そこは天国だ、暴力という天国なのだ、そんな祭りなのだ、それがコロッシアム

観客はDエリアの住人と、Cエリアからの客人、それに確認はして無いからたぶんだけど
BエリアやAエリアの人間もいるんじゃないかと思われる、とにかく想像以上の観客
熱気とかテンションとかもう尋常じゃない、騒音いったいなんデシベルなんだろうか、
や、そんなのん気なこと思っている場合か、うわーん、あたしはついていけない
こいつらのテンションに!

その盛り上がりぶりから、観客に負傷者でないんだろうか?
もしでたとしても、ここはDエリアだから、弱い奴は死ぬだけだ、とかって切り捨てられるのが
お決まりなんでしょうけどね、はっ・・・・・。

あたしはキンに連れられて、一番見晴らしのいい、主催専用の特殊席へと着く事に。

こ、ここは、うわー。
会場中央のリングが嫌でもよく見えるんでないの、人間越えた連中の殺し合いを
いい席で観覧できますよー、わー、サイアクです。
そして、向かい側の観覧席のほうの上部にどでかいモニターがあって、おそらく
そこに試合の様子が映されたりするのかも、とか不安になっているあたしを

「どうしたの?早く席についたら?」

ビケさん!

席にと腰をおろすビケさん、そ、その隣にあたしが座ってもいいのですか?
とビケさんのお隣にあたしが向かおうとしたら、

「こりゃリンネ、お前は勝手にふらふらしちゃおえん!」

「うえっ?」
ガシッと背後から腰を掴まれたあたしの体はふわりと宙に浮いたかと思うと
ビケさんの座る席と一席分先の右側の席に座るキンの膝の上に強制的に座らされた。

て、これ膝上抱っこですか?!あたしの尻の下にはキンのムキムキな足があって、痛いんですが
座りごこちいまいち、じゃなくって

「ちょっバッ放して!」
これ絵的にもヤバクないですか?ヤバイ!勘弁してください
仮にも公衆の面前で

体をよじって抵抗しても、キンのデカイ両手にガシッと腰を掴まれて固定されているので逃げられないし

あたしが放せ放せとわめいていると

「うるさいわよ、リンネ、おとなしくしてなさいな」

ビケさんに怒られた、ううう。

「そうじゃ遠慮せんと、ほれもっと楽にしとくとええ」

キンがあたしの両腿をつかむと、ガッと開いて、てこいつなにすんじゃーーー
公衆の面前で大股開き、や、そんなことより
ビケさんのいる前でセクハラされて、もう、あたしは


「死にたい」
ネガティブなオーラ放ちだしたころ、会場の照明がすっと落とされ、一瞬真っ暗になる。

いよいよ祭りが始まるみたいな空気。
そしてどこからか聞こえてくる太鼓の音とともに、試合の解説をする席なのか、そこに照明が当てられて
皆がそこに注目する。

そして太鼓の音に合わせて登場した解説者らしき男と、進行を務めるらしき男が現れて
コロッシアム開催の声を上げて、同時に会場中が震えるような大歓声とともに祭りは幕を上げたのだ。

「ぬっわー」
耳を塞ぎたい。すごい音、声、それの破壊力はすさまじく、あたしの鼓膜をブチ破りそうに
奥のほうがビルブルと震えている気がして、もう、ヤバイです、膜ヤバイ!裂かれる!?
一気に鼓膜突き抜けて、脳みそを間接的にドルドル激しく振られているんじゃないかと、
もう、クラクラしてきちゃう。なにこのすさまじい破壊的な盛り上がりは。

異常なやつらばかり集まっている異常な祭りなのだから、当然なのかも。

さっきの出来事で誤解しているビケさんに、あたしはショウに愛なんて欠片もないんだってことを
伝えなきゃいけないなんてこと、忘れてしまうほど、すごい衝撃に、疲れてしまって
フラついた頭がうっかり後ろにぶれて、キンの顎にゴリッと勢いよく頭をぶつけちゃって
「いてっ」と声を上げたその情けない瞬間

「!?」
一瞬目の前が真っ白に、なにごとかと思えばあたしにスポットライトが当てられていた。
そしてあのデカイモニター、モニターは数箇所に同じ物が設置されていて、どこの席からも見られるようになってたらしい、そのデカイモニターにあたしの今のその姿がドカーンとデカデカと映されている。

