第十六話 白猫の王子様

ボルトとワマヨが出会ったよ
ボルトがロボの開発に移動だって
ワマヨもただの女の子じゃないみたいよ
協会の動き、気になる気になる
さらにカピカって只者ならぬ男も出たよ
いろいろ悪巧みありそうな予感さ
ホツカよヤードよどうするどうする〜
舞台は西地方に移動かい?
見よ!キチガイどもの夢の跡!第二部のスタートだよ!








その日、ホツカは悪夢によって目を覚ます。
久しぶりに予知夢を見てしまった。また誰かが犠牲になる内容だった。
夢の中に現れたのは、先日ホツカたちが救出した男【オトート】だった。オトートはまたしても、協会の手にかかり、命を失う。ただ彼が処刑されたわけではなかった。オトートはある人物を庇って、事故により命を落としたのだ。オトートが庇ったのは、美しい容姿の青年だった。栗色の髪は自然と整っており、銀色と金色の特殊なシンボルが刻まれた腕輪を両腕にはめている。銀色のジャケットが不思議と品があり、彼に似合っている。それよりも特徴的なのが、彼の肩には美しい白い毛並みの白猫がいた点だ。

彼は特別な存在だ。彼を命がけで守ろうとするオトートにとっても、彼のいる地域の人たちにとっても、そして…近い将来、ホツカにとっても、彼は特別な存在となる男であった。


『ホツカよ、見たのか?』


ホツカの寝姿を見守っていた師匠は、ホツカが予知夢を見たことを察していた。ホツカはそれを肯定し、「はい」と答えた。ホツカの様子からして、また最悪な内容の予知だったのだろう。いつものことだが。

のんびりなどしていられない、急がねば。場所はここではない。西地方の中心都市【バラーイ】だ。
寝床から飛び起き、ホツカはすぐにリビングにいるヤードのもとへ。ヤードやフィアがすでに起床してお茶を飲んでいた。


「あら、ホツカ君、おはよう〜」

挨拶するフィアに返す暇などなく、ホツカは一直線にヤードのもとへ向かう。


「ヤードさん、すぐにバラーイに行きましょう」

鬼気迫るホツカの様子に、のほほんとした様子のフィアも驚いた様子でヤードと顔を見合わせる。

「ちょうどいいタイミングだね。実は、バラーイから手紙が届いていてね、今日にも出発するつもりでいたんだよ」

ヤードの言葉に、ホツカは目を見開く。どうやら、ホツカの要望がなくても、ヤードたちはバラーイに行く予定らしいのだ。その理由となった手紙の差出人は…

「オトートさんからでね。ある人物が大変な目に合いそうだから、ぜひとも一緒にその人を助けて欲しいとのことでね」

ホツカの夢の中でも登場した、例のオトートからの手紙だった。オトート氏は、今西地方にいるとのことだ。そして、ある人物と言うのは、ホツカが夢で見た、オトートが守ろうとしたその人に違いないだろう。

「実はその人物は私の知人でもあってね。ぜひとも駆けつけてやりたいんだ」

ヤードとあの人は知人関係にあるらしい。やはり、ホツカとその人物は、出会う運命にある…ということだろう。ヤードと彼の関係はホツカにとってはありがたいし、都合がよかった。


「すぐに行きましょう。オトートさんと、ラキラさんを助けるために」


一番遅く起きてきたシャニィが現状を飲み込めないままに、ヤードたち一行は西地方の【バラーイ】へと向かった。鉄道を中心とした陸路で向かう。バラーイに着くまでに半日はかかった。予知夢で見た日はまだ先とはいえ、移動中もホツカは心が休まらなかった。

「まったく、あのおっさんは、死にたがりにも困ったもんだよな」

ホツカから移動中に事情を聞いたシャニィが、トラブルの中心とも言えるオトートの行動について愚痴をもらす。別に死にたがりではないのだろうが、こうもトラブルに首を突っ込んでしまうのは、彼の性分なのか運命なのか。とはいえ、オトートとのつながりで、こうして西地方に向かう運びになったのだ。


バラーイの駅に着くと、ホームに見慣れた顔の男がヤードたちを出迎えた。

「ヤードさん皆さん遠路よりお疲れ様です。お待ちしておりました!」

威勢のいい声で出迎えてくれたのは、オトートだった。いきいきとしたいい顔をしている、充実した日を送っているのだろうか。

「おっさん、またなんかトラブルなのか?」

半分あきれた調子の口調でオトートにそう訊ねるシャニィをホツカが「ちょっとシャニィ」と止めるが、こんなところで立ち話できる内容でもあるまい。オトートは肯定するように軽く頷いて、「こちらへ、案内します」と言ってヤードたちを手招き案内する。


駅を出て向かったのは、バラーイの中心都市。レンガ造りの町並みに、石畳の通り。市場は賑わい、活気もあった。おいしそうな食材やら装飾品やらが立ち並ぶ露天に、シャニィやフィアたちは惹かれていたが、観光は後回しだ、オトートの案内に従いヤードたちは通りを進む。


