リンネはついに出会ってしまった、彼女が運命の人だと信じて疑わないその相手、ビケに。

彼女の中に目覚めた一つのその感情が、彼女の人生を激しく揺るがすものになること
今はまだ自身も、そして自分の隣にいるテンが自分とはまた別の強い感情の目で彼を睨んでいたことも
この時はまだ気づくはずもなく、その新しい世界に酔いしれていた。

そしてまだリンネ自身が気づいていないもうひとつの魂が、その存在に強く引かれてやってきたことなども
気づかないまま、物語は新しい舞台で新たな幕を上げることになる。




・・・・・・vvv・・・あっ!
みなさんこんにちは、桃山リンネ18歳の乙女です。Aエリアに戻れない事実を知り愕然となるあたしは、Aエリア領主キョウの勧めでおばあちゃんを探して、そして半ば強引にテンに引っ張られ、暴力の街Dエリアへと。ほんとうに暴力にまみれたその街で、普通の女の子のあたしが無事でいたのが不思議なくらい(まあ怪我はしたけど)、アホみたいに強いその男、自称愛のテロリストでタカネの恋人を名乗るテン。そのテンはこのDエリアの出身だとあたしに教えてくれたのだ、どおりで考え方がまったく合わないと思っていたのだ。
でもそのテンの活躍のおかげで、危険な街を抜けることができた。
そしてDエリアの領主でDエリア最強の男キンとテンが戦うことに。そんな超雄同士の熱い闘いの中、あたしは目眩を感じ、意識を失ってしまうのだが・・・・。
目を覚ましたあたしにテンから信じられない言葉が・・・!?
あたしがあのキンを倒したらしい、と、しかも別人のように乱暴なキャラになってとのこと?!
全然事態が飲み込めません。知らないうちに体に増えた痣といい、変な夢といい、あたしの知らないとこでなにか起こっていそうで不気味です。
そして肝心のおばあちゃんはというと、Dエリアの領主のもとにはいなかった。そしてキンの勧めで、今度はCエリアの領主であるキンのお兄さんを頼っていくことに・・・。
しかしそれはあたしにとってとほほ、な結果ではなく
運命の人との出会いの道であったのだ、と今ならひしひしとそう感じるのです。

ビケ・・・さん・・・・(ほけー)v

「話はキンから聞いているわ、BエリアやAエリアでもずいぶん暴れたらしいっていう、

あなたが噂のテロリストね。

はじめまして。」
ビケさんはあたしの隣にいるテンのほうへ視線を送りながらそう言った。
一瞬テンも、驚いたような、というか少し見とれていたような、そんな顔を見せていたが、すぐにギッとあの鋭い顔つきになると、ビケさんに敵意を露わにする。

「きさま・・・!」
武器を手にするその手に力が篭っている、ちょっバカテンなに考えて、
あたしが必死に止めようとその手を押さえるけど、テンはあたしの言葉も聞かず、ビケさんのほうを鋭く睨みつけている。
ビケさんはそんなテンに動揺する様子もなく、涼やかな顔でくすりと笑みを零していた。

「お止めなさいな、この先はCエリアよ。武器を手にすることも、相手に殺意を見せることも禁じているエリア。

暴れたいのならDエリアに戻りなさい。タカネさんのことは私にまかせるといいわ。」
どこか挑発的に感じる言い方で、ビケさんはテンに言う。
テンは変わらずギリギリとビケさんを睨みつけたままだ。こいつはっ!

おばあちゃん探しに協力してくれるって言ってくれてるビケさんに対して、いくら鬼が島が嫌いだからって
その態度はどうかと思うけどっ

「こいつの世話になるのだけは死んでもごめんだ。
俺は俺の手でタカネを救い出す。」

「ちょっテン?!」
そう言葉を吐き捨て、ビケさんを鋭く睨みつけたまま、テンは忍者のごとくDエリア側へと姿を消した。
なにあの勝手我侭魔人はっっ!

