第十三話 属性とは

ホツカフィアと力を合わせ、魔動兵士たちを大粉砕!
見よ!驚け水のパワーを思い知れ!
ホツカの魔法もすごいけど、フィアもすごいね頼れるねー
さすがさすが、ヤードの護衛も伊達じゃない?
シャニィの救出無事果たし、カツミとヤードとも再会だよ
囚われの人々もヤードたちが助けたよ
ヤードたちの目的、彼らを助けることだったー
師匠ともまた会えてホツカ一安心よかったね〜
シャニィは師匠をシラスと呼ぶが、ホツカそれは気に入らないよ
だけど別にシラスでもいいじゃないって師匠は思うよ
別れたのに、また出会ってしまったよ?ホツカとヤード
見よ!キチガイどもの夢の跡!序盤もそろそろ佳境だよん♪










収容所から無事脱出を果たしたホツカたちは、再びヒャケンの町へと戻っていた。助け出した人たちもこの町でしばらく保護をすることになった。協会の監視は厳しいが、ヤードたちの組織とそれに賛同する人々の団結は強く、協会に付け入られないすきを持たない。表立った大きな活動はしないが、ヤードたちは水面下で反協会の組織と連絡をとり、身を狙われている者を保護したり、協会の注目を別のほうへとそらしたり等地道に活動を続けている。
以前はヤードも協会から命を狙われることもあったが、優秀な護衛がついている。それに地道な活動により、ヒャケンの人々はヤードに協力するようになった。ヤードを狙えばヒャケン中を敵に回すことになりかねない。だから協会は監視を厳しくしながらも、不用意にヤードを狙ったりなどしないのだ。

ホツカは再びヤードの館にいた。広々としたリビングの間で、なぜか腰に手を当て偉そうな態度のシャニィに凄まれるホツカ。

「一人でぶっこんでバカを見るってのはお前のことだよな!」

シャニィに黙ってここを離れたこと。収容所に囚われていたことに対して怒られているのだが、心外だ。

「それって君の事じゃないの?」

とホツカが返せば、当然のようにシャニィが「ふんぎー、なんだとー」とブチキレる。

「バクダンぶつけるぞ!」

懐からバクダンを取り出し威嚇するシャニィを、「あらあらだめよ? 屋内は爆発物は禁止よー」と甘ったるい声色なのに、機敏な動きで封じ込めるのはフィア。小柄なシャニィはあっさりと身動きを封じられるが、懸命に抵抗してもがく。

「おいっ邪魔すんな! このおっぱい女!」

「ああーん、胸元で激しく動かないでー、感じちゃうわ〜」

くねんくねんと腰を揺らしながら色っぽく「あーん」と声を上げるフィアだが、がっしりとシャニィを捉えた腕は揺るがず、余裕の態度だ。

「うげっ気持ち悪い声出すなよ! 邪魔なおっぱいならバクダンで飛ばしてやろうか?」

フィアの胸に押しつぶされながらも、シャニィは強気な態度で生意気にも挑発する。

「やーん、ぶっそうなことしちゃだめー。胸は女性の大事なトコロだってシャニィちゃんもわかるでしょー? って、あら、君は小ぶりなのねー。うふふもしかして羨ましいのかしらー?」

「なっっ誰がそんなこと、失礼すぎるぞこの女!」

「あらー、ムキになっちゃってーかわいいわー。ワタシが吸って大きくしてあげようかしらー?」

やんやと騒いでいるシャニィとフィア。フィアがシャニィをからかって、シャニィがムキになって反応しているだけのようだが。シャニィの矛先がホツカからフィアに変わってしまったが、ヤードがフォローするようにホツカに話しかける。

「シャニィ君も君の事を心配していたんだよ」

それはわかるが、なぜああいうケンカ売るような言い方をするのだろうかと思うが。

「それは、わかってるんですけど。僕は人間じゃありませんし、他の人たちのように心配してもらう必要もないので…」

「なんだよそれ!? 自分は無敵だって自慢か?」

フィアのおっぱい攻撃から顔をそらしながら、シャニィがホツカの発言に返す。

「そうじゃないよ。ただ不老不死ってだけで無敵でも完璧でもない。それでも僕は魔法の力があるから、簡単に処刑されたりしない。だから僕のことを心配するより、自分のことや他の人のことを優先してほしいってことが言いたいんだ」