「えっえっ、なに?」
混乱しているあたしを祭り進行役の男がマイクの音量最大の声で、あたしを指しながら

「コロッシアム優勝者に捧げられるのは、コロッシアム最強の称号とそして、あの娘・・・・・

あの大悪党の桃太郎の生まれ変わりという悪の化身!今にもその邪悪な花が咲きそうなこの禍々しい小娘を、好きにできる権利が与えられる!」

パチクリパチクリ、なんなんですか?あの男なに言ってますか?
そしてすぐにその男の言葉に賛同するように、観衆の破壊的な声があたしの膜を襲う。

ものすごい視線を感じた。ここにいるすべての人間が今あたしを見て、あたしの顔を覚えたであろう、てまてや。

「や、な・・・・?」
すごい騒音の破壊力と、今の男の言動の理解の難しさにあたしはさらに頭をクラクラさせていた。
世界が回っている。ぐるりぐるり・・・・・

「おほー、すさまじい盛り上がりじゃ、モテモテじゃのうリンネ!」

「あ、いや、その・・・なに・・・」
頭グルグル目もグルグル

「金門についている者が勝てば、このまま公開処刑場になるかしらね」
涼しい顔でそんなこと言わないでくださいビケさん!

「ビケさん、そんなあたし・・・・・」

ビケさんは、平気なんですか?あたしのことなんて、なんとも想ってないのですか?
あたしを守ってはくれないの?

ひとり恥ずかしく動揺しまくっているあたしとは反対に、ビケさんは冷静なままなんだもの、不安な思いに殺されそうだよ。

行くあてのないあたしに救いの手を差し伸べてくれて、Cエリアに置いてくれて、あたしを助けてくれたビケさん。
コロッシアムという殺し合いの祭りで、その祭りの賞品になれと言ったビケさん。
ビケさんはあたしのことどう想っているのか、わからない、不安になるよ、どういうことなの?

半泣きでビケさんのほうを見るあたしへと、顔を向けるビケさんは
「ショウちゃんは負けないわよ」

「え」

そしてあの優しい笑顔、キラースマイルキターー!!!どっきんだめ、死ぬる。

「そうじゃ、ショウのやつもワシらと一緒にガキの頃から雷蔵叔父上の元で戦闘訓練受けてきておるからのう。金門の刺客ごときに負けはせんじゃろう」


ビケさん、ビケさんはショウの力を信じているんだ。
そう、そうなのね、だからあたしを賭けにすることもできるのね。そうなのね!
ビケさんはショウを信じている、麗しき兄弟愛なんだ!

ああっくそっ、ビケさんにここまで信じてもらえるショウが憎らしい!


とビケさんの笑顔で回復したあたしのテンションは再び危ういことになる。
ついに始まったのだ、殺し合いの第一試合が

登場したのは、宇宙人みたいに不気味な男。遠目から肌の色がグリーンに見えるみたいに、全身にびっしりと気味の悪い悪趣味な刺青を入れていて、歯は鋭く尖れていた、酷い猫背で、背骨が浮いて見えて気持ち悪いし。
で対戦相手も、これまた人間ですか?な風貌の男。全身茶色の毛深い体で、その毛でも覆い隠せないほと゛盛り上がった筋肉。まるでゴリラのような。
リングに入って、お互いにらみ合ったところで、太鼓がドーンとなり、開始の声がかかる。
宇宙人のほうは奇声を発しながら、飛び上がり、ゴリラを飛び越え素早く背中に飛びつき、首筋にと噛み付いた。
ゴリラのほうはこれまた人間じゃないような声を上げながら、背後の宇宙人をつぶそうと激しく後ろに倒れる。
が素早く身をかわしていた宇宙人は、空中に舞い上がり、仰向け状態のゴリラ目掛けてナイフの雨を降らせた。
ゴリラはそれをかわす様子もなく、そのままむくりと上半身を起こしながら、落ちてくるナイフとともに宇宙人へと下からのパンチを食らわせた。

