第十四話 解放の条件

再び出会ったホツカとヤード
なぜかシャニィに怒られて、納得いかないホツカだが
師匠言ったよ、心配してくれる仲間は宝さ!
そうだよホツカもそう思うよ
不穏な未来見たけれど
きっと変えていけるはずよ
頼もしきヤード組の仲間たち
ヤード、フィア、カツミ、シャニィ、そして師匠も
師匠のあだ名はシラスに決定
不服不満なホツカだが、ホツカよどうして師匠の呼び方こだわるの?
うーんきっとホツカにしかわからない特別な気持ちあったりしてね?
いつか聞かせてくれるよね?ホツカの記憶
その前に大波乱だよ!?協会本部に乗り込むよ?
見よ!キチガイどもの夢の跡!ついにホツカとドーリアが!?









ホツカがヤード組入りを決意した矢先、飛び込んできた騒動。
ホツカと同じく協会に囚われていた中年兄弟【アーニとオトート】その弟のほうのオトートが協会本部に乗り込んでしまったと、兄のアーニから聞かされ、ヤードたちは後を追い、協会本部へと急遽向かうことになった。

「オトートさんって、たしか…」

ホツカ心当たりがあった。なぜなら、問題のオトートは夢に見た人物だったと思い出したのだ。つまり、ホツカの予知夢に登場した処刑されてしまう人物だ。
無事救出し、ホツカのもともとの作戦通りにはならなかったが、彼らを処刑の危機から救うことができた、と思っていたがどうも回避できてなかったようだ。

肩に止まる師匠にホツカは告げる。予知は回避できていなかった事実を。

「ヤードさん、ほんとうにすまない。弟は血気盛んなところがあって、自分たちだけでなく幼い少年少女まで処刑しようとした協会に対して強く憤っていたんだ。今にも乗り込みそうな態度だったが、まさか本気で出て行くとは思わず…」

移動中の馬車の中、アーニはヤードに申し訳なさそうに事実を伝える。その顔には不安と心配が露になって酷く汗が浮いていた。恐怖や後悔、様々な感情が彼の中を駆け巡っていることだろう。アーニの話を聞いて、シャニィとホツカが顔を上げる。

「えっちょっとそれってアタシらのことかよ?」

「それって元を言えば、僕が行動したせいってことになるのか」

ホツカがヤードのもとを離れ収容所に乗り込んだこと。その流れでシャニィも囚われてしまった。予知を回避するために動いたことが、結果自分の行動のせいで予知どおりに進んでしまった。

『いいや、なんにしてもお前が動かなければ、ヤードたちの救出は失敗し、あの者たちは予定通り処刑されていただろう』

師匠のいうとおりだ。ホツカが動かなければ、それはそのまま予知どおり処刑されていたことになるだろう。

「ああいやすまない。君たちのせいじゃないんだ。気を悪くしないでくれ。ほんとに申し訳ない、弟を止められなかった私にも非がある」

「なんにしても迷惑なおっさんだよ。せっかく助けたっていうのに、わざわざ敵の本拠地に乗り込むなんてさ…」

シャニィだけでなくオトートの行動にあきれても無理はない。だがだれもオトートのことをバカにしているわけではない。皆心の底から案じているのだ。真青な顔をしているアーニにも、思いつめてほしくはない。

「シャニィ、なにもそこまで言うことないだろ。オトートさんの行動は僕らも無関係なわけじゃないし」

シャニィの言葉に悪意があるわけではないが、顔色真青のアーニに対してもう少し気のきいた言い方をすればいいのにと思い、ホツカがやんわりと伝えたが。

「けど逆にいい機会になるじゃん! なあ、おっさん。おっさんたちは協会と戦うんだろ? この機会に協会をぶっ倒してやろうぜ!」

握り拳突き上げながらシャニィが吼える。シャニィは彼女なりにアーニさんを励ましている…に違いない。

「そうだね、ちょうどいい機会だ。シャニィ君の気迫は見習いたいね。だけど無謀な戦いは厳禁だ。今回の目的はオトートさんの救出だ。彼を救うために、誰かが犠牲になることはあってはならない。
シャニィ君の活躍には期待しているけど、単独行動はしないように。もちろん、他のメンバーもだよ」

ヤードはシャニィに同意しながら、彼女の気を害さない程度に釘を刺す。

「特にカツミ」

とカツミだけ名指しで注意する。「(たしかにカツミさん協調性なさそうだけど…)」とホツカも思うが。カツミは無愛想に「フン」と鼻息で返事して顔を背ける。仲良しこよしではないが険悪には見えないヤードとカツミの関係が妙に気になりながらも、ホツカもヤードに同意する。

