幕間 協会の面々2


ホツカとドーリア、二人の間の物語
ホツカが魔法使いになったわけ明かされたけど
まだまだ謎があるみたいだよね〜
いろいろ気になるところもあるがい、今回もちょっと小唄を挟もうかい
といえばお約束?覚えててくれたかい? そう協会の面々だよ
技師ボルトの目線だね、さらに協会が強く…なる?
新たな顔ぶれ、要注目さ!





「おい、ボルトはいないのか?」

協会本部に併設の工場内に、ヤデトの声が響く。反応が返ってきたのは呼びかけたボルト当人ではなく、ボルトの指導人でもある白髪の技師からだった。

「ボルトなら本日休暇をとってますが」

ならいなくて当然なのだが。ヤデトは「聞いてないぞ」とぼやき返す。とはいえ特に急用というわけではないようだ。「別にたいした用ではないが」と言いながら白髪技師から目線を整備中のロボへと移しながら独り言のように話し出す。

「あいつにしてはなかなかの働きだったからな、少しくらい褒美を出してやろうかと考えていたんだ。自慢ではないが、ボクのひいおじいさまはとても偉大な発明家でな。あの装置はボクにとっても、誇りと言えるものなのだ…」

「天候制御装置…ですか」

「うむ」とヤデトが頷きながら答える。普段は無愛想でかわいげのない少年だが、かすかに頬を紅潮させ、装置のことを語るヤデト。姉ドーリアにしか関心がないように思われるが、ひいじいさまである発明家イメツハのことも尊敬しているようだ。そこはボルトと同じなのだな、と老技師は思う。

先日、ホツカたちテロリストのせいで、天候制御装置に異常が生じた。この首都の天候を管理し、安全安心の象徴ともいえる装置の修理は急務だった。ボルトが手際よく修理をしたおかげで、装置は今日も問題なく稼動するようになった。他人などどうでもいいと思っているヤデトだが、ボルトの活躍については少しくらいは褒めてやってもいいだろうと思っていた。

「ふん、いないのなら、仕方ないな」

自分の機嫌のいいときに不在なら、褒美をあげなくてもいいだろう。たまたまいないボルトが悪いのだから…。



そのころ、休暇中のボルトは、西地方のある展示会へと来ていた。

「おおー、すげー、旧式のパーツまであるのか。現物、触りてぇー」

目輝かせながら歓喜の声をあげる。魔動ロボ歴史展という展示イベントだ。協会西支部には主に魔動ロボの強化や開発に携わる開発技術部があり、ロボのあらゆるパーツは西地方のほうが充実している。ボルトの仕事では、使用できるパーツも限られており、「あのパーツやらがあれば」などと歯がゆく思うことも多々あった。イベントがあることは一ヶ月前に知っていたボルトは、ぜひとも期間内に休暇をとって行こうと思っていたのだ。
単にロボの歴史に興味があるだけではない。イベント主催は協会西支部の幹部の者らしい。しかも開発に携わっている者と聞く。あわよくば、いろいろと欲しいものを頼み込んで譲ってもらえたりしないかという企みがあった。

ボルトは趣味でロボを制作している。協会とは関係ない、完全に個人での、趣味の制作物だ。だが、ボルトの資金では材料の調達も難しく、主にその面が制作の壁となっていた。技術はある。十分なほどに。ボルトは本来修理よりも制作のほうが好きだ。設計からデザインすべて自分で行う。幼いころから、地面やらノートやらに発明品のアイデアを書きなぐった。家が裕福なわけでもなく、そうした技術を磨ける学校に入ることはできなかったが、自己流で一通りのことはこなせるようになった。協会の専属技師として採用されたのも、コネなどではなく、ボルトの実力だ。ゆえに、ボルトは協会への忠誠心などはほとんどなく、大好きなロボや機械に触れるからと言う理由で協会に籍を置いている。

