第二十三話 白黒どっち!?

ついに開幕〜
わくわく心弾むぜフェスなんだぜ〜
ホツカ再び悪夢を回避させるべく
目的のためにやってはきたが
お祭空気に浮き足立っちゃう?
ノリノリヤードの熱いまなざし、とまどうホツカはどうするの?
ベストカップル、だけじゃないよコンテストいろいろやってるよ!







「ロデューさーん、チラシ配り終わりましたー!」

ハチマキを頭に巻いた少年仲間の三人組が、ロデューの元に駆け寄る。「ありがとう、君たちのおかげで大いに助かっているよ」とロデューが感謝する。少年トリオは元々友達でもあり普段からつるんでいたが、ここ数日は特別な絆を築き上げていた。彼らは同じデザインのハチマキを頭に巻いて、派手なハッピを纏い、背中にはアドルの名前が刺繍されている。これもフェスの祭の衣装なのかといえば、そうでもありそうでもなく、彼らが独自に用意したものだった。一人の少女【アドル】を応援したい気持ちを表現したもの。

「おれたちにできることならなんでも言ってください」
「アドルちゃんのためなら、なんだってやりますよ!」
「今度のライブも絶対成功させましょう!」

キラキラと輝く熱い眼差しの少年トリオに、ロデューも嬉しげに「ありがとう、もちろんそのつもりだよ」と答える。彼らは先日のライブにて、たまたまアドルの歌を聴いてすっかり彼女のファンになった。ボランティアでアドルのアイドル活動を支援しようと動いている熱心なファンだ。ロデューは実感していた。アドルの実力は確実に人々の心を捉えつつある。彼らのようなファンはこの先も増えていくだろう。そのためにも、全力でプロデュースしていくつもりだ。ロデューとしても彼らの存在は大いにありがたく、彼らの善意を利用させてもらっている。

「もうすぐ追加のチラシが刷り上るから、配布を手伝ってもらえるかい?」

「「「もちろんです!まかせてください!」」」

頼もしい。彼らの熱意は力になる。ロデューは会場の準備へと戻った。チラシを受け取った少年トリオは気合の合言葉「アドルちゃんラブ!おー!」と恥ずかしい言葉をテレもせず、自信満々に円陣組んで叫んでから解散する。手分けして再び、アドルのライブのチラシを配って歩くのだ。

「アドルちゃん、君は理想の女の子なんだ…」

キラキラうっとり、その瞳はまるで。妄想世界の少女アドルが自分に微笑みかける。いや妄想ではない。あの日、たしかにアドルは自分を見つめてくれた。あの広いホールで、自分に向けて笑顔で見つめてくれたのだ。あの歌も心に響いた。あの日心は奪われたのだ。

「おれは君に、恋してしまったんだ…、ああアドルちゃん…」

にまにまと口元が緩み、情けなく目じりが垂れ下がる。「なにやってんだよ、兄ちゃん…」あきれたような幼い少年の声に、彼はハッと現実に引き戻される。不機嫌に見上げる弟の顔に気づく。

「うるせーな。お前のせいでアドルちゃんの笑顔が消えちゃっただろ」

お前こそなにやってんだよ、手伝えと弟にチラシ配りを手伝わせようとする兄。兄の名はシン、弟はコウといった。アドルに夢中でデレデレ状態の兄に、コウはあきれていた。

「ほんと兄ちゃんの趣味ってわかんねーよ。あんな乳臭そうなガキのどこがいーんだよ」

「はあ?てめぇー、アドルちゃんをバカにすんじゃねーぞ。アドルちゃんの魅力を欠片もわかってねー分際でー」

アドルを馬鹿にすることはなによりも許せない侮辱だ。顔面怒り全開で一回り小さい弟に掴みかかる。だが普段のことなのか、弟コウはぶれることなく悪態をつく。

「はーわかんねーな。オレが好きなのは、もっとこう大人のお姉さんで…」

ぽわーん、と少年コウの脳裏に浮かぶのは、さきほど偶然出会った運命のお姉さん…。思い出し、兄に負けじとデレデレとスケベくさい小僧の顔つきになる。ボリュームのある弾力にとんだ胸の感触、爽やかな甘美なにおい、腰周りもセクシーでスリットからのぞく太もももよかった。なにより美人で、髪もロングヘアーで、彼が理想とする大人の女性だった。ぶつかった自分に優しく声をかけてくれた。熱いまなざしで、見つめてくれた。この胸の高鳴りは、間違いなく恋なのだと思った。

