興奮のあまり寝られませんでした。おかげて朝からテンション高くてごめんなさい!むきゃーーv
ああ、もう、夢じゃ夢じゃないよね?昨日のできごと・・・
ビケさんの唇があたしのおでこに・・・おでこに・・・・デコチューー!!
テンション高くてごめんなさい!きゃーーー。
ビケさん、たとえ冗談でもあんなことされたら、あたし、余計な妄想が爆発しちゃいますよ。
「はぁーー、夢じゃないよね、昨日のこと・・・・」
「ああ、ハイセーズとかいったあの金門の三人組だっけ。」
「ぶふーーっ」
朝食のコーヒーとパンを思わず吐き出してしまった。
ショウのやつが変なこと思い出させるから、てもうせっかくのステキな朝が台無しじゃない。
「ちょっ、朝から汚いな。気分台無しだよ、ビケ兄がいたら、ビケ兄の目に朝から汚い物を見せるとこだったよ。たくさ。」
領主館でのモーニング。でもそこにはあたしとショウの姿だけで、ビケさんはもういないのだ。
ビケさんいないの寂しいけど、もしいたらいたで、あたしはきっと激しく興奮して鼻血でも噴きかねないので、それでよかったとは思いつつも
「嫌なこと思い出させないでよ。もう金門だかハイークだか知らないけど、あんな連中とは二度と関わり合いにならないから。」
あんなわけわかんない怪しさ100%なやつらとは、二度と!
しかし、なんで
「あいつらはあたしの命を狙っていたわけ?しかも桃山リンネって、あたしの名前まで知っていたし。」
まったく身に覚えがない。でもあたしを狙うってことはなにか理由があるはずだし・・・。
まさか、あたしの失われた二年間の記憶に関係しているとか??
ま、まさか、このCエリアには来てないだろうし・・・・。
あたしがむむむ。と眉間にしわ寄せて悩んでいると、ショウが
「なら、聞いてみればいいじゃん、本人に。」
「はっ?それってつまりまたあいつらに会わなきゃいけないってことじゃない。
冗談じゃない。もう関わりたくないの。あたしはもう
殺し合いとか、命狙われたりとか、テロリストとか愛人とかもうまっぴらごめんなの!
まっとうで幸せな女の子の生活を送るんだから。」
もう血なまぐさいこととはオサラバなのよ。
もう、あたしは・・・ビケさんの側で
愛に、愛に生きるって決めたのだから!
「ふーん、ここでオッサンなら、バカが、戦えリンネ!って言うんだろうな。」
「はっ?なによ、ここはCエリアなのに、戦いなんて。」
戦う意味がわからない、第一悪いのは向こうなだけですし。
「愛の為に生き、愛の為に死せる。だっけ?」
ウインナーをフォークでゴォリッと刺して口に運びながら、テンの口真似をするショウ
「愛に生きる、けど、あたしはテンみたいにあんなハチャメチャな行為は行いません。」
「ハッ、愛だって」と鼻で笑いながらショウのやつは
「ビケ兄との愛なんてリンネにはありえないと思うけど、でもリンネってさなんか
オッサンと似たようなもの感じるんだよね。」
は?なによ、それどういう意味?!なんか不愉快なんですけどっ
にやっとムカツク笑みを向けるショウの言うことなんか本気にしないで、あたしはとにかく、普通の幸せな女の子として生きていくんだから。
あーもー、あいつらムカツク、外に出てもいいことないだろうし、またあんな事に巻き込まれるのはイヤだし
ザ☆引きこもりでゴゥ!
いいの、領主館にいれば、ビケさんに会える確率だって高いだろうし、困ることも特にないし
もう面倒ごとだけは勘弁
で、ヒマなので、部屋に戻ってすることといえばテレビくらい、ああ引きこもり
なんでもいいや暇つぶし、と思ってつけたテレビの中から流れてきたのは
緊急特番あの歴史に残る大悪人桃太郎の生まれ変わりがCエリアの街で破壊活動?!