「協会本部には魔動ロボが常駐しているでしょう。兵士の数も多いし、それに…ドーリアがいます。ロボなど比較にならない脅威です。その上、天候制御装置の存在も無視できません」

ホツカの夢の中でも登場した天候制御装置。処刑装置の作動に大きく関わっているそれを軽視することはできない。もちろん処刑装置のことだけではない。天候制御装置は防御の要でもあり、また恐ろしい兵器とも化す。人々の生活を守るため、というのも建前だろう。使い方しだいでは生命を脅かす兵器にもなるのだ。


向かう先は首都【アーマヤコ】中央政府と協会本部はそこにある。
のんびりしてはいられない。オトートを救い出すため、急がねばならない。ホツカが頃合を見て馬車の動力となっている馬に加速の魔法をかける。長時間の効果だと馬にとっても負荷となるため、かけてはといての繰り返しと様子を見ながらになる。これでだいぶ時間の短縮にはなるが。

「なんだよホツカ、お前がみんなを瞬間移動させればいいだろ」

とシャニィに言われるが、それはさすがにムリだと首を振るホツカ。

「飛ばせる範囲が近距離に限られるし、風魔法が得意でもそこまで便利なことはできないよ」

「なんだよ、使えねーなー」とシャニィにぶうたれるが、魔法だって能力に限度があるのだから仕方ない、わかってほしい。ムリだとホツカは言ったが、師匠はホツカに話す。

『たしかにお前一人ではムリだろうが、風のシンクロ魔法なら可能になるかもしれんぞ』

「(風属性の仲間か。たしかにいれば、もっと僕の魔法にもできることがグンと増えそうだ)」


「それでもホツカ君のおかげでだいぶスピードアップよー。まあレトロな移動手段しかないのが悲しいけどー」

馬車に激しく揺られながらフィアがホツカのフォローをする。まあたしかに馬車で移動とはレトロな手段だ。首都にはMストーンを動力にした魔動車がある。兵士の移動を行う戦車も魔動車の一種だ。馬車より加速することが可能だが、協会が独占しているため、一般人が使用することはできない。公共の乗り物としてもあることはあるが、協会が運営しているため、結局は協会の所持となっている。

ホツカは馬の様子を確認しながら、ときたまリフレッシュやヒーリングの魔法をかけて馬の体調や疲労も気を配る。魔法で回復してやれることは可能だが、限界超えた無茶な動きはさせられない。

首都に近づくと馬を減速させみな降りる。着いたはいいが、首都は警備も他都市と比べれば厳重だろうから、急いで侵入するわけにもいかないだろう。早くせねばオトートは処刑されてしまうから、のんびりもしてられない。
が、心配よそに不気味なほど都市内は静かで、街道沿いの門も開かれすんなり入れた。それもそのはず、ホツカたちが首都に入るとすぐに大量の兵士たちがいっせいに現れ、ホツカたちを取り囲んだ。

「はっ、やっぱりな」
「まあこうなることは予測済みだけどねー」
「フン、もっとこい」

シャニィ、フィア、カツミはやる気満々だ。が、バトル開幕、とはならなかった。兵士たちの後ろから現れたのは魔動ロボだ。

「待っていたぞホツカ。…お前の望みがかなうぞ、よかったな」

声の主はヤデトだ。ホツカの望み、というと先日ヤデトに言ったことだろう。処刑はドーリアの手でしてほしいと。ホツカの言葉にヤデトは怒ったが、今の彼の態度を見る限り、どうやらドーリアから指示があったのだろう。

「無駄な抵抗はするな。ホツカ、そして反逆者ヤードとその一味よ。オトートという活動家の男を死なせたくなければ、大人しくついて来い。
救世士ドーリアがじきじきに処刑執行を見届けてくださるとのことだ。こんなことはめったにないぞ、貴様ら幸運な罪人だな」

「やはりオトートさんはすでに囚われていたのか。カツミ、フィア」

ヤードが護衛の二人に構えを解くように言う。ここで暴れるのは不利だろう。おそらくすでにオトートは処刑装置によっていつでも処刑できる状態にいるのだろう。ヤデトの合図一つでそれも可能だ。オトートを守るためにも、今は素直に従う。ヤードの目配せにホツカやアーニも頷く。シャニィも空気を読んでバクダンをしまう。