嬉々として見入っていたボルトの脳内では、設計図からどんどんとパーツが組み合わさり、ロボが完成する。妄想の世界の中で、そいつは動き、暴れ始める。テンションがぐいぐいと上がっていくが、実現するためには資材が不足しているし、不可能だ。ああ、連れ去りたい。ここに展示されているロボたちを。とはいえ、ほとんどが複製品で実物はすでに使われていない旧式のものだが。

「まあ、それの魅力がわかるなんて、アナタ見る目がありますのね!」

キャンキャンと甲高い幼い少女の声が真横から響いた。ボルトの腰元あたりでゆれるふわっとしたボリュームのある金色の長い髪。釣り目がちで大きく見開いたランランとした瞳。愛らしい少女がそこにいた。腰に手を当て、大人ぶった態度で、うんうんと頷きながらボルトを見上げている。保護者に付き添われてきたのだろうと思われる年齢だが、周囲にはそれらしき人物はいない。まあ展示場内だからそれほど気にすることもないだろう。少女の言葉に「当然だろ」とボルトは少女に負けずランランとした目で頷く。ボルトの返事に少女は感極まったらしく、「そうそうそうですの!」と首がもげそうなほど、ぶんぶんと首を振って同意する。

「今のコもかわいいですけど、旧式のコのなんともいえない丸いフォルム。大変愛らしいですの!」

「そうそう、繋ぎ部分は今よりだいぶ荒いけど、そこがまた味があっていいんだよな」

「操縦席のシンプルさもいいんですの! ギアの数も少なくて、動きもシンプルですけど。特にこのタイプBはクセのある動きをするんですの。だからこそ腕が試されるってものですのよね!」

鼻息荒く、展示品を見ながら語り合うボルトと少女。少女は単なるロボ好きというよりも、操作や内部のことにも詳しい様子。これがいわゆる、オタクの知識というやつなのだろうか。すっかり意気投合したボルトに、少女はますます大きな目を見開き、キラキラしながら

「アナタこそあたくしが探していた運命の男ですの! 決めましたの、結婚しますの!」

ぎゅっと手を掴まれて、出会ったばかりの少女から突然の求婚?
さすがにそれにはボルトは冷静になり、いやいやちょっとまてと少女を宥める。

「いやいや嬢ちゃん、ここはロボ愛好家同士として仲良くなりましょうってやつだろ? むやみやたらに結婚しようとか言うもんじゃねーよ」

「まあ、なにか問題でも? あたくしが感じるに、アナタからは特に女のにおいもしないですのに?」

くんくんとボルトの腕のにおいを嗅ぐしぐさをする少女に、ボルトは引きながら「そういう問題じゃねーっての」となんとか少女を引き離そうとする。
たしかに少女の言うとおり、ボルトには女っけがない。女のにおいどころか、毎日いじっているロボたちの油のにおいが染み付いているくらいだ。まあそもそも女なんぞに興味がわかない。ロボへの愛が異性への興味よりはるかに上回る。凌駕する!

「!? 嬢ちゃん、あんた…」

握られたときの指の感触。幼い少女のぷにぷにの汚れをしらない指先とは少し違った。それに違和感を覚えたボルトが感じ取ったことを、肯定するように少女はにやりと笑った。




休暇を終えたボルトはいつものように工場の作業を行っていた。ロボに萌えて燃える休暇のはずが、例の変な少女のせいでそういうわけにはいかなかった。ロボ好き仲間と意気投合できたのは幸いだが、妙に懐かれてしまいまとわりつかれたのだ。ロボ制作の話をつい自慢げに語って聞かせてしまった。当然のように少女はランランとした目で飛びついてきた。現物を見たいとダダをこねだし、ボルトの家にまでついてきた。一通り見せれば満足するだろうと思い、げんなりしながらも少女に付き合った。少女は散らかったボルトの部屋を気にするでもなく、製作途中のロボやら、設計図にも鼻息荒く飛びついた。女に縁のないボルトだが、ロボにここまで興味を示す女は他に見たことないと思った。夜遅くまでいつかれても困るとうんざりしながら相手をしていたが、連絡をとってもいないのになぜか保護者らしき成人男性が少女の迎えに訪れた。