自慢でも自虐でもない。ホツカは淡々と語る。それは事実で本心だ。だけども、感情的なシャニィやフィアは「それはできないわー」と反論する。「だけど」とさらに反論しかけるホツカの言葉を止めるのはヤードだ。

「たしかにホツカ君はほかの少年とは違う。特別な力を持った少年だ。シャニィ君だってそのことはちゃんとわかっているさ。でもね、だからといって君をまったく心配しないなんてことはやっぱり難しい要望だ。大切な友達が姿を消した、危険な目に合いそうになっている。ホツカ君は強いし、大丈夫だ。そうわかっていてもじっとなんてしていられない。私がシャニィ君の立場でもきっとそうしただろう」

「ヤードさん…」

ホツカが危険な目に合っていたら、ヤードのことだ、きっと助けに来ただろう。シャニィのように無謀にぶっこんでくるということは彼ならしないだろうが。それでもなんとかして救出する。時に己の身に危険が及ぶとしても、その道をあきらめたり戸惑ったりしないのだろう。短い付き合いだが、ホツカはヤードの人となりを知った。だからこそあの悪夢が現実のものとなりえる可能性の高さを思い知る。

「そーよー。ワタシだってホツカ君のピンチなら駆けつけるわー。ちょっとカツミと離れるのは寂しいけど、その分ホツカ君に暖めてもらえばいいわけだしー」

フィアがヤードに賛同するように発言する。

「ほら収容所で一緒に戦ったじゃない? あの時、ホツカ君と一緒にいてワタシいつも以上に力を出せたもの。ワタシにとってもホツカ君はもう立派な仲間よー」

「フィアさん…」

「おい、それならアタシのバクダンのほうが爆発がすごいことになったりしたんだからな!」

となぜかシャニィがフィアに対抗心を向ける。

「ええー? ワタシだって、ホツカ君のせいですっごく濡れちゃったりしたのよ〜」

またなにやら張り合う女子二人はともかく。ホツカの背中を押すのは、ホツカが信頼する存在の白カラス。羽音をさせながらホツカのもとへと飛んでくる。

『ホツカよ、人との縁はお前の意思だけで簡単に切り離せるものではないのだ。お前のことを案じてくれる存在はなににも変えられぬ宝とは思わんか?』

「師匠…」

肩に止まる師匠から、ホツカは視線をフィア、シャニィ、ヤードへとめぐらす。

「ヤードさん、僕もあなたたちの力になります。協会を、ドーリアを倒すために、力になってください」

「ホツカ! やっと決意したんだな」
ホツカの言葉に呼応するようにシャニィが力拳。

「嬉しいわぁ。これでホツカ君もヤード組の一員ね!」
きゅっと脇をしめて跳ねるフィアの弾力ある胸が跳ねる。

ホツカの言葉に少し目を見開いたヤードは、すぐにいつもの穏やかな優しい笑顔で、ホツカのほうに歩み寄る。

「ありがとうホツカ君。魔法使いの君が力になってくれるなんて、ほんとうに心強いよ。改めて私たちの力になってほしい。よろしく頼むよ」

ヤードが手を差し出す。ややためらうホツカは横の師匠が『うむ』と頷くのを感じて、ヤードの手を握る。柔らかく皺の深いヤードの手は大きくて、大人を感じた。ホツカの不安をそのまま包み込んでくれるような、不思議とそんな感覚を覚えて。