ん、なんじゃそりゃ?なんだか仰々しい番組をやってて、なんのことだかわからずぼーと画面を眺めていたあたしは目が飛び出しそうになる。
『桃太郎の生まれ変わりの桃山リンネが・・・』
テレビの中のアナウンサーからそんな発言が、画面の下方にもはっきりと「桃山リンネ」の文字が!
「にゃにゃにーー?!にゃんだそりゃ?!」
驚きのあまり謎のキャラ語でテレビにつっこむあたし
えっええ?桃山リンネって、まさか・・・
「あたしと同姓同名の人がこのCエリアに?」
ぐるぐる混乱入りそうなあたしの背後のショウが
「に言ってんの?こんな変な顔した桃山リンネはリンネでしょ。」
は?
と思って再び画面を見ると、そこにはいつ撮られたのか、あたしの顔がデカデカと映っていた。
しかも、ふげーってかんじの情けない顔で、もう撮るならテレビに出すならもっとかわいく映ったやつを使ってくれぃ!てそーじゃない!
「いや、というかコレ、コレ・・・。」
マンガみたいに目をぐるぐる回している状態のあたしに、ショウはふーん、と頷きながら
「桃太郎の生まれ変わりねぇ。」
「な、なに言ってんのよ、なんであたしが桃太郎の?でたらめよ、なにこれ?!」
画面につっこみ入れるようにチョップを繰り返す、でも壊れないようにと軽くだけど。
「でも自分で名乗ってたじゃん。桃太郎だって。」
それって、Dエリアでのこと?
テンから聞いた話だと、あたしは気を失ってから記憶がないけど、まるで別人みたいになって、キンをボコボコにして倒して、そんで自分を桃太郎だと名乗ったとか。
そんなムチャクチャな話、とても信じられないけど。
とーぜん信じちゃいないけど、でもなんで、桃太郎って?
「そんなこと、あるわけない、もう、別のやつ見よ!」
頭を抱えながら、あたしはチャンネルを変える、と今度は討論番組らしく
議題は「桃太郎の娘桃山リンネの今後について」とか
はあ?!
ぴこぴこぴこぴこチャンネルを変える、がどの番組も全部
桃山リンネ桃山リンネ桃山リンネ桃山リンネ桃山リンネ桃山リンムキャャャァァァーーーーー
「はぁはぁはぁ。」
テレビに突進寸前のあたしからリモコン奪取したショウに電源を切られたテレビは難を逃れた(あたしの突進から)
「すごいね、リンネ有名人じゃん♪」
「なによこれ、こんなこんなこと・・・・だいたい写真は全部写りの最悪なやつばかりだし。
もう、ふざけんなー、訴えてやる!」
最強の弁護士軍団ーーー!
「どこに?」
とショウの冷めたつっこみでハッとする。どこに訴えるのだろう?
ここCエリアはあいつら金門の天下なのに、だれがあたしを弁護してくれるというのか。
「ビケさん・・・」
「リンネ、ビケ兄には迷惑かけないって話だったよね。」
「くっ」
意地悪に笑むショウにムカッとしながらも、たしかに、ビケさんには迷惑かけられない。
じゃあ、どうするの?
むむむむ、と眉間を押さえながら悩んでいるあたしのもとに
「リンネ様に荷物が届いておりますが。」
「へ?」
荷物?
部屋にどどっと押し寄せるように届いたあたし宛の大量の宅配物。
それはもう山のように、いきなり届いたそれは
「なにこれ?・・・・宛名不明だし。」
身に覚えがない、不気味極まりない。
どうしようか、送り返せるのかと思っている間に、ショウが勝手に開けていくし!
「ちょっと、勝手に開けないでよ!
もしかしたら危険なものが!」
爆発物とかだったら!?
