第40話へ 第41話へ 第42話へ 第43話へ

第40話

その夜ひとつの影がサファの元へと向かっていた。
それに気づいたサファが部屋の戸を開け、その存在を迎え入れる。

「ジスト様、どうしたの?こんな時間に・・・?!」
サファ自身彼の訪問に驚いていた様子で

「すまないな、突然・・・

顔が見たくなって来たのだが」
サファとは長い付き合いでありながらも、自分の行動に申し訳なさそうにするジストにサファは首を振って答える。

「いいえ、その・・・
珍しいですね、ジスト様から私のとこに来てくれるなんて・・・

いつも私ばかりだった気がする・・から。」
半分驚きながらも嬉しそうに応対するサファにジストは部屋にと迎え入れられる。


「そういえばすごく久しぶりかも。
こうして二人でゆっくり話せるのなんて・・・・。」
黒水晶との戦いや族長としての仕事が忙しいジストとは最近あまり接する機会のなかったサファは、この時ばかりとうれしそうに話を弾ませる。

「そうだな、思えば君とはいつも戦いの場でばかりで
ゆっくり過ごす時間もあまり持てなかったな・・・。」
サファの淹れてきた茶を飲みながら、ジストが話しかける。

「そう、そして話す時間を持てても、いつも黒水晶の話題ばかりで・・・・

想い合う男女のするような会話なんて一度も・・・・・」
少し陰る表情で視線を落とすサファにジストは

「すまないな、私はそういうことにあまり気のつかない性格だから・・・・

無神経・・・なのかもしれないな。」
「そうですね。くす。
でもそこもまたジスト様の魅力でもあるし。
ジスト様昔からモテるし、私いつも気が気じゃなかったのよ。
お姉さまたちとも私と同じように接していたし、私は子供だからいつも負けている気がして
ヤキモチ焼いていたことにも気がつかなかったでしょう?」
かすかに笑みをこぼしながらサファが返答する。

それに苦笑いしながらもジストは改めてサファの想いを知り、そして真剣に考えねばと思うのだった。
そんな中、ラルドに言われた言葉が頭をよぎったが。


「私は気持ちが器用でないから、君を不安にさせてばかりかもしれない。
ラルド様に言われて、なにかしてやるべきかと考えていたのだが・・・・
やはり今は一番の不安、黒水晶を退治することが先だと思う。


だから、もう少し、待ってもらえるか?」

「ジスト様・・・」
そんなジストを不安げに見上げるサファ



「夜分にすまなかったな。じゃ、失礼する。」
サファの部屋を去ろうとするジストをサファが後ろから抱き止めた。


「?!サファ?」
ジストの背に自分の顔を埋めたまま、サファは小さな声でつぶやいた。



「ジスト様にとって一番大切なことって黒水晶を倒すことなのね。
・・・・・・

もし、私にも
ジスト様より大切なものができたのなら・・・・・」






「アメジ殿!!」

早朝からラルドに呼ばれたアメジは不機嫌に何事か?とラルドを睨んだ。
がラルドはそれにつられずご機嫌顔でアメジにせまる勢いで

「水晶神殿に行ってくだされ!」


「はい?!」


ラルドの突然の要求にアメジも?顔
そんなアメジにラルドはうれしげにある本を広げながら見せ付ける。


「これに書いてあるとおりですわ!
水晶神殿の秘密を探れば、黒水晶を確実に倒せる方法がわかると・・・ほれアメジ殿!」
わけのわからんことを興奮気味に言うラルドに呆れながらもアメジは本をちらりと見る

「んげっ、これオヤジの本じゃねーか!」
オルドの本、以前アメジがこの時代に目覚めたばかりのころ、ラルドから見せてもらったのもオルドの本だった。
またしてもまとわりつくオルドの影。

「そうじゃ、この本によると水晶神殿にはまだ知られていない秘密があるらしいのじゃ。
そしてそれを解くのが水晶の聖乙女であるのじゃと。

つまりアメジ殿!」
興奮バリバリのラルドに顔面せまられ、引くアメジ

はぁ?!
どういうことだよ?!オヤジ!!