「ヤード組って言うんですか?」

先ほどのフィアの発言でヤードの組織名を知ったが。

「あはは、いや正式名称はなくてね。んー、そうだねちゃんと組織名を決めたほうがいいだろうね」

「そうだよそれがいいって。ヤード組なんて名前ださすぎるしな。よっしアタシがいい名前つけてあげるよ!」

さりげに失礼なことを言うシャニィ。ホツカは思う、シャニィに変な名前をつけられるよりはヤード組のままでいいのではなかろうかと。組織名に関しては「まあ今度考えよう」ということになったが。


ホツカとシャニィは正式にヤード組に加わった。改めてヤードたちに自己紹介をする。白カラスの師匠も引き続きホツカと一緒に行動する。師匠のことを「師匠です!」としか紹介しないホツカなので、フィアたちからはペットのような存在だと思われてしまうが、そこは断固として違うと主張する。
とはいえ、師匠が何者であるか、知るのはここにいるのはホツカだけだが、それを暴露する気はない。ある意味重要機密的な存在だからだ。

「それじゃあ、ししょうちゃんって呼んだらいいのね?」

まさかのちゃんづけ呼びにホツカは驚いてストップをかける。「ちゃんづけなんてしないでください!」と。普段はクールなホツカがマジ切れするのにフィアも驚き、戸惑う。

「だから、もうシラスでいいじゃん。そのほうが絶対似合ってるって」

相変わらず師匠をシラス呼びするシャニィにも「絶対ダメ!」と反論するホツカ。当の師匠はホツカの肩でやれやれとあきれた顔をする。

『ホツカよ、シラスと呼ばれてもかまわんから。他の者たちから師匠と呼ばれるのもおかしなものだしな。何度かそう呼ばれていたら第二の名前のようで愛着も沸いてきたし』

シラスと呼んでくれ。と言う師匠に、ホツカは不服げに顔を歪める。師匠からしたらホツカの気持ちは嬉しくないわけではないが、もう少し柔軟になってくれてもいいのではと思う。

「師匠が言うなら、仕方ありません…。シラスと呼んでかまいません」

はー、とため息吐いて肩を落としながらホツカは皆にそう話した。


『ホツカよ、この者たちにきちんとシンクロ魔法のことを話しておいたほうがよいのではないか?』

師匠の提案にホツカも「そうですね」と頷く。ホツカはヤードたちに自分の魔法について説明をする。ホツカの魔法とはなんでもありの無限の力ではない。精霊という自然界の力を借りて使う有限のものだ。魔法使いの魔力の強さにより行使できる精霊の数や能力に違いはあれど、世界を破滅させるなんてことは到底できない。精霊の力あっての魔法であるため、それを超える魔法はありえない。
精霊にも様々な種が存在し、場所によって活発だったりする。先日ホツカが収容された収容所などは水気を帯びた場所だったので水の精霊が活発だったということだ。

「人は生まれながら属性を持ってるんです。その人の性質なので、属性が変化することはありません。属性を感知できるのは、僕ら魔法使いや精霊だけですけど、その人が生まれた環境や遺伝が関係して決まるんです。該当する精霊が好む性質なので、同属性の人にはある程度共通する部分があることもあります。属性は火水風雷土木光闇の八種類なんですが」

「わかったわ、ワタシは水ね? ホツカ君」

「はいそのとおりです。フィアさんの性質は水、感受性が強くてしなやかな人が多い属性です。漁師だとか水に関わる仕事に就く人に多く見られるタイプです」

「あら、なんだか属性って占いみたいね。相性の良し悪しもあるのかしら?」

ホツカの話を聞きながら興味津々のフィア。占い、というと違う気もするのだが、フィアのいうことも一理ある。属性による相性というのは大いにある。

「ええ、それはありますよ。火と水、風と雷、土と木、光と闇の属性は反発しあう反面強く引き合う性質を持ってます。ただ相性もあって、必ず引き合い上手くいくというわけでもないので、永遠に分かち合えない関係になることもありえます」