「こちらです」

通りの中にあるレトロな雰囲気ながらもしっかりとした作りの館。ここがオトートたちが属する組織の本拠地とのことだ。入り口に立つ番をしている男性に会釈をして、ヤードたち一行は館の門をくぐる。


「お久しぶりです、ラキラ殿」

「お待ちしていました、ヤードさん、フィアさん、カツミさん、それから…」

出迎えたのは、容姿端麗の青年【ラキラ】だ。お互いにこやかに握手を交わすヤードとラキラ。二人が顔見知りなのは本当のようだ。ラキラはヤードの連れである、フィアとカツミとも旧知のようだ。初顔合わせになるシャニィとホツカはフィアが紹介する。

「ラキラ様、こちらが私たちの新しい仲間の…シャニィちゃんとホツカくんです」

にこり、と爽やかな微笑でラキラはシャニィとホツカとも握手を交わす。ヤードに対しては初対面から「おっさん」呼びしていた礼儀しらずのシャニィも、ほぅと感嘆の息を吐きながらどこかしおらしい。やはりシャニィでも、彼のような美男子が相手では臆するのだろうか。目に留まるのは彼の容姿、だけではない。彼の肩に座り、大人しくしている白猫もまた目を引く美しい猫だった。


「二人ともはじめまして。ボクちんはラキラ、それからこの子はプリンセス。この町でボランティア活動をしているんだ」

ラキラが自己紹介をする。彼の肩にいる白猫はプリンセスという名の雌猫とのことだ。この町での活動、それをオトートも手伝っているとのことだが、それはつまり…


「ラキラさんもヤードさんのように、協会から人々を守るため活動されているのですね」

ホツカの言葉にラキラはこくりと頷く。見た感じ二十代前半くらいだろうか、フィアと同じ年頃のように見えるほど若々しい。線も細く、守るより守られるタイプのような外見だが、彼がここバラーイで活動する反協会勢力のリーダーなのだ。そんなこともあってか、志同じくするヤードとは以前から親交があったというのだ。

人を惹きつけるラキラは、その見た目のせいなのだろうか。理由はそれだけではなかった。


談笑するラキラとヤードたちから少し離れて、シャニィがフィアの腕をつつく。


「なあなあなんだよあの人、妙にキラッキラしてるよな?」

「ふふっわかる? ラキラ様は時代が時代なら、王子様なのよ」

「ええっ王子ってどういうことだよ」

二人の会話にホツカも加わる。

「シャニィ、さっき見なかった? ラキラさんの両腕の腕輪」

握手の時、自然と目に付く。ラキラの両腕には金色と銀色の腕輪があった。彼に負けず劣らず、それもキラキラと美しく輝いていた。とても、高価そうな品に見えた。

「ああ、あれ絶対値打ちものだよな。あの人、金持ちなんだな…」

いや、感心するところはそこではない。シャニィの鈍さにホツカは頭痛がしそうになるが。

「まあたしかに、あれは特別な品だよね。なんせ、王族しか身につけることができないものなのだから」

「え、王族って…」

さすがにシャニィですら気づくだろう。ラキラが何者であるかということに。

「ええ、ラキラ様は王家の血を引く、王家の末裔なのよ」

「そっか、それでキラキラしているのか」

改めてシャニィたちがラキラのほうに注目する。シャニィですら臆するほどの高貴なオーラの持ち主、それも王家の血筋の者とすれば納得がいく。

「わかったぞホツカ、キラキラ王子の属性って光だろ!」

くるっとホツカのほうに振り返り、ホツカをビシッと指差しながらシャニィが自信満々にそう言う。人にはそれぞれ属性がある。それを感知できるのは精霊か魔法使いだけ。当然ラキラもなにかの属性だ。シャニィの自信が単にキラキラしているイコール光属性というなら安直すぎるが。

「…違うよ。ラキラさんは土属性」

「え、ええー? あんなキラキラしているのに土? 全然あってないだろー。おっさんと逆だろ?」

シャニィのそれにフィアも「たしかにそうねー」と同意する。まあ見た目のイメージならそっちのほうがしっくりきそうだが、ちょっとヤードに失礼な気もするが。

「でもキラキラしている土は、間違いではないよ。キラキラ輝く金剛石…ラキラさんはそんなイメージかな」

「金剛石…宝石ね。たしかにバラーイは宝石の産地でもあるし、ラキラ様のイメージかもよー」

露天で見かけた美しいアクセサリーを思い出しながら、フィアがうっとりとする。

ただキラキラしているだけの高貴な人ではない、ラキラは大地に眠る金剛石のような硬い志を持った人物に違いない。ホツカはそう思う。そして師匠も…

『うむ、あの者を味方にすれば、お前は土のシンクロ魔法を使うことができるなホツカ』

「ええ、僕もぜひ、ラキラさんの力を借りたいです」


ホツカが見た予知夢の話、ラキラやオトートたちにも伝えた。彼らを不安にあおるのではなく、彼らを守るため、きちんと説明すべきだと判断したからだった。自分が死ぬかもしれないと聞かされて、オトートはショックを受けるかと思いきや、そうではなかった。