「名前くらい聞いておけばよかったなー」「おいてめぇ聞いてんのか?」兄の怒鳴り声も遠くで聞こえていた。頭の中はそのお姉さんのことでいっぱいになっていた。






そのころ、コンテストはエキサイトしていた。「きゃーーサイコーかっわいーー」「うひゃー萌え〜v」などと興奮気味の歓声が響く大盛り上がりのコンテストで注目を浴びていたのが、

「うわーーん、もうサイコーにかわいすぎますよ、もう優勝決定じゃないですかーー?」

黄色い悲鳴が上がりまくり、そりゃもうギャラリーも審査員も大興奮。にゃーと愛らしい声でアピールするラブリーな白猫。どこかで見たような艶のある気品あるその白猫は…

「ふふ当然さ。プリンセスは最高にラブリーなボクちんのプリンセスなのさ」

と誇らしげに白猫プリンセスを見つめるラキラだった。そうこのコンテストは【ラブリーにゃんこ自慢コンテスト】で、愛猫たちを自慢しまくり、猫好きな審査員をメロメロにするという猫好きは興奮限界突破確実な、萌えコンテストなのだ。

きゃるんとしたまん丸なまなこで見上げ、首を傾げるだけで、猫キチガイども審査員は「きゃーーかわいいー」とか「萌え死ぬーー」とかアホみたいな悲鳴を上げて大興奮歓喜しまくっていた。プリンセスは芸を披露しようとしているようで、おでこで小さなボールをポーンと打ち上げるが、ボールがおかしな方向へ飛んで、きょとーんとしてしまう。そのしぐさが計算されてなくても、審査員たちのハートはズッキュンと確実に打ち抜いて、

「はうーーん、なんですかーこの天然かわいさは。もう萌え萌えマックスー!!」

審査員どもみんな発狂しだす。かわいいにゃんこにメロメロなこのコンテスト。ラキラは自信満々だった。一番ラブリーなのはプリンセスだ。愛猫バカなラキラはこのコンテストをスルーすることなどできなかった。そして、優勝は間違いない、と確信したのだが…

「はーー、どのこもみんなラブリーで萌えさせてもらいましたが、審査員のみなさんどうでしょうか?」

と審議に入るその瞬間、

「待て! 誰が一番ラブリーだと? 審議するまでもない、私のエンジェルに決まっている!
とくと悶えろ審査員ども!」

「? その声は」

ババーンといった大げさな効果音と共に現れたのは、艶やかで優美な黒毛のしなやかな黒猫を肩に乗せたカピカだった。敵対する双子がこうしてナーオの町で再び相対するなど、…同じ猫バカなのでなんとなくラキラは想像ついていたが。

突然の黒猫エンジェルの乱入に、猫バカ審査員とギャラリーは「きゃーーなにあの子もラブリー!」とメロメロになり興奮して叫ぶ。

「残念だったなラキラ。貴様はここでひれ伏すことになる。このエンジェルのラブリーさに完敗してな!」

「カピカ!」

バチバチと火花が散る。ラキラとカピカ、双子の血を分けたこの兄弟は、やはり戦う定めにあるようだ。互いに譲れない強い思いでもって、対峙する二人。そうどちらも絶対に譲るわけにはいかない。

プリンセスとエンジェル。麗しき双子の姉妹。白と黒の愛らしき愛猫。最高にラブリーなのは、自分の愛猫だ!
猫キチガイたちの真の戦いが幕を開ける。






ラキラとカピカがバチバチ睨みあってたころ、ホツカはヤードの熱いまなざしにげんなりしていた。ベストカップルコンテストが始まり、第一次審査の最中だ。優雅な音楽が流れる中、カップルたちはそれぞれ音楽に乗って、パートナーと組み合って踊る。まるで舞踏会だ。いや実際はベストカップルを競う戦場なのだが。だがヤードやホツカはそういった闘争心はない。そもそもホツカは夢に見た兄弟を探して人気コンテストに出ただけなのだが。

