ああああー、とんでもないことになりました。
なんとかあたしはAエリアへと戻ることができました、できたのですが・・・
テンのやつが強行突破をしたために、しかも三人もやっちゃってるしー、
え?なに?今更かって?
まあ確かにBエリアでの暴れっぷりから今更ってかんじですけど
ここはAエリア、なんでもありなBエリアとは違います。
というかあたしにとっちゃAエリアが常識なんですけどね。
「ハァー、とんでもないことしてくれちゃったね。」
細い路地を通りながら人目を避けるように歩くあたしの後ろのショウが呆れたように言う。
「そうよ!テン、Bエリアで通用してもAエリアでは暴力は通用しないわよ!」
あたしの前にいるテンに言ってやった。するとテン鋭い目で振り返りながら
「どこだ?!どこにタカネはいる!?」
「へ?」
そうだ、テンにはAエリアにおばあちゃんがいるって大ぼら吹いたのだった。
「おい、ガキィ!とっととタカネのいる場所を教えろ!」
え?あたしの後ろのショウに問いかけている?
当然ショウは知っているわけがない。
「は?だからなに?オッサン」
「ガキ、腹から内臓垂らしたいヘンタイならそうしてやるが?」
ひっ、ちょっちょっと、あたしを挟んでチャンチャンバラバラしないでよ?!
「リンネ、お前・・・タカネの居場所を聞き出したわけではなかったのか?」
え?なに?今度はあたしにギンッと鋭い目を向ける
「あのね!こっちだってあんなに恥ずかしい思いしてがんばったんだからね!」
なんでもかんでも要求しやがってこいつは!人の都合とか考えないのか?!
「?恥ずかしい、どういうことだ。」
「アンタに言われたとおり、裸になってまで・・・・」
ああもう思いだしたくもない。
「なんだと?俺がいつそんなことを言った?」
「へ?だって、たしかに裸になる勇気を持てとか」
「それは言葉の綾だ。バカがっ」
はっ?
「へ〜、そうだったの?露出狂のヘンタイだと思ったけど。」
と後ろのショウ
「そうか、リンネお前やはり、ヘンタイだったのか。」
と前のテンが勝手に失礼ながら頷いている!
「うわーっ、忘れたい
あっ、そうだもう一度Bエリアに戻ってBエリアでの記憶全部売ってくる!」
消す消す全消去だーーー!!Bエリアで記憶が売れるのなら今すぐ売りにいきたい!
とBエリアに戻ろうとしたらテンに後ろ首をがしっとつかまれた。
「バカがっ、簡単に記憶を売ろうとするな。記憶を売ることはそうとう精神に負担をかけることになるという、再びそんなことをすれば、お前はお前でなくなるぞ」
ええっ、そんな危険な行為だったの?
そんな危険を冒してまで記憶を売った二年前のあたしって・・・
いったいどんな状態だったの?!
となんだか怖くなった。
「これ以上お前がヘンタイになれば、再会した時のタカネのショックは・・・・」
ちょっと、おい
とテンにムカツキつつも、ここはAエリア、なんとか無事にもとの生活に帰るためには、こいつらをなんとかしなくては・・・・。
とりあえず、あたしを助けてくれる人は・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・?!
あれ?あたし、Aエリアに知り合い・・・・いない?
・・・・・・
そういえば、誰一人としてそんな存在が浮かんでこない。
あたし、実はひとりだった・・・・・?
どうしよう、ここAエリアにもどってきたっていうのに、あたしには味方という存在がちっとも浮かんでこないのだ。
もしかして記憶を売ったから?
そうだよね、いくらなんでも知り合いがひとりもいないなんて、そんな寂しすぎる事実あってたまるかって。
よしっ、とりあえず落ち着いて前向きに・・・・
Aエリアの領主のとこに行ってみるかな。
ショウの兄ってことで不安ではあるけれど、でも、今はその希望にかけてみます自分!
それにはトラブル絶対厳禁なこのAエリアのやり方にテンにもしたがってもらわなくちゃ。
「とりあえず、夜が明けたら、Aエリア領主館に行きましょう。
だから、その武器やら危険なものはどこかに隠しておいて・・・」
とテンを説得しようとしたところ
「なんだと?リンネお前やはりここで鬼門のやつらに都合のいいように洗脳されているな!」
は?またヘリクツを・・・
「あのね、ここはAエリアなの、武器とか危険物携帯禁止なの。」
「フン、だが連中は武器を持っているぞ。」
そりゃ、取り締まる側は持っていて当然でしょ?
「それは領民の安全を守るためよ!アンタみたいな自分勝手なテロリストとは違うから」
そういうあたしにテンはムカツクほどのため息を吐きながら「バカがっ」と吐いた。
「守られていると支配されているを勘違いしてるようだな、哀れな奴め。」
くぅっもう、あったまきた!!!
