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第44話

「トパーズ・・様?」

「この方が・・・大神官殿?」
確かめるように問いかけるジストにアメジも驚きながらこくこくと頷いた。


「確かに・・・私が大神官のトパーズだが・・・君は・・・?!」

ジストへと視線をやったトパーズはジストの胸元のあるものに驚いた。


「私は族長のジスト・・・ですが・・・あのラルド様は?」

「な?!族長とはこのプラチナの前で族長と語るなど!

リスタルの族長は我がマスターモンド様ただ一人!戯れといえど許されぬ言動だな!」
ジストに向かってウウウ・・と警告音を放つプラチナの前にタルが立つ

「ジストは正真正銘リスタルの族長たるよ!」
主を守るべく負けじと毛を逆立てる。


「プラチナ、落ち着かぬか・・・たしかにその印は、族長のみが印すことのできるもの。

それにアメジ、なぜお前が・・・確かに私はお前が石棺に入った後封印の儀式を行った。内からは出られぬはず・・・」



「!もしかして、あたし達が時代を逆走しちゃったってこと?!」

アメジ閃いたように叫ぶ。それに一瞬そんなバカなという表情を浮かべたジストとタルだったが


「それじゃ、ラルド様がいないのも・・・?」

「あの時たるよ!神殿がなんか揺れたみたいなあの時にタルたちは!」

「まさか、あの青水晶にそんな力が?・・・・じゃあオヤジが」

そう、まさにアメジ達は時間を逆戻りしてしまったのだ。
神殿でアメジがあの青水晶に触れた時に、強大な力が働き、アメジたちを100年前のリスタルへと連れてきたのだ。

オルドが言っていたのはこのことだった。


時を遡る、とても信じられないことだったが、なんとか自分達が置かれている状況をジストたちは理解した。





「そうか・・・アメジ、お前は100年先のリスタルに・・・・

そして君は100年後のリスタルの族長、つまりモンドの子孫、ということだな。」

アメジたちから話を聞いたトパーズは確かめるように問いかけた。トパーズの問にこくりとジストは頷いた。


「そんな信じられない話が・・・・」
アメジの話を信じたトパーズとは逆にプラチナはまだ半信半疑だった。プラチナでなくても時を遡るなどだれが信じられようか。

「いや、だがこの印は本物だ。それにこの者の強き水晶を秘めた目は・・・リスタルの族長の一族に引き継がれる輝き。

不思議な話だが、私は信じよう。」
トパーズのその発言にジストもうれしく頷いた。


「しかし、あの神殿でそんなことが・・・・オルドめ、私の目の届かんとこでとんでもないことをしていたのだな。」
トパーズは感嘆と呆れの混じったため息を吐きながら言った。

オルドの趣味によってアメジたちは時を越えたのだ。


お互い落ち着いた頃、アメジが本題をきりだした。


「トパーズ様!あたし達黒水晶を倒す方法を探してやってきたの!」


「黒水晶だと?!やつらは、絶滅したはずだが・・・」

たしかにアメジが生まれる少し前にオルドや前族長であるモンドの父達の働きによって黒水晶は絶滅したとアメジも聞いていたが


「でも、あたしが目覚めた未来のリスタルには黒水晶がいたのよ!

