そんなわけでショウたまもといクソバカとお散歩に出ることになったのですが・・・
しかし、あたしの首には犬の首輪のような首輪が・・・しかも鎖でつながれていて・・・・
あたしは猛犬じゃないってのよ!!!ムガァッ
しかし、我慢我慢、今はとにかくこいつの機嫌をとっておかねば
Aエリアに戻るためですもの、一時のプライドは捨てても構わないと
ショウのあの言葉に強い衝撃を受けたらしいレイトは生気が抜けてしまったかのようにうな垂れたまま、氷河期が到来していた。まあ、あいつに同情なんて欠片も感じてあげないけど
猛犬扱いは納得いかないけど、服はあのヘンタイコスチュームから、あたしが最初に着ていたドレスっぽい服に着せ替えさせてもらった。
少しでも優しいとこがあるのかと感心しそうになったら

「こんな恥ずかしい奴連れて歩くのチョー恥だしねv」
ってやっぱムカツク!!

そしてあたしはショウに連れられて領主館を出た。
あの噴水に囲まれた女神像を横切り、通りを歩く。
あたしが先に、鎖を持ったショウがその後ろに
犬の散歩かこらぁ(泣)

通りですれ違う人がじろじろとあたしを見ているのがわかった
何度か恥ずかしい言葉も浴びせられた。が、我慢我慢我慢の子よ
ほんとにこのBエリアって、ここに住んでいる人の神経を疑います!
こういう行いはAエリアでは確実に犯罪であります!
でもそんな常識も通用しない場所であるとはもうあたしもわかっていますから、
だって領主がコレだしね!!はぁ・・・・

「しっかし、驚いたよ、まさか急に目覚めちゃうなんてさー。」
あたしを歩かせながら、後ろで鎖を持っているショウが鎖を上下にシャンシャン遊ばせながらつぶやく。
「でもまあちゃんと感じていたからね、君には変態の素質があるってさー。」
ヘンタイはお前だろーがっ、あたしだって好きであんなことやったわけじゃないってのよ!!
普段なら絶対ムリ、だけど人って緊急事態になればきっとどんなことだってやれちゃうんだと思う

通りを見渡しながらあたしは歩いていた、ショウのやつはめんどくさがりなのかあたしの歩く先にあわせていたみたいで、特に指示は出してこない。
そんなわけでさりげにあたしが誘導していたのだ。
そしてあたしはぴたりと足を止めた
それは今までのあたしには絶対絶対関係のない、永遠に縁のないはずのそんなものがある場所
「ちょっとどうしたの?もよおした?」
あたしの視線の先にあるのは、あの人殺しの道具ばかりが置いてあるあの物騒な店だ
ほんとは直視するのもイヤだけど、テンからの指令のひとつ

「武器を手に入れろ!」
絶対に使うつもりはないし、なにより触るのもすごく嫌!
だけど・・・だけど・・・・
Aエリアに戻るためなら
ここから出られるなら
あたしはなんだってやってやる!
ヘンタイのマネだろーが、武器だろーが
普通の日々に帰るためなら、我慢できる、たぶん。

あたしの視線の先にショウも気づいたらしく
「へー、なるほど・・・・欲しいの?アレ・・・・・
アレでしてほしいのねvふふふふ。」
こいつの言っているしてほしいことってのはどうせろくでもない変態的なことであろう、スルーするとして
「ショウたま!あたしアレがほしいにゃん!」
とりあえず自分捨ててますあたし。
にゃんぴょんのマネでおねだりポーズを決めながら、武器のほうを見ないように、そしてテキトーに指差してみせる。
「テロリストに命を狙われているって、だからあたしも
ショウたまお守りするために武器欲しいにゃん!」

「・・・・・・。」
アレ・・・・?なぜかショウのやつしかめっ面で・・・・あたし・・・なにか?

「あのさぁ・・・さっきから言おう言おうと思っていたんだけどさー」
なに?・・・・なにを?
「にゃんぴょんは語尾にゃんのあとに小さくふて言うの、にゃんじゃなくって
にゃんふ!!」
「?!」
こいつ・・・・特撮オタク・・・・?