「今日は有意義な日でしたの。ええ、あたくし決めましたの。では、ボルトまた…ですの」

まただって?
連絡を取り合う約束もしていやしない。とはいえまた実家に押しかけられても困るが、もう特に会うこともないだろう。挨拶のようなものだ。と深くかんがえないようにしていたボルトだが。

「ボルト、今日はいるのか」

ヤデトがボルトの作業場へとやってきた。手を動かしながらヤデトのほうへと目線を向け、ボルトは「はぁ、なんの用っすか?」と訊ねる。ヤデトの用、それはボルトが想像すらしてなかったことだった。

「急な話だが、ボルトお前にはここを辞めてもらうことになった」

「……はあ?! なんすかそれ、クビってことっすか? 納得いく説明してもらえないっすか?」

突然の話にボルトもおかしらも驚き、ボルトは声を荒げる。

「待てそうじゃない。移動だ」

「……は? どういう…」

ヤデトの話がさっぱりわからないボルトはおかしらと顔を見合わせる。おかしらも知らないと首を振るばかりだ。はー、と息を吐きながらヤデトが説明する。眉間の皺をますます深ませながら。

「ボルト、お前は西支部の開発技術部に移動してもらう」

「開発技術部ってことは、おれっちがロボの開発に関われるってことっすか?」

「よかったじゃないかボルト」

おかしらに肩を叩かれるボルトだが、たしかにロボ開発の部署に移動は嬉しい、願ったり叶ったりだが。なぜ突然そういうことになったというのだろう。寝耳に水だ。ヤデトはヤデトでなにか不快そうに顔を歪ませている。その理由はボルトたちにはよくわからないが。はーーとうんざりするようなわざっとらしいため息を吐きながらヤデトが説明する。

「そこの代表がお前を指名したんだ。いったいどういうことだ? お前、アイツとどういう関係なんだ…」

そういわれても、ボルトにはなんのことかさっぱりだ。そもそも開発技術部の代表と知り合いでもなんでもないし、指名されたというのもこっちが説明して欲しいくらいだ。

「こっちが聞きたいくらいなんすけど。アイツって誰っすか?」


「まったく、まどろっこしいですの。これだからヤデトは」


「ワマヨ!」「! あの時の嬢ちゃん」


ヤデトとは反対方向の出入り口より現れたのは、ボルトが先日のイベントで出会ったロボ好きの少女だった。連れに派手目の衣装の青年男性が一人いる。腰に手を当てふんぞり返る。大きな瞳でギロリとヤデトを威嚇するように睨み付けるが、対してボルトのほうには無害ななつっこい笑顔を向ける。露骨なまでにヤデトが嫌いアピールなのだろう。それはヤデトにしても同じようで、ますます不快そうに顔を歪める。
大人びた歩き方で少女ワマヨはボルトの側に行き、親しげに腕を掴んで絡みつく。

「ロボ開発の代表ってまさか…」

さすがにボルトも気づく。開発技術部への移動はこの少女が決めたことなのだろう。まさか十歳そこらの幼女が、協会幹部だとは思いもしなかったが、魔動ロボに精通していたあたり、只者ではないと感じていた。