「もう別行動にしない?!あたしあなたみたいな危険人物と一緒にAエリアにいたくないんだけど!」
散々テンの暴走に振り回されてきたけど、もう我慢の限界
「なんだとお前、タカネのことはどうでもいいのか?!」
ギンッと強い目で睨みつけてくるテン、だけど引くわけにはいかない、あたしは持っていたライフルを投げつけながら
「テンが一緒じゃトラブルにまた巻き込まれるに決まっている、
あたしはあたしでおばあちゃん探すから!」
「待てリンネ!」
怒っているテンの声が聞こえたけど、あたしは逃げた。無我夢中で
もしかしたら、テンのことだからすぐに追いつかれるかもってビビリもあったけど
とにかく必死で逃げた。
ハァハァ・・・すごい久々に本気で死にもの狂いで走ったかも・・・・。
息切れがなかなか戻らなくって、街灯にもたれながら、ゆるりと見渡した。
テンは、まだ追ってきてないみたい、だけど油断できないな、あんなのと一緒にいたんじゃ、あたしまでテロリストの仲間だと思われちゃうじゃない。
まあ、そこまで悪人とは思えないけど、でも、やっぱムリあのハチャメチャな暴れっぷりは
あのバカショウのBエリアならともかく、このAエリアで同じことされちゃたまったもんじゃない。
おばあちゃんの恋人だっていっても、あたしはおばあちゃんの恋人に会ったこともなければ顔もしらなかった。Bエリアに年の離れた恋人と一緒に住んでいるってことくらいしか知らなかった。
だいたいあたし、おばあちゃんのことどれだけ知ってるんだろう。
あたしはずっとAエリアで生きてきて、おばあちゃんはBエリアで
ほんとうに時々しか会った記憶がない、最後に会ったのっていつだったっけ
たぶん、10歳の時だっけ、夏休みに花火を一緒に見に行こうって、Aエリアに遊びに来てくれたことがあったんだ。あたしの手を優しく握ってくれて、花火よりもあたしに優しく微笑みかけてくれたあの優しい笑顔のほうがずっと印象に残っている。その時、あたしが茶化すように恋人のことを聞いたら、すごく幸せそうに笑っていた、だけどあたしのことも大切なのよ、と言ってくれたことも強く覚えている。
おばあちゃん、想い出は少ないけど、あたしの中で大切かもって思える人は
悲しいけどおばあちゃんしか浮かばなかった。
記憶を売ったからなのかな、それともあたしには最初から大事な人なんていなかったの・・・・?
柱にもたれながら、空を見上げた。
星空・・・・・
流れ星に祈るとしたらなにを祈ろう・・・・そんなことを切なく考えたりして
テンに散々言われてむかついたけど、でもヤバイ、もしかしてあたしって
空っぽなやつだったりするの?
はー、息を吐いて、とりあえず進む。
通りを歩いていると少しずつ闇が晴れていく、今何時だっけ?
段々街灯の灯りが小さくなっていく、朝がくる。
視界もよくなって、歩いていると、ここが知っている場所だと気づく
そうだ、学校近くの通りだ。
まだシャッターの下りている文具店も覚えがある。
うわっ、知っている、やっと馴染みの場所に戻ってきたんだ!!
まだ目覚めるには早い時間だけど、嬉しさで背伸び&深呼吸。
はー、やっぱ違うなぁ、Bエリアは空気もまずかったから余計に新鮮な空気にカンドー。
なんせAエリアは喫煙も絶対禁止エリアですからね。
とりあえずBエリアでよごれまくった肺の中をキレイに入れ替えておくかーと。
ともう一度深呼吸していると
「はー、懐かしいな、この辺、相変わらず殺風景でつまんないけど」
あたしの背後から近づいてくる声
「イッ、ショウ!!」
振り返った先にはショウがいた、テンのことばかりでこいつのことを忘れていた。
「え、今懐かしいって、アンタもここにいたことあるの?」
「うん、ちょっと前までガクセーやってたからね。」
げ、ショウが学生?!どーにも似合わないというか、Aエリアって
「でもやっぱ、好きじゃないな、この街さぁ堅苦しいし、それに
アイツもいるし・・・・」
なんかブチブチ言っているうちにとっとと逃げようっと。
テンもだけど、あのショウといてもろくなことにならないというか
なんかイヤな予感がして
そそくさと走って逃げると
「ちょっと、どこ行ってんの?領主館ってそっちだっけ?」
うわぁっ、目の前にショウ!なんでいつのまに、こいつも忍者かよ?!
「もうついてこないでよ!テンのやつとチャンバラってればいいでしょ!」
ギンと睨みつけてやると、ショウはハッと人を馬鹿にした様に鼻で笑いながら
「なに?その態度偉そうに、Bエリアを出たからってさ
忘れんなよ?ボクに買われた人形だってことをさ。」
ムカツク笑みで、こいつAエリアでもBエリアな態度
「ここはAエリアよ、そんなBエリアのバカなルールなんて通用しませんからっっ」
「そんなことないって、リンネは今後履歴書には
ショウ様の愛人ってちゃんと書かないと
Aエリアって偽ることも罪になるんだよね?」
「その女・・・・だれだもん・・・・?」
どこからか女の子の声が聞こえた気がしたけど
「ゲッ、出た」
ショウが厄介そうな顔をしたその視線の先にいたのは
見た感じ小学生くらいの、女の子。
昇りかけた朝日が明るい髪の輪郭をなぞっている。
両端に結んだ髪がゆらりと舞ったかと思うと、凄まじい形相でこちらを睨みつけて?
「愛人ってどーゆーことだもん!?」
かわいい風貌とは裏腹に今にも噛み付いてきそうな狂犬のような表情を向けているこの女の子が
とんでもない大型台風だったとは・・・・!?
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