第七話 爆発!大爆発

暴走シャニィの活躍見たかい?
トラブルメーカーだけども頼れる味方
ロボとヤデトがホツカを襲う
だけど簡単にやられやしないよ
そうだろう? ホツカ君には魔法と頼もしき相棒がいる
さあゆけホツカ、ヤデトに目にもの見せてやれ!
見よ!キチガイどもの夢の跡!七番はついに運命の出会いがあるぞ!







大爆発だ。
ホツカの言葉にシャニィは一瞬きょとんとするが、すぐに目を輝かせて「ほいきたまかせろ」とばかりに自信満々に手製を爆弾をみせつける。

「よっしゃまかせな。アタシのこのこしょう弾であのロボもスクラップにしてやんよ!」

振りかぶって、シャニィが爆弾をヤデト操る魔動ロボに投げつける。
ロボにぶつかる直前にホツカが魔法を唱え、シャニィの爆弾の威力を上げる。

ばふんどごん、と不安な音をさせて爆弾は弾けた。

「くそっ、なんだこの煙は。なにも見えないじゃないか、くそっっ」

怒り苛立ちヤデトが操縦席で叫ぶ。煙を晴らすように、ブンブンとハンマーを左右上下にと振り回す。しかしそれがバランスを崩し、転倒しそうになるが、体が傾いたことに焦り、ヤデトは慌てて操作する。ロボの片手でついて、なんとか転倒は免れた。ロボの操縦について散々技師のボルトたちに指示されたが、ヤデトの操縦は相変わらずレベルだった。

「ええい、おい技師! なんとかしろ」

通信機をとって、ヤデトが通信先の技師に叫ぶ。通信機の向こうから聞こえてきたのはボルトの声だ。向こうも向こうでいらだった調子で答えてくる。

『なんとかしろって、たくどういう状況っすか?』

ボルトの態度にますます短気なヤデトは苛立つ。

「うるさい生意気な言い方をするな! 斜めだ! 斜めになってどうにもならん、なんとかしろ!」

『はあ? 斜めって…なに言ってんだよ』

ぼやきまで通信機から聞こえてきた。ますますヤデトの頭が熱くなる。

「この役立たずが! お前もロボも役立たずにもほどがある」

『っち、今なんつった『おいボルトやめんか』

もう一人の技師の声がボルトの声をさえぎった。今のはもう一人の高齢の技師のほうだろう。ヤデトもボルトも気が立っているのはわかるがけんかをしている場合ではない。ボルトも少し落ち着いたのか、はーと息を吐きながらヤデトにアドバイスをする。

『斜めって機体が傾いている状態っすよね。前方っすか?それとも左右っすか?』

ボルトからアドバイスを受けて、ヤデトも少し冷静さを取り戻し、指示通りに操作する。言われたとおりに操縦すると、無事立ち上がることができて、思わず「やったぞ、ちゃんと立ち上がった」と嬉しそうにヤデトが声を上げる。

時期に煙が晴れる。シャニィのこしょう弾、ホツカの魔法で援護したが、それでもロボは兵士のようにあっさり故障とはいかず、立ち上がったロボはホツカたちのほうに歩みを進めている。

「ちぇっ、効いてないのかよ? 思いのほか頑丈だな」

ちっと舌打ちしながらシャニィが悔しそうにつぶやいた。たしかに兵士たちのように故障はしてないようだが、それでも威力はなかったとは思いがたい。

「ストックはまだあるの?」

ホツカが訊ねると、「あと二発かな」とシャニィが返してきた。


『シンクロ魔法を使うんじゃ』

師匠の言葉を思い出しながら、ホツカは思案する。シャニィの爆弾と火の魔法でシンクロ魔法を使えば、ロボの破壊も可能かもしれない。雷魔法が使えない今、火のシンクロ魔法でド派手に決めるしかない。

「二つ同時にぶつけられる?」

ホツカの要望にシャニィは不敵ににやりと笑んで答える。「もちろんだ」シャニィが両手に爆弾を構える。

「じゃあ投げるぞ」

「うん、頼むよ」

杖を構えながらホツカがシャニィに答えた。

ブオン、巨大なハンマーを横振りにし、煙を飛ばす。ズシンズシンと前進しながらヤデトがロボのハンマーを振り上げてホツカたち二人を捉える。

「覚悟しろ、ホツカ。貴様はここで成敗されるのだ」

「今だ、おりゃーーくらいやがれ」

両手を振り上げたシャニィが爆弾二発をロボの正面から投げつける。ロボはハンマーを振りかぶる。
ホツカは火の攻撃魔法を発動させる。その瞬間いつも以上の火の精霊たちがホツカのもとに集う。範囲を狭めて、強力な火力でもってロボに向けて放つ。

