恋愛テロリスト

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  第二幕 暴風警報〜Aエリア 1  

「なんだと?!どういうことかもう一度詳しく話してみろ!!」

Bエリア領主不在となったBエリア領主館に男の激しい声が響く。
かなり落ち着きのかけたその男氷山レイト、突然の領主のワガママに混乱極まっていた中
さらに混乱は増すことになったのはその彼が話している電話の相手

『えっとぉ、だからー、萌え萌えしていたら・・・・』
短気なレイトはその相手のダラダラとした口調にさらにキレる。ただその相手は長年よく知る
たった一人の妹ではあるのだが、

「萌え萌えはいい!だから今の状況を話してみろ!!」
最近いろいろとストレスが溜まっていたこともあり、その苛立ちを妹へとぶつけるように声を荒げる

『あのね、あたしついつい口がすべっちゃって・・・・それでショウ様のことカイミ様にバレちゃったの。』

ああー、と強く息を吐きながらレイトは頭を抱える、電話を投げつけたい衝動にかられながらもなんとか抑えつつ、さらに問いかける。

「で、カイミお嬢様は?!ちゃんと学校にいるんだろうな?!」

『それがねー、あのレイトが送ってくれたショウ様画像に萌え萌えしていたらね、
カイミ様、どこかにいっちゃったみたいでー・・・・どうしようレイトー。』

「バカかっっっ

すぐに探せ!!すぐに早く!!!」
さらにデカイ声で電話の向こうの妹に怒鳴る。慌てて後を追ったらしい妹を信じる余裕などどこにもなかったレイトだが。
あああーーーー、と深いため息をついてまた頭を抱え崩れ落ちた。

「Aエリアに血の雨が降るかも・・・・・」
リンネたちの知らないところで嫌な予感は始まっていた。





あたし桃山リンネ、Aエリアで学生やってた普通の十六歳の女の子‥・・・
のはずだったのですが、気がついたら知らない街「Bエリア」で彷徨っていたのです。
しかも人形のようなわけのわからん格好で、裸足で一人で彷徨っていたのです。
そんな状況がよく飲み込めないまま突然出会った怪しさ二千%の危険な空気ぷんぷんの男テン。
自称おばあちゃんの恋人で愛のテロリストであるというやっぱり意味不明な奴。
おばあちゃんを探しているそのテンに散々振り回されたり、ヘンタイ領主のショウの愛人にされたりともう酷い目に合いまくり。
さらにそのテンが言うには、あたしはもう十八歳になっていて、ここBエリアで記憶を売ったんじゃないかってこと。
そんな記憶ぶっとびそうなほど信じられないこんな現実ってあるの?!
もうどうしていいかわからない、とにかくAエリアにもとの世界に帰りたい!
そんなあたしに救いの手?を差し伸べてくれたのがこのテン。
おばあちゃん探しに協力すれば助けてくれるって言ってくれたんだけど…・・・
とにかくこいつムチャクチャすぎ!!
でもそんなテンの力もあってあたしはなんとかBエリアの領主の下から脱出を果たすことに成功。
テンに呆れつつも、やっとAエリアに帰れるっと思ったのに‥・・・
ショウのやつまでなぜかついてきちゃって
こんな二人と一緒で、あたしは元の生活に戻ることができるのでしょうか・・・・?


はぁーー、
あたしは激しく呆れています、なににかって、なぜかって?
ああもうこいつらって

「待てー、このガキがっっ!」

「うわっ、このオッサンちょーおっかねー!」

もうさっきからずっとこんなやりとりが繰り広げられているのです。
ショウにキレ、斬りかかるテンに、そんなテンからちょこまかと逃げ回るショウ・・・・・
こいつらさぁ・・・・なにしたいわけ?

特にテン!!!

おばあちゃん探すんでしょ?!Aエリアに行くんでしょ?!
ショウなんかにムカツいてたらきりがないだけだってのに

「この単細胞のガキがっ、俺はオッサンではないと言っとろうがっっ!!」

「はっ、だれがガキだよっ?オッサン?!そっちこそ耳聞こえてんの?!」

「ガキィィーーー!!!」

ああ、またテンがブチキレてショウに斬りかかっている、そんなテンの攻撃からひたすら逃げまくっているショウ・・・・・なんだ?こいつら子供かっっ?!

