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第7話

祭りから一夜明け、アメジはラルドに呼び出され、寺院に向かった。
「ほれぃアメジ殿、ぷれぜんとふぉーゆーvじゃ。」
「はひ?」
そう言ってアメジに差し出されたのは、
手のひらに収まるサイズの、ドクロ水晶だった。
「ドクロ・・・水晶じゃん、なに?なんで?」
「族長に聞いたところ、どうやらアメジ殿はドクロ水晶を持ってないそうじゃの。
それを聞いてワシが徹夜で(マッハで)作ったんじゃよ。」
「・・・・あ。」

アメジ、昨夜のことを思い出した。たしかにジストに言った。
黒水晶と戦うと。

「これがないことには戦えんじゃろ。でアメジ殿のために急いでこしらえたのじゃ。
愛情をたっぷりと詰め込んで、なv」
「ははは、ありがと。(愛情はいらんけどな)」
苦笑いしながら、ラルドから(愛情たっぷりの)ドクロ水晶を受け取った。
「さぁ、善は急げといいますぞ、まいろうかアメジ殿。」
「へ?・・・はい?・・・・」

わけもわからず、アメジはラルドに連れて行かれた。
街を出て、少し登り、山岳神殿に向かう途中の広い場にと出た。
そこからはリスタルの街が見渡せ、アメジのいた水晶神殿へと続く道が分かれている。
そこにはすでにジストとタルがいた。
山脈の向こうを見据えていたジストはラルドとアメジの到着に気付くとそのほうへ振り返った。

「族長、様子はどうじゃ?」
「ラルド様。・・・まだですが、そろそろ、来ると思います。」
「そうたる。この時間はあいつのお昼ご飯の時間たる。」
シリアスな表情の彼らとは反対にアメジは?な表情のまま、状況を理解できずにいた。
「そういうことじゃ。アメジ殿・・・準備はよろしいかの?」
「へ?」
わけのわからないアメジ、もドクロ水晶へと目をやったラルドを見て、なんとなく事を理解した。
「・・・え、ちょ・・・まさか・・・もう?」
汗たらたらアメジ、アメジの不安などわからずこくりと頷く二人と一匹。

まさか、昨日返事で今日かよ?!
いきなり、あのバケモンとヤルっていうの?!

来た!とジストの声で、みな山脈のほうへと目をやった。
アメジたちを覆いつくす黒い影は、あの日、アメジの前に現れた、あの黒水晶だった。
ドス黒い目でアメジたちを確認すると、ギャアアアーーーとガラスを爪でこするような声をあげた。
「ぶっひゃー、でたよ、やっぱでけーな、おい。」
アメジまばたきも忘れ、黒水晶を見て固まる。
「よし、いくぞタル。」
「おっけーたるよ!」
ジストとタル、慣れているのか、冷静に黒水晶を見て、構える。
「まかせましたぞ、アメジ殿!!」
「はい?」
気付けばラルドは、アメジたちのはるか後方の岩陰にと身を潜めていた。

(おい、なにひとりだけ安全地帯にいるんだよ?!)

「アメジ!道しるべを!」
「へ?はい?なんですか?道しるべって・・・?」
アメジ、ジストの言っていることが理解不能だった。
それにすぐさま反応したのがタル。
「やっぱりこいつボケボケたるよ!ジスト!」

う、う、なんだ?

?な表情のアメジ、ラルドの目線のドクロ水晶に気付く。

そうか、これ、ね。

ラルドに目で合図を送ると、ラルドこくこくと頷いた。

これのことか・・・しかし・・・どうやって使うんだ?これ


・・・・みなの期待の目線にアメジ汗出る・・・。


ヤバイ、決めないと、かっこいい生き様を・・・オヤジじゃないけど(恥)