で、そいつはなんとか倒したんだけど、
また新しい奴が現れて、そいつは赤い目の黒水晶で
戦うたびにどんどん水晶が巨大になっていって・・・

被害ばかりが広がる一方で、奴を倒す方法を求めてここへ・・・」

それを聞いていたトパーズの表情も曇った。


「黒水晶は、絶滅してないということに・・・なるな。」


「大神官殿!このことはマスターに報告・・・」
すっと立ち上がったプラチナにトパーズが慌てて呼びとめる。


「いや、モンドには報告するな。それからこの者達のことも口外してはならん。黒水晶に対する警戒は行ってくれ。」



「はっ、それでは。」
プラチナが寺院を去った後も、アメジたちはトパーズと話を続けていた。

ジストとともに黒水晶について熱く語るアメジの様子にトパーズは目を細めつつ

「なんにせよ、アメジ・・・お前も変わったな。」

「へ?・・・・あたしが?」
そういうトパーズにアメジはきょと、とした顔で見返した。


「めんどくさい事は嫌いだだとか、いつも楽して生きる。が口癖だったお前が、巫女として一度も修業をつんだことのないお前が

あの黒水晶と戦い、そして今またリスタルを救うため真剣に戦っておるとは。

あのアメジとは思えんな。」

オルド亡き後、アメジを引き取り育ててきたトパーズは、だれよりアメジを知っていた。

だからこそアメジが巫女として黒水晶と戦うことなど想像さえしてなかった。

しかし、それはトパーズにとってはうれしい変化であったが


「そんなことないたる。こいつダメダメたるよ。」

いつものようにアメジに悪口を言うタルに、いつものようにそれにムキになるアメジ。タルの両頬を指でぎゅーっと掴んでモチのように引っ張ってタルをいじる。


「あたしのどこがダメダメじゃーい!この聖乙女様に対して!モチのくせに生意気な!」

「んがーっ(なにするたるか!)」
バカなケンカ?を繰り広げるふたりをジストが止めないかと止めに入る。


「トパーズ様、あたしは変わってないよ。いつでも楽して生きることこそすべてだって思っているし。

そのために黒水晶を倒すんだから!」

「ふふ。アメジ、お前はほんとにオルドに似ている。」
それは以前にもトパーズに言われたこと

「そうたる。アメジは父親似で間違いないたるよ。」
それにタルも強く頷く。

「ムキー、あんなのと一緒にするなーー!!」
そんなアメジとのやり取りで、トパーズは久しぶりに笑った。
それはアメジが聖乙女になって以来のことだと気づいた。



アメジたちはトパーズのもと黒水晶を倒す方法を探っていた。
なんの偶然かこんなことになったとはいえ、もう二度と会えることのないと思っていたトパーズとの再会にアメジの喜びも大きかった。黒水晶との戦いの最中であるとはわかりながらも、この時間はかけがえのない時間であった。

そんなアメジたちと遠慮気に距離を置くジストに気づき、タルが駆け寄る。



「ジスト、どうしたたるか?」


「ああ、タル。邪魔しては悪いと思ってな。」

「?」

「あのトパーズ殿はアメジにとっては家族のような存在なのだろう。

きっとあの人が、アメジの言っていた大事な人だ。」

ジストは確信した。
そしてトパーズの前で見せる嬉しげなアメジを見ていると痛感した。



「本当ならここがアメジのいるべき場所なんだな・・・・。」


聖乙女として、救世主としてアメジを頼ってきたジストは、思えばリスタルの平和ばかりで周囲の気持ちに気づいてやれる余裕がなかった。

それはアメジ個人の幸福も想いも考えてやる余裕さえなかったことにも気づいた。

だからこそ、今のこの時間は大事にしてやりたいと思い、二人から距離を置いたのだ。



アメジはトパーズと黒水晶のことも話しながら、100年先の出来事や出会った人や聖獣たち、そしてこの時代のことや、父オルドのことなどなど、とにかく伝えたいことがやまもりで話しても話しても止まらなかった。
トパーズもそれをすべて真剣に耳を傾けた。


時が過ぎるのは早く、もうすっかりと日が暮れていた。
その日、寺院の奥の部屋でアメジたちは泊まる事になったが
その夜アメジはトパーズから、父オルドと職人であった母コイズの話を聞くことになった。


戻る。

第45話



時は遡り、アメジがこの世に生を受ける四年前、アメジの両親であるオルドとコイズは出会ったといわれる。

祭りの準備にと慌しい街の中、ある場所へと走る一人の男がいた。


その男はオルド、年は二十代前半、姿は少々奇抜な格好であった。

ボサボサなそのままの髪に、急いで着たような胸元のゆるい服の着方。周囲の同じ年頃の男達と見比べるとあまりにも浮いていたその風貌、だが本人はとくに気にすることもなく、いつもマイペースに自分らしく、どこまでも自由に。


風のように軽やかに、階段を駆け上るオルドが向かった先は、一軒の面職人の店・・・・。




「ようっ!祭りの面のほうは完成したかい?!」

勢いよく店の中へと駆け込んできたオルドに



「なんだよ?!アンタ、いきなり駆け込んでくるなんて、常識ないんじゃないの?!」
店内にいた一人の娘がオルドに向かって吼える、とても気の強そうなその娘はこの店の主人だった。


「いや、わりぃわりぃ、完成が今日だってきいて、急いでとりにきたんだよ。
いやめでたいことだから俺もうれしくてね。

なんせ、弟の結婚式だ。」

「弟?・・・・!?