「いっっ」
モニターにてその生々しい瞬間をあたしは見てしまった、うええ。
変な音がしていた気がする。ゴリラ男のパワーが桁外れだったのか、宇宙人の顔は、いや頭はまるで風船のように破裂して、おもちゃのように壊れていった。
ゴリラの体やら、その周辺には宇宙人であったものの飛び散った残骸。
リアル宇宙人解剖・・・・・じゃなくって
バカ、あたしのバカ、なんで見ちゃったのよ、あうううう、あううううう。

ゴリラの勝利が決まり、ゴリラ雄たけびを上げる中、太鼓の音と、すさまじい歓声。
すごい興奮している観衆ってのがわかるこの空気に、あたしだけは絶対にこの空気とひとつにはなれないだろうと改めて実感。

「はうっ」
軽くもらしそうになったし、全身がぐっしょりとしているのがわかるし、でもなんか寒くて、指先まで震えているし、喉の奥にすっぱいものが逆流してきてたし、目の奥が熱くて熱くてもう、
あたしの体はおかしい、いや、おかしくない、ここが、ここにいる連中が、この空気がおかしいの!
あたしは正常なのよ

「ううう」

「なんじゃ、リンネ。感動しとんのか」

「違う、呆れてんの!・・・・・気持ち悪い。

トイレいきたい」
吐き気と戦いながら、立とうとするけど、うわん、もうあたしの体変になっている!

た、立てない・・・・

「キン、付き添ってあげなさい。なにかあっては困るし」

「おおっまかせろ兄者。リンネ、大と小どっちじゃ?」

「わっちょっ」
膝抱っこのままキンに抱き上げられて
て、こいつは、乙女に対して大とか小とか聞くんじゃねぇ!

キンに抱きかかえられて、あたしはトイレにと行くことに・・・・
て、こいつちょっと優しく運んでくれないの?今は振動が少しでも少ないほうが助かるのに

「おうっおうっ」
走るキンの振動にあたしの体は上下にゆれ、ますます気持ち悪くなるのだった。
文句言う元気もないので我慢した、はい、早くトイレでゆっくりしたい。大じゃないですから、念のため。

トイレに向かう通路に出た時、こちらへと向けられる視線の嵐を感じた。
ハッ、ヤバイ、あたし顔隠しておかないと、と焦ったら

「あれはDエリア最強の男!」

へ?
こちらに注目して騒ぎ立てる男たち、視線はあたしじゃなくてキンにだったわけで、とりあえずほっ・・・・

じゃない!

キンさんあんた目立ってますよ!さっさとトイレに直行してください!
とあたしが心で叫んでいるにもかかわらず

「まとめて相手しちゃる。かかってこい!」
とかって挑発しちゃってるし!?で、当然連中は暴れ馬のごとく突進。
あたしを抱えたキンに向かって、五人、十人、もうそこらにいたDエリアの人間と思われる血気盛んなやつらがわらわらと飛び掛ってきた。

「ちょっ、キン・・・・」

「主催ってのは退屈でならんなー、やっぱワシにはこっちのほうが向いとる」
とかって嬉々として、連中とチャンチャンバラバラ始める。

「ぐっっ」 「ぐへあっ」 「ひでぶっ」
ひでぶっとか叫ぶ奴初めて見たよ、と感心している場合か・・・・・。
狭い通路の中、飛び掛ってくるバカ共を、あたしを腕に抱えたまま、蹴りやら、右腕で、ダウンさせていく。
キンのやつ「はっはっは」とかって笑ってやがるし、あたしはただ嵐が過ぎ去るのを待つだけしかできないと、顔を頭を両手で覆いながら、身を小さくしていた。
そしてキンが暴れるたびに振動が、体を襲う、ううう、勘弁してってば。

地獄の通路を越えて、なんとかトイレへとたどり着いたあたしは、トイレの個室に入ったとたん、脱力。
便座に手をかけながら、うえー、とへたりこんだ。
気持ち悪い、信じられない・・・・・・もうあたしの身の回りで起きていることすべてが
そして無意識のうちに、便器の中に顔を突っ込みそうになっていたのに気づき、ハッとする。

はぁ、できることなら、ここに閉じこもっていたいかも、あの会場に戻るのは憂鬱だ。
ビケさんの側にはいたいけど・・・・・
これも愛の試練とやらなのか?だとしたら、なんてキツイ試練なの。

はぁーーーーー・・・・・・
もしそうだとしても、今は少しだけ、ここで安らいでていいですか?