ごくり、アメジ決意。

左手に握り締めたドクロ水晶を天へと掲げた。
「くらえー、黒水晶ーー!やぁ!」
と叫んだ……。

「はい?!」
がうーーん・・・という切ない効果音とともにジスト、ラルド、タルの切ない声がした。
その反応に、アメジまたしても汗。

「あれ・・・?なんもおこらねぇ・・・・」
ちーん・・・・。
「あいつ、やっぱ・・・ダメダメたる。」
はぁ、とタルおもいっきりあきれてジストを見た。
「もしや、アメジ殿・・・眠りすぎてドクロ水晶の使い方を忘れてしまったのかのう?」

??な表情ながらも、アメジにいまだ期待の表情を送ってくるラルドに、申し訳なさそうにアメジは
「いや、ていうかあたし・・・・初心者・・・なんですけど。」
自分のほっぺのかわりにドクロ水晶をぽりぽり。


がくーんとするジストとラルドに、こいつほんとにダメたる。と殺意さえ露わにするタル。
「アメジ殿・・・・マジですか・・・の?」

戻る。

第8話

アメジは初心者だった・・・。
ろくに巫女としての修行をつんでおらず、当然というか、ドクロ水晶の使い方もわからなかったのだ。


「あーもーつかえねーたるっっ、お前やっぱニセモンたるよ!」
ブチキレて背中の毛がぶわっと逆立つタル。
まさか、という表情のジスト。
すまんすまんとアメジ・・・・。
ちーん・・・・さみしい空気の流れる中、こちらの都合などおかまいなしに、空中の黒水晶は大きな口を開けたまま、アメジたちへと迫って来た。

「アメジ殿!危ないですぞっ」
「うひっ」
反射的に左方向へと飛び込んで、黒水晶の攻撃をかわしたアメジ。
アメジたちを横切った後、また空へと高く舞い上がる黒水晶。
やつがこちらへと向き変える間にとラルドが叫んだ。

「むむむ、しかたないのう。
アメジ殿、ワシが使い方を教えますからの、その通りにやってみてくだされ。」
岩陰から顔をのぞかせながら、ラルドが言った。
「えっええ・・・・わっわかった・・・・(ぶっつけ本番かよ?)」
すぅ、と息を吸って、心を落ち着かせるアメジ。


ええい、やるっきゃねーな、やってやろーじゃん
楽できる人生のために!!!


「よしっ、いいよラルじい!」
きっとラルドに答えるアメジ。
「では、アメジ殿、ドクロ水晶を片手に構えてくだされ。」
「おおっ、こう?」

アメジは右手にドクロ水晶を持った。
「で体内の水晶をそのドクロへと集めるのじゃ。
大事なのはイメージですぞ。水晶の流れをイメージですわ。
水晶をそのドクロへと集めてみなされ。」
「ドクロに水晶を集める??」

とりあえず目を閉じて、イメージしてみる。
気持ちを右手のドクロにと、力をこめて、集まれと集中してみる。
「むむむむ。」
そんなアメジの様子をあきれながら見てるタル。
「いきなりできるわけないたる。・・・・あいつに期待するだけ損たるよ。」
「タル、いいから準備するぞ。」
ジストはアメジの道しるべが来ることを信じ、右手に水晶を集め始める。
そしてタルも戦いへと集中を始める。
「タルはジストについていくだけたる。」


集中力。ここぞという時の集中力はアメジはかなりのものだった。
ドクロ水晶が輝き始めた。ソレを見て一番驚いたのが本人。
「おおっ、光っているよドクロ!」
「アメジ殿、そのままを保つんじゃ、それでもう片方の手で、
ドクロ水晶を触れてみなされ。」
「こう?」
アメジは左手人差し指をドクロのおでこにあたる場所にちょんと触れてみた。
「ドクロから指を離して、線を描くように水晶の光の線を描くのじゃ。」
ゆっくりと左手の人差し指をドクロから離すと、
ドクロより流れる光の線が、アメジの左手人差し指にて描かれていく。
「わわ、すげー、描けたよ。」
喜ぶアメジ、するとふっと線が途切れ、ドクロの輝きも消えた。
「あれ?」
「アメジ殿、常に集中、水晶を放出し続けるんじゃよ、もう一度。」
「おおっおっけー。」
再び、集中、アメジ、水晶の流れをイメージするのは得意なのか、