じゃあ、アンタがあの・・・有名な・・・」

「そう有名なかっこいい・・・」
自分を見て驚く彼女にうんうんと頷きながらオルドはその先に続く言葉に期待した、が




「あの有名な、変わり者の族長の息子!」

それに思わずがくーんとなるオルド

「おいおい変わり者って、つまりかっこよくて目立っているってことだろ?」
どこまでもポジティブ、いやずうずうしいだけなのか・・・



「ふぅん、たしかに水晶使いとしてすごい奴だって話は聞くけど・・・

本当にアンタみたいなのが、あの黒水晶と戦っているのか信じられないけど。」

そうぶつくさ言いながら、面職人の娘は仕上がったばかりの祭りのための面をオルドにと手渡す。
面を渡す瞬間、いきなり両手をつかまれ、驚く娘にオルドは


「へぇ、いい手してるじゃねぇか。
女でここまでいい手したやつはいねぇえな。」

えらく感心した様子で握り締めたその彼女の掌をまじまじと眺めた。
いきなりのその予想外のオルドの行動に戸惑いつつも、慌てて娘が吼える。


「ちょっと、いきなりアンタ失礼なことするね!

悪かったね、女らしからぬごつごつの手でさっ!」


女にしては珍しい手だと言われて快く思える娘などほとんどいない。

女心に疎いオルドはそんな心遣いもなく、ついつい思ったままのことを口に出してしまう性質だった。
慌てて悪気はなかったと娘に謝りながら


「いや、俺はほんとにいいと思ったんだよ。

うん、実にいい手だ。その手でこの面を作り出したんだろ?

かっこいいその手に俺は本気で魅せられた!」

なに言ってんだ?この人。とオルドのセリフがいまいち理解できなかった娘。



「そうだ、名前は?なんていう名前なんだ?」
オルドの問いかけに一瞬とまどいつつも娘は答えた



「コイズ、あたしの名前はコイズだよ。」


その答えににかりと笑いながら


「俺はオルド、リスタル一のかっこいい生き様を目指す男だ。

おっと、そろそろ戻らねぇと、

じゃあな、コイズ、また礼言いにくるからな。」

その勢いのまま大手を振って、くるりと向きを変えると店を飛び出し階段を駆け下りていったオルド。
それをぽかーんと見送りながらも、なぜかうれしくくすりと笑ってしまうコイズの姿があった。