「ちょっといい加減にしてよ!二人ともAエリアに行くんでしょ?!」
キレ気味にあたしが言うと

「あっ、もうあの先だよ、あの橋を越えたらAエリアだよ。」
テンから距離を置いたショウがその方向を目で教える。
通りを抜けたその先には約五十M幅の川が流れていて、一本の石の橋が架かっている。
その橋を挟むようにBエリア側、Aエリア側それぞれの関所があった。
そこで通行許可証を提示しなければならないのだが・・・。

すでに時間は深夜を過ぎていたのだが、Bエリア側の関所は無人で誰もいなかった。
なんかやっぱりいい加減な街だってことはよくわかったけど
ただ問題はこの先の・・・

Aエリアから出たことがなかったあたしは、初めて外からAエリアの街を見ることができた。
Bエリアと違って、境界を囲うようにそびえ立つ灰色がかった白い壁は内にいる住民を守っている盾のようにも見え、そして外から来る者を拒絶しているかのように警告しているようにも感じる。
きっとそんなことAエリアにいたままじゃ感じることもなかっただろうけど
だってまさか、Aエリアがあたしを拒絶しているなんてありえないと思ったから
あたしはAエリアの住民なんだもんね。

なのに、なのに、なぜか妙な胸騒ぎがしたりして・・・・。

Bエリアの関所を通り過ぎる時、あたしは重大なことに気づいた。
許可証以前に武器の所持!
武器の所持、携帯持込は絶対禁止されているAエリア
手ぶらっぽいショウはともかくとしても
テン!!
手にはさっきからショウ相手に振るっていた刀とおそらくジャケットの裏にも武器やらなんやら隠し持っていそうだし
チェックされる前にすでにおもいっきりアウトでないっすか!?
てっ、あうっ、あたしも胸にライフルを抱えたままだった!
ヤバイ、すぐにでも橋の上から川に投げ捨ててやろうかと思った時

?!

急にまぶしい光がこっちに向けられた、それの元はもちろんAエリア側の関所からで
出入りの時間帯が厳しく決められているAエリアは時間外の出入りは基本的に禁止されている
そんな時間帯にBエリアからAエリアに向かっている存在があるとすれば間違いなく警戒される対象になる。

ヤバイこんな姿見られたら間違いなく誤解されてしまう!

「テン!一度Bエリアに戻ってから出直し」
とテンのほうを向くと
テンのやつ刀抜いたまま関所のほうへと走っていってる!?

バッマッ!待て待て待てーーーーー!?
当然関所からは見張りの男が二人、彼らが構える間も与えずテンが二人を同時に斬りつける。

「!!??バカッ!なんてことして・・・・!」
慌てふためくあたしの横でショウは愉快にケタケタと笑っている。なにもうこいつらっ!?

「中にもうひとり。」
そう言うショウに返事をする間もなく、外より関所の窓を打ち破り、テンは男を一突き、男はそのまま崩れ落ちた。
その間おそらくあたしはまばたきをしていなかった気がする、とにかくそれくらい一瞬の間にテンのやつは関所にいた男三人を倒してしまったのだった。
あたしが止めに入る時間さえなかった。

「なにをしているリンネ、Aエリアにいくんだろうがっ」
刀についた血を払いながら鞘に収めるテンがあたしを促す。
Aエリアはすぐそこなのに、こんなとんでもないことをしでかすなんて、でももうああ、
走るしかない!Aエリアについたら事情話して助けてもらおう、Aエリアの領主なら、Aエリアの領主・・・

そういえばショウの兄って言ってたような??

けっきょく武器を捨てるチャンスを失ったあたしはテンに急かされ、後を追うように橋を突っ切った。
見たくなかったけど横目で目に入ったテンにやられた男達・・・・・
完全にイってしまった目をしてたような、鋭く切り裂かれた衣服から見えた肉が、新鮮な肉の切れ目ととくとくととあふれ出る新鮮な血液ががががー!
なんかもしかして絶命しちゃってます?まさかまさかいやーーっ
もう見ない!ごめんなさいあたしにはあいつを止めるなんてムリです!許してください!

「へへっ、超おもしれぇ♪」
あたしの斜め後ろを走っているショウの声、こんなショウの兄ってことはきっと
とんでもない男だったりして?!
変態じゃありませんように変態じゃありませんように、Dエリア的思想者じゃありませんように!
エロもバイオレンスもノーセンキューですから!!
まあ、AエリアはBエリアなんかと違って、とっても健全なエリアですから、みなさんご安心を!て誰に言ってんのよあたし、落ち着け!
あたしのいない間にAエリアもムチャクチャな街に変わっていたらどうしょう?
そんな不安も混じりながら、あたしはこのヤッバイテロリストとともに生まれ故郷へと足を踏み入れたのだった。
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