時に判断が難しいほど、混戦していた。
「こんななかエーディンは一人で、ジャムカのもとに?」
赤いマントを翻してアゼルはかけた。
「ジャムカ王子?!」
木々の影に隠れながら前進し、エーディンはようやく探していたジャムカの姿を見つけ、彼を呼んだ。
ジャムカの耳はすぐに聞き覚えのある声を捉え、はっとして声を発した相手へと視線を向けた。
「エーディン!? どうして君がここにいるんだ?」
目を丸くし、エーディンがこの場にいることに驚くジャムカ。弓を下ろし、すぐにエーディンのもとに駆け寄る。
「俺は逃げろと言ったはずだ。どうしてこんな戦場の真っ只中に、無防備な君をほおりだすなど、野蛮な連中め」
「違うの、私は自分の意思でここへきたの。ジャムカ王子あなたと話すためにです。お願いすぐに戦いをやめさせて。シアルフィの方々は私のために戦いにきたの。いいえ私だけの為ではないの、このヴェルダンの人々も彼らに救いを求めて来たわ。あなたが私を助け、良心ある方だと、シグルド様もちゃんとわかってくれてます。
お願い、力を貸して。一緒にバトゥ王を説得にいきましょう」
必死のエーディンの説得にジャムカは困惑の顔を浮かべた。二人の王子が倒れた今、バトゥ王を支えられる存在は自分ひとり、父の命に背くことに、簡単に首を振るわけにはいかなかった。
「俺は…父を裏切れない」
エーディンから顔を背けると、ジャムカは再び弓を構え、矢を番える。
「お願いジャムカ王子、やめて」
「エーディン!!」
美しい金色のウエーブの髪を見つけて、アゼルは全力で彼女の元へと駆け寄る。
「アゼル!?」
エーディンも走ってくるアゼルに気づいた。ジャムカは矢を、アゼルへと向け、ぎりっと弦を引く。ざあっとエーディンの顔に青いものが下りてくる。
「だめーー!!」
アゼルを庇うようにエーディンは両手を広げてジャムカの前に立った。ジャムカ、アゼルそれぞれがそれぞれのショックを胸に受けた。
自分を守ろうとするエーディンの背中、そこから感じたのは母性のようなもの。
くっ…、アゼルはショックに呆然としたが、すぐに気持ちを切り替え、エーディンの前にと走った。
「エーディン、なにやってるの?たった一人で!」
「ア、アゼルこそどうしてここに来たの? もう戦わないでって言ったはずよ!」
母親が子供をしかるような物言いに、アゼルの口はふぐぅと震えた。
会うなり口げんか?を始める二人に、緊張の解けないジャムカはいらっとなる。
「おい小僧! 早く彼女を連れここから去れ!」
ここでお前が割り込むのか?このやろーとアゼルもむかっとジャムカを睨む。
「お前がジャムカか? エーディンと少し面識があるくらいでなにその保護者面。あんたに指図されるまでもなく、エーディンはボクが守る! 去るのはお前のほうだ」
会ったばかりの相手にここまで敵意をむき出しにするアゼルに、エーディンは面食らった。
「なんてことを言うのアゼル! 失礼よ、ジャムカ王子に謝りなさい!」
頭上を矢が飛び交っているというのに、口論をやめない二人にジャムカも焦った。
「そんなことは今はいい! エーディン頼むから大人しく退いてくれ」
「いいえ、あなたが話を聞いてくれるまで退くわけにはいきません」
潤んだ瞳ながら、ギンと退かない頑固なエーディンに頭をかいて「わかった」とあきれたようないらだったような口調でジャムカが折れた。
「一時休戦だ。だが俺が命じたところでヴェルダンの兵士はとまらんぞ。連中はサンディマに洗脳されグランベルを酷く憎んでいる」
弓を下ろし、ジャムカはエーディンの背中を押す、「とにかくここは危険だ。俺についてきてくれ」どうやらジャムカはエーディンを安全な場所に誘導してくれるようだった。
「はい、ありがとうジャムカ!」
やっと話が通じたことにエーディンも嬉しそうに笑顔でジャムカに礼を言った。「あ、ああ、さあ行こう」眩しい彼女の笑顔に一瞬赤面して、ジャムカが道案内をする。
「こ、こら!待てよ!ボクはお前のことなんて信用してないんだからな」
むかっとしながらばてばてとアゼルが後を追いかけた。ジャムカめ、エーディンしか見えていないらしい、なんて視野の狭い奴なんだ。とアゼルは憤ったが、人のこと言えない立場であるのにかわりない。
「アゼル、そんな言いかたしないで。ジャムカ王子は常識のある優しい方よ。むやみやたらに人を疑うのは、よくないわ」
「エーディンはむやみに人を信じすぎだよ。親切な奴ほど裏がある。そう勘ぐって間違いじゃない、ねぇ?」
アゼルのとげのある言い方にジャムカもムカッとなるが、相手にしないように努める。
「気にしていない。エーディン、君が信じてくれるだけで十分だ」
こいつは〜〜!ヴェルダン中央の湖にドボンしちまえーー!とアゼルは脳内で呪いを放った。
アゼルが恐れていたとおり、ジャムカはエーディンに惚れている様子だった。まあ仕方ない、エーディンの美しさに惹かれる男はジャムカだけに留まらない。エーディンに一目ぼれし、攫ったガンドルフもだし、アゼルが把握しているだけでも彼女に求婚や見合いを申し込んだ男は何十といた。そのほとんどを闇に葬り、彼女に言い寄る男はいなくなった。バーハラとの結びつきの強いヴェルトマー家の力を持ってすれば容易いことだった。しかし、ここでは家の力など関係なかった。個人の魅力だけで彼女を奪い合うとすれば…大きな困難が待っているように思えた。
ジャムカに案内される先はますます暗く、地面は湿り、注意深く歩かなければ、転びそうなほど危険な道のりだった。
「気をつけてくれ。ここは迷いの森だ。少しでも道を外せば、永遠に道に迷うと言われている」
「そんなところに連れてくるなんてどうかしてるよ」
「アゼル、今は彼を信じてついて行きましょう」
いくら恩人だからってエーディンはジャムカのことを信じすぎじゃないか?アゼルはむかりとした。

