ざまーみろショウ、と思った直後、あたしもショウに続いて固まるという状態に

どういうことですか?今ビケさんの口から出てきた
「リンネを賭けてのトーナメント」って、いったい・・・・・
このコロッシアムって祭りって、なに?!

「リンネを賭けてのトーナメント?」
顔を起こしてオウム返しのショウ、眉間にしわ寄せながらビケさんを見る。

「ええ、そうよ。」

「ちょっそれ、どういう意味ですか?!

あたしを賭けてのトーナメントって?」

「リンネは優勝者への賞品てことじゃ!」

にっと笑顔で答えるキン。・・・・・え、なんですか?あたしが賞品とか賞品とか・・・・・

はい?!

「な、なんですか?それ、理解に戸惑うんですが」

変な汗がじわじわきているんですけど
なんかそれとてもあたしにとって喜べることじゃないことに思えるんですけど
詳しく説明いただけますか?!

「金門の間である噂が広まっていてね。

リンネがあの桃太郎の末裔で、その桃太郎の生まれ変わりだという噂が」

ちょっ、それは金門の陰謀、あたしに対する誹謗中傷

「あの、それは金門にイヤガラセを受けてて、そんな噂デタラメです!」

「いいのよこのさいそういうことにしておいて」

「へ?」

「優勝賞品が桃太郎の生まれ変わりであるリンネのほうが盛り上がるしのう」

「待ってよ。もしかして、このエントリーされている奴ら、もしかして

金門側のやつら?」

ショウの言葉に「そうじゃ」と頷くキン
て、ちょっと、そういうことにしておいていいってどういうことですか?
なんであたしがウソでも桃太郎の生まれ変わりにならなきゃいけないの?
なんで祭りの賞品にならなきゃいけないの?
いくらビケさんの言葉でもすんなり頷くことできませんよ。

不安な顔で見上げるあたしにビケさんが

「リンネ、あなた金門に何度か狙われてきたんでしょう?」

「えっ、ビケさん知ってたんですか?」

うわん、迷惑かけたくなかったのに

「このイベントのCエリア側の客の大半は金門の人間なのよ。

だから、コロッシアムという公の祭りで、ショウちゃんが優勝してリンネを正式に
ショウちゃんのモノとしてしまえば、金門も手出しできなくなるんじゃないかしら」

え、てことはもしかして、ビケさんはあたしを金門の魔の手から守るために?
そう、そうなんですね?ビケさん
え、ショウのモノとかいうあたりは遠まわしにビケさんのモノと解釈します。
自分に都合のいい解釈バンザイ

「えっ、そういう話じゃったかのう?」

「いいのよ、細かいことは。桃太郎の名がでれば
金門も雷門も嫌でも盛り上がるからね」

あたしが自分に都合のいい解釈をしていた時、ショウは不満な顔のまま「あのさぁ」と声を漏らした。

「それって、つまりは、ボクはリンネのために命張れってこと?」
嫌味っぽいため息を聞こえるように吐きながらショウ

「おお、そうじゃ、おいしいのうショウ」
キンにベシベシと軽く背中をはたかれて、さらにうえっと不満な顔のショウは立ち上がって

「ムリ。死んでもやんない。Bエリアに帰るから。」

不機嫌オーラ放ちながら、ズカズカとあたしとビケさんの横を通って、ドアを開け外の通路へと出て行った。

「ちょっショウ!」

「困ったわねー。ショウちゃんが出るってことで呼んだ客人も大勢いるのに、期待を裏切ることになるわ。

なんとか説得できないかしら・・・・」
ふーと息を吐きながらビケさんがちらりとあたしのほうを見た。

どきっ

「そうなると兄者の立場もないのう。」

「ええ、そうね、どうしたらいいかしら」

どきどきどき

「あのっ」
ビシッと右手を上げて、はい先生とばかりに

「あたしが、説得してきます!」ビケさんのために!

「ありがとうリンネ、お願いするわ」
はうっ、キラキラと期待の眼差し!ビケさんに頼られているあたし?!

はい、もうなにがなんでもつれてきます!ビケさんのために
ビケさんのために!
しつこいくらいビケさんのために!!!


「ショウ!」
人のほとんどいないその通路の先にショウの後姿を見つけて、走って追いかけ呼び止めた。
ショウは片手に通信機を持ってて、どうやら誰かと連絡をとっている。

「あっ、レイト?