「うわぁっっ!!」
「ひぃぃっなにっ?!」
「危険物がっっ!」
ショウが開けたその箱の中には大量の写真が入っていた、しかも
モリモリマッチョで血が滴る肉をワイルドに喰らうあたしの写真・・・・・
んぎゃーーなんじゃこりゃー?!
「リンネにこんな一面があったなんて、恐ろしい。」
「なわけないでしょ!これどう見たって合成じゃない!」
他の荷物もろくなもんじゃないと思ったらどんぴしゃり。同じような変な合成写真や変態写真
誹謗中傷の文面に謎の毛がもじゃもじゃ大量に入っていたり・・・・暇人のイタズラかよ・・・。
全部開けるのも馬鹿馬鹿しいと思いながら、残りの内容を確かめていると
汚れた桃太郎の血をCエリアから排除せよ!とか
Cエリアから出て行け愚女!とか
お前の恥ずかしい秘密を領主様にばらしてやる!とかそんな文面のものばかりが出てきた。
「はっ恥ずかしい秘密ってなんだ?!」
「変態趣味があるとか?」それはお前だ!むかり。
「あっ、Dエリア最強の男をボコボコにしたとか?♪」
「むごぅっ、それはだからなにかの間違いだって言ってるじゃ・・・」
と、思いたいけど・・・・、なんか不気味なものを感じてしまう。ない二年間の記憶とか、未だに思い出せないし、もしかしてあたし、ほんとにとんでもないことしていたんじゃ・・・・?
頭を抱えていると、また
「荷物が届いてますが・・・」
「んぎゃっ」
また部屋にどどっと押し寄せる荷物の山。またしても同じようなものばかり。
「ちょっとどうすんの?これ・・・。
ビケ兄が帰ってくるまでになんとかしとかないとさー。」
「くぅっ」
そうよ、なんとかしなきゃ、ビケさんに迷惑かけちゃうじゃない、もううう、せっかくこのCエリアで新しい生活をと胸をときめかせていたのに、こんな災難・・・・・
「あいつらーーー、あのハイセーズとかいう変なやつらーーーー」
あいつらの仕業だ!んぎーーー
「ハイセーズっていうより、リンネ、金門を敵にしちゃったってかんじかもね。」
「金門だかなんだか知らないけど、もう絶対に許さん!」
ぐしゃっと合成変態写真を怒りに任せ握りつぶしたあたしはその勢いのまま、Cエリアの街へと飛び出した。
街を出てすぐに、人々の視線があたしへと集まった。皆あたしを見てざわざわと
「おいっ、あれだ、あれが桃太郎の・・・・」
「まあ、ほんと品のない顔ですわね。よく平気な顔で生きてゆけるわ。」
「あの桃太郎だから神経が図太いんだよ。我々温羅の一族とは違う生物だからね。」
「ももたろーおんなーー!」
大人から子供まで、あたしを見下す目線で、棘のある言葉を吐く。聞こえてますけど、ワザとか?!
「だれが桃太郎よ!勝手なこと言わないでよ!」
「けっこう血気盛んなとこみるとやっぱり君が桃太郎の一族ってのは間違いなさそうだね。」
風のようにぴゅわっとあたしの前に現れたのはあの男。
「ハイセーズ・・・」
「うん、僕はイッサ、よろしくリンネちゃんv」
にっこり無害そうなアイドルスマイルで微笑むその男
なーにがよろしくvだ!人の命を狙っておきながらっ。と不信感全開のあたしにむかつくほどの笑顔を崩さないイッサ。
「あんたたちでしょ!?テレビとかメディア使ってまでたった一人の乙女に恥をかかせて、子供並のあったま悪いイタズラして、人のこと勝手に桃太郎の生まれ変わりとか決め付けたりして!」
怒りとムカツキをぶつける。そんなあたしに周囲からブーイングが、うぬれ、金門の連中め、なんだこの連帯感は!
