第十二話 脱出再会

処刑される人々救うため、ホツカは囚われ収容所
助っ人に来たシャニィは囚われ、要救助一人追加だよ
ホツカがドーリア想う時、怒りのヤデト現れる
そこにさらなる助っ人参上!?
なんと今度はフィアがきたよ
魔動兵士蹴飛ばして、ヤデトを脅すよ
怖い怖いなんてフィアには内緒よ?女性を怒らすよくないよ?
フィアたちの目的、ホツカ救出ではないようだけど…?
まずは脱出、急げよホツカ
フィアはなんと水属性! 水気たっぷりのここはぴったりの場所さ
ホツカの力でフィアを強化!二人一緒に濡れてくぜぃ?!
見よ!キチガイどもの夢の跡!十二番は再会だよん♪









杖を胸の前で構えるホツカは念じる、当たり一帯に集まる水の精霊たちの力を得る。
水路や天井、床の上の水分たちは一箇所に集まり、ホツカたちの前で生物のようにぐるぐると縦回転しながら空中で動いている。巨大な水のファンのように、あるいはとぐろを巻き激しく暴れる大蛇のように。それはホツカたちを守ってくれている水の盾のようにも見える。現に兵士たちの攻撃をはじき返し、ホツカもフィアも無傷だ。

「フィアさん、次の合図で一気に前進します。水の精霊がフィアさんを援護しますから、迷わず突っ切ってください」

回る水の盾の真後ろでホツカが隣のフィアにそう告げる。フィアは「ええわかったわ」とすぐに理解したように返事をして、すぐに戦士の眼差しに切り替わり前を見据える。

「いきます!」

ホツカの合図で水の渦巻きはぐんっと鎌首をもたげるようにして渦をといて縄のような形状になる。縦に波打ちながら出入り口に陣取る兵士たちにぶつかっていく。それと平行して、フィアが駆け、機械音を呻らせる足で飛び蹴りをかます。水魔法とフィアの連携で強固な鉄の兵士たちはドミノ倒しのようにガンガンと爽快に後方に倒れながら破壊されていく。

「はあっ!」

フィアの威勢のいい掛け声が階段を上った先で聞こえた。

「ホツカくーん、道は開けたわよー」

フィアの声だ。今のホツカの位置からは彼女の姿は見えないが、階段を上った先にいるようだ。道は開けたが、階段の上兵士たちが倒れこみ、ちょっと…いやかなり足場は悪いが、ホツカなら難なく上っていける。

ホツカが階段を上り地下の監獄エリアから抜け出すと、フィアが待っていた。水気のせいで肌も髪の毛もしっとりとして、色気も増しているように見える。

「さっすがだわー、ホツカ君ってほんとうにすごい魔法使いなのね。うふふ、ワタシもいつも以上に力を出せた気がするものー」

くねんくねんと腰をくねらせながら、艶かしい動作でホツカのほうへと近づきながらのフィア。若干警戒しながら、ホツカは半歩後ずさりながら「別に僕の力だけじゃないです」と答える。

「それはフィアさん本来の属性の影響です。僕の属性魔法も、フィアさんの影響で強化することができて…」

「あら、そういえばさっきワタシは水の属性だって言ってたわね。えっちな気分になりやすいことも関係しているのかしら〜?」

「それは関係ないと思いますけど、こういった場所は水の精霊が活発なので、フィアさんの能力がより発揮しやすい環境になるんです。属性というのは精霊との相性なので、フィアさんは水の精霊と好相性なんです。…っとおしゃべりはあとにしましょう」

「そうね〜」

くるり、とフィアはホツカに背を向け通路の先を見据える。ホツカも杖を構え、その方向を注視する。ホツカたちのほうに続々とやってくる兵士たち。収容所も協会管轄の施設だ。警備の兵士たちもまだ控えていた。

