おじさんにもらったメモを頼りに、その行き先である領主館を目指す。
様々な店の立ち並ぶ通りをただひたすらにまっすぐ進む。
相変わらず好き勝手遠慮無しに行き交う人をかわしながら、少し景色を見渡してみる。

ほんとうにここはAエリアとは全然違う
信号もなければ、横断歩道も歩道橋もない。
ゴミの分別なんてちっともされてないし
歩きタバコどころか、あっ!いまあの人ポイ捨てした!!!
掃除する人がいないのか、歩いている道もかなり汚れていて、足の裏にぼこぼこ感があって気持ち悪い
あっ、靴はさっきのおっさんのとこで借りた。
それにこの通り全体の雰囲気も、洗練されたAエリアの街並みとは全然違う。
どことなく薄汚れてて、なんだか怪しい空気が漂ってて、あたしがいたAエリアにはなかったようなわけわからん店が立ち並んでいる。
信じられないのはところどころに見かける「武器屋」
Aエリアでは所持しているだけで罪になって捕まっちゃうっていうのに、それが堂々と売られているなんて

なんてこと・・・あああ。ありえなさすぎる世界、夢じゃないよね? …夢ならいいのにホント。

そんなかんじで通りを歩いていくと、目に入ってきたのは大きな女神像、それを囲むように噴水があった。
そこはちょっとした広場みたいになってた。
でたしかそれが目印って言ってたっけ
そのすぐ近くらしいのだが・・・
その噴水近くで立ち止まり、きょろきょろと辺りを見渡してみると

「あっ、あれかな?」
その周囲で一番大きな建物が目に止まった。
ここらではたしかに一番立派っぽい、でもAエリアの領主館と比べるとずっと古びたかんじ
なんだか無駄にどきどきしてきたが、とりあえず行ってみよう
わけのわからないままこんな場所にいるよりかはマシかもしれないし
あたしがなぜこのBエリアにいたのかその答えがあるのかもしれないし
とにかく行ってみよう!

建物の門の前に移動した、・・・そういえばAエリアの領主館にさえ一度もいったことがなかったのにな。
初めて来る領主館がBエリアの・・・・なんて・・・・なんだか、な
いざ、中へ入ろうとしたらいきなり上とか下とか建物や木の影から数人の男達とネコ?があたしを囲むように現れた。
ななななななに?!
黒装束の怪しさ全開の男達にヘルメットを被ったネコが数匹
あたしを警戒するようにじりじりと囲む。
しかもよく見ると懐に凶器らしきものをちらつかせている?!
ひぎっなにっ?ちょっと待って・・・あたし怪しい者じゃ・・・・
ってこいつらのがよっっぽど怪しいよ!!
じりじりと近づく男達とネコ・・・・・
違う違いますと首を横に振りながら後ずさっていると
館の正面口の扉が開き、スーツ姿の若い男が現れた。
あっ、あの人はなんかまともそう・・・・と思ったのも一瞬
手に拳銃らしきものを持ってます!しかも、あたしをちらりと見るとギンッと鋭い目で睨みつけてきた。
ぎゃー、もうなに?なんなの?ここはいったいなんなのよ??!!
パニック最高潮
脳内が真っ白になっていくのがわかった
なんだろう、もうこれはもう
もしかしてヤな夢なんじゃなかろーか、やっぱり夢なんだよね? だれかそうだと言ってください。涙…
意識がぶっとぶかと思ったその時
扉の奥から
「レイトー、もう来た?」
その声にぴくりと反応した男達はいっせいに動きを止め、スーツの男はその声へと返事をしていた。
男はあたしをもう一度ちら見し、奥の声の主へと答える。
「いえ、ショウ様、怪しげな女が一人やってきただけですが」
怪しげって!!あんたらに言われたくないっての!慌ててあたしが
「あのっ、あたし領主様に会いにきたんですけど!」
必死!てか早く消えてくれそこの怪しい男共!ネコは別にいいや
「いーよ、早く通してよ、もう待ちくたびれちゃってさ」
奥からの声、それにスーツの男は怪訝そうな顔であたしに合図をしてきた。