「さて、早速行って来てくだされい。族長も一緒に行かせますからの。
水晶神殿やはしワシが睨んでおった通りじゃ!

ぬはははは、小僧め、勝負はワシの勝ちじゃな!」
高らかに笑うラルドに押されながらも、アメジは水晶神殿に向かうことに
オルドの声がなんだか聞こえる気がした。

戻る。

第41話

黒水晶の襲来にリスタル中が最大警戒を続ける中、ラルドの突然の頼み?命令?によってアメジはジストとタルと共にあの場所へと向かった。
100年前、アメジが従兄妹で結婚するはずだった男モンドにふられてヤケになり、石の棺へと飛び込み、そのまま眠りについたかと思うと、ジストによって起こされ、この100年の時を越えて現代リスタルへとたどり着くこととなった、始まりの場ともいえるあの水晶神殿へ。



アメジたちは再びその水晶神殿へと足を踏み入れた。
「いつもここはひんやりとしているな。」

まるで石に包まれているかのようなその作りは、地上よりずっと温度が低かった。少し肌寒いくらいである。
そこではアメジ以前に聖乙女としてその命を捧げた少女達の魂も眠っている。そんなこともあってかさらに寒気を感じたりするのだった。


「ここになにがあるたるか?だって他は骨骨たるよ?」
顔色悪くジストについていくタル


「ラルド様はまだなにか秘密があると言っていたな・・・・
もっと隅々まで調べてみよう。」

コツコツと高く足音が響く中、ジストは神殿内の石棺や壁などを触って調べて歩いた。
アメジもめんどくさげに、壁をコツコツと叩いたり、骸の娘におーい、と呼びかけたり、いろいろやっていた。
それぞれが調べている中、一時間ほど過ぎた時
アメジがなにかを感じ取った。



「このあたり、なんか怪しい気がする。」

そこは神殿の一番奥の壁、その前に立ちアメジはムーと睨む。
「なにか見つかったのか?」
ジストとタルもアメジの元へと駆けてきた。


「なんかさー、このあたりに怪しい水晶の流れを感じる気がするんだけどー・・・」
そういってアメジはその気になるあたりの壁を手で確かめようと触った時


ガココココ・・・・


アメジ壁に吸い込まれるように、アメジが触れた壁が奥へとスライドした。


「うわっなんじゃこりゃ?!

ん?・・・なにかあるぞ。」


アメジ、壁が奥へとめり込んだその奥になにかを発見した。
奥の壁に縦15cmほどの石のでっぱりがあった。アメジはそれから怪しい気をプンプン感じた、それに触れて確かめようとした、が


「ぬぉうっ・・・・くぅ、あと少しのとこで届かねぇ・・・・むうう・・・」
アメジめいっぱ手を伸ばしたのだが、デカイケツがひっかかり奥まで進めない。

「ちょっと・・・ジスト、あたしの尻押してくれない?」
まるでケツからしゃべっているような状態のアメジがジストに呼びかける。

「え?」
アメジの要求の内容に少し困った表情のジストだが

「いいから、早くしてよ、怪しいもの発見したんだから!」
吼える尻(アメジ)の頼みに静々とジストは遠慮気に


「そうか・・・なら、失礼する・・・」
とジストがアメジの尻を押そうとした時


「ダメたる!ジストの手が汚れるたるよーー!!!」


ドゲゲゲ!!!!

タルの勢いつけた飛び蹴りがアメジの尻に炸裂し、アメジは「いってーー!」と叫びながら壁の奥へと尻ごとめりこんだ、その勢いでなぞのでっぱりに顔面をぶつけた。
でっぱりはアメジの衝撃によってべこりと凹み、同時にジストのいるすぐ近くの下方からゴトゴトと石が持ち上がり、子供の背丈ほどせり上がってくると、その中央からさらに台座のようなものが出てき、その上には半透明の青白い石が輝いていた。