「ボルトに修理しかさせないなんて、才能を腐らせていくようなものですの。ヤデトの目はほんとうに節穴ですのね!」

「なんだと? 相変わらず生意気な奴だ。ボクは年上だぞ、年上は敬うものだろうが!」

「それは敬うに値するなにかがある場合ですのよ? ヤデトに敬えるようなところなんて、何一つありませんのに」

「なっなんだと、このッッ」

「ちょっ人を挟んでケンカするなっす」

バチバチと火花を散らすヤデトとワマヨ。はたから見たら兄弟げんかだ。周囲が宥め、なんとか熱が治まる。少し冷静になってヤデトがハッとしたようにボルトに目を向ける。

「あたくしが敬うのは、ボルトのような特別な才能を持った人ですの。ボルトのような天才をこんなところで埋もれさせやしませんの。さ、行きますのよボルト」

「ボクだって、少しは認めて…。フン、勝手にしろ」

悔しそうになにかを言いかけて、ワマヨの生意気な態度にむかつきがぶり返し、好きにしろと吐き捨て背を向けるヤデト。ワマヨに促されながら工場をあとにするボルト。世話になったおかしらに挨拶をしながら、西地方の新たな職場へと向かうことになる。




ワマヨと入れ違いで協会本部を訪れたのは、またまたヤデトが気に入らない相手の一人だった。
栗毛で端正な顔立ちの美しい青年。金色の軍服ぽい衣装を身にまとい、腰元には帯刀。さらに肩には黒猫が一匹。ふわふわの黒い艶やかな毛を揺らしながら、緑がかった金色の瞳。首もとの赤いリボンが黒い毛によく映える。主である青年を信頼しているのか、大人しく彼に寄りかかっている。

「どうしてお前がここにいる? カピカ!」

嫌悪を隠しもしない表情でヤデトが自分の横を通り過ぎようとする青年へと吼える。黒猫がシャッとヤデトに対して威嚇するのを、青年は優しく撫で宥めながら、

「どうしてもなにも、ドーリア殿に会いにきたからなのだが。ねぇ、エンジェル」

そういい返しながら、肩にいる黒猫の喉を指の腹で撫でる。黒猫は気持ちよさそうに喉を鳴らしながら、目を細めている。だだでさえワマヨとのやりとりでイライラが増しているヤデトの機嫌はますます悪い。それ抜きにしてもヤデトが不快になる理由はしっかりある。この男カピカの目論見だ。この男はドーリアに好意を抱いている。それを隠そうともしないことも腹が立つ。姉もこんな男もっと邪険に扱えばいいものを、この男は中央政府の官人だ。協会と政府の間柄付き合いと言うものがあるのだ。あくまでビジネスな間柄、個人間でどうこうなどありえない、あってたまるかと思っているヤデトは。

「残念ながら、お前は姉上にお会いなどできん」

とヤデトがカピカとドーリアの対面を阻止しようとするが、無意味だった。なぜなら当人のドーリアがその場に現れたからだ。さらにヤデトに止めを刺すのはドーリアの言葉。

「なにを言ってるの? 用事があるから私がお呼びしたのよ、カピカ殿を」

「あ、姉上…」

わなわなと震えるヤデトをそのまま、ドーリアはカピカと応接の間に移動する。ドーリアの用件にカピカは快く承諾した。それは願ってもないことだった。西地方で、協会に反旗を翻そうと暴動を計画している組織がいるとのこと。その先導者がカピカにとって宿敵とも言える相手だからだ。

その相手とは、【ラキラ】という名の男だ。カピカにとっては因縁の相手とも言える男。同じ血を分けた、双子の兄。

腰元の剣に手を伸ばし、握り締める。カピカが望むこと、それはラキラとこの剣で……。
カピカの心情を知ってか知らずか、ドーリアは不気味な眼差しで、怪しく微笑む。






ボルトとワマヨ、もしかしてとんでもない二人が出会っちゃった?
ワマヨは只者じゃない女の子みたいだよ
そしてボルトの才能の今後、気になっちゃうよ〜
さらにカピカの企みも気になるってー
剣に黒猫に双子の因縁?
ラキラっていったい何者か? そんな恐ろしいこと企んでるの?
いやいや企みはドーリアだろうって?
協会がいろいろやってるよ、いいのかホツカにヤードよ
っておいらはどちらの味方でもないのさよ〜っと
続きはいよいよ新たなステージだよ、ばいなら!


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