「ふうん、つまりワタシにとっては火の属性の人が運命の相手ってことね?」

「えっとそうですね。火の属性はシャニィですけど…」

「あらシャニィちゃんなの?」「は? おっぱい女が運命の相手なんて絶対ないだろ!」

ギャンと目を吊り上げてシャニィがフィアを睨む。フィアはムキになるシャニィに反して「あーん、おっぱいにひがまないでー」と挑発的に胸を寄せながら体をくねらせる。

「おっぱい女のことなんてどうでもいいんだよ。ホツカ、カツミはどうなんだよ?」

「あらワタシもカツミとの相性が知りたいわー」

女子二人がホツカに迫りながら問いかける。後ろにのけぞりながらもホツカは二人の質問に答える。

「カツミさんは、闇属性なので、相対するのは光属性のヤードさん、ですね」

フィアとシャニィの視線が目の前のホツカから後ろで座っているヤードに移る。

「ええっおっさんって光なのか? 光り輝くどころかくすんで見えるくらいだぞ?」

いや別に光だからといってキラキラ光っているような人物になるわけじゃないのだが、とシャニィの失礼発言にツッコミを入れるわけではないが、一応フォローする。

「光属性自体は珍しいわけじゃないんですが、歴史に名を残した偉人には光属性が多くいました。ヤードさんには人をひきつける才がありますし、リーダーに向いている属性なんです」

「あらー、かっこいいじゃない組長ヒーローみたいよぉ」

「ホツカ君にそういってもらえると自信になるね。俄然やる気が沸いてくるよ」

微笑みそう答えるヤードに、ホツカは照れくさそうに「どうも」と返す。

「ちなみに僕は風属性なので、風の魔法は得意なんですが。より強力な魔法を使うためには、みなさんの属性の力を借りる必要があるんです。【シンクロ魔法】と呼んでいる力なのですが、すでにシャニィとカツミさんとフィアさんとは成功してます」

初めてシンクロ魔法を使ったのはドーリアの脅威にさらされた時カツミと。シャニィとはヤデト操る魔動ロボとの戦いで。フィアとは収容所での兵士たち相手に。どれもホツカ一人では出しきれない魔法の力を使うことができた。

「僕は魔法使いですが、正直ドーリアには力及びません。ですが、みなさんの力を借りれば、協会をドーリアを倒すことも不可能じゃなくなるはずなんです」

今はまだドーリアに届きもしない力。だが悲観したりしない。シャニィもフィアもヤードも、自分の道を突き進むまっすぐな眼差しをしている。前向きな気持ちは活力になる。彼らの存在はホツカにとっても、活力になるはずだ。師匠はそう信じる。

未来を変えることは可能だ。ホツカはそう言った。その言葉をホツカに返してやりたい。
ヤードと出会ったことで彼が死ぬことになるとしても、変えることだって不可能じゃない。ホツカならば、きっとできる。

「ヤードさん! た、大変だ!」

突然慌しい声がホツカたちのところへ飛び込んできた。ハァハァと息を切らしながら、ヤードの元にやってきたのは一人の中年男性だ。背広姿のその男性は収容所より救出した人物の一人だ。彼らもここヒャケンで保護をしていたのだが。「どうしたのですか? アーニさん」とヤードが男性に訊ねる。アーニと呼ばれた男性は、まだ動揺している様子で、なんとか落ち着こうと呼吸を整えながら、ヤードに伝える。大変な現状を。

「わ、私の弟が、弟のオトートが、協会本部に乗り込んで行ったんです!」

「ええっ!?」











ついにホツカ決意した!
ホツカ師匠と一緒にヤード組の仲間入り〜
シンクロ魔法の力、すでに証明済だけど
まだまだ進化するかもねぇ?
属性の力、それはきっと仲間との絆だよ
ヤードの元にもっともっと仲間が集えば心強いよ
ホツカ危惧する不幸な未来も、みんなと一緒に乗り越えよう
できるよきっと、恐ろしきドーリアにもいつか勝てるよ
きっとそうだね、師匠一緒に信じよう
ホツカ決意固めたその時、またまた騒動飛び込んだ
助けたはずの人が協会本部に乗り込んだってーー?!
波乱波乱大波乱の予感だよ
続きもぜひとも聴きにきてくれよ?シーユーバイチャッ!




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