これからそっち帰るから、いつもの店のバニラアイス用意しといて
あと愛人形五人以上、ブスと貧乳は弾いとけよ」

「おいショウ!」
通信機を持つ手をガッと持ち上げて、ショウに詰め寄りながら

「ちょっなに・・・」

「アンタが出ないと、ビケさんに迷惑かけるじゃない

出なさいよ!」

ビケさんの期待を受けているあたしはなにがなんでも、こいつをコロッシアムに出させる!ぐっ

「確かにビケ兄に迷惑かけるのは嫌だけどさ、でも

リンネのために命懸けるっていうのがムカツクんだよね」

ムカッ

「それにセックス以外で体動かすのキライだし、あんな人間越えた野獣と汁だくでやりあって勝利しても

優勝賞品がリンネってさーーーーー・・・・・・

めちゃめちゃヤル気失せるんだけどー」

はぁーーー、とむちゃくちゃ深いため息で俯くショウ、こ、こいつはーーー

「あんたねー」

「だいたい、なに?その態度。

人にお願いする態度じゃないよね?」

少し顔を上げて、前髪の間から覗くジロっとした目であたしを睨みながらショウは

「コロッシアムって殺し合いだよ。こっちは出たら勝つか死ぬか、てきとーな感覚で出られるもんじゃないってのにさ。

祭りの内容以前に、リンネのその態度がムカツクんだよ」

うっ、そうか、たしかに、そんなハチャメチャな大会、キンやテンじゃないと喜んで参加できるもんじゃないと思うし。
ショウにはムカツクけど、でも命を懸けるわけだし、ショウにあたしのすべてがかかっているわけだし、
そして、ビケさんの期待も・・・・・

「ご、ごめんなさい・・・・そりゃ勝手な願いだって思うけど

あたしだって、この祭りの内容は、賛同できないものだけど、でもビケさんの立場だってあるし、ビケさんにはお世話になっているでしょう。だから協力してあげたいって思うじゃない」

「・・・・・・・」

「お願いショウ、力になってよ!ビケさんのために!」
正しくはあたしのために、かもしれないけど

少ししてショウがぼそりとつぶやいた。

「なにかしてよ」

「へ?」

「ボクをその気にしたいならさ。なにかしてよ」

なにか?なにかって、なにを・・・・・?
もしかしてちょっとショウの気持ちが動いている?もう一息?
なにか、なにかってなにをすれば・・・・・
あたしは考える、鶏クラスのおつむをむむむとしぼって、いや、実際たいして考えてなかった気がする。
なんかもう必死だったもん、その時のあたしは

ええい、とばかりになんかもう勢い任せにショウの左頬に唇を押し付けていた。
それはほんとに一秒ちょいくらいの時間で、キスなんて名前で呼ぶのも馬鹿馬鹿しいほどのもので
あたしの行動に驚いていたのか、一瞬呆けていたようだったショウだけど


「そこまで言うなら、やってもいいけど」

「えっ」
ニッと意地悪げなあの笑みを浮かべてショウが腰を上げた。
え、マジで?やった、これでなんとかあたしは
と喜びなど一瞬の幻よ


「愛の力ね」

へ?
振り返るとそこにはビケさんとキンが立っていた。
たりたりたり、変な汗がじわじわと浮いては流れ
ちょっビケさん?!今の見られていた?!

「ズルイのう、ワシにはしてくれたことないのに」
指くわえて拗ねているキンはスルーとして、ビケさん?!

「武器の使用は制限無しだったよね?反則なんかもなんでもあり?」

「おおう、勝てばなんでもありじゃ!一対一ならな」

「嬉しいわ、ヤル気出してくれて」

「あのっビケさん、ちがっ」
ビケさん誤解している!あたしとショウに愛なんて欠片もないんですってば!
さっきのは違う、あれはキスなんて代物じゃなくて
ビケさんのデコチューと比べたらもうそれは、レベル1000くらい違うというか、もうなんなんだーー

「ふーん、優勝すれば、公共の場でリンネを陵辱しても問題なしってことになるんだよね♪」
ムカツク笑みを見せて、控え室へと足を向けるショウ、ま、まてこいつーーー

ショウと別れて、あたしはキンに連れられ観覧席へと
ハチャメチャ極まりないDエリアの祭り「コロッシアム」あたしの心は乱れたままその暴力祭は始まるのだった。



バックしよーか?      つぎのぺーじへ