「はい、やり直し!」
「えっえっ、欲しいにゃんふー?」
「ふーじゃなくてふ!小さく切るの!」
えーもーいちいち細かいっての!!だいたいあたしにゃんぴょんなんてあんまり知らないのに!
ショウが納得いってないので恥ずかしいのに、何度もやらされるあたし
「にゃんふ!」
「まだまだ、はっ」
「(くーー)にゃんふ」
「ビッミョー」
「(コノヤロー)にゃんふ」
チャレンジ数十回やらされた挙句

「・・・・まあいいか、んー、30点てとこかな。」
厳しい(オタだからか)、でもなんとか認めてもらえてほっ。
いやでも認めてもらえてうれしいと思うことでもないのだが

ショウと共に店内に入る、独特の臭いが嫌でできるだけ息を止めながら、さっさとすましてくれと思いながら、ショウと店主のやりとりを待つ。
そしてあたしに手渡されたのは両手で抱え込むことのできるくらいのライフル
ズンとした重みに衝撃が走る、いや重さはたいしたことないけど、こんなものを手にしてしまったショックというのがズンときて
テンの指令に従って、手にしたけど、神様に誓ってあたしはこの道具を絶対に使ったりしませんから
人の道を、いえAエリア人間道を外れるようなことはいたしません。

Aエリアに無事戻るまで・・・・・

あたしがギュッと決意を固めた時
「んじゃ、おもちゃも与えてやったことだし、もう帰ろっかー。
帰ったら、本格的にエロイことしよーっと♪」
神様、ごめんなさい、一度だけ使うかもしれません、だって我が身を守らないと・・・・!
帰りはショウに引きずられるようにしてBエリア領主館へと戻った。


館に戻ったあたしは、テンとの約束でもあるおばあちゃんのことを探ることにした。
ただこの領主館内自由に歩き回ることができない、あの怪しい男達(雷門一族?)に見張られていて、あまり身動きが取れないのだ。でも、あたしが感じた範囲内だけど、おばあちゃんはここにはいる気が感じられない。ショウのやつに熟女趣味があるとも思えなかったけど
「ねぇ、ショウたまは熟女には興味あるの?」
とりあえず聞いてみた
「は?熟女って、三十代前半までってこと?」
三十代前半ってことは六十代後半のおばあちゃんは当然ストライクゾーンから外れているわけで
というか思いっきり興味の対象外な気がしてならないが、でもテンは鬼門がおばあちゃん失踪に関係していると多いに思い込んでいるみたいだし。
おばあちゃんのことを探れって、だいたいこの領主館から自由にできない身のあたしになにができるっていうのか
おばあちゃんの失踪に鬼門が関係しているとあたしはまだ信じきれていないが、あの危険な男に逆らってもろくなことにならない気がするし
それにここにいるよりは、あのテンに賭けた方があたしにとってはまだマシな結果が待っている気がする

「桃山タカネって人知らない?」
「は?だれそれ」
とぼけているというよりほんとに知らないみたいだ
「例のテロリストの予告文にあった名前、タカネって
その桃山タカネのことだと思うんだけど、その人のこと探したら、テロリストに命狙われなくてすむんじゃないかなーと思って」
うーん、あたしの演技くさくないかなー?とか心配しつつこっそりと探る
「ふーん、別にいいよ。そんなのレイトたちがなんとか処理してくれるって。
だいたい今のテロリストとかって目立ちたがりのクソばっかだからね。
こんなやつらにビビる必要どこにもないから。
なに?もしかしてそのテロリストとかにビビってんの?」
ショウはどこまでも興味ない様子で、
たぶんこいつの脳内はヘンタイくさいことでしか詰まっていないんだ

「んなことはさておき、いーかげんお人形遊びをv」
とショウが怪しく目を光らせた時

ドゴーン

今までに無い大きな爆発音が響いた。
窓の外からは灰色の煙が上がっている

「なんだよ?ちっ」
ショウが舌打ちした瞬間、部屋にレイトがやって来て
「ショウ様!大変です、すぐにこちらに!」
慌てた様子でショウを呼びに来た
ショウは渋っていたが、必死なレイトに根負けし、部屋を出て下へと降りていった。

やっぱり、今のは・・・・テン?!だよね?