はあ、でもよかった。ビケさんに危害加えなくて、それに・・・
あれ、もしかしてあたしやっとあのテンから解放されたわけ?

「厄介者も消えたことだし、Cエリア領主館に行きましょう。
武器は私が預かるわ。」
あたしはわてわてと持っていたライフルをビケさんへと手渡した。
そしてCエリア側へとあたしたちを誘導する。

あれ?ショウも持っていたはずだけど??いいの?ショウは

関所を抜けたすぐそこで、なんだか高価そうな車が停車していた。
車なんて、Aエリアにいた時に巡回バスに数回乗ったことがある程度で
それにあたしたちは乗り込み、Cエリア領主館まで向かうらしい。

気がつけばあたしはかなり汚い格好だった。泥とか血とかで服には所々シミがついていたり、そういえばお風呂にも入ってなかったし、ヤバーイ乙女失格・・・、あわわ汗の臭いしないだろうか、不安になった。

座席のシートになるたけ触れないようにと、背もたれに絶対もたれないぞ、と気合で座る。
これが元でさらに疲れることになるのはその後である。
あたしの隣に座るショウは対照的に、おもいっきり足を伸ばしてくつろいでいる。
こいつの図々しさはテンといい勝負だと思う。

動き出した車の窓からはCエリアの街並みが映る。
建物も人もすべてが芸術作品のような整った美しさ、Dエリアの世界と真逆の眩しい世界。
Cエリアは才能ある人が集まる街、才能溢れる人が作り出したその景色は
街全体がひとつの芸術作品のように仕上がっているよう
街を歩く人はみんなキレイで、そして自信溢れた人ばかりのよう、一瞬外の人と目が合ってしまい、あたしは慌てて身を屈めた。

Dエリアもあたしとは違いすぎる世界だって感じたけど、ここも別の意味であたしとは違う世界だ。
違う人種だよ!きっと!
うう、なんだか恥ずかしくなってきた、Bエリアのほうがまだいいかもしれない、いやマシってこと。

ずっと緊張していた中、車が領主館へと到着する。
自分が座っていた場所をささっと手で払って、あまり車体に手を触れないようにして降りた。
そんな様子を見られていたのか、ビケさんにくす。と笑われてしまった、うわーん、恥ずかしい!

「さあ、いらっしゃいな。」
ビケさんに案内され館内へと。
領主館、他のとこよりも外装も内装も最高に綺麗豪華!さすが美を追求するCエリアを象徴しているかのように、虫眼鏡を使ってあら探ししても、埃ひとつ見つけられそうにないかも・・・?

そしてあたしとショウはある一室へと通されて
「キョウから聞いていたんだけど、あなた住むところがないんですってね。」
それに頷くあたしに、ビケさんは驚く発言を

「よかったらこの部屋を使いなさい。」

「えっええええ!?」
それって、それってどういう意味ですか?!

「このCエリアが嫌いでなければ、の話だけど」
それにあたしは勢いよく首をぶんぶんと横に振る。

「そんな・・・キライなわけ、ないです!」

「そう、ならいいわ。じゃ自分の家だと思ってくつろいでちょうだい。

タカネのことは、私に任せて、わかったわね?リンネ。」

リンネ・・・・
あのステキな声からあたしの名前が、ビケさんがあたしの名前をっっっ!

ふわっ、リンネでよかったーvいや、呼んでもらえるならリンコだろーが、太郎だろうがなんでもいい気がするけど・・・
こんな名前呼ばれるだけで幸せな気持ちになれるなんて・・・・はぁ。

ドリーム真っ只中のあたしの前に現れた顔は
「おーい、涎垂れているけど・・・。」

「うわっショウ!