「なんだ?これは・・・」
突然出てきた謎の物体に不気味に警戒しながら近づくジストとタルの様子が気になり、アメジもいそいで尻からめりこんだ壁穴から這い出してくる。

「不思議な石たる。・・・・触っても大丈夫たるか?」
ジストの肩に乗り、その不思議に輝く青白い石へと顔を近づけるタルにアメジが慌てて(ケツを擦りながら)かけよる。


「コラコラ、そういうことはこのアメジ様の役目だろ!」
「たっる!!(怒)」
タルを押しのけ、ガッとソレにアメジが触ったとたん、アメジの触れたその石は眩く輝きを放ち、その瞬間グラッと神殿全体が揺れる感覚にアメジたちは襲われた。


「ん、・・・なんだ?」
なにがなんだかよくわからないが、一瞬体全体なにかの衝撃を受けた気がした。それは肉体というより、強い水晶の力が体の中を一瞬で通り抜けたような不思議な感覚だった。
だが特に体になにかあったというわけでもなく、アメジもジストもタルもどこも異常はなく感じた。お互い不思議な表情で見合った後、なにがあったのか考えながらあの石へと目を移した時。



「たく、いくつになってもデカイ尻だな。」



「なっ、なんだと?!あたしの尻はデカくないっつってんだろ?!・・・・・?え?今の声は・・・?」
アメジに聞こえたその声は側にいるジストでもタルでもなかった。・・・・その声の主は・・・・?


「今聞こえた声は!?」
ジストにも確かに聞こえた、その声の先は・・・・


「はっはっは、なんだなんだ?そんなに驚いたのか?目が点みたいになってるぞ。」
あの青白い石のほうから・・・・



「うそっ・・・・石がしゃべっている??!!」
さらにアメジが驚くことになったのは・・・・



「おい、アメジ、お前デカくなったのは尻だけか?なにをそんなに驚くんだ?このかっこいい天才様がなにをやっていた偉い人だか忘れちまったのか?・・・・たく、情けねぇ、誰に似ちまったんだか、なぁ。」


このムカツクしゃべり・・・・間違いない・・・・


「オヤジ!!!??」

「えっ?!」
「アメジの父親たるか?この石が?」
その事実にアメジだけでなくジストもタルも激しく驚いた。

「いや、確かに生前はちゃんと人間の形だったよ。でもこのムカツクアホなしゃべり方はオヤジ以外にいない、はず。」
アメジはたしかにその声が父オルドだと確信した、だがなぜ石の姿に・・・・それには?ばかりだったが・・・。

「おい、ちょっと変な勘違いしてねーか?

俺は死んでこの石になったわけじゃねーぞ。

アメジ、俺が天才的水晶の研究家だったことは覚えているよな?」
語りかける石に答えるアメジ

「うん、その前にバカのつく、ね。」

「俺はアメジお前が生まれてくる前は、水晶使いだったのよ。一応族長の長男という立場もあって、嫌でも俺は大活躍をしなければならない立場にあったわけだ。
たしかに俺は強かった。リスタルではオヤジを、あ、お前にとっちゃじいちゃんな、しのぐほどの使い手だった。
その俺の活躍もあって、だ、黒水晶どもを絶滅まで追いやることができた。
だが、その中の一体にどうしようもないほど強くてしぶといやつがいてな。
そいつを倒すために、ある儀式を試してみるということになってな。」

「儀式?」

「ああ、その儀式ってのがかなり危険なやつでな。
まさにルビィそのものを再現するに近い、危険な儀式。」

「!?」
それを聞いたジストの顔が青ざめる。

「ルビィそのもの?」
アメジ、アクアから聞いた初代族長ルビィの話を思い起こす。


「水晶の結晶化。
黒水晶の毒を受け、それを体内で浄化し、水晶を結晶化して生み出す。その石を使えば通常の10倍以上の水晶を体内に取り入れることができるらしい。
ただ、黒水晶の毒を受けねばならない巫女には命の保障はない、危険な儀式だった。」