「あの女、ここに入ったの見たもん!どこにいるもん?!」

ビリビリビリ、全身の毛が逆立つ、この感じは、そしてこのキンキン響く声は、あの・・・・・

ガンガン!
何室か向こうの個室の戸を激しく蹴りつける音がした。その激しい振動で、あたしのとこの戸もビンビンと震えた。

この声と乱暴な音は、間違いない、アレだ、雷門カイミ、あの破壊娘、台風ガール。

「うらーーー!っち、ここじゃないもん」

ドアを蹴破るような音がして、カイミのその声がした。まさか、トイレの個室全部壊して、あたしを探すつもりじゃ?

ひいっっ、こ、怖い!そして昔、そんな怪談があった気がする。でもいっそ怪談のほうがはるかにマシ!

ガンガン!

「らーーー!ちっ、ここでもないもん」

ヒー、ガクガク、だんだんとカイミが近づいてきている。
ここにきたら、狭い個室の中じゃ逃げようがないし、あたし、見つかったら、殺される?!

もうトイレですら、安らぎの場所じゃなくなったーーー

「カイミー、なにやっとんじゃー?」
キンの声だ!

「なっ、、キン兄なにしてんのはそっちだもん!ここは女子トイレだもん、すぐ出て行くもん!!」

お願いキン、そのこ外に連れてって、あたし出られない。心の叫びパート2

「またヤンチャしおって、キョウに迷惑かけるのう」

はー、とさすがのキンもカイミの行動に呆れたようなため息を吐いていた。

「むっ!違うもん!あたしじゃないもん、これも全部あの女、桃山リンネが悪いんだもん!!」

ちょっとなんですか?なんであたしが悪いのよ?
あー、もう頭痛いよ、もう、なんであたしばっかりが殺意抱かれてなきゃならないのか

キーキー喚くカイミとキンのやりとりが段々遠ざかるのを感じて、恐る恐る、戸を開け、外を確かめる。
そこにカイミの姿はなく、ほっとして、そそくさと戻ろうとした時、あたしを呼び止める声がした。

「リンネ」

「キョウ!」
振り返ると、カイミの付き添いで来ていたというキョウがいた。

「大丈夫ですか?あまり顔色がよくないようですが」

「え、うん、ちょっと、気分悪くなっちゃってて、トイレに」
逃げてきたんだけど、カイミが来たから、余計疲れちゃったと・・・・とほ。

「そうですね。私も、こういった場所は苦手なので。カイミが行くと言わなければ来るつもりはなかったんです」

そう言って、息を吐きながら、軽く苦笑いを浮かべるキョウに、あたしの心も少しほかっとなる。

「よ、よかった。あたしだけじゃなかったんだ。あたしも、ビケさんの主催祭りじゃなきゃ来るつもりなかったんだけど」

周りが異常なだけなのよ、キョウの言葉と反応にそれを確かめる。

瞬間妙な沈黙があって、あたしの瞳の奥を見るような目でキョウが口を開いた。

「リンネ・・・・」

「へ・・・」

「あなた、変な夢を見たりしませんか?」

変な夢って、そりゃ変な夢など見たりしますが、けどなんでそんなことを急に聞いてくるんだ?

「自分でない、だれかの記憶が自分の記憶のようにあったりとか・・・・・」

「へ、え?なに、それ・・・・?」
目をぱちくりしているあたしを見て、あたしがわかってなさげなのを察したキョウは

「すみません、変なことを聞いて。ないのなら・・・・」

なんだろ?もしかして、あたしの記憶のことでなにか気にしてくれてたりとか?
たしかに、まだ少しも思い出せない二年間の記憶だけど、そのことを?


キンとともに再び席へと戻ったあたし、しかし、トイレに行くだけでこんな疲れるのもどうなんだ。
おそるべしコロッシアム!もうとっとと終わってください!切実に願う
でも、まだショウの試合も始まってなければ、それまでに何度か試合があるわけで
もう気持ち悪くなるのはつらいので、そうだせめて視覚だけでも、シャットアウトしとけばいいじゃん!
と思って、試合が始まるとぐっと目を瞑ってこらえようとしていたのに、キンに
指でムリヤリ目を開けられさせて、見たくないものをまたしても見ることになっちゃって・・・・・