「ちょうどいいわー、あの程度じゃものたりなかったのよねー。うふふ、シェイプアップになりそうよー」

援軍登場にもフィアは焦るどころか嬉しそうに笑う。ただのお色気お姉さんではない。ヤデトと同じことを言ったら恐ろしい目にあいそうなので言えないが、ちょっと…普通ではないな…とホツカも思う。しかし、協会と戦う仲間としては、これほど頼もしいことはない。

「ですね。また見せつけてやりましょう」

ホツカもフィアに同調するように頷いた。再び魔法を発動させる。フィアと一緒に水のシンクロ魔法だ。一瞬にして水がホツカたちの前に集まり形づくり、巨大な水の蛇が牙をむき、兵士たちを飲み込む。
水の蛇が兵士たちを押しつぶすようにして、水の圧力で鋼鉄の人形たちはバラバラになっていった。拡散する水の向こうで、見覚えのある人物がホツカの前に現れた。


「フィア! それにホツカ君! 二人とも無事かい?!」

機械銃を構えたエンジ色のコートの中年男、ヤードだった。

「組長! ホツカ君は無事よ。そっちは?」

「ああこっちも」とヤードが答える前に、「あら大丈夫みたいね」とフィアが確認した。フィアたちとは反対の通路から現れたカツミと、カツミが助けにいったというシャニィが見えたからだ。カツミはこちらに走ってきたが、「ちっ」と悔しそうに舌打ちして浮かない顔つきだ。カツミの反応はフィアの予想通りなので「ごめんねー、カツミ。全部倒しちゃったわー。ワタシとホツカ君でー」と申し訳ないのか、それともわざといじわるで言ってるのかしれないがそう言った。

「お前が、倒したのか?」

ギロリと鋭い眼光で睨みながら、ジリリとホツカのほうに近寄りながらカツミが問う。

「んもう、カツミったら。ホツカ君ばかり見ないで、ワタシのほうも見てよー」

ホツカを庇うように、というよりも、割り込むようにして、フィアは豊満な胸でホツカの顔を挟みながらカツミに抗議する。

「おいホツカ! ちちくりあってる場合じゃないだろ! 早く行くぞ!」

カツミの後ろからシャニィに非難されながら、ホツカはフィアから離れる。

「そうだね。早くここを離れたほうがいい」

と答えたのはヤードで、シャニィたちの後ろからスーツ姿の中年男性が数人いて、彼らにも呼びかける。

「外に馬車をつけてあります。みんなそれに乗り込んで、すぐに離れよう。カツミ、しんがりを頼む」

ヤードの合図でみな出入り口のほうへ走る。スーツ姿の男性たちはホツカ同様囚われていた者たちだろう。彼らと一緒に移動しながらホツカは横目で確認した。予知夢の中で見た処刑されるはずだった男たちだ。ということは、彼らは悲劇の運命から逃れた、ということか。

外に出たホツカの元に白いはばたきが舞い降りる。

「師匠!」

『ホツカよ、すまんな、あの娘っこを巻き込んでしまったが』

師匠はちらりと申し訳なさそうにホツカの後ろにいるシャニィを見やったが、シャニィは別に巻き込まれたとは思ってないだろう。きっと、師匠がいなくても彼女は助けに来た。そんな気がしている。だからホツカは師匠に「気にしないでください、師匠」と首を振ってみせた。

「おおっ、シラス。お前ずっとホツカのこと待ってたんだな。本当に主人想いなんだな、コイツ」

ホツカの腕に止まっている師匠を見つけて、シャニィは嬉しげな声色で二人のもとに駆けてくる。

「だから、師匠を変な名前で呼ぶなって言ってるだろ!」

「はあ?アタシのネーミングをバカにしてんのか?お前のほうがセンスないぞマジで!」

師匠の名前にホツカは過剰に反応する。ホツカにとっては重要な問題なのだが、師匠にとってはどうでもいいところだ。二人が自分の名前のことで言い争いをしているのは、なんともいえない気持ちになり、げんなりする。