「おい、女、早くこい!」
そう男に言われて、あたしはこそこそと扉へと向かう、男のすぐ側を通った瞬間
「ちっ、殺しそこなったか」
はいっ?!
あたしにだけ聞き取れるかのようなつぶやきで、そいつは確かにそう言った
なに?なんなの?あの男
さっきあったあの謎の男といい、なんなのこのBエリアにはまともな男はいないのか?!
なるたけあの男と目を合わせないようにしながら扉の中へと足を踏み入れた。
入った瞬間こちらに飛んでくるように駆けて来る影に気づいた。
それはジャンプしながらすごい勢いであたしの目の前に駆けてきた。
「うぇっ!あっ?!」
その顔は至近距離にあった。あたしより少し高い背丈のヤンチャそうな男の子の顔だった。
あたしが言葉を発するより先にあたしの目の前にやってきて
マジマジとジロジロとあたしの観察?をしていたみたいで・・・・・

だ・・・だれ?こいつ・・・・?

あなたはだれですか?
そう問いかけるより早くその彼はあたしを
一通り見た後
「ま、しょーがないか・・・・。」
は?
なんか少しがっくりした顔を浮かべたかと思うと
「ま、いいや♪
じゃ、早速来てもらうよv」
「はい?あの・・・・」
あたしの主張を聞いてくれる間もなく、そいつに腕を強引に引っ張られたあたしは上の階の奥の部屋へと連れて行かれた。
引っ張られながら連れて行かれた部屋でいきなりそいつは嬉々とした顔であたしの肩を掴んだかと思うと

「え・・・ちょっなに!?っっ??!」

いきなりのことでわけのわからん状態のあたしはかなりパニクっていたのだが
気がついたらあたしは服を脱がされていた
というかまさに
マッパにされていたのだ!!
あまりの手際のよさに抵抗する間もなく、また頭が真っ白になるかと思った瞬間

「キャアアーー!!!」
反射的に大事なとこを手で隠し、思わずその場にへたりこんだ。
いや、なに?なんですか?あたし・・・マッパ・・・です?? ちょっパンツどこ?どこに飛ばされた!?
混乱気味のあたしを上から見ながらそいつは嬉しそうに無邪気にケタケタと笑っている。
なっ、なんだこいつはーーーー

「ちょっ、なにすんのよ!?それ返してよ!!」
へたり込んだまま、情けない格好で叫ぶあたしを嘲笑いながら、そいつはあたしの膝元になにかを投げつけた。
「ここでは、それ着てよ♪」
「は?」
いじわるな笑みを浮かべたまま、そいつはあたしが着ていた服を没収した。
「ちょっと、アンタね、あたしはここの領主に会いに来たのよ。なのになんでこんなこ・・・」
「うん、だからボクが領主だけどv」

・・・・・は?
いかんいかん、あたし耳掃除怠っていたか? よく聞き取れなかったんですけど。

「だからー、ボクがこのBエリアの領主のショウ様vv」
「はっ?はい?!」
「いつもいく店全部売り切れててさー。でも前に買ったこが壊れて使い物にならなくなっちゃってたからさー。とにかく早く新しいこが欲しかったからなんとかならないかって頼み込んでたら、
あの店で一人残っている極上のこがいるって聞いてうきうきしてたんだけど・・・・
なんか期待していたのとちょーっと違うかなーって
なんか、さー、見た目も体もビミョーなかんじだし
どこが極上なの?」

