「こうして顔を揃えるのは何年ぶりになるかしらね。」

Dエリア内の某地下施設にて、顔を揃えたのはこの国の頂点に立つ鬼王の四人の子である
ショウ、キョウ、キン、ビケの鬼門家の四兄弟。

各エリアの領主の任についてからはこうして一同が顔を揃えるというのは初めてのことかもしれない。

長男であるビケがそれぞれの弟の顔を見ていると、その中の一人に目が留まった。

「どうしたの?キョウ、気分でも悪い?」

「あっ、いえ」

「しかたないじゃろう兄者、キョウはこういった場が苦手なんじゃ。」

そうフォローを入れるキンの言葉に首を振りながらキョウが口にするのは

「私が気になっているのは、リンネの・・・・いえ

桃太郎のことです。」

キョウのその言葉に瞬間凍りついたような空気が流れる。
数秒後、ビケのくすりという笑みでそれが終わる。

「金門の中でその噂が広まっているらしいと。

それに、鬼が島からも、そんな話が・・・」

「ワシもそれは聞いとるし、それに間違いないじゃろう。

女子ということで少し油断しとった気持ちがなかったわけじゃないが、それでも
このワシを倒したのはリンネじゃ。」

自慢することじゃないが、そう主張するキンに、まだ少し不審な顔を向けるキョウ。

「それならショウちゃんが一番わかってるんじゃない?

ずっと一緒に行動していたのでしょう?」

キンとキョウがショウに視線を向ける中、ショウは

「さあ、今のとこまだなんともビミョーなかんじだよね。だいたい元がかなりのヘタレだからさ。

期待しすぎるのもどうかな?あのオッサンなら、まだしもだけどさ。」

「テン・・・ですか。」

「そうじゃのう、ワシもテンならば・・・・」

「でも桃太郎はリンネ。鬼が島もそう認めている通り、桃太郎の生まれ変わりは桃山リンネなのよ。」

ビケの言葉にしばらく沈黙の後、じゃあ、とショウが動く。

「もうしばらく様子見ろってこと、鬼が島からの指令だし、ボクCエリアに戻るよ。」

遠ざかっていくショウの後姿を複雑な顔で見送るキョウは、思っていたことをぽつりと零す。

「鬼が島の指令、ですか。しかしなぜショウが?」

鬼が島はなにを考えているのか?少なからずそう疑問に思っていたキョウ。
でもそれは口に出してはいけないこと、それを思い起こさせるようにビケの言葉がのしかかる。

「私たちは鬼が島の忠実なしもべ。

鬼が島の指令に従うだけよ。」

「・・・・鬼が島のしもべ・・・・・」
言い聞かせるようにキョウはつぶやいた。





皆さんおはようございます。桃山リンネです。なんか昨日は、変な夢を見ていたみたいです。
すごく疲れる内容の夢だったと思います。

はー、なんかもうすべて忘れたい。夢だからすぱっと目覚めたら真っ白けでいいじゃない。
なのに、ベッドの上目覚めたら、顔の横に点々と赤黒いシミが・・・・・

いっけなーいあたしってば鼻血噴いて寝ていたのかしら?やーん。
顔洗ってこようと起き上がってみると、あの大きな花瓶が破壊された跡が・・・・いったい何事か?

部屋は朝明るくなってハッキリとわかる。
強盗が暴れまくったその結果、というか・・・・・


「夢じゃねーーーー!!!」

顔洗っている場合じゃなくて、わてわてと急いで部屋を片付ける。
ビケさんにお世話になっている身なのに、こんな散らかして、もう最悪じゃないか。
ところどころにある血痕らしきものに、イヤでも思い出される、昨夜の出来事。
ハイセーズのあいつらがやってきて、また殺されそうになって、そんで暴れて、そんでテンのやつも現れて・・・それから、それから・・・・・

なんかこの先は、思い出したくないなにかがあるような、うんきっとやな夢にうなされていたのよ。
はい終了。

たしかに夢かもと思う。目が覚めたら、誰もいなくて、テンもイッサとかハイセーズのやつも、部屋にはあたしだけだし、だから、夢なのよ。うん。
なんか言い聞かせているみたいだけど。



それから、あのハイセーズの連中がどうなったかは知らない。でももうあの三人がテレビに現れることはなかった。あたしがあんまりテレビ見て無いからともいうけど、でももう姿を見せなくなったのはたしか。
ショウが一緒なら金門のやつらに襲われないかも!と思っていたけど、そんなことはなくて、あれから何度も金門の刺客に襲われて、何度も危険な想いをしたのだ。
季節は夏に入ったばかりだというのに、このオシャレな街で夏をエンジョイする余裕なんてあたしには一切ない。毎日が必死だった。
ショウ?
いえこいつちっとも役に立たないし、あたしがピンチになってもろくに手助けとかしてくれなかった。
ええそれでもなんとか必死に生き残ってますよ。
思えばあのハイセーズの三人が強かったのかも、それ以降の連中はそこまでじゃなかったし。
でもあたしにすれば、かなりやっかい。逃げることでいっぱいいっぱい。

そして日々は過ぎていく。あの夜以来、テンにも会ってない。

ビケさん?

・・・・・そんな進展なんてないに等しいのですよ。ビケさんてばめったに領主館にいなかったり、戻っていてももう深夜だったりして、ろくに会話も交わせないまま。
ああ、せつな過ぎる。


このままじゃ、あたしの夏は金門のやつらと鬼ごっこで終わってしまう!!!

そんなある日、キンからあるお誘いがあったのだ。
なんでもDエリアで祭りがあるからショウと一緒にDエリアに来いという。

・・・・・Dエリアの祭りだと?
そんなんどうせろくでもない祭りなんでしょ?行くだけムダ、行くわけないし!
暴力の街より、まだ金門のほうが、ちょっとだけマシかもと思うし。
で断ろうとしたんだけど

『ワシと兄者の主催の祭りじゃからのう。』

「えっっ、ビケさんもいるの?!

じゃあ行く!」

即答だ!

Dエリアの祭りだろうが、ビケさんいるなら問題無!行きますよ暴力に溺れる街だろうがねv
ちょうど金門の連中にうんざりしていたから、それを避けるのにもよかったし。
気分モリモリでショウのやつをひっぱってDエリアへと向かったのだ。

ええ、その時はそんな災難なんて、考えもしなかった。
ビケさんに会う!そのことだけで頭いっぱいだったから自分。



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