それがオルドとコイズの出会い。

それからしばらく後、二人は結ばれ、水晶使いと職人という珍しいカップルが誕生したのだ。

コイズはどこまでも自由で変わり者のオルドの一番の理解者でもあった。

オルド達は無事黒水晶どもを倒すことに成功し、リスタルの地は平穏な時が訪れた。

その頃、病死した族長の後を弟であるモンドの父に任せ、自分は水晶の研究に没頭するようになる。

そして、アメジが生まれ、アメジは母の元で幼い時を過ごした。

オルドはほとんど遺跡だの研究室だの、一人で好き勝手に飛び回っていた、アメジはほとんど母と二人で暮らしていたが、たまに顔をのぞかせる父オルドとも交流していた。


戻る。

第46話

リスタルの街の階段を駆け下りる小さな影を呼び止める声があった。
呼び止められたものはそれに反応し、足を止めその声のほうへと振り返る。


「トパーズさま!」

その影は幼きアメジだった。まだ十にも満たない幼き日のアメジは自分を呼び止めたその主の下へと駆け寄った。


「今日も母の手伝いか?アメジ」

「うん、あとひとつだけおつかいが残ってて・・・」
アメジの母は面職人である。面職人のコイズ。

「そうか、しっかり手伝いをしとるとは偉いじゃないか。」
そう言ってアメジの行動に感心するトパーズにアメジはため息ながら

「ちっともよくないよ。だいたい手伝いなんて、めんどくさくてうんざり。

それに座ってばかりの仕事じゃますますお尻がでかくなっちゃうよ。はぁー。」

「おいおい、なにを言っとるんだアメジ。お前の母さんほど働き者で頑張っている者はおらんぞ。」

「働き者ってそんなに偉いの?」
そう言ってトパーズを見上げるアメジ、トパーズはただ頷いたが

「だから、母さん最近疲れてるんだよ。オヤジはオヤジで好き勝手やって生きてる。母さんはさ、けっこうオヤジの文句言ったりしているけど、それでもオヤジのやってること認めていたりするし。受けるだけの仕事全部請けてるし、てきとーでいいと思うのにさ。」
子供ながらに冷めたことを言うアメジにトパーズは慌てたが
それからしばらく後、アメジの母コイズは若くして命を終えてしまう。

そのことを予言していたかのように。



「やっぱりさ、人生楽して生きるのが一番なんだよね。」

母の死を乗り越えた少女が発した言葉がそれだった。
そしてそれが・・・・





「アメジ、お前の口癖になったのだな。」

昔話を辿るようにアメジに聞かせたトパーズは、同時にアメジとの記憶も辿っていた。

永遠に別れたはずの弟子のアメジが今また目の前にいる。

不思議なことではあるがたしかに現実だった。
トパーズの昔話にじっと耳を傾けながら、アメジはうんうんと頷いていた。


「そうそう、もっと楽していれば母さんだって長生きできてたはずなのに、

なのにあのバカオヤジはさ、母さんの葬式で、母さんのことかっこいい生き方だったって言ってたんだよね。

そんであたしにも、かっこよく生きろ、かっこよく散れる人生にしろってそればっかが口癖でさ。

母さんが死んだ後はオヤジに遺跡だの連れまわされて・・・コキ使われて・・・、オヤジが死んだ後はトパーズ様のとこで巫女の修業させられることになって・・・・」


「お前は散々修業をサボっておったではないか。」
ハー、と呆れながら言うトパーズにアメジもバツが悪そうに



「それはー、今となっては反省してるよぉ・・・。

トパーズ様のとこでもっとちゃんと巫女として修業つんでおいたら、もっと黒水晶とちゃんと戦えたんじゃないかって。」


「アメジ・・・・お前がそうやって反省してるだけたいしたことでもあるな。


お前は聖乙女になってよかったのだな。


私はあの時、少し後悔して・・・・」


「トパーズ様?」


「いや・・・そうだな。黒水晶

明日にでも山に捜査隊を出そう。黒水晶の巣がどこにあったのかはだれもわからぬが、
やつらが絶滅してないのであれば、どこかに巣と生き残りの卵がある可能性が高いからな。」

「じゃあ、トパーズ様、あたしとジストはまたあの水晶神殿を調べてくるよ。オヤジが言ってたことも気になるし。」

「うむ、そうだな。・・・・とりあえず今日はもう寝なさい。」

「うん、じゃあ、おやすみなさい。」
寝床へと潜るアメジはトパーズに見守られながら眠りについた。



そして夜が明けた
黒水晶の捜索はトパーズたちに任せることになり、アメジとジストとタルはまた神殿へと向かうことになった。

早朝とはいえ、リスタルの民は早起きの者が多い。
そのためジストはトパーズから胸元の族長の印を隠すことを勧められた。

この時代の族長はモンドであり、印はモンドただ一人になくてはならないもの。ジストは本来ならここにいてはいけない存在なのだ。そのことを忘れてはならないとトパーズに強く言われ、ジストは印を隠して外に出た。