「ああっ、私のせいでみなさんをまた巻き込んでしまったというわけですか」

「オトートさん、あまり気にしないでください、あなたを死なせはしませんから」

落胆したのかと思いきや、オトートは

「私は死ぬのは怖くありません。ラキラ様をお守りできるのなら本望ですとも!」

鼻息荒く立ち上がるオトート氏に、シャニィがあきれたツッコミをいれる。

「おいおいおっさん、ほんとに困った死にたがりなんだな…」

「ああーん、だめよー、生きていたらいーっぱいイイことがあるんだからー」

シャニィに賛同するようにフィアが言う。まあたしかに死にたがりは本人はよくても周りはいい迷惑だ。

「オトートさんの気持ちはとてもありがたいけれど、ボクちんのために犠牲になることはやめてほしい。逆にボクちんがみんなを守る剣となり、盾とならなきゃいけないんだ」

そう言うラキラの目線は、自分の右腕の金色の腕輪と、左腕の銀色の腕輪にと動く。彼が言う剣と盾はその腕輪に関係していた。ラキラの言葉をホツカも理解する。

「金の剣銀の盾ですね」

ホツカの言葉に、「うん、そうだよ」とラキラは頷いて、そのシンボルである両腕の腕輪を掲げる。

片手に金の剣、もう片手に銀の盾を、それがラキラたちの先祖でもある初代国王の象徴だった。国王は民を守るため、自分は剣となり盾となって戦い守ることを王家の精神とした。その考えはしっかりと子へ孫へと受け継がれ、王家の男子が成人する際、腕輪へと形を変えながらも身につけ、その精神は忘れてはならない大事なものとして今も続いている慣習だ。かつては王が治める王政だったこの国も、民主主義を求める活動を受けて、民のためだと王は退き、王族は野にくだり、王家は表舞台から消え去った。王家が無くなった今でも、その血を受けつぐ彼らは、王家の意思と慣習を受け継いでいるため、腕輪を見ればラキラが高貴な者であることは誰でもわかることなのだ。中にはシャニィのように気づかない無知もいるわけだが。少しは歴史書のひとつくらい読んだほうがいいと思うホツカだった。


「この腕輪を受け継いだ時、ボクちんたちは誓ったんだ。ボクちんは銀の盾となって、人々を守るんだって」

たち…、複数形でラキラは言った。その相手を想うのか切なげに目を細めるラキラを、すぐさま慰めるように肩の白猫プリンセスが彼の頬に頬を擦り付ける。

「我々はラキラ様にしっかりと守られています。ラキラ様こそバラーイの希望そのものなんです。私だけではありません。兄や、他の者たちも、ラキラ様のためならこの命惜しくなどないのです!」

涙ぐみ熱くなりながらオトートはそう叫ぶ。ラキラが望まなくても、彼を守るためならどんな危険もいとわない、その覚悟らしい。
たいした忠誠心だ。盲目的かもしれない。オトートたちがラキラにここまで尽くせるのも、ただ王家の末裔という高貴な身分というだけではない。昔は貧しい環境にあったこのバラーイの地を、援助し宝石産業の発展に助力したのがかつての王家なのだ。

「まったくこのおっさんは…」

シャニィがあきれるが、誰がなにを言ったとしても、オトートの熱い想いは変えられないだろう。だから、守るしかない。そのためにホツカはヤードと一緒にここ【バラーイ】にきたのだから。

そして、オトートがヤードたちを頼ってきた理由。オトートの口から説明がされる。それはラキラが反逆を企む凶悪なテロ組織の首謀者で、近々協会に対してテロ行為を計画しているというとんでもない噂が流されているのだ。その噂を信じる者はそう多くは無いのだが、ここバラーイにも協会会員は多数いる。彼らがその噂を流しているのだ。もちろん協会からの指示なのだろう。さらに、協会側につき、ラキラを警戒しているのが中央政府だ。いたるところに仕掛けられた監視装置がラキラを監視し、なにかあればラキラを拘束するつもりでいる。
さらに率先して動いているのが中央政府の高官【カピカ】だというのだからやっかいだ。なぜやっかいかというと…


「ラキラ様を陥れようとしているのが……」

苦々しい顔つきで言いにくそうに口ごもるオトートの言葉を続けたのはラキラ。


「ボクちんの双子の弟なんだ」








ホツカの予知夢、またまた最悪な未来だったよ
最悪な未来避けるため、もちろんホツカは動くのさ
キーとなるのは麗しの貴公子
愛らしい白猫プリンセスも気になるよね?
双子の弟、カピカとの因縁どうなるの?
黒猫エンジェルもどうなるの?
ラキラとカピカ、二人の過去も気になるが
ドーリアの企みもおそろし気になるよ
そしてあのロボ大好きワマヨたちも、動き出している?
新たな仲間に期待膨らませ続くよ!ばいなら!


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