「で?儀式は?」

「ああ、儀式は無事に成功し、その彼女のなかから生まれてきたのがこの石だ。」

「え・・・・これが?」
アメジが今目の前にしている、そして語りかけているこの青白い石が水晶の結晶化されたもの。

「その力は俺たちの想像以上だった。無事最後の一体を倒すことができ、そしてリスタルに平穏が訪れたというわけだ。」

「ちょっと待ってください、その巫女の女性は無事だったのですか?!」
「ジスト?」
いつもの冷静なジストの表情とは違う、不安な顔でオルドに問いかける。

「ああ、実はな・・・その巫女はその数日後に亡くなってしまったんだ。完全に黒水晶の毒を浄化できてなかったみたいでな。

その人は、俺の弟の妻だった女性で、モンドの母親だ。つまりアメジ、お前にとっては叔母さんになる人だな。」


「!モンドのお母さんが?」
アメジも初めて知る事実だった。
オルドの答えにジストも肩を落とす。

「まあ、そんながっくりすんなや、
とりあえずそれがきっかけみたいになってな、俺は水晶についてもっと研究するべきだと思うようになってな。
そして俺は水晶研究に没頭した。いつかの未来のために、

そしてなにより、かっこよく生きるために、な。」

戻る。

第42話

「へぇ、それでかわいい娘をほったらかして研究に明け暮れていた日々だったと。」

「ああ、だいたいが水晶の力をより高めようだの、修業によって鍛えようだの、そんな奴らがほとんどで、水晶の力の謎を解き明かそうとする者が少なかったからな。

古代の遺跡を巡り、黒水晶の化石を削り、そして巫女の体内から生まれた水晶の結晶・・・・、そして長い研究の結果、ここ水晶神殿内にこの設備をこっそりと作り上げることに成功したんだ。

この結晶にはみなが思っていた以上に、とてつもない力が秘められていたんだ、それは黒水晶との戦いを経て尚、強い水晶を宿したままだった。
そしてこの力を未来に伝えるため、俺の魂をこの石の中に閉じ込めたのだ。」


「じゃあ、オヤジが死んだのって・・・・この石に入るため?」


「ああ、その通りだ。かっこいいだろ、はっはっはー。」
石の中から響くのん気な笑い声にアメジ呆れて息を吐く。


「かっこわるすぎだ・・・・バカオヤジ」

そしてアメジあることを思い出し

「そうだ、オヤジ、あの本はどういうこと?」

「ん?本?」

「オヤジが本書いたんだろ?
なんかあたしが水晶の聖乙女になる、とか救世主になるとか・・・」
以前ラルドに紹介されたオルド著のなぞの本

「ああ、あれか、あれはな、俺の願望を書いたんだよ。」

「は?・・・願望って・・・」

「こうなってほしいって想いをな。俺はお前がチビの時からいつも言ってきただろ?かっこよく生きろ、
かっこよく散れとな。」
かっこよく生きろ、かっこよく散れ、オルドの口癖だった。

「俺はたとえケツがでかくとも、お前には自分を誇らしく、かっこいいと思う生き方をしてほしいと思っていた・・・・だが

モンドにフラレたというかっこわるい理由で聖乙女になっちまうとは、はぁーーー。」

「なんだと?!ちがっ、モンドにはふられたわけじゃ・・・・

てオヤジんなことも知ってんのか?!」
それはオルドが死んだずっと後のことなのに。

「ああ知っているさ。あの時別の巫女が聖乙女になるはずだったのに、いきなりお前がやってきてムリヤリその石棺の中に入ったんだろ。その後お前は独り言でモンドのことを言っていたからな。自分で話していたわけだ。ここに魂だけ留まっていた俺には聞こえていたんだよ。
はぁー、我が娘ながらかっこ悪い。」

「ムキー、プライバシーの侵害ーー!!(怒)」
さっきから変な親子喧嘩を続ける石(オルド)とアメジの間にジストが割ってはいる。

「アメジ、そんなことより黒水晶のことを・・」

「あっ、そうか、そのためにここに来たんだった・・・・
オヤジ、あのさ・・・・・」
アメジはこれまでのことをオルドに話した。
聖乙女となり100年先のリスタルで目覚めたこと。そこで黒水晶と戦い倒したこと。また新たな黒水晶が現れ、苦戦をしていることを。