真っ黒い鋼鉄の箱型の魔動車にホツカたちは乗せられる。車内は真っ暗で外の様子を窺い知ることはできない。車はおそらく遠隔操作で動いているのだろう。決められたルート上を進んでいく。進む先は、処刑が行われる民の広場通称【平和広場】だ。
しばらくして、車は停止した。ドアが開き、ホツカたちは車から降りる。

「うっ」

ホツカはうめいて、息を飲み込む。眩さに目がくらんだように、顔をしかめる。真っ白な景色は、暗闇から出たばかりでは目をくらませる。真っ白な石畳が敷き詰められた広場は広く、円形の広場の中央にはシンボルタワーがそびえている。そのタワーこそがこの都市の要でもある【天候制御装置】だ。広い広場ではあるが、無数の魔動兵士たちがぐるりと広場を取り囲むようにして立ち、圧迫感を与える。
いや、兵士たちなど問題ではない。危惧するべき存在は別にいる。ホツカも、そしてヤードたちもそれがなにかはわかっているはずだ。

「くくく、恐怖で足がすくんだか? 貴様らに見せてやろう。アレを見ろ!」

ロボに乗ったままのヤデトが指し示す先。キリキリとケーブルが擦れる音がしてそれはゆっくりとホツカたちの前に現れた。広場前方の階段を上った先、その上空に、鉄の檻のような装置の中に拘束されたオトートがいた。

「兄さん!」「オトート!」

兄弟が互いを呼び合う。駆け寄れる位置ではない。

「貴様らはバカだから忘れているのだろう。協会に楯突くというのがどういうことか。本来なら貴様ら全員処罰するところだ。だが、慈悲深い我が姉…救世士ドーリアは特別に貴様らを許してくださるそうなのだ」

ヤデトの口調はわざとらしいまでに熱が入っている。ドーリアは許す?どういうことだろう。ならなぜ、オトート氏は囚われたというのだろうか。

「そんなわけないだろ、怪しさプンプンだってーの」

シャニィがぼやくが、皆もなにか企みがあると感じている。いつでも武器を取り出せるように、警戒は解かない。

「ヤデトご苦労だった。あとの事はまかせて、お前は持ち場に戻るんだ」

階段の向こう側から一人の中年男が現れた。協会幹部の一人でヤデトの叔父でもある【ビス】だ。ヤデトはビスに言われるまま、広場から去る。去り際にホツカたちに「姉上に無礼を働いたら許さん」と言った。あの性格ならいろいろと難癖つけてきそうだが…。今はヤデトのことより、皆段上のビスに注目する。

「ヤデトが話していたことは本当だ。ドーリアは本来なら処刑されるはずの活動家のこの男も解放すると話していた。ただし、条件があるそうだ…」

胡散臭いと思いながらも、条件があると言うことで皆「やっぱり」と感じていた。

「いったいその条件とはなんですかな?」

ヤードの問いかけにビスは「それは直接ドーリア自身が話すそうだ」と答え、すぐに彼の後ろからその本人が姿を現した。
さらさらと肩より流れ落ち揺れる銀色の髪。白く透き通るような肌、長いまつげの下から覗く漆黒の眼。救世士ドーリアがホツカたちの前に姿を現した。小柄で華奢な女性なのに、すべてを押しつぶしてしまいそうな強烈ななにかを放つ。目に見えないそれは、ドーリアの魔法力なのだろうか?目上のはずのビスですら、ドーリアからは一歩引いて、ヤデトのようにまではいかないがドーリアを立てているのだろう。

「条件はたった一つ…、ホツカ…」

ドーリアの指名でぴくりとホツカが顔を動かす。互いに互いを見合ったまま、沈黙が数秒。ホツカにはわかった。ドーリアの言おうとしている条件とはなにかを。だから、彼女の言葉に驚きはない。

にこり、美しく微笑んだまま、ドーリアは言う。

「アナタが代わりに処刑を受けることよ」












囚われのオトート救うため
ヤード一行協会本部へ乗り込んだ
なぜかヤデトに案内されて
魔動車揺られて平和広場にやってきたー
恐ろしい協会が、素直にこっちの用件聞くなんてありえない?
魔動兵士に包囲され、さらに処刑寸前のオトートが!?
だけどドーリアみんなを解放するって言ってるよ
本当なのかな?怪しいな?
それもそのはず、とんでもない条件出してきたよ!
ホツカが代わりに処刑を受ける!?
そんな条件飲めるはずないだろうねぃ?
ん?それとも、それとも??
ホツカよ君はどうするつもりさ?
続きもぜひとも聴きにきてくれよ?シーユーバイチャッ!


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