アメジたちが神殿に向かおうと、街の外へと続く長い階段を登っている途中、アメジを呼びながら近づいてくる存在があった。


もちろんアメジはその存在をよく知っていた。なぜならそれは・・・




「アーメージー!」


アメジは思わず振り向き、その存在を確認したと同時にその名前を叫んだ。



「モンド??!!」


ハァハァ、と息を切らしながらアメジへと駆けて来る。
その懐かしき姿にアメジの足も止まった。


「やっぱり、アメジじゃないか!」


アメジの目の前まで来たモンドはそのままの勢いでアメジの手をガッと掴んだ。

その表情はオドロキと喜びと混じったような、だけど喜びのほうが勝っているかのような表情だった。


「あいつらがアメジが生きていたって言ってたの聞いて、まさかと思っていたんだけど。

トパーズのじっちゃんから聖乙女になったって聞いておれ、めっちゃびびってたからさ。

だって最初マジで信じられなくって、あのアメジが

楽して生きることが夢つってたアメジがさ、まさか聖乙女なんてありえねぇって・・・・。おれが約束破ったからそれでやけになってそんなことしちまったのかって・・・・



けど、やっぱりウソだったんだなー。やっぱアメジが聖乙女なんてー、なるわけがないもんな!」


「マジで聖乙女になりました。」

あまりにものー天気なモンドに呆れたのか、アメジは線のように目を細めてクールに言う。


「えっ、ええっ、でも今ここにいるじゃん?え、どういう?」

「説明するのややこしいから。とにかくあたしはアンタの知っているあの頃のアメジじゃないの。

水晶の聖乙女アメジになったの!」

「え?・・・・・アメジ

やっぱりまだ、おれのこと怒っているのか?