「火の精霊よ、めいっぱい暴れてこい!」

ホツカの命を受け、火の精霊たちが爆弾に集まり、そこから一気に膨張する。

「いっけーい」

拳を突き上げてシャニィがジャンプしながら叫ぶ。シャニィやホツカの顔を赤い光が照らす。その眩き光と灼熱の炎がモニター越しにヤデトの目にも照らし出される。

「うわーーーーーーっっっ」

「「大爆発!」」

ドカーンと広場一帯に大きな爆発音が響いた。広場から避難した人たちにもその音は聞こえ、皆驚いて広場のほうに目を向けた。もくもくと黒い煙が立ち上っている。
激しく爆発した魔動ロボは誰が見ても明らかなほど外部が損傷していた。操縦席のヤデトは無事だったが、スイッチからなにから機器やらついには座席のお尻のところが熱くなり、恐ろしくなってヤデトは慌ててロボから出て本部に連絡を取る。

「おのれホツカめ、それにあのクソ生意気な女も許せん」

物陰からホツカたちを憎憎しく睨みながら、ヤデトが通信機で魔動隊長に命じる。「奴らを捕らえろ!」と。


『ホツカよ、上手くやったようだな』

師匠がホツカのもとへと飛んでくる。

「はい、師匠。ロボもあれだけ壊れれば、修理しないと動けはしないでしょう。…でも、派手にやりすぎてしまった気がするのですが…」

今広場にはホツカたちしかいないが、騒ぎを聞きつけて協会の手の者がやってくるだろう。動ける兵士たちがすぐにやってくるに違いない。この町の人々を守るためにやったとはいえ、ますます協会の反感を買ってしまい、町の迷惑になってしまうのではないか?元々監視も多く警戒されていた町のようではあるが。ホツカが危惧するのはそのことだろう。

「おっ、その白い鳥またホツカのとこにきているな。なんだよやっぱりペットなのか」

たたたとホツカのもとにシャニィが走ってきて訊ねるのはホツカの肩に止まっている師匠のことだ。

「師匠はペットじゃないよ!」

手で師匠を庇うようにしながらホツカが言う。ペット呼ばわりなど無礼極まりない。がシャニィからすればただの鳥だ。

「わかったわかった、ペットじゃなくて家族ってんだろ。でもシショーって変な名前だな。お前センスなさすぎ。アタシがもっといい名前つけてやるよ。そうだ、シラスなんてどうだ?絶対そっちのほうがいいだろ、ねシラス」

ビシッと人差し指を突き出しながらシャニィが勝手に師匠に名づける。それにホツカは「だから師匠は師匠だって言ってるだろ!勝手に変な名前で呼ばないでよ!」と憤るが、シャニィにはさっぱり理解してもらえない。『やれやれ…』と師匠はホツカの肩の上であきれるが、やがてのんびりしている状況ではないことに気づく。

「はー、馬鹿なことやってる場合じゃないね…」

肩をすくめながらホツカがシャニィに背を向ける。その前方にはすでにホツカたちを包囲していた魔動兵士の集団がいた。

「ハン、だーいじょうぶだって。アンタ魔法使いなんだろ。ドカンとこんな奴らぶっ飛ばしてやれよ」

まったくシャニィはのん気に言ってくれる。ドカンとぶっ飛ばすことはできても、その後がまためんどくさいことになる。シャニィの頭はその時その時のことしか考えられないのだろうか。

「まあだからこそ勢いがあるんだろうけどね」

シャニィは、とホツカが心の中で付け加える。シャニィと無事脱出し、そのあとをどうフォローするかだ。兵士たちを倒すだけならたやすいが、倒して終わりにはならない。協会はやっかいな存在だ。

「よおし、さっきみたいにドカンと派手に爆発させてやろうぜ!」

やる気満々のシャニィに、ホツカはシャニィを庇うようにして立ちながら兵士たちを見渡す。するとある箇所の兵士たちが突然ドーンと派手に空に舞い、破壊されて地面に倒れこむ。

「へ、なにかしたのかお前」
「いいや、僕じゃないよ」

兵士を破壊したのはホツカではなく、その破壊された兵士の向こうから見えたのは兵士…ではなく女性の姿。筋骨隆々…ではなく細く長い足は美しい女性のラインを描き、スリットからのぞく白く艶かしい足、その足は機械音をうならせる独特のブーツを身に着けている。