「ねぇ、自分の立場とかちゃんと考えたことあるの?この街にいておかしい存在だって思ったことないのかな?」
イッサは優しい口調ながら、とんでもないことを言っている。
なんでそんなことこいつに言われなきゃならないのだ。なんの感情でかわからないけど、あたしの体はプルプルと震えていた、そして
パーーン!!
気がついたらあたしの手はやつの頬をクリーンヒット・・・・と思ったら
「きゃっ」
悲鳴は女の声、一瞬なにが起こったのかわからなかったが、あたしが叩いたのはイッサではなく
「カナメさん!!」
「えっ?!」
イッサの足元で蹲るように頬を押さえている女性がいた。どうやらイッサを庇うように現れたらしいその人はあの女優の金剛カナメ。
呆然としているあたしの前で、ものすっっごく心配そうに彼女に駆け寄り抱え起こすイッサ。
「大丈夫。」と小さく声を出していたカナメの目は潤み、抑えた頬は赤くなっていた。
「あっあの・・・」
「なんて野蛮な!」
「ひどいっいゃぁぁぁぁーーーーー!!!」
「カナメさんになんてことを、このドブス!!」「ドブネズミももたろう女!!!」
周囲からイミフメイの中傷の言葉が飛んでくる。なんなんだこの連帯感。
「カナメさん、僕を庇って・・・・すみません、カナメさんの美しい顔がっっ」
「もう見てられなかったのよ。ものすごい殺意のオーラが見えて、イッサ君殺されるんじゃないかと。」
なんかくさいドラマが繰り広げられています・・・・、なんでしょうかこれヤラセ?
て、気がついたらカメラらしきものがまわっていた。やっぱりヤラセ・・・・・
てあっっ、また使われる?今のシーンで、人気アイドルに殴りかかったあたしから彼を庇って殴られた人気美人女優って、あたしが完全に悪者にされる!!?
あたしまんまと金門の連中に乗せられてるんじゃないか?!
「くすっ」
?!
そう小さな笑い声をもらしたのはカナメ、彼女はさっきとは別人のような表情をしていた、まるで・・・
「桃太郎の生まれ変わりって聞いてたけど、予想外にしょぼい女。」
ハッと乾いたため息を吐きながら髪をかき上げ、鋭い目であたしを睨んできた、豹変したこの女!
「ちょっちょっと、しょぼいって・・・・だれが桃太郎の生まれ変わりよ!なんの根拠もないくせに、勝手なこと言わないで!」
「ぷはっ、あなた自分のことも知らないなんて・・・幸せなのかバカなのか・・・・。
桃山って姓が気になって調べたら、やっぱりというか・・・・あなた桃太郎の一族のようね。」
は?!なに勝手に人のこと調べてんのよ?
「だいたい桃太郎の一族とか、あたし知らないし。」
「そうよね、知りたくはないでしょうね。私のように英雄温羅の血を引く身ならともかく、大悪党の血を引く身なんて、恥ずかしくて生きてはいけないでしょう。」
なに言ってるんだろこの人、この人の価値観って
「バカじゃないの?血とか関係ない、人の価値ってそんなことで決まらない!」
ギン!と睨みつけるあたしにハッとまた渇いた息を吐くカナメ。
「決まるわ。私やビケ様のように、生まれた時から最上級の存在であるように。
最初から決まっていることってあるのよ。
桃山リンネ、あなたがここにいてはいけない存在であることも、あの方の側にいてはいけない存在であることも。」
なにを言っているのだ?この女・・・・・
「最上級の男に相応しいのは最上級の女のみ。そして最上級の女は私だけ・・・。
桃山リンネ、今すぐにCエリアを出て行きなさい、そして二度とビケ様に近づかないと誓いなさい。
死にたくなければ、ね。」
この女はビケさんを・・・・自分で最上級とか言っているろくでもない女金剛カナメ・・・・こんな女にビケさんは渡さない、こんな女にあたしは負けたくない。
あたしの中の恋心よ、あたしに戦う力をください!
バックするの? つぎのぺーじ