白猫りったんのお話

りったんと桜

あるところにふわふわの白い毛の女の子がいました。
女の子の名前は りったん。白猫のかわいいかわいい女の子。
白くて長ーいしっぽをゆらゆらと左右にゆらしながら、りったんはお外に飛び出しました。
りったんはお外が大好きです。
りったんはおうちの子。ちゃんとおうちのある子。
でもお外が大好き。いつも何回でもお外に行きます。
鳥さんとお話したり、虫さんと遊んだり、木にのぼったり、山の中をかけまわったりと、毎日毎日楽しいのです。
そんなりったんはみんなの人気者です。
みーんなりったんと遊ぶのが大好き! りったんもみんなと遊ぶのが大好き!
今日りったんと遊ぶのは、灰色ネズミの ネズたん です。

ネズたんは今日もりったんをまっています。
大好きなりったんと一緒に、見たいものがあるからです。
もしそれがなくても、ネズたんはりったんをまっているのでしょうが。
さて、今日のネズたんはりったんとなにをするつもりでしょうか?

「うわーー、みごとに咲いたね。ほんとにキレイだな」
ネズたんはお空を見上げました。ネズたんのお空はふんわりとやわらかいピンク色でした。
桜という大きな木に咲く淡いピンク色のお花。春に咲くキレイでカワイイお花。
最初のつぼみが開いたとき、それをまっさきに見つけたのはネズたんでした。
まるで宝物を見つけた気分になりました。そしてまっさきに大好きなりったんに教えてあげようと思いました。
ですが、ネズたんは思いとどまりました。どうせなら、もっといっぱい咲いてからりったんに教えてあげよう。そのほうがりったんもよろこんでくれるぞ。と。

ちりんちりん。
なじみあるその音にネズたんはぴくりと耳を立ち上げました。
りったんの鈴の音です。りったんは無口な子。だから鈴の音をさせて存在をアピールするのです。
桜の木の下で待つネズたんのほうへと歩いてくるりったんに気づいたネズたんは嬉しそうに息を弾ませて走っていきました。
「りったんりったん!」
りったんの顔よりも小さなネズたんを、りったんは体を屈めて鼻の先をくんくんしました。
ネズたんもあわててりったんの鼻先をくんくんしました。
顔を起こしたりったんの鈴が「ちり」と小さくなりました。こんにちはのあいさつです。
今日はなにして遊ぶの?といった顔でりったんは顔を上げたその時、
りったんの頭の上にふわふわとピンク色の小さなはなびらが落ちてきました。
「りったんりったん、頭の上」
ネズたんの声にりったんはよくわからないといった顔で首をちょこんと傾けました。
その拍子に、ピンクのはなびらがふわりと地面に落ちました。
「りったんこれだよ。ほら見て見て。頭の上のほうずーっと」
ネズたんはたたたたーと器用に桜の木をのぼっていきました。
りったんはネズたんの動きを目で追いかけています。走るのが大好きなりったんが追いかけてこようとしたとき、ネズたんはあわてて止めました。
「まってりったんもうすこしそこにいてね。りったんにいいもの見せてあげるから」
ネズたんは幹の上を走り、先端の小さな花たちをつかむと、それをとろうとしました。
「うーんうーん」
小さな花でも、小さなネズたんにとっては大仕事でした。
びくともしません。
ネズたんはすぐにはぁはぁとなりました。せっかくりったんに花をとってあげようと思っていたのに、それができずがっくりしました。
りったんはそんなこと気にしないのに、それでもネズたんはがっかりしました。
「はぁー、せっかくりったんにプレゼントしようと思ったのに…」
またがっくりとなったネズたんを、その時突然の風がおそいました。
「うわぁぁ」
あっさりと風に足元をさらわれたネズたんは、ふわりと空に舞い上がりました。
りったんもびっくりした顔で見上げます。
「うわぁぁぁぁ」
ネズたんを桃色の風がおおって、その桃色の風といっしょにりったんの上にと落ちていきました。
ネズたんはりったんのピンク色の耳にぽよんとはねかえって、地面に着地しました。
ぶわりとたくさんの桃色をまとって。
りったんの上にたくさんのピンクがふりつもります。桃色の嵐のように、たくさんたくさんりったんの上に。
「あてて、うわっ」
すぐに立ち上がったネズたん。思わず感動の声をあげました。
りったんをつつむように降るたくさんのふわふわの桃色の。桜のはなびらたち。
りったんの頭に、背中に、桃色のふわふわはドレスのようにふりつもりました。
ちょこんと鼻先にものったその桃色の欠片は、りったんのお鼻のピンク色によく似ているとネズたんは思いました。

「だけど、ボクにはりったんのピンクのほうがキレイに見えるよ」
えへへ、と照れくさそうにネズたんは笑いました。
また風に揺らされて、満開の桜の花はゆらゆらと揺れていました。
まるで桜たちもりったんに話しかけているみたいに、楽しそうに揺れていました。

暖かい春、それはりったんの季節。

-Powered by HTML DWARF-