それともこれが聖乙女の力なのだろうか。

コツをつかんだアメジはノリノリで光の線を描き出した。
「よし、いいぞ。」
「ふん、それくらい巫女ならできて当たり前たるよ。」
「で、で、どーすんの?」
「アメジ殿、線が途切れぬよう、常に水晶を出し続けることを忘れんように、
で、その線が聖獣の大事な道しるべじゃからの、

黒水晶へと向かう光の道を描くのじゃ。
やつは直線の動きには敏感じゃから、できるだけ曲線を描くのじゃ、螺旋を描くようにの。」
よしっ、とアメジは答えて、光の線を空に描きながら、走った。

ジストとタルの周囲を走りながら、光の線を描いていく。

「なかなか力強い水晶の道じゃ、さすがアメジ殿。」
ギャアアーーー、アメジたちへと向き直った黒水晶の次の攻撃が来る。
「アメジ殿、その光を黒水晶へ向かうようイメージじゃ。ボールをやつ目掛けて投げるようにイメージするとよいと思いますぞ。」
「おっしゃー、いっけーい。」

左手から、ボールを投げるようなフォームで、光の線を黒水晶へと放った。

戻る。

第9話

アメジの指より放たれた光の線は、空中で羽ばたく黒水晶へと向かった。
それと同時に、ジストの手より放たれた水晶を受けたタルは、輝く光の兵器となり、
アメジの描いた線の上を駆けるように、凄まじいスピードで黒水晶へと向かった。
確実に黒水晶の死角から攻め込むことができた。
光の兵器と化したタルの体当たりによって悲鳴を上げる黒水晶。
タルが黒水晶へと到達したと同時に、アメジが描いた光の線は消滅した。
黒水晶へと一撃を与えたタルはジストのもとへと戻ってきた。
ジストは再びタルに水晶を放ち、アメジの道しるべを待つ。

「アメジ殿、また同じ繰り返しですぞ。」
「よし、なんかコツつかんだかも、任せて!」
調子こいてはりきるアメジ、再びドクロより光る水晶の線を描いていく。
大地を蹴りながら、駆ける、跳ぶ、大きく曲線を描きながら、
ジストたちの周囲を、土壁を駆け上がり、空高く舞いながら、弧を描いていく。
力強く大地を蹴るアメジの足によって砂煙が舞い上がった。

さぁ、いっけーい。と指先の水晶を、光の線を、黒水晶へと再び放った。
同時に光の道を翔る光の生物、アメジ、ジストとタルの連携の繰り返し、
何度も黒水晶に打撃を与え、そのたびに黒水晶は悲鳴にも似たあの耳に障る声をあげた。

「それにしてもあんな戦い方する巫女初めて見たたるよ。サファとは全然違うたる。」
「ああ、なんて力強い舞なんだ。・・・しかし、水晶の量の調整が気になるな。
あれでは体が持たないんじゃ・・・。」


何度か打撃を与えたが、それでも巨大なバケモノは特に外傷もなく、
戦いは長期戦になるかと思われたが、
またしても黒水晶はなにかに呼ばれたかのように、ギャアアーーと鳴くと、山脈の向こうへと飛んで行った。


黒い影が去ったと同時に、アメジは急ブレーキがかかったように止まり、その場へと倒れこんだ。
「アメジ殿、大丈夫ですかな?!」
安全とわかるとすぐラルドはアメジの元へと駆けてきた。
「V?・・・」
「おお、もちのろんじゃよアメジ殿、Vですじゃ。」
やっりー、よっしゃーと叫びたいアメジだったが、立ち上がることができなかった。
「あ、あれ?なんか体変なんですけど・・・・?」
体力には自信のあったアメジなのだが・・・。