「リンネ!」
そしてレイトと入れ替わる形で、テンが窓の外のバルコニーへと現れた。
「やっぱり今の爆発、あんたの仕業ね!」
あいかわらずテンはあたしの問いには答えず、自分の主張第一で
あたしの言葉に頷きもせず第一声は
「タカネのことは?!ちゃんと探っていたんだろうな?」
強い目でギンと睨みつけるテンに、あたしはただこくこくと頷いた。
「でもあいつ、おばあちゃんのこと全然知らないみたいだけど。
たぶん、ここにはいないと思う。」
ほんとにおばあちゃんの失踪に鬼門が関わっているのかあたしはまだ疑問だが、あたしがなにを言ったってテンは聞きそうにない。とてつもなく思い込みが激しい人のようだし。
ちゃんと調べたわけじゃない、だけど、ここにはおばあちゃんの痕跡は欠片も見当たらない。
あのショウもきっとエロイこと以外聞いてくれるような人じゃないし、あの殺気ビンビンのレイトとか、あたしの身も早くここから逃げないことには危険であることはたしかなのだ。
まずは、ここを脱出してから、おばあちゃんのことをじっくり探る
それでいこうとあたしはテンを説得にチャレンジしたが

「リンネ・・・お前には必死さが足らんな・・・・」
「へ?」
テンは一瞬目を閉じ、手に持っていた刀を少し抜いたかと思うと、鋭くその目が開いたのと同時に完全に引き抜かれた刃はあたしへと向かってきた。

うっ、うそっ!!
なんでそんな時ってすぐに逃げたりかわせたりできないんだろう、そうも思えないんだろう。
体はぎっと硬くなり、恐怖から逃げるように目はぎゅっと閉じ、体は動けなくなっていた。

ああ、こいつはとんでもないテロリスト
自分の思い通りにいかないからってあたしを殺・・・・・

!!??

びくんっ
感じたのは痛みではなくひやりとした冷たい感覚、左頬に冷たい物が当たっているのがわかった。

「あれ?」
あたしは生きている、たしかにテンはあたしに向けて刀を振るったはずなのに
左頬に触れるはそのテンの振るった刀の鎬
「バカがっ、なぜ目を閉じる?」
「はっ?なに言ってんの?!反射的に閉じるでしょ?!怖いんだもの当然じゃない!」
あたしに当てた刀を戻しながら、ヤバイ汗がだらだらと出ているあたしにテンは
「リンネ、お前は怖いのか?死ぬことが」

は?なに言ってんの?こいつ
やっぱりどこかぶっとんでますよこの人
半分呆れながらも主張

「あ、当たり前でしょ!ふつーの人は死は怖いことです!」
しかし、テンはそれにまったく同調することはなく、あの強い目で真っ直ぐあたしを見据えたまま
「俺は死など怖くはない。俺にとっては・・・・・
なによりタカネという愛を失うことに勝る恐怖などありえないからな。」
なに・・・この人・・・・素?・・・・純愛ドラマの見すぎ?

そうじゃない、こいつはこのテンはほんとに本気でそう思っている、この目にあたしは完全に負けそうだ。

「リンネ、お前は弱い、お前は愛を知らないからな、なお弱い。」
く、なに失礼なこと言って・・・・
「俺は幻滅した、お前のあまりの弱さに・・・・・
だからこそ、戦えリンネ!」

へ?だからこそ?戦えって?
飲み込めないあたしを置いてけぼりでテンは熱く続ける

「戦う勇気を持つことでお前も強くなれる・・・・はずだ。
その気になれば、お前でさえも戦うことができる。
裸になる勇気を持てリンネ!!」
「えっ、ちょっ・・・」
「わかったな、リンネ!」
そう言って、またまた自分の主張だけ終えてテンはしゅばっとバルコニーから消えた。飛び降りたんだろーか??
それにしても勝手な・・・・戦えなんて・・・・あたしは普通の女の子なのに・・・・

どうやらあたしの前に現れたヒーローはかっこよく助けてくれるヒーローとは違うみたいだった
だけど、そんなこと嘆いていたって、あたしの身はあたしで守らなくちゃ

たしかに、テンはムチャクチャだ、Aエリア人間のあたしとは相容れないタイプの人種だ、だけど
今は、あたしの味方
裸になる勇気、戦うこと・・・・今だけの一瞬だけの勇気できっといい。

すべては普通の生活のため、最大限の勇気を振り絞る決意をしたのだ。


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