「ヤードさん、どうですか?」

「うん、いいね。とてもいいよ」

なにがいいのか、ヤードの答えがホツカにとっては意図したものではなく、「あのヤードさん、ちゃんと見てくれてますか?」とホツカが確認する。

「うん、ちゃんと見ているよ。愛らしいホツカ君をね」

「…あ、いや、ヤードさん、僕は見なくていいです。というか当初の目的、忘れてないですよね?」

たらり、と変な汗がホツカの額を伝う。なにを真剣な眼差しで見つめてくれているんだこの男は、とあきれる。

「ああうん、もちろんちゃんと観客のほうも確認しているよ。ただ、少しでも見ていたいからね。そして、この楽しい時間を堪能したいと思ってね」

ふふふ、とヤードが微笑む。少年好きなヤードにとっては、ホツカの手をとり、ダンスを舞うなんて至福な時間なのだ。しみじみと思う。ホツカはいい少年なのだと。

「フェスを楽しむのはいいですけど、僕たちは協会の悪事を止めるのが目的なんですから」

ちゃんとわかってくれているとは思うが、ホツカも念を押す。

「フィアたちも探してくれているはずだからね。観客の中にそれらしい人物がいるかもしれない」

フィアさんたち…、とホツカが観客サイドにいるフィアとアドルを見る。が二人とも目的の人物を探すどころか、ホツカたちのほうに注目してキャーキャー騒いでいる始末だ。さすがにホツカもげんなりする。


「ああーん、組長ったらあーんなにホツカ君と接近しちゃって。らっぶらぶだわ〜」
と自分のことのように嬉しそうに頬染めて興奮して腰を揺らすフィアに、アドルはアドルで「うう、ヤードさん羨ましい」とフィアとはまた別の感情でもって頬染めてホツカたちを見ていた。興奮しているのは彼女たちだけではない。カップルたちを審査する審査員たちも、それぞれラブラブカップルたちに熱いまなざしで審査をしていた。

「今回はまた色とりどりのカップルが集いましたね。注目はありますか?」
「ええ、私はあの二人に注目してますよ。歳の差カップルいいじゃないですか」

審査員の女性二人が会場で踊るカップルたちを見ながら、互いの注目ペアを確認しあう。歳の差カップルが気になるといった審査員は、ホツカとヤードに注目していた。

「いいじゃないですか。親子以上に歳の差がありながら、パートナーを見つめる眼差しは対等な相手を見るかのようですよ。こう信頼しあっているというか。大人で余裕たっぷりの男性と、ぎこちなく目線をそらす少女の関係がまたいいですよね。きっと二人は付き合って間もないのですよ。恥ずかしくて相手の目を見つめられない、女の子の初々しさが在りし日の初恋を思い出すようで、ああ…とりっぷ」

「(あの人、勝手な妄想しているな…)」

審査員の勝手な思い込みにホツカはげんなりしながらも、会場内にそれらしき兄弟はいないか視線をめぐらす。ヤードもフィアたちもあてにならない。がんばってホツカだけでも例の兄弟を見つけなければと思うが、それらしき人物は観客にも参加者にも見当たらなかった。



「うふふー、よかったわねー、二人とも一次審査は通過できてー」

とフィアはまるで自分のことのように喜ぶが、そんなことはホツカにとってはどうでもよかった。だいたいコンテストが目当てではないのだから。とホツカが主張するのだが、ヤードのほうはというと

「コンテストも勝ち抜いた次の審査のほうがより盛り上がって人も増えるらしいし…」

ちらり、と意味ありげにホツカに視線を向けるヤード、その意図にげんなりしながらも、ホツカも納得する。ベストカップルコンテストは人気のコンテストらしいから、終盤になるにしたがって観客はより増えていくらしい。ただ、その少年たちが興味を持って見に来るかどうかは怪しかった。