だってあんなに族長の妻になりたがっていたのに。」

「・・・・あのね、モンド

あたしはね、族長の妻の座はもうどうでもいいのよ。」

「?!」

「もっといい道を見つけたからね。」

一瞬モンドはアメジの言葉の意味が理解できなかったが、アメジの後ろにいたジストの存在に気づき、にかりと笑いながら言った。

「そっか、そういうことか!アメジもついに本当の愛を見つけたんだな!」
一人で勝手に納得するモンドにアメジは?な顔

「じゃあな、アメジ

幸せになれよ!またなー。」

そう言って階段を下りながら、アメジに手を振り去っていくモンドにアメジは首を傾げる。

「あいつなんかムカツク勘違いしてたたるよ!!(怒)」

ムキー!とタルは一人でブチキレて叫んでいた。


戻る。

第47話

アメジたちは元来た道を辿り、水晶神殿へとまた足を踏み入れた。
ふぅ、と不思議な輝きを放つ青水晶の前へとアメジ達は近づいた。


「オヤジ。一体どういうことだよ?」

アメジが青水晶に向かって話す。

青水晶はぽう、と光ながらオルドの声で返事をする。


「なんだ?お前らもう戻ってきたのか。大事な物は見つかったのか?」

「じゃなくって、なんであたし達こっちの時代にきちまっているのかってこと!」


「ああ、やっとわかったみたいだな。まあ、こっちからいやお前達のが非常識なわけなんだが。」

オルドにだけは非常識とは言われたくないのだが

「その非常識を現実にしたのがこの青水晶に秘められた巨大な力とそれをさらに増大させた俺の研究の成果だ。

そしてアメジお前に託した俺の強い想いが聖乙女として眠りについたお前に働きかけ、お前の肉体と魂は100年の時を越えた。

未来のリスタルの地で、めんどくさがりのダメ人間であるお前は聖乙女として頼られ、戦うことになり、
さらに進化した黒水晶を倒す力を求めて、ここへとたどり着いた。」


「そうだよ、オヤジのせいで」

「いーや、俺のせいじゃない。

俺の想いや研究も、青水晶の力もただの後押しだ。


すべてはアメジ、お前自身で選んで進んで来た道だぜ?」

「え?」

「ということは、だ。

アメジ、お前がこの先に進むための大事ななにかは、ここにあるんだ。」

オルドの言っていることがまたしてもよくわからないアメジが?な顔をしているころ、大変なことに気づいたタルが叫んだ。


「そういえば、タルたち、ちゃんと元の時代に戻れるたるか?!」

「そうだ!戻らなければ、皆が・・・!」

一瞬慌てるジストとタルに落ち着いた声でオルドが言う

「過去に飛ぶより、未来に飛ぶほうが少ない水晶で済む。

まあ安心しろ。俺の計算なら、あと一回は時を越えられる。

その前に、アメジ・・・

この時代で、かっこいい歴史を刻んで来い。
お前はここではダメアメジのままだからな。俺だって心苦しい。」


「は?なんだとオヤジ」

「いーから、もっぺん戻りな。

・・・・・アメジ伝説を轟かせるサイコーの機会になるぜ。」




その日、トパーズの命で黒水晶の調査に向かった三人の男達は、二度とリスタルの街へと戻ることはなかった。

なぜなら
彼らの向かった先からあの黒く巨大な影がリスタルへとやってきたからだった。

その影は、二つ・・・・
口先から赤い汁を滴らせながら、あの闇より黒い不気味な目をぎょろりとさせながら
リスタルへと向かったのは黒水晶だった。

その以上に気づいた黒水晶を知る中年の水晶使いたちは聖獣を連れてそこへと走る。
数人の巫女たちもドクロ水晶を手に共に走る。

そんな中、そのことを聞いたモンドの妻シルバも慌てつつも、彼らと共に走った。



その頃、モンドはトパーズの元にいた。

「トパーズのじっちゃん、なんでアメジのことおれに教えてくれなかったんだよ?」

「モンド、お主アメジと会ったのか?」

「うん、今朝、しかし驚いたよ。あいつらからアメジを見たって聞いたときはまさか!て思ったけど。

ふう、でもよかった。アメジももう、族長の妻の座は興味ないとか言っていたし。
これからはおれも悪夢にうなされずにすむってもんさーなぁ♪」
あいかわらずのー天気なモンドの様子にトパーズも呆れてため息をつく。

「お前にも、もう少ししっかりしてもらわんとな。
族長という立場をもう少し・・・」

「マスター!大神官殿!」
二人の下に走ってきたのはプラチナ

プラチナの口から伝えられたのは

「やつらです!黒水晶が

生きていました!」

「なっ!?」
アメジたちから聞かされた事実により、警戒をしなければと思っていた矢先、早すぎるやつらの登場にトパーズも焦った。

「すでに捜査に向かった数人は犠牲になったようです。
街に入ってくる前にと何人かは向かいました、が

早く我々も!」
指示を仰ぐプラチナ

「うむ、行くぞ、モンド


モンド?!」

「黒水晶ってなんだよ?だって親父たちが滅ぼしたはずだろ?

あのでっかいバケモノ・・・」
モンドは実際に会った事はなかったが、アメジと遺跡めぐりをした時にその化石などでその姿を確認したことはあった。

それは想像しがたいほど巨大なバケモノであった。
会ったことも経験したこともない、だが父やトパーズからその恐ろしさなど聞かされて、とにかくとんでもないバケモノであったと深く刻まれていた。

それが生きている?!とても信じがたいことだったが、プラチナがウソをつく聖獣ではないことは主人である自分がよくわかっていた。

「モンド!しっかりせんか!!」
トパーズにガッと肩をつかまれたが、モンドは呆然としたままだった。

「族長であるお前が先頭に立って皆を守らねばならんのだぞ。」

「そんな・・・だっておれは・・・」

「マスター!私がついております!どうか、勇気を!」
プラチナの声もモンドには届かない。



神殿を出たアメジたちもその異常にすぐに気づいた。
街のすぐ外で黒水晶たちと戦う水晶使いや巫女たちの姿があった。

「黒水晶だ!」

二体の黒水晶との人々との戦い
経験者である中年の水晶使いたちも、久々の黒水晶との戦いでまだカンを取り戻せずに、苦戦しているようだった。
その様子を見て、ジストとタルは戦場へと走る。

「行くぞ!タル」

「もちろんたる!」
黒水晶の元へと走る二人とは別れてアメジはトパーズの元へと走った。

「かっこよくか、オヤジ

あたしはどこにいたってかっこよく生きてみせやがんぜ!」


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