クジラの潮吹きのごとく吹き上がる血に、餅のように飛び散る肉片たち。
ドロドロのグチャグチャの人間の見たくない部分を嫌でも見せ付けられて、激しく嘔吐に襲われて
瞼は痛むは、涙はぼろぼろ止まんないわ、逃げたくてもまたしてもキンに捕まえられて固定されて
これはものすごい拷問です、近くには好きな人がいて、どうせ見るならドキドキのラブストーリー映画とかがいいのに、別の意味のドキドキリアルストーリーをおええとともに見なくてはならない、すごい拷問ですよ。
そんなボロボロのあたしとは対照的に、他の観客はもうアホみたいに興奮、盛り上がり。

血がいい、本気の殺し合いがいい。
闘っている選手には、応援の言葉じゃなくて、汚い言葉を浴びせて、もっとやれだの、ぬるいだの、アレをアレしろだの、もう、おかしいんだよ、あんたらはっっ

ひとつの試合が終わるたびに、一人の人間が死んでいく。それを喜びにしている観客達。
頭を抱えながら、ハッとする。
あたしは、我が身のために、ショウに参加しろだなんて言って
とんでもないこと言っちゃったんだ、人のことどうこう言っている立場じゃない
ビケさんたちはショウは負けないて言っていたけど、でも絶対なんてあるの?
もし、ショウがあの負けた連中みたいなことになったら、あたしの目の前でそんな惨事が起こったら?
たしかにショウはムカツク、ヤな奴だけど、でもそんなことになったとしたら、あたしは
どうしようもない想いを抱えて生きていかなきゃいけなくなる。やだ、勘弁してほしい
脳みそバーンだけは、絶対に!

今になって激しく後悔しているそして、ついに

「おっ、ショウの番じゃのう」

「!」

何度かの地獄を見てきて、そしてやっとショウの試合が始まる。ショウには死んでほしくないし、負けてもらっては困るし、でも、ショウが勝つということは相手は死ぬわけで、やなんかもうどっちにしても気分はよくないサイアクなんですが

ショウが登場すると、さらに会場は盛り上がりの声が上がる。ビケさんはこのコロッシアムでの目玉だといっていたショウは鬼門の人間で、雷門側の人間で、注目されるのは当然なのかもしれないけど。
(興奮したカイミが乱入とかは大丈夫ですか?)
観客達がショウになにを期待しているのかはあたしは知らないし、そんなことはどうでもいい。
とにかく、早く、無事にすんでくれ!それだけなのだ。

そして、対戦相手も登場した。ショウの対戦相手は、これまた人間越えた風貌の、ごつごつの肌の、恐竜みたいなデカイ男。ごつごつの肌には毛という毛は見当たらなくて、白くにごった細い目に、なにもかも飲み込みそうなほどのデカイ口からは気持ち悪いほど赤いものが見え隠れしていた。
そいつはあたしのほうを見て、げははははと卑しい笑みを浮かべながら、あたしをビッと指して

「待ってろよ女ぁ!オレ様が全員ぶっ殺して、ここでてめーを引き裂いてやるからなー!」

いっっ?!

げはははは。とやな笑い声を上げながらあたしのほうを見ている不気味なその男。そいつの言葉に観客はわーわーやれーやれーと煽るような声が飛ぶ。
な、な、今のはつまり・・・・・

公開処刑宣言?!

歯がガタガタとなる、顔が汁で濡れまくっていることにはっとなる。ヤバイ、ビケさんがいるのに、でも、睨まれて、あたしは動けない。

なにあいつなにあいつなにあいつーーーーー、ムカーーー

そのムカツク笑いを絶ったのは、銃声らしき音。
それは男の頬をかすめたらしく、男の顔にはその形跡があって
その音を発したのは、男の背中側にいたショウの手の中に。
男の表情は凍りついたように、そして怒りに震えているようで、そんな男を鋭く睨みつけながらショウは

「アレはボクの人形なんだよ。お前みたいなゴミクソ野郎に触る権利ない」

まるで氷のような冷たささえ感じるショウの瞳を見て、ああショウもアッチ側の人間なんだと感じて
そして、もしかしたらと思ったのは
あたしと同じコッチ側の人間は、一人もいなくて、あたしの味方なんて最初からどこにもいなかったのかもしれない、なんて、そんな恐ろしい気持ちがかすめた。



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