『やれやれ、ホツカよ。ワシは別にシラスと呼ばれてもかまわんぞ。どこから見てもただの白いカラスなのだしな』

「ダメです、師匠をそんな名前で呼ぶなんて。僕は断固反対です!」

「お前、なんでそんなむきになるんだよ…」

そこだけは譲れないと主張するホツカに、シャニィのほうが引き気味になる。

「ホツカ君にとって、とても大切な存在なのだろう。あまり無理強いをしてはいけないよ」

ぽん、と軽くシャニィの肩を叩きながら二人のやりとりに入ってきたのはヤードだ。

「組長ー、早く乗ってー。出るわーん」

馬車へと他の者は乗り込みをすませたらしい。馬車の前でフィアがヤードたちを呼ぶ。たしかにここでしゃべっている暇はない。のんびりしていれば協会の兵士がまたわんさかと集まってくるだろう。

「行こうホツカ君、師匠も一緒にね」

目で微笑んでヤードがホツカを促す。この人から離れる道を選んだのに、またこうして出会ってしまった。動きが鈍るホツカを動かすのは師匠の声だ。

『ホツカよ、悩んでる暇はないぞ。考えるのなら後にするのだ』

急かすのではなく、迷っている背中を押してくれるように。今ホツカは迷っている。ヤードと一緒に行くべきかどうかを。だから、師匠にそう言ってもらって少し助けてもらったような感じだ。


全員馬車に乗り込み、遅れてカツミも到着する。「ちっ、なにも残ってなかったぞ」と不服そうな顔つきで愚痴るカツミ。彼の不満は敵が全員戦闘不能で戦えなかったことに対するものだろう。とはいえ、シャニィ救出の際に兵士たちをぶちのめしているのだが、それでも足りないということらしい。

「ヤードさん、ほんとにどうなるかと思っていたから、まさに天の助けだよ。ありがとう」

囚われていた男たちがヤードに感謝の弁を伝える。馬車の中揺られながら、ホツカは知る。ヤードたちの目的は彼らを助け出すことだったのだと。

「フィアさんたちの目的って、この人たちを助け出すこと、だったんですね?」

フィアに訊ねると、「ええそのとおりよ」と返事が返ってきた。ということは、ホツカが動かなくても、彼らは救われていた、ということなのだろうか?

「ホツカ君とシャニィちゃんまで捕まってしまうなんて予想外だったけどー」

「すみません、ご迷惑をおかけして…」

余計なお世話だなどと言ったりしない、ホツカは大人の対応で返す。がフィアのほうは別に迷惑をかけられたとは感じてないようだ。「そんな謝らなくていいのよー」と。

「二人とも無事でよかったわー。ふふっ、それにまた君に会えて嬉しいわーって組長が」

「「えっ」」とホツカとフィアの横に座るヤードの声が重なる。

「私はそんなこと言ってないぞフィア」

「あらん、言わなくてもわかっちゃうわー」

「まあたしかに、君の言うとおりだね。うん、また会うことができて本当に嬉しいよホツカ君」

にこりと満面の笑みでホツカへと微笑みかけるヤードに、ホツカはどう対応していいか戸惑う。

「えっとあの、どうも…」

素直に「こちらこそ」と返せないホツカの不器用な面は、あのころのドーリアと出会った時の少年ホツカを思い出す、彼の肩の上でホツカを見つめる師匠はそんなことを思い出していた。












水のシンクロ魔法見たかい!?
ホツカとフィア、水は防御そして攻撃
なかなか抜群な性能さー
そして再会、やっぱり再会したよヤードとね
シャニィも無事でよかったよー、師匠とも一緒で安心よー
ヤードたちの目的、それは囚われの人たち救うこと
ホツカいなくてもよかったの?ほんとにこれで一安心?
ちょっとまだまだ心配残る…かも?
だって相手はあの恐ろしい協会だよ、油断はできないこの先も…
師匠思い出すホツカとドーリアその出会いはいつ語られる?
早く早く教えてほしいね、待ってるぜぃ
続きもぜひとも聴きにきてくれよ?シーユーバイチャッ!


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