「アメジ殿、水晶の量をコントロールする力が、いまいちのようですな?短期決着方の戦い方でしたぞ?」
「はひ・・・?」
アメジ、ろくに巫女の、水晶使いとしての修行をつんでおらず、当然の結果かもしれないが、
とりあえず、ぶっつけ本番であったアメジの初バトルはなんとか成功に終わった。




「おお、アメジ殿、なかなかよくなってきましたぞ。」
「うん、なんかわかってきたかも、やば、やっぱ天才?あたし」
「いやいやまさにそうですわ、アメジ殿は生まれ持っての強い水晶の持ち主のようですからの。やはり救世主なんじゃ。」
ラルドはひたすらアメジを褒めまくる。そのたびにアメジはいやー、当然でしょ。とうれしげに鼻高々。

あの戦いの後、アメジはジストの勧めもあって、ラルドの元で水晶コントロールの修行を受けていた。
寺院の中で親切丁寧に教えを受けるアメジ、たまにラルドにケツをさすられ、そのたびにラルドに飛ぶ鉄拳、
そしてまた修行、を繰り返していた。

「ジジイ、ヨイショしすぎたる。あいつはおだてられるとますます調子に乗るタイプたるよ。」
「たった数日であれだけの上達・・・頼もしいな。アメジがいれば、あの黒水晶も近いうちにきっと倒せる。」
こっそりと様子見にきていたジストとタル。アメジの様子に期待の表情を見せるジストと対照的に不安げなタル。

「まあ、どんなアホでも強ければ文句ないたるけど、ジストとタルの足をひっぱらなければ。」
そう言ってアメジに意味深なウインクをして寺院をあとにした。




その日、ラルドのもとで修行を終えたアメジ。
寺院から出ると空にはもう星空が広がっていた。
寺院を振り返り、アメジの中にふと思い出された顔、それは……。
「トパーズ様・・・。」
本当ならアメジの師はトパーズであった。しかし、アメジはろくに修行を行わず、トパーズの言うことを聞かず、いつもモンドと遊んでばかりいた・・・100年前・・・・。
だが、アメジの記憶の中ではついさっきまでの記憶だった。
「はは、変なカンジだな。本当ならあたしはトパーズ様に教わるはずだったのに……。
ま、ラルじいには感謝だけどね。
エロいのは問題だが・・・。」
ふぅ、と息をついて空へと目をやったあと、ふと街中にむけた目に飛び込んできたのは、
夜風になびく白い髪、月夜に照らされたその後姿の人にアメジの目にはあの人が映った。

「トパーズ様?!」
アメジはその人を追った。


ここは百年先の世界


アメジの知る人は誰一人いないし、いるはずがない


でもまさか、もしかしたら、という思い


もしかしたら幻を見たのかも?


それでも・・・




かすかな望みがアメジを走らせた。
階段を駆け上がり、リスタルの街の一番高い場所まで出た。
その影は、街の外へと消えた。
アメジもあとを追って、外へでた。

真っ暗な山道を登り、最近黒水晶と戦った広い場へと出た。
そこからさらに、アメジのいた水晶神殿へとむかう道の途中、
アメジの耳に入ってきたのは、楽器の音……。
「笛?」
そしてその笛の音に乗せて流れてきた唄い声。
その音の方向へと歩みを進めるアメジ。
そしてアメジの向かう先にいたのは……

笛を吹く白い髪の男と、その傍らで笛に合わせて歌っているタルよりも一回り小柄な聖獣だった。
男はトパーズではなく、アメジと年の近そうな若い男だった。

アメジに気付いた聖獣は唄を止め、大きく丸く揺れる瞳で、じっとアメジを見た。
歌がやんで一秒後、男は演奏を止め、アメジのほうへと向いた。

「だれだ?お前。」

こちらが問いかけるより先に問いかけられたアメジ。
月明かりと同じ光を放つ瞳に睨まれ、お前こそだれだよ!?とつっこむ事を忘れたまま、しばし立ち尽くしていたのだった。



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