「さてと、そろそろ次の審査が始まるみたいだ、行こうかホツカ君」

なぜかヤードはノリノリでホツカに手を差し伸べエスコートする姿勢だ。「うふふ二人ともがんばってアピールするのよ〜」とフィアがノリノリなのは当然として。

「ホツカ君、が、がんばってね」となぜかアドルは涙目でエールを送ってくれた。応援してもらったところでホツカはコンテストで入賞など考えていなかったので、二人のエールを適当に受け取って、ヤードと一緒に審査会場へと向かう。


「第二次審査はそれぞれの思う形で二人のラブラブっぷりをアピールしてください。恥ずかしがる必要はありません。いっそ二人だけの世界のつもりで、愛を見せつけてください!」

司会者の合図で審査がスタートする。こういうお題はやりづらいなと感じるホツカだが。さっきのようにダンスでみたいに指定してあったほうがよかったかもしれない。ヤードだってどうしようかと悩んで「ふーむ」と周囲を見渡している。

「ヤードさん、よかったちゃんと探していてくれているんですね」


「ああん、組長ったら、あんなところで棒立ちして、出遅れているじゃないー」
フィアはヤードたちの動向に注目してちっとも兄弟探しをしてくれていないが、ヤードはちゃんと探してくれているようで、ホツカはほっとする。…のだが、「なるほど、私らしいアピールでいいのかな?」と一人つぶやいて、突然ホツカを抱き上げた。

「えっちょっとヤードさん?なにを」

あっけにとられるホツカ。突然ヤードに抱きかえられ、その顔は真直にあった。そして頬に口付けられる。瞬間「きゃーー」という興奮した悲鳴がフィアや審査員から飛ぶ。ホツカの意識は別の方向で飛びそうになったが、「こんなかんじでいいのかな?」というヤードに、なにを言ってるんだこの人はと、ツッコミすら入れる気力すら失せていたホツカだった。





ホツカがヤードにキッスをされてたころ、別行動中のシャニィとカツミは屋台の並ぶ通りのイートインスペースのテーブルにて、ランチタイムの最中であった。骨付きのラム肉を豪快に食いちぎるカツミを横目で見ながら、シャニィはジューシーに焼かれた練り物串をかみながら息を吐く。

「たく、ホツカの言うそのどこにでもいそうな兄弟とかわかるわけねーだろ。なにか目的でもわかれば絞りようでもあるのにさ。なあ、カツミ」

と訊ねたところでカツミがちゃんとした答えなど返す筈もなく、「フン」と無愛想に鼻息だけで返される。ただひたすら腹を満たすためだけに肉をかっ食らっている。「ちぇっ」と舌打ちながら、シャニィもまずは腹ごしらえとばかりに食事を減らしていく。

「やみくもに探してもだめだよなー。…てことはさ、兄弟どもを探すより、協会のやつらを見つけたほうが効率いくないか?」

最後の一切れをごくんと飲み込んで、シャニィが名案とばかりに言う。カツミも肉を完食し、ゴクゴクとジョッキに並々と注がれていた水を一気に飲み干す。カツミの豪快な飲食っぷりに、周囲の客が「おおーっ」となぜか歓声を上げた。カツミの日常の行動が、彼らからすればパフォーマンスに見えたからだろう。そんなことはともかくとして、食い終えたら即逞しい腕を回してカツミが立ち上がる。

「フン、なら片っ端から潰していけばいい」
「は、え…カツミ? おいっ待てよ」

慌ててシャニィが立ち上がり、カツミのあとを追いかける。片っ端から潰すとは、カツミはいったいなにをつぶす気でいるというのか? そして二人のあとをつける怪しい影があったことなど、シャニィたちは気づいていなかった。

「むふふ、なかなかイイ筋肉、見つけましたのv」









ラキラはかーわいいプリンセスに夢中だよ
ヤードはホツカにもう夢中〜
それぞれがコンテストで躍起になるころ
大変?怪しい影がカツミたちに迫ってる?
嫌な予感、大丈夫?
フェス楽しみたいけど、ちゃんと目的忘れちゃダメよ
コンテストの結果も次回へ続くよ〜♪


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