あ、あれ?ビケさん。」
ドリームの住人だった数秒の間に、ビケさんの姿は消えていた。
その部屋の中にはあたしとショウの二人のみ・・・。

一気に緊張が解ける。ふへーと言いながらその場にへたりこんだ。
思わず両頬を押さえると、ぽかぽかと内から熱が、熱い。

「ショウ!あの人だれ?!」
興奮気味に鼻息荒く詰め寄るあたしに、さすがのショウも引き気味だ。

「だれって、ビケ兄じゃん。Cエリアの領主で、ボクらの一番上の兄ちゃん。」

そういえば四エリアの領主はみんな鬼門の人間だってテンが言ってたっけ。
てことは、ショウとキョウとキンとビケさんは兄弟ってわけね、・・・・。
うん、でもなんでだろ、あの三人とビケさんはなんか別の生物っていうか、なんか
一緒に見えないというか、なんであんなにビケさんは輝いて見えるのかしら。

あんなに輝いて見える人なんて今までにいただろうか?いや、そんな存在
ビケさんだけ
あの人だけ特別なんだ。

脳内で再生してみる。出会った瞬間、ビケさんの顔、部分、声とか仕草とかセリフとかすべてすべて
ヤバイ!

「全部がステキすぎなんですけどっっっ!」
思わず声に出てしまい、ショウはかなり引いている。

「そりゃ、ビケ兄はステキすぎだけどさ・・・、リンネちょっとキモいよ。」

「うるさい!・・・ああ、だけどあたし・・・・」
たしかにビケさんに会ってから変かも。
今まではテンやショウに振り回されて、やつらのハチャメチャぶりにつっこんできてばかりだったけど
それももうおしまい。

これからのあたしは、ビケさんの側でビケさんのことを想って生きていくの!
ん、これって・・・この気持ちって・・・

「はー、なんか見るテレビないかなー。」
む、ショウのやつ、遠慮なしに部屋に設置されている液晶テレビの電源を入れてパチパチチャンネルを変え始める。というか、だいたい

「なんであんたここにいるわけ?Bエリアに帰ればいいじゃない!」

「いいじゃん、別に。ビケ兄も好きなだけいていいって言ってくれたし、好意に甘えようと思って。」
図々しい!

「それにさぁ・・・あいつ・・・。」

「は?なに?」

「別に」と言って怪しく笑みを浮かべるショウ・・・なんなんだこいつ??あいつって、テンのこと?

「はー、ろくなのやってないなあ、Bエリアならエロイ番組見放題なのに、つまんねー。

あっ、いい女♪久々に目の保養だね。」
たく、ん?
ショウが見ていたテレビをなにげなしにあたしも見ていた。
それはドラマで、悲恋をテーマにしたものだった。ヒロインはたしかにショウが言うとおりかなりの美人
なのに彼女の想う相手は別の女性を想っていて、ヒロインには欠片も想いを寄せてくれないみたいで。
主人公は届かないその想いひとつで自分を支え、そして最後には愛するその人のため我が身を犠牲に・・・彼女が消えてそして初めてその彼が彼女への愛に気づくという・・・・
なんともコテコテな恋愛ドラマだったのだが、ケタケタと馬鹿にした笑いで見ていたショウとは逆にあたしはぼろぼろと泣いてしまったくらいはまっていた。
すごく主人公に感情移入してしまっていた。

「あはは、あっ、なに泣いてんの?リンネってばまさか笑いすぎて涙が?」

「うるさい、この無神経男!ちーん!」鼻をかみ、目をこする

「この女優だれだろー?・・・・金剛カナメかー、チェックしとこ♪」

はあ、恋愛ドラマなんて興味なかったはずなのに、あたしどうしちゃったんだろう。
やっぱり、もしかして、ううんきっとそうなんだ。

あたし、ビケさんに恋をしたんだ!一目惚れの恋を!
そしてこうしてビケさんに出会って、関わりを持ったことも運命なんだわ!
運命!ビケさんはあたしの運命の人?!

このCエリアで、あたしの新しい人生が、恋物語が始まる!
その強い想い(こみ?)があたしを突き進ませるのだ、きっと。


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