「ははは、百年後の救世主か・・・・しかしすごいもんだな。この水晶の力も、俺の想いを実現してくれるなんてな、やってみるもんだ。

そして、赤目の黒水晶か・・・・今まで以上の水晶を宿す黒水晶か・・・」

「そいつを倒すためのなにかないか、ここに探しにきたんだよ、ラルじいに言われて、オヤジの書いた本にしたがって、ね!」

「お願いしますオルド殿!あなたの知恵を貸していただきたい!」
ジストも石のオルドに強く訴えかける。



「さっき俺が話した儀式、だな。」
少ししてオルドからの答え

「え?儀式って、モンドのお母さんが黒水晶の毒を受けて、それを体内で浄化して水晶を結晶化したっていう?
つまり、その石?」
アメジ、オルド(石)を指差す

「いや、こいつは俺がいじっちまったからな、戦いには使えねぇだろう。それに結晶化した水晶は生み出した本人でないと力を使いこなせないらしい。」


「え?じゃあ・・・・」

「アメジ、お前自身が生み出すんだ。」


「え?ええっ?!」

「その儀式はダメです!」
その声はジストだった。

「へ?ジスト?」
「どういうことたるか?」
アメジとタルは不思議気にジストを見る。

「その儀式には・・・失敗しているんです。私もその儀式に参加していた一人なので・・・・
それがどんなに恐ろしいものか、ここにいる誰より知っています。」

「失敗ということは、その巫女は亡くなったのか?」
石のオルドがジストに問う。

「・・・・・はい、彼女は儀式の最中に、腹の中から水晶が暴れたように、彼女を腹から引き裂き、浄化しそこねた黒水晶の毒を吐きながら、見るも無惨な姿のまま、息を・・・」
ジストの表情から恐ろしい出来事だったのだと感じ取ることができた。

「そんなことがあったるか?タルは全然知らなかったるよ。」

「ああ、このことは儀式に参加したごく一部の者しか知らないことなんだ。儀式で亡くなったのがラルド様の孫でもあったし。
それからこの儀式は封印された。
黒水晶の毒を受けることだけでさえ、命を落としてもおかしくないほど危険なことだからな。
私の母も、黒水晶の毒を受けたことによって命を落としている。

私は族長として、誰かを犠牲にしてまでその儀式を行うわけにはいかない!」
強い口調のジストにオルドも


「ふぅ、だが、俺にはそれしか言ってやれないなぁ。

だが、ジスト君、君がここに来たこともなにか意味があるのかもしれない。アメジが100年の時を越えたことと同じように。


そしてアメジ、お前もかっこよく生きるために、与えられたチャンスなのかもしれねーな。」



「え?」

「オヤジ?なに言ってんだ?」
オルドの言っていることが理解不能なアメジとジストだったが・・・



「やはり、お前達、今自分達が置かれている状況に気づいてないな。くくくくく・・・・・」

「だからっ、なんだよ?クソオヤジ!」
わけがわからずキレるアメジに


「とりあえず街に戻ってみな。

もしかしたらそこに、お前達が探している大事ななにかがあるかもしれないぞ?」

戻る。

第43話

オルドの言ったことが理解できてないままアメジたちは神殿を出てリスタルの街へと戻ることにした。



「とりあえず、ラルド様に報告に戻るか・・・。」
「はぁ、たくオヤジ・・・・使えねぇ」
ブチブチ言いながら歩くアメジを見ながらタルが

「アメジとそっくりだったる。」

「は?あたしとあのバカオヤジが?!どのへんがよ?
この聖乙女様をあんなのと一緒にしないでよ!」

「そういうとこが似ているたるよ。」
はぁーと呆れるタルにむきになるアメジに苦笑いのジスト。
そんないつものアメジとタルのケンカをしながら、無事リスタルの街へと入っていく。



そこへたどり着いた瞬間、タルはどこか違和感を覚えた。
それがなにか瞬時にはわからなかったが、妙に変な感覚であったのだ。
「なにしてんの?タル、お菓子でも落ちていたのか?」


「ねぇジスト、ここの階段、手すりあったるよね?」
街に入ってすぐの階段を下るところでタルが異変に気づいた。


「そういえば、たしかに・・・・手すりがあったと思うが?」
タルの疑問にジストも少し不思議に思った。

「んなくだんないこと気にしてないで、早くラルじいのとこ行くんでしょ!」
階段でうむむとにらめっこしているジストとタルをアメジが急かす。そんなアメジに


「おっ、おい、アメジじゃないのか?!アレ!」

「ん?」
その声のほうへとアメジが振り返ると

「やっぱりあのデカいケツはアメジだ!!