「あら、まさかの大発見だわー」

その主はホツカたちのほうを見ると、紅を引いた唇を吊り上げながら色っぽく微笑む。

「なんだよ、あの女。お前の知り合い?」

怪訝な顔してシャニィが訊ねるが、あの女性はホツカの知り合いでもなんでもない。なんでもないが、ざわりどきりとホツカの胸に妙なざわめきを覚える。
警戒するホツカたちに反して鋼鉄ブーツの色っぽい女性はなれなれしく話しかけながらこちらへとくる。

「やーん、そんな怖い顔しちゃだめよー。かわいい顔がだいなしよ。うふ。でも怒った顔もかわいいかもー」

「あっちょっ、あぶな」

ホツカたちのほうを見ながら前進してくる女性だが、まだ兵士たちは残っている。女性を敵とみなし武器を向けている。あぶないとホツカが女性に向けて叫ぶが、どこ吹く風といった具合に女性に危機感はなく、ホツカたちに近づいてくる。
ついに兵士が女性の背中に向けて矢を放つ。ホツカが女性を助けようと魔法を唱えようとしたが、それは直前でキャンセルした。必要がなかった。

「! 心配は無用よー。ワタシ、こう見えて強くてステキなお姉さんなのよ。見てて」

女性は身をかがめ、ブーツのつまみをカチカチといじる。ギュイイーンと機械音がうなりだし、「はぁっ」と掛け声を上げながら女性が脚を振り上げると女性に向かってきた矢はすべて砕け散った。さらに重そうなブーツで軽やかに駆けながら、スリットからはみ出す太ももを気にすることもなく頭上高く足を振り上げて兵士たちに振り下ろす。
あっという間に無数の兵士たちを大破していた。あの細い体の麗しい女性が、鬼のような強さで兵士たちを圧倒していた。

「なんだよあの女、カツミみたいに強いのかよ…」

女性の強さにシャニィも呆然となる。カツミの名前に反応して女性が振り向いて答える。

「うふふ、ワタシもカツミには負けないくらい強いのよ。そうじゃなけりゃ彼の代わりは務まらないものね。あら、君…」

ふふふと笑みをたたえたまま女性はホツカのほうに近づいてくる。ホツカのほうをマジマジと見ながら、「うふふ絶対そうだわー」と嬉しそうにしている。その理由はホツカたちにはまだわからない。

「ねえ組長、この子絶対組長のタイプど真ん中よー」

ホツカに意味ありげにウインクを飛ばした女性は、彼女が現れた方向へ振り返り誰かに合図するように手を振っている。よくわからないホツカたちもそちらに注目する。

「やれやれフィア、そんなに先走っては私の護衛の意味がないだろうに…」

そういいながら現れた相手にホツカは驚き息を呑んだ。

「あの人は…」

ホツカの小さな呟きは師匠の耳にだけ届いた。目を見開き、きゅっと唇をかむホツカの表情を見上げて、師匠もホツカの視線の先の相手を確認する。

「大丈夫、我々は怪しいものじゃないよ。事情は君が助けたという男性から聞いている。フィア、彼らを保護してあげてくれ」

女性から組長と呼ばれた男はエンジ色のコート姿の中年男。男は優しげに微笑みながらホツカたちに自分たちは敵ではないとアピールしながらそう話し、女性…フィアに命じた。

「オーケー組長。それじゃあ二人とも失礼するわね。顔に胸が当たっちゃうかもしれないけど我慢してくれるかしら? うふっ」

「わっあっ」「ちょっおいなにすんだよ」

フィアは両脇にホツカとシャニィを抱きかかえる。そのすきに師匠は逃れるように上空へと羽ばたいた。

『反協会組織の活動家ヤードか。ホツカよ、お前はあの男になにを感じたのだ?』


「悪いようにはしないよ旅人諸君。協会から住民を守ってくれたお礼をさせてくれないかな。この町の一代表として君たちをもてなしたいんだ」

フィアに抱きかかえられて運ばれるホツカたちに、すれ違いざまに組長と呼ばれた男がウインクしながらそういった。もてなしの言葉にシャニィは「マジでか?」と嬉しそうに目を輝かせたが、ホツカはなにを思うのか浮かない表情のままに運ばれながら揺れていた。








見たか火のシンクロ大爆発!
恐ろしい魔動ロボも大破だぜ!
ホツカとシャニィ、でこぼこのようでなかなかナイスなコンビだよ
ヤデトもボルトといいコンビだったって?
そうだね、協会も仲間同士力を合わせて対抗してくる、かも?
もっともっと仲間を集めてパワーアップしなきゃだぜ〜?
そしてそしてついに出会ったホツカ出会った
運命の出会い、信じるかい?
ホツカとヤード、二人の出会いで運命変わる?
協会の運命も変わってく?
ホツカがヤードに感じる想いってなんだろねぃ?
続きはぜひとも聴きにきてくれよ?シーユーバイチャッ!



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