「やはり、サンディマが黒幕なんですね?」
「…ああ、奴が来てから親父も兄貴たちもおかしくなってしまった。親父も奴のいいなりだ。俺の言葉などまったく届かなくなってしまった」
深い森を抜けた先に、静かに水をたたえた湖が見えてきた。その湖を隔てた先にヴェルダン城が見えた。
緑と緑の間に白い光が差し込んでくる。すぐ近くで血なまぐさいやりとりが繰り広げられているなど信じられないほど美しく静かな風景の中、エーディンたちはそこで腰を落ち着けた。
「そのサンディマが悪いってわかっているなら、とっとと処分しておけばいいものを、そいつを放置したあなたにも責任があるんじゃないかな? ジャムカ王子」
にっこりと笑顔で嫌味をはくアゼルに、ぴくりと眉を揺らしながら、「ああそのとおりだが…」と話を続ける。
「サンディマは邪悪な闇の魔法を操り、簡単に処分できるような相手では無いから厄介なのだ。奴に敵意を持って近づけば、闇の炎に焼き殺されることになるだろう。それに奴は卑怯な男だ。親父の命を盾にしてくるかもしれん」
「困ったわね。どうすればいいのかしら…」
「やっぱりおとり作戦がいいんじゃないかな? ジャムカ王子がサンディマの魔法の標的となっている間に、城に潜入し、バトゥ王の身を確保する。これでいいんじゃないかな」
「なっ」
「アゼル!? だめよそんなムチャだわ」
あ、そうだやっぱり、と手をついてアゼルは意見を改めて、にこりと笑った。
「やっぱ訂正、おとりは、ボクがやるよ」


シグルドたち一行もヴェルダン兵を打ち破り、なんとか森を抜け出すことに成功した。騎士たちは狭い道筋に時間をとられたが、皆無事に森を抜けることが出来た。迷いの森を抜けられたのは、精霊の森に住む巫女ディアドラが道案内をしてくれたこともある。森を抜けた先でエーディンたちと合流し、ヴェルダン城へといよいよ向うことになった。
「サンディマは恐ろしい闇の魔術を使います。ですが、私のこのサイレスの杖でなら、少しの間なら魔法を封じることが可能です」
ディアドラの協力により、サンディマ撃破も間近に見え、エーディンたちも安堵した。
「よかった。魔法が封じられるのなら、だれかがおとりになる必要もなくなったわけね」
喜ぶエーディンたちに対して申し訳なさそうにディアドラが首をふる。
「サイレスの術はある程度対象に近づかなければ術をかけられません。ですから…」
「ディアドラがサンディマに狙われてしまえばおしまいというわけだ」
「やっぱりおとりは必要てわけだね。シグルド公子、サンディマの術の対象はボクが引き受けます」
自信ありげにアゼルがおとりを買って出た。エーディンは青い顔して反対する。
「だめよアゼル! 危険すぎるわ。絶対にやめて」
「相手は魔法を使う相手だよ。この中で魔道士であるボクが一番魔法に耐性があるのだし、相手を引きつけるアピールにも魔法のほうが適役だと思うんだ」
「だめ、絶対にダメよ!」
首をぶんぶん振ってエーディンは必死で反対した。
またエーディンはボクを信頼してくれていないのか?悲しいが、アゼルにだって意地がある。己がハンパな男でないことをアピールしたい。そのためにこの役を買って出た。
「私もアゼル公子に同行しよう。彼がムチャをしないように、私がしっかり監視する」
そう申し出たのはアイラだった。アゼルは目をぱちくりさせたが、彼女はもとよりそのつもりだったのか?
アイラは目でエーディンに安心しろと伝えた。エーディンはそれでも不安だったが、エスリンが「アイラ王女が一緒なら大丈夫、ねエーディン」と彼女の肩をぽむと叩いた。
「わかったわ。…アイラ王女、アゼルのことよろしくお願いします」
観念したのかエーディンもついに折れ、アイラにアゼルのことをまかせたのだった。
「(て、完全に半人前扱いされているよね?)」
女性陣の対応にカチリと不満を覚えるアゼルだった。


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