オープニング

そこはなにもない、ただ暗闇だけが広がる謎の空間。
少年魔法使いホツカは、知らぬ間にそこにいた。
恐ろしい存在によって、その謎の空間に飛ばされ、隔離されてしまった。
一緒に行動していたはずの仲間たち…ヤード、シャニィ、カツミ、フィアの四名はホツカの目の前で突然倒れてしまった。一瞬にして、恐ろしい存在によって、彼らは抵抗することもできず、意識を失い倒れたままだ。
守ることも、彼らを呼び起こすことも、今のホツカにはできない。どうすることもできないのだ、その恐ろしき存在を。

だが、唯一、意識を保った仲間がホツカのそばに残った。
ホツカが【師匠】と呼ぶ白いカラスだ。白カラスの師匠はホツカとは意思の疎通ができる。他の者からすれば、ただの白カラスなのだが。
カラスとはいえ、ホツカにとってはありがたい頼れる存在。
手も足も出ない恐ろしき存在を前にしても、ホツカは挫けることなく自分を保っていられる。

「ククク、ホツカよ、いい加減にひざまずけ。私の言うとおりに動くと、誓うのだ」

恐ろしき声が、謎の空間の中響き渡る。姿が見えない声の主だが、とてもまがまがしい気を放ち、その主が正気ではないことを感じる。
ホツカは主の要求を断った。そのせいで、この空間に閉じ込められ、仲間たちが…人質として奪われたのだ。
ホツカの魔法の力が効かない、この主が何者なのか、ホツカも師匠も知らない。魔法が効かないということは、ホツカが知らぬとんでもない力を持ったバケモノなのだろうか。あるいは、まったく別の異世界の存在なのかもしれない。魔法のない世界なのだろうか。

ただ一つ、ハッキリしていることは、謎の主は【シラセナンキョク】という名前だ。主が名乗ったので、本当の名なのか仮の名なのかはわからないが、わかったのはそれだけだ。

「どうした、なぜ言う通りにしない? お前は魔法使いなのだろう? ならばなんでもできるはずだ。
魔法の力で、世界をめちゃくちゃにすることも可能だろう?」

「(むちゃくちゃだ。できるはずがない)」

シラセナンキョクの望みとは、ある世界をめちゃくちゃにしろということだった。それはホツカの世界を含めたあらゆる世界の崩壊。そんな要望きけるはずがない。

「さあホツカ、受けるのだ、私の要望に応えよ!」

「できない!」

膝をついたまま身動きすらできないホツカは、だが心まではシラセナンキョクに屈しなかった。この空間には精霊がいない。そのため魔法が使えないが、それだけでなく、謎の力の干渉を受け、体力が酷く低下して金縛りのように自由に動けない状態だ。もしかしたら、シラセナンキョクの不思議な能力のせいなのかもしれない。

ホツカの返事に暗闇の中の目に見えぬシラセナンキョクはギリリと歯軋りをする。だが、そこまでいらだった様子は感じられない。ホツカの返事を予測していたのか、「そうか、ならばしかない」とゆっくりと息を吐くような音とともにシラセナンキョクの声がした。

「ならばお前も、あの連中と一緒だ。永遠地獄に送ってくれる」

あの連中? いったい誰のことだ?

「フン、ハッ!」

気を放つようなシラセナンキョクの声が響き、ホツカと師匠の体は暗闇空間から消滅した。暗闇が飲み込むようにホツカたちを包み、抵抗などできるはずもなく、ホツカと師匠はシラセナンキョクの言った永遠地獄へと飛ばされてしまったのだった。


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