なにを?
て、またなんかムカツクこと言われた気がするんだけど

「失礼します。」
そう声がして部屋に入ってきたのは
さっきのあの怖いこと言っていた男
「あ、レイト。」
レイトと呼ばれた男はショウに軽く辞儀をしたあと、またあの鋭い目であたしを睨みつけた。な、なんで?
「いいかげんそういうことは謹んでいただきたいのですが、もしカイミお嬢様の耳に触れたら・・・」
「あーもー、うるさいな。だいたいボクの自由にしていいって前領主の雷蔵伯父さんも言ってくれてるんだし。それに女の子弄ってるの楽しくってさー。お前もやんなーい?」
「いっっ!」
足の指であたしの尻をぎりぎりと抓んでいる。い、痛い!てか生尻だしっ、あたし未だに全裸で動けないし
男二人に全裸って、なんかすごいヤバイ状況なんですけど。
でもレイトってやつはショウとは違う態度で鋭くあたしをまた睨みつけている、なんか殺意すら感じている
「ご冗談を・・・そんなクソ女など欠片も興味ありませんので、(というより早々に処分したい)」
ナイフのようなセリフをザクザクと・・・そしてなんかぼそりと恐ろしいことをつぶやいていたような?
「ふーん、まっ、またこのこがぶっ壊れて使えなくなったら、また処分頼むよ!」
「はい、ええもちろんです!お任せを!!」
きらきらとうれしそうな表情でレイトは部屋を出て行った。
どうやら、あのレイトって男このショウの部下みたいだけど、年もあたしと近いくらい若そうだった。
でも、なぜかあたしにすっっごい敵意を抱いている気がする。なんか苦手かも。
それにしても処分って・・・処分ってどういうこと?・・・・知らないほうがいいことなの・・・・

「いーかげん裸にも見飽きたー。ねぇ、そろそろそれ着たら?」
「はっっ!」
なんだろう、全裸にされて恥ずかしいとか感じる前にえらいバカにされて・・・・なんかもうあたし
わけのわからん状態で
わけのわからん辱められかたを・・・・・泣
生まれて初めて男に体見られたっていうのに、見飽きたと即言われた
もうもうムカツクっての通り越して・・・・こいつ・・・・・

殺してぇーーーー!!!ムガァっっ!!

服は返してもらえそうにないのでしかたなく渡されたやつを着ることに・・・
しかし、すぐに後悔
なんかもうエロイコスプレみたいなヘンタイくさいコスチューム・・・・
いえもう下着姿のが全然マシ!
いやもう全裸のがマシ!着たあとで激しく後悔した。
うううううう・・・

もうスキあらばこいつの衣装をひっぺがして着てやろうかとも思ったけど、背後に鋭い殺気を感じるので(おそらくあのレイトってやつだと・・・)やらなかった。

もういろんな感情がぐるぐるで混乱していたけど、大事なことを思い出した

「あたしAエリアに帰らなきゃいけないんだけど!!!」
そうあたしはAエリアの人間、なぜこんなとこに来てしまったのかまったく思い出せないが
とにかくAエリアに帰らなきゃ・・・
そんなわけでショウに頼んでみることにしよう。

しばらくしてあのレイトってやつに呼ばれてショウは部屋を出て行った。
とりあえずあいつから解放されてほっとした後
やっと部屋にひとりきりになったことに気づき、なにか別に着替えるものはないかと部屋の中を探してまわったが・・・・がっくり、まともなものはなにひとつない。
着るものといえば似たような変態くさいコスチュームとかエロっちいランジェリーばかり。
他には、…なにに使うのかよくわからない小道具とか…、うんきっと知らないほうがいいよね、うん。
・・・・どうしようもないヘンタイ野郎なのかー・・・とほほー、と呆れて窓際にへたり込んだ時
なにか視線を感じた。
それは窓の外から
外はバルコニーになっていて、そこから伸びる影からなにかの存在を感じた。

「!」
バルコニーに立っていたのは男・・・・?!
長身で黒髪で黒っぽいジャケットの、あの危険な空気プンプンの
あのヤッバイ男!!!
固まったままのあたしとあたしを見下ろすような視線の男はバッチリ目が合ってしまった。
すぐに言葉がでないあたしを見ながらゆっくりとバルコニーを歩いているその男は
「ヘンタイか・・・・・」
そう一言だけつぶやいて、そのまま通り過ぎた。


「うぉぉぉぉおおい!!!」
誰がヘンタイだーーー?!

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