けどどういうことだ?あいつ聖乙女になったってウワサだったろ?なんでここにいるんだ?!」
それはアメジと年の近そうな二人の男、しかもアメジの顔見知りの


「ゲ!お前ら!!

なんでお前らまでここにいるんだよ?!」

向こうもだったがアメジも驚いた。彼らはアメジと同じ時代にいた若者たちだった。それがなぜ?現代リスタルに・・・・?


「アメジ!どうした?・・・・彼らは顔見知りなのか?」
アメジの側にジストとタルも駆け寄る。
アメジは驚いた顔のまま口をぱくぱく、向こうの男二人もほぼ同じ様子でこちらを見ていた。


「あいつら、あたしのいた時代にいたムカツクやつら。

なんで?ここにいるわけ?」

「アメジの時代の?・・・・ということは・・・・」

「まさか、あいつらも100年眠ってたたるか?アメジみたいに」

タルたちも不思議に顔を合わせあう。


「はぁ、頭痛い・・・・早く寺院に行こう。」
「ああ、とりあえずラルド様のところへ」
混乱気味のアメジを支えながら、ジストとタルは寺院へと向かう。
そんなアメジたちを不思議な目で見送りながら、その男達は


「聖乙女になったっての、デマ・・・だったのかな?」

「あ、ああ、けどあのアメジに男がってのがマジ信じられないんだけど・・・しかも、あいつに不釣合いなかんじの・・・」

「ん・・・それより気のせいかもしれねーんだけど、あの男・・・胸元に族長の印・・・なかったか?」
二人は不思議に顔を見合って、首を傾げた。




アメジたちが階段を下っていく途中、またしてもアメジを呼び止める声


「あなたは!・・・アメジ殿?!」
その声へとアメジが振り返ると、そこにいたのはアメジがよく知るある聖獣・・・


「プラチナ?!

にそっくりな聖獣がいたなんて、あたしは今まで気がつかなかったよ」

その聖獣はタルよりずっと大きくすでに成体らしく整った美しい体のラインを持っていた。全体を白い毛で覆われた、タルによく似た眉間にふたつの楕円の黒い模様、ふさふさと長くゆれるしっぽに金色に輝く二つの瞳。
アメジが聖乙女になる前に、よく知っているその聖獣はモンドに仕えるプラチナに瓜二つであった。


「プラチナ・・・たる?」
アメジのセリフにプラチナの血を引くタルも驚き、じっと見つめる。
「あのような聖獣は・・・私も目にしたことないが・・・」
ジストも不思議にプラチナ似の聖獣を見た。



「なにを・・・言っているのですか?私は正真正銘のプラチナですが・・・・
それよりなぜあなたがここにいるのですか?
私もマスターも大神官殿からあなたが一ヶ月前に聖乙女になられたと、たしかにそう聞いたのですが・・・・?

いったい、なぜ?」
それは本物のプラチナだった。



「ええっ、プラチナ?てことは・・・

プラチナまで100年も眠っていた?!」

「は?」

アメジの言うことに理解不能なプラチナは不思議な顔ながら


「とりあえず大神官殿のもとに行きましょう。どういうことか説明してもらわなければ・・・」
プラチナと共にアメジたちは寺院へとたどり着いたが、そこでさらにアメジは驚くことになる。



「大神官殿、プラチナです、緊急にお尋ねしたいことが・・・」
寺院の扉が開き、その先に見えたのは

神像の前からゆっくりと立ち上がりこちらへと向きかえったその存在は、大神官ラルド、ではなく


「うそっ、トパーズ様?!」


目まん丸と驚くアメジと同様に呼ばれたトパーズも


「アメジ?!・・・・どうしてお前が・・・?たしかに聖乙女の儀式に・・・・」


お互いショックで固まったまま顔を見合わせるアメジとトパーズ。

オルドが言っていたことは・・・・まさか・